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アクロバティックサラサラ

怪人アンサーは謎を追って同胞の怪異を訪ねにいきます。


 アンサー達は無人の校舎から黄昏に染まる町へと繰り出した。怪人アンサーに分からない謎はないと証明するためにも、久しぶりに掛かった獲物の身体をいただくためにも早く謎の怪異の正体を掴む必要があった。


 紅に染まる逢魔が時日没を予告するように影がどんどん伸びていく。。スーツの男性が家路についていると、瞳の端に赤い何かを捉えた。茜色の空そのものではない。建物の屋根の上で踊り狂う何かを見つける。


「なんだあれは?」


 目を凝らすとそれは赤いワンピースの女性に見えた。赤い帽子を被った高身長の女だ。漆のような光沢を持つサラサラの黒い髪を振り乱しながら踊っている。仕事の疲れかと目をこすると屋根には何もなかった。やはり見間違いかと視線を落とす。すると、先程屋根の前で見た紅い女は自分の進行方向に佇んでいた。よく似た別の女性ではない。艶やかな赤い服は見間違うはずがない。しかし同じ女性だとしたら屋根の上からの移動が早すぎる。


「一体何なんだ!?」


 男が踵を返して逃げだそうとすると、赤い女は目の前にいた。その眼は眼球がなく、眼窩がぽっかりと空洞になっているだけだ。感じるはずのない視線で射すくめられ、身体が硬直する。女はニタァと笑うとボロボロの腕を伸ばしてくる。


 ハッと我に返った男は捕まるまいと急いで逃げだした。成人男性と華奢な女を比較すれば簡単に撒けるはずだ。しかし、女は女とは思えないアクロバティックな動きで追いかけてくる。「うわぁあ」という間抜けな声を上げて逃げ惑うが、女は道の曲がり角などに先回りして男を捕捉した。壁際に追い詰められた男が涙と鼻水で汚れた顔を歪ませる。


「探したぞ。ここにいたか。アクロバティックサラサラ」


 男を見下ろす赤い服の女の背中にアンサーは声をかけた。アンサーに気を取られて振り返った瞬間、男は脱兎のごとく逃げ出した。


「タイミングが悪い……。折角の獲物に逃げられちゃったじゃないの。一体何の用?」


「強い怪異であるお前に聞きたいことがあるだけだ」


「あら、貴方にも分からないことがあるのね。怪人アンサー。私のスリーサイズまで言い当てたのに……」


「目測で大体分かる」


 無駄なハイスペックだった。彼の視線はそのままメジャーと同じである。見つめられるだけで下着姿の自分がガッチリと測量されているイメージに侵食される。(そよぎ)は急に見られるのが恥ずかしくなり自身の胸を押さえた。


「そよぎちゃん、今更遅いわよぉ。あ、アンサー? ちなみに、そよぎちゃんのパンツは何色?」


「無地のピンクだ」


「ちょっとぉ! いつ見たの!? ねぇ! いつ見たの!?」


 スカートを押さえる仕草から察するにあたりらしい。脅威の正答率だった。

 アクロバティックサラサラと呼ばれた赤い女は(そよぎ)を空洞の眼で見つめる。眼窩を見せつけられた(そよぎ)は絶叫しそうになるのをこらえた。怪人アンサーは彼女は『アクロバティックサラサラ』と呼んだ。彼女が本物なら下手に刺激すると命を取られかねないと思ったからだ。アクロバティックサラサラは(そよぎ)に顔を近づけて観察する。


「ふーん、人間の子ね。どうして連れてるの?」


「俺の回答の正しさを証明するためと借金を取り立てるためさ」


 まどろっこしいアンサーに変わってメリーがこれまでの経緯を噛み砕いて説明した。学校で起こった人間消失事件の真相を探っているという話を終えたとき、アクロバティックサラサラは溜息をついた。


「なるほどね。それで私を疑っているという訳ね」


「近年語られた怪異の中でお前はずば抜けて強い。北海道から中国地方まで目撃情報がある赤い服の綺麗な髪の女。奇抜な動きで対象者を追い詰める。魅入られた者は不幸に遭うか、怪異本人に連れ去られる。名前の由来はサラサラの綺麗な髪とアクロバティックな動きから。アクサラとも略される」


