お姫様と青の騎士の息子
「ナイーダは背丈のことについてとても気にしてるのだから言ってはダメよ、アルバート」
踏みしめるように立ち去る足音が徐々に遠くに聞こえた頃、溜息混じりでリリアーナは隣に立つアルバートを見上げた。
「それに……」
「ああ、わかってる。わかってますよ」
珍しく面白くなさそうな表情を浮かべたアルバートは端麗な顔を歪めていた。
「わかってます、十分に」
でも、と彼が続けようとした時、リリアーナは思わず頬を緩める。
「イライラするんです。あんなあいつを見ていると」
窓の外では、先程より勢いを失ったように見えるナイーダがひょろひょろと歩くのが見え、アルバートは視線を逸らす。
「まぁ仕方がないわ。だけど、次は喧嘩をしないでちょうだいね。わたくしは大切な友人二人が言い合っている姿が一番悲しいのよ」
「申し訳ございません」
困惑した表情を浮かべたアルバートが素直に頭を下げる。
日頃から常に冷静沈着と言われている彼がこんな姿を見せられるのは間違いなく彼女くらいであろう。
そんな二歳年上の付き人にリリアーナはやっぱりクスクス笑うことを止められなかった。
「さてと、わたくしはメレディスを呼んで着替えに入るから、それまで席を外していてちょうだい。いいかしら?」
アルバートははっとし、リリアーナの穏やかな表情を見て、そして力強く頷いた。
これは彼の仕事であって、彼にしかできないことだから。
今日もまた、彼は駆けだした。