夢遊病の走馬灯で何を見る
突然ではございますが私是田ケンマは派遣で食い繋ぐ30歳の一般成人男性、趣味もなく貯金もあり不都合もなくただなんとなく生きてるし死ぬまでこの生活が続くと思ってた、ある日親戚の葬式に行くまでは、めでたいはずの元旦が雨の日である覚悟を決めた私はトラックが滑り私は轢かれた。これは死んだなと確信したが毎日同じような生活してて変わり映えのない日々を送ってると生存欲もさほどなくあっさりと死を受け入れた、走馬灯を人生で初めて経験するというのに別に大切なものは見えなかった、多方が自分のつまらない語り草にもなり得ない小さな出来事だった、轢かる瞬間までは…
目を覚ます、私は病院に居るのかと自己分析、ただ一つ理解し難いのは私が目の前にいることだ、これが俗に言う幽体離脱なのかと疑問符を浮かべる、それにしても惹かれる前にみた走馬灯の最後の記憶は一体なんなんだ、思い出せないが大事な何かだった気がする、忘れるくらいだから大したことはないと言う人もいるが死の瀬戸際で最後に見る光景なんだそうに違いないと確信し少しだけ生きたいと決心する。
決心したはいいが幽体の今何もできないし傍目で見る限り医者たちが私の容態は優れないと言う、打つ手なしと思ってた矢先黄昏時がくる、窓から差し込む淡い光が私と私の体の胸に一本の今にも切れそうな半透明な蜘蛛の糸を照らして輝いた、一瞬肉体の指がピクリッ!と動いた気がした、まだ死んでないと確信したや否や念を送る、動け動けと念じ続けたが微動だしない身体に少し怒りを覚えるも無駄と悟り待つことにした、窓の日差しが消えてゆくのをみていい機会だ外に出ようと浮いたまま外に出ようとする、があろうことか幽体になってまで物理的に干渉を受けるのだった、こうゆう相場はすり抜けるだろと思いつつも窓開けたらなぁと感嘆するとまたもや肉体が動く、点滴を引きずりながら立って窓まで来て開けた。音に気づいた看護師がすぐに病室に駆け込む、動くことはないと確信していた重体の怪我人が動いたと騒動が起きた、私はベッドで横になれって強く念じる身体がその場に倒れ込む、同時に夜が来て胸の糸の繋がりは消えた。偶然にも程があると思いつつも動かない身体を何回念じても無駄と知りひとまず騒動を後に自分で開いた窓で外に浮遊してみる。外に出たらすぐ近くに事故現場があった、だから病院に間に合ったのかと納得すると同時に微かに地面が淡く光っていると思い一旦地上へ降りる。光っていたのはトラックの付けたタイヤの跡だった、触ってみるとあの時の走馬灯がもう一度流れ込んできて今度見えたのは山で何かを埋めてた、視線がかなり低いから子供の頃の話か?でも何埋めたんだ思い出せない、それは大事な物なのかもわからないし確かめる術もない、一旦病院へ帰るかと帰路に辿る。病室へ到着すると同時に蜘蛛の糸がまた繋がる、気のせいか前より鮮明に見える気がしたと思いつつも朝日が来る、半透明だったからだが徐々に消えてゆく、部屋の角で影にうずくまるも幽体は完全に消えた。
意識を覚ます自己分析するまだ幽体だった、私消えたのでは?と疑問に思う時間はまた黄昏時になってる。看護師が来て点滴を変え針をブッ刺す、不思議にも痛みを感じた、昨日までは肉体の触覚すら感じなかったのに今日は意識できる。看護師が部屋を出る、私は検証を始める、身体に神経に命令を入れる、手を上げる、半分握った拳を開く、再び拳を握り締める。拙い動きだが動いた確実に、このマリオネットみたいな動きでも動くことに喜び一晩中上半身を動かしてたら朝が来てまた消える。また戻れる大丈夫と確信するも消えゆく恐怖は依然残るまま意識を眩い光に飲み込まれる。