 怪異として彼女は格が違った。天運さえも捻じ曲げる神通力、超人的な身体能力。そして直接手を下す際は対象者は消してしまうのだ。


「――人を消せる? そうか、だからアンサーは疑って……」


 アクロバティックサラサラは綺麗な髪を手櫛で整えながら言った。


「私の異能で大量の人間を消すことは可能よ」


 全員が固唾をのんだ。やはり強大な怪異だけあって人を消すことは造作もないようだ。疑惑の目を向けられた彼女は犯行そのものは否定した。


「でもその『学校消失事件』に関しては無関係よ。人間を消せると言っても私の場合は証拠が残る。大量の血痕とか、ね。それに私の都市伝説は〝私に狙われている〟ということを被害者に語らせるという猶予期間を設けているわ。猶予もなしに大量の人間を消すわけがない。畏れられることは快感だけれど、目立ちすぎるのは避けているの」


「昔のことまだ気にしているのぉ?」


 メリーの問いかけにアクロバティックサラサラは黙った。俯くその怪異からは後悔の感情がひしひしと伝わってきた。


「昔のことって?」


「ああ、コイツは元々別の怪異だったんだ。赤い服装の女、恐ろしい顔、日常的な通勤通学路で出会う、このフレーズから連想する怪異に心当たりがあるだろう?」


「また質問!? これ以上身体を取られるわけには……。えーっと怪異怪異、昔の赤い服の……通学路……あっ! 口裂け女!」


 (そよぎ)が答えた瞬間、アクロバティックサラサラはぬーっと首を近づけてその空洞の眼で視線を合わせてきた。そして今度は耳まで裂けた口をいっそう釣り上げて「ふふふ」と笑う。


「貴女みたいな若い子にも知られているのね。光栄だわ。それこそが反省点だけど」


 首を傾げる(そよぎ)に対し、アンサーは補足説明する。


「コイツは、口裂け女だった頃……やりすぎたんだ」


 口裂け女は怪異の一つ、現代妖怪として知らぬものがいないほど有名である。赤いコートを靡かせて通学路に現れるマスクの女。彼女に出会ってしまった子供達は「ワタシ、キレイ?」と問いかけられる。「綺麗」と答えれば、「これでも?」とマスクを外して裂けた口を見せてくる。そして「お前も同じようにしてやる」と刃物を取りだして口を裂いてしまうのだ。反対に容姿を貶すことを言えば逆上して惨殺される。肯定しても否定しても災難に遭うという人間の恐怖を煽る存在であり、怪異達にとって憧れの存在だった。


「あの頃は良かった。皆が私を語って恐れてた。でも――畏れられすぎた」


 口裂け女の恐怖に怯えた子供達の中には登校拒否する子も現れた。社会問題化して集団登校が基本になり、警察の見回りさえも増えていった。如何に強大な怪異だろうと大量の人間に警戒されて排除対象になれば身動きが取れない。


「人を襲わなくなったから人間に恐れられなくなったってこと、ですか?」


「それだけじゃないわ。過去に私が殺めた子供も人間の仕業に書き変えられた。ちょうど幼児連続殺人事件の犯人が捕まったからね」


 (そよぎ)が思いだしてみると、確かに同時期に起こった幼児を対象にした猟奇的殺人事件が数件程解決していた。完全に狂っていた犯人は被害者の顔と正確な数を覚えていないし、警察もまた、彼らの仕業にしたかったのだろう。口裂け女の犠牲者とされた子供は人間の罪だと断定された瞬間、彼女の脅威を表す客観的な証拠がなくなった。


「加えて人権団体による抗議、監視カメラの増設とマスクをする女性の増加が口裂け女の都市伝説を崩壊に追いやった。だから〝やりすぎた〟んだ。怪異は人に語られなければ存在しない。だが目立ちすぎると存在する領域を壊されてしまう」


 人に歴史があるように怪異にも歴史があった。人間に否定され、対策されてしまった彼女は口裂け女としての居場所を失った。


「口裂け女の興廃のお話はわたし達怪異の中ではモデルケースとして語られているわぁ。良い意味でも悪い意味でもね。だから貴女が新たな怪異として再デビューしたときは驚いたけどぉ」


