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Second Flight/Sheen000〈プロローグ〉 

「お願い、届いて!」


 少女の悲痛な叫びが暗澹たる無限の空間に響いた。

 彼女の前に立ちはだかるのは甲冑を身に纏う巨大な騎士達の姿だ。そして整然と居並ぶ彼らが守るのはとてつもなく巨大な鋼鉄製の(まゆ)だ。

 宇宙の闇に浮かぶ鈍色の不気味な繭の中で胎動しているのは、美しい蝶となるサナギではない。

 目覚めの時を待っているのは地表へ降り注ぐ数えられないほどの流星だ。一度解き放たれたなら、もう誰にも止めることは出来ない。

 空を切り裂きながら真っ赤に燃えて降り注ぐ流星は、いったいどれほどの命を奪うのだろうか。


「君はそれでいいの? それが君の願いだっていうの?」


 その恐ろしい光景を想像し、苦悶の表情で言葉を絞り出す少女は操縦桿を握る両手に力を込めた。

 

「お父さんが夢見た未来だもの、お母さんが守った大地だもの……」


 ……そうだ。

 少女の両親は命を懸けていくつもの死線を潜り抜け、希望の光を勝ち取ったのだ。

 翠色の瞳に煌めくのは決意の輝きだ、少女は今この瞬間に全身に蓄えた力を解き放つ。


「ゼッタイに壊させたりしないんだからっ!」


 流星の繭を守る、おびただしい数の衛兵達が少女の行く手を阻む。長剣を構えた彼らは次々と少女が操る機体へと襲いかかる。


「お願いだから邪魔をしないで!」

 

 宇宙の暗黒を切り裂く眩い光を放つ長槍の穂先で、殺到する衛兵を力任せに薙ぎ払った。少女はもうどれほどの敵を屠ったのか覚えてはいない。


 コクピット内は警告を示す赤い光が満ちている。


 機体の生命の源である動力炉はいつ燃え尽きてもおかしくはない。

 機体を守る装甲は、すでに敵機の猛攻を防ぐことなど叶わぬ程のダメージを受けているはずだ。


 それでも、それでも諦めるわけにはいかない。


 少女は星々が煌めく暗黒の宇宙で、純白の翼を羽ばたかせる機体を追い続ける。その純白の機体を操っているのは少女の大切な親友だ。

 一緒に笑った。一緒に駆けた。一緒に涙を流した――。

 大切な記憶を彩る、かけがえのない思い出たち。

 

「決めたんだ。誓ったんだ。ボクは、ボクは君と一緒に帰るんだっ!」

 

 少女が胸に抱くたったひとつの願いは叶うのか――。

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