3日目黄昏時と同時に目を覚ます、昨日の訓練もあってか簡単な命令なら身体は動くようになった、胸の糸が確実に太くなった小さな変化だが間違いないが繋がりが強まると昨日まで感じなかった惹かれた時の傷が痛むようになった。痛みは生きてる証と開き直り身体をラジコンのように命令で動かす。今日は立てると確信しゆっくりベッドから起き上がると成功、これで行動の幅が広がると思った矢先部屋のドアが開く。そこになってたのは看護師では無かったが知ってる人かと言われたらそうでもない、なぜなら顔と声がモザイクとボイスチェンジャーみたいに情報が処理できない。手振りからして知り合いなのだが現状考察するには情報が不足してるしこのマリオネットみたいな身体は発声も出来ていない、やがてその人は私の身体をベッドへ戻し少し喋って帰るのだった。看護師は喋らないからわからなかったがここで初めて聴覚が万全ではないと知る、だったらなぜ医者が私を診断した初日は微かに聞き取れたのだろうと考察、おそらく周波数が高いと聞き取れないと確信。それがわかったとしても今は変えられないので渋々またベッドから立ち上がる。
前見た山の裏に足を運ぶ、病院を出る際看護師に止められるも肉体が一度受けた命令は変えられずそのまま前進、私の身を案じてか医者が私の夢遊病を覚ましたら危険と言い私に看護師を後に付けさせ動きを観察するのだった。山は案外近くに居て歩いて10分で着いた、これが記憶の場所かと呆然に見つめる、近くの木の枝を拾い穴私掘る、やがて硬い何かに当たる。その箱は浅いところに埋まっていて看護師が簡単に引っ張り出せるほどの深さだった、看護師が中を開けると一枚の写真しかなく私の身体は即座にそれを奪った。命令も出してないのになぜ勝手に動いたと驚いてるとまたマリオネットみたいに無気力になった。看護師に迷惑だと思った私は身体を病院に帰らせたが体力の限界を悟った身体は病院受付まえに座り込み動かなくなった。
今回朝来てないのに消えてく、そして意識が遠のく。
どうやら一日中意識が無かった私は今日が5日目になってた、今日は幽体で意識を覚ますと身体はもう勝手に動いてた、病院食を食べ、トイレに行き、外で散歩する。もし身体が意識を持って動いてたら今いる幽体の私は一体誰なんだと恐怖し命令を送るも言うこと聞かない。夜になって身体は眠る同じく命令を送るも聞かない、と思っていた矢先動いたが眠ったままだ、しかも勝手に病院を彷徨う。行き着いたのは屋上だった、柵に近づく、まさかと思い止めるように命令を送り続けるが止まらず後一歩のところでまたもや走馬灯。今回は違う記憶を見た、前回のような味気ない日常の続きと言わんばかりに悲しい記憶が脳裏を埋める。走馬灯から目覚めると身体は止まっていた、それに安心したと同時に身体がまた消えてく。
6日目モザイクの人がまたお見舞いに来た、どうやら前より聞き取れるようになった、幼い少年が私をパパと呼ぶ。私は親だったのかと記憶を辿ると同時に写真の人物を思い出す。あれは20年前の私と両親だった、ある日外出で事故に遭い私だけが運悪く生き残ってそれを後ろめたく感じて自分の気持ちに蓋をしたんだ。それで今年ある親戚の少年が同じ境遇に遭いどうしても他人事とは思えず施設送りになるところを引き取った。ヒカルと名前を呼ぶ、少年は驚愕と喜びで目元を潤う、そう身体は言うと幽体である私はなんなのかを悟る。
7日目が来た初めて朝の光を浴びて消えなかった、疑いが確信に変わってた、私は身体からもう消えない、身体は私の感情で本能で幽体の私は理性と責任だった。私はまだ家族がいると再認識してまだ死ねないと覚悟し今日もお見舞いに来たヒカルを見て淡く光ってた。私は身体に惹かれ溶け込み意識を完全に取り戻す、ヒカルの頭を撫でる。私は絶対負けんし君はダイヤの原石だ絶対光ると言いヒカルを、いや、息子を強い男に育てると誓って人生をまた歩む。家族を失う痛みを知ってるから息子を育てるまでは死ねない。胸の糸が一瞬見えた繋がった先はヒカルだった、それに安堵し目を閉じて明日遊園地に連れてってやつからなと静かに眠る。
8日目ヒカルは泣きながら笑っていた、幸せだと告げて。