「怪異は目立ちすぎては駄目だけれど、目立たないのも駄目。だから節度を守ることにしたのよ。拠点を地方に絞ることで社会問題化を防いだ。元々体力と顔芸には自信があったからそれを駆使して振舞った。赤いコートはワンピースに衣替えして心機一転したの」


 結果は大成功。科学と世界の限界に絶望していた人間達は神秘の存在、怪異を求めていた。だから初めは踊り、移動するだけの女、脅かすだけの怪異だった彼女も人間の恐れを蓄積して力を増していった。口裂け女はアクロバティックサラサラとして返り咲いたのだ。


『赤い女に魅入られると殺さる』『逃げても追いつかれる』『酔って声かけた先輩が翌日大量の血痕を残して消えた』『対策は無視してその場を離れるしかない』


 どれが真実でどれが虚構か分からないインターネットの書きこみは人々の恐怖を煽っていった。スマホで当時のネット掲示板を確認していた(そよぎ)は背筋が凍っていた。彼女のスマホを覗きこんだアクロバティックサラサラの吐息が顔にかかる。


「ここに書いてある通りよ。私には〝短時間で〟大量の人を消すことはできないし、目標には私を語らせるだけの猶予を与えている。そもそも過去の反省から大事件になりかねない行動は控えているわ」


「筋は通っているわねぇ。アンサー? 彼女は白よぉ。服は赤いけどぉ」


「ふむ……そのようだ。邪魔したな」


(ふー……怖そうな人? だけど問題はなかったみたい)


 学校消失事件の犯人は別にいる。早く見つけないとまた被害者が出る可能性がある。アクロバティックサラサラが語った通り、やりすぎた怪異は排斥される。他の怪異達にとっても他人事ではいられなかった。早く止めなければ怪人アンサーやメリーさんの都市伝説すらも社会から根絶される可能性がある。


「急がないとな。節度を弁えない怪異はお灸をすえてやらないと」


 他の犯人を探しをしようとアクサラとすれ違おうとした時、(そよぎ)の腕が掴まれてしまった。女の細腕とは思えない握力で激痛を感じる。


「この子が欲しいわ。置いていきなさい」


 悪い冗談ではないようだ。舌なめずりをする彼女からは殺意と執着心が形となって伝わってくる。学校消失事件の犯人ではなくとも、多くの人間を手にかけてきた事実には変わりがないのだ。その狂気が今、少女に向けられた。


「俺の獲物だ。渡さねぇよ」


 アンサーは掴むアクロバティックサラサラの腕を切断して(そよぎ)を両腕に抱え込んだ。彼のマントの中から無数の義手や刃物、手術道具が蠢き、未だに(そよぎ)を掴んで離さない怪異の腕を切除すると外套の中に仕舞いこんだ。『怪人アンサーの問いに答えられなかった者は体の一部が奪われる』、彼の外套の中には相手の身体を奪うための機構が隠されていた。

 鋭い切れ味のようだが、アクロバティックサラサラの切断面から新しい傷だらけの腕が生え代わり再生してしまう。


「怪異は不死身よ。知ってるでしょ? バラバラにされようが、焼かれようが、元通り。こんな不毛なことは辞めて早くその子を渡しなさい」


「俺は体の一部しか奪わないというのにお前は全てを求めるのか。強欲な奴だな」


 怪異同士の闘いにおいて決着がつかないことが多い。それぞれの縄張りが暗黙の了解で決められているのでそもそも揉めることが少ないのだ。

 だから直接戦闘になった際は落としどころを見つける。ターゲットの人間を山分けするか、格下怪異の方が黙って引き下がるのがほとんどである。人間を消す怪異と人間の体の一部を奪う怪異。どちらが格上かは明らかだった。


 逃げても逃げても屋根を飛び越えて先回りされる。純粋な身体能力は明らかな差がある。その上変則的な動きで予測できない。おまけに女の子を抱えている今、逃げ切ることは難しかった。メリーが糸を繰り出してその動きを封じようとするが、奇抜な動作で全て躱されてしまう。辛うじて強襲から守るだけで精一杯らしい。

形勢不利と見たメリーもいつの間にかアンサーの背に乗った。


「アンサー、どうするつもり!? このままだと追いつかれちゃうよぉ!」


「仕方ないな。メリー、お前の能力に便乗する」


 背に乗るメリーはアクロバティックサラサラが僅かに自分達を見失った機会をも逃さずに携帯電話を取りだして誰かに電話をし始めた。


『わたし、メリー……今公園の前にいるの』


 すると、三名の姿がその場からパッと消えてしまった。

 初めて目標を見失ったアクロバティックサラサラはすぐに近くの角やゴミ箱を確認する。彼女は自分の追跡能力に自信を持っていた。故にアンサー達を見失ったと分かった際には悔しさに獣のような声で絶狂した。


 メリーの能力に便乗したアンサー達は無事公園に転移していた。転移のために電話をかけたのは酔っ払ってベンチで微睡んでいる親父だった。寝ぼけていた彼は瞬間移動していたアンサー達も幻覚だと思ったのかそのまま眠りについてしまった。

あの赤い女と揉めた場所からはかなり遠い。彼女の気配も感じなかった。流石のアンサーも肝を冷やしていた。無事逃げられたことにほっとした瞬間、水の音に気が付いた。音源を辿ってみると、自分の立つ場所の下に水溜りができていた。アンモニア臭が鼻をつく。腕に抱える少女が顔を隠しているが、そのスカートが濡れていることに気づくとやってしまったんだと察した。


「キャー、待ちに待った美少女の失禁だわぁ! アンサー、そこ変わりなさいよぉ!」


「空気読めよメリー。こういうときは見なかったことにしてやるのが大人の余裕だぞ」


「そろそろ来ると思って公衆トイレ前に転移したのは私なりの気遣いだけど?」


「うー……仕方ないじゃない! あんな恐ろしいお化けに狙われた挙句、未来に私の体の一部を奪うだろう器具を見せつけられたら誰だって漏らしちゃうよ!」


「なるほどぉ、少女の膀胱に止めを刺したのはアンサーというわけねぇ、でかしたわぁ!」


「八割方アクサラのせいだろ! そして褒めるのも違う!」


 実際は大きな恐怖を感じた後、極度の緊張状態が急に解けて気が緩んだせいだろう。

 少女の批難の視線と感謝の念を感じてアンサーが縮こまる。その後数分の間に二人は女子トイレで用を済ませたらしい。替えの服と下着はメリーの転移能力で調達したに違いない。アンサーは脱いだ衣類をどうしたのかは興味を惹かれたがそれを追求すると今度こそ変態の烙印を押されかねないので、別の話題を振ることにした。


「第一容疑者が白となると手詰まりだな」


「アレを白と言っていいのか疑問の余地はあるけれど……。今思いだしても怖いし、あの人とは一生遭いたくないよ。他に心当たりはないの?」


「人を殺す、攫う系の怪異は沢山いるからねー。でも学校消失となると……難しいわねぇ」


 アンサーもメリーと同じ意見だ。できそうな奴はいるが確たる証拠はない。そもそも前例がないという見解しか導きだせない。多くの人間の問いに確実な答えを示したアンサーとしては分からない、解明できない現状に対して感情が高ぶっていた。


「絶対に答えを見つけてやる」


 分からない問題に足掻くアンサーが新鮮に見えたメリーはクスリと笑った。そして手掛かりとなる唯一の生き証人にもう一度疑問をぶつけた。


「ねぇ、そよぎちゃん? 貴女には本当に心当たりがないのぉ? 怪異の正体が分からなくても実際に現れた以上、貴女の近くでその怪異が語られていたはずよ」


 (そよぎ)は何かを思い出そうとメモ帳を取りだした『オカルトメモ』と書かれた小さなメモには彼女が仕入れた怪奇現象などが記載されていた。本当にオカルト好きらしい。『黒い服の少女の霊目撃情報』や『人体模型の向きが変わっていた』というありきたりのものの中に『クラスメイト行方不明事件』というものがあった。


「これとか怪しいんじゃないのぉ?」


「ううん、調べて分かったんだけど、被害者の一家は借金苦で夜逃げしただけだった」


「人間社会の怖い話だな。……他も怪しいものはなさそうだ」


「うちの学校、怪談とか廃れてるの。私が入学した時にはオカルト研究部も廃部だったし」


「じゃあ誰かから聞いた都市伝説とかインターネットで見たとかでもいいわ、思い出してみて」


 なんとか思いだそうと空を仰いだ。しばらく顎に指を立てていた彼女は何かを思い出した様子でスマートフォンをとりだした。


「関係のある話かは分からないけど……。数日前にオカルト掲示板で読んだ話があるよ」


 彼女が示した画面を凝視すると、『カミウツシ』についてまとめられていた。


 強い怨恨を持つ人間が自身の血で呪いたい相手を印した紙を用意し、それを蝋燭の火で燃やすこと相手の存在を消す召喚呪術。呼び出した呪いが呪殺対象の存在や記憶を喰らい、喰らった人間になりすます。それが完了した後、呪いを実行した人間の記憶から『カミウツシ』に関する記憶を奪い、今度は自身が喰らった人間に近い別の人間に自身の召喚方法を教えて数日中に失踪する。誰かを『カミウツシ』しなければ常に視線や気配を感じ死の恐怖に襲われ、最後は自分がカミウツシに乗っ取られるという話である。


 掲示板では過疎地域に生まれた語り部が田舎独自の力関係で苦い思いをしていたことから話が始まる。そんな折、彼の周りで次第に友人が姿を消していく珍事が起こり、最後に残った親友が突如『カミウツシの呪法』について語り部に話し、目の前から消える。呪法を教えられた語り部は最初にカミウツシを実行したのが自分だと思い出すというものだ。


『友人は自分を呪うことができずにカミウツシに乗っ取られたのだろう。呪殺対象を失った俺はアイツの視線に耐えながら生きている。俺もいつか乗っ取られる前に誰かにカミウツシを実行してもらいたくてここに書きこむ』


 そう締めくくられていた。「カミウツシをどこで知ったのか?」という質問に対して、語り部は「呪いを始めた記憶は思い出したが、そこだけが分からない」と返していた。そこから友人黒幕説や「記憶を操作できる怪異のようだから語り部は今も記憶操作されているのではないか」といった考察が続けられていた。

 内容の全てを熟読したアンサーとメリーは顔を見合わせた。


「「こんな怪談は知らない」」


 それが二人の感想だった。怪異そのものである二人は新しい都市伝説やそれに基づく怪異が生まれればある程度知っているはずである。首を傾げながらまとめサイトに記された投稿年月を確認すると、まだ一週間程度しか経っていなかった。


「私も怖い話は好きだから検索していて、耳に新しい話だったから記憶に残っていたの」


「コイツは犯人足りえないな」


「どうしてぇ? 存在を喰らう呪術怪異であるならば、学校消失事件とか起こせそうよ?」


「実際にコイツが存在していたら容疑者第一候補足りえるがそんなことはありえない。メリーだって知ってるはずだろ? 俺達怪異は語られてこそ力を増し、実体化できる。コイツは語られて一週間しか経っていないし、まとめられたサイトもマイナーなものだ」


「創作怪談ならそうかも。でもさ、本物の呪術だったら、誰かが実行した時点で実体化するんじゃないの?」


「仮に本物の呪術だとしたら尚更だ。こういう呪術の類は形式的な儀式と土地の気、血統などが大きく関わる。見知らぬ土地で素人がやっても影響力が知れてる」


「でも、その怪異が実在するなら無関係とは思えないわぁ。それとなく他の人にも聞いてみるというのはどうかしら?」


「じゃあ次は人間に聞いてみようよ!」


 怪異に聞き込みをしてアクロバティックサラサラのように狙われるのはご免である。ただでさえ謎の怪異に襲われてクラスメイト達は行方不明という絶望的な状況なのだ。加えてボディガードは自身の体の一部を予約されている男と失禁フェチの呪い人形という濃いメンバーである。そろそろ普通の人間とも関わりたいというのが正直な気持ちだった。

某オカルトアニメで有名になるまではマイナー怪異だった悪皿さんです。

奇怪未解世界においては口裂け女から変異した怪異という立ち位置でした。

親切に見えてしっかり怪異という。ただ犯人ではありませんでした。


学校消失の謎を追って次は人間への聞き込みを始めます。

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