異世界の魔法、すべて解明します!
第2弾ですが基本的にはスタンスは変わりません。
ただ今回この章にはみんなが知りたかったアイテムボックスや転移や召喚魔法の秘密、神やエルフ、ドワーフ、獣人、魔族の考察、現代日本の魔法考察など、盛りだくさんになってますのでお楽しみに。
彼の旅が始まった。前回のおさらいとしては主人公役目孝二が魔力を獲得してスキル分析によって魔素の正体が窒素であることと魔力が位置エネルギーであることを突き止めた。そして、全ての属性魔法に関しては事件等も解決しながら考察を終えて論文を発表した。妻が2人いて、リーナとドラゴンのラジーナである。ちなみにリーナは妊娠3か月である。ちなみにこのときには第一王子妃アーミアは男の子を出産していて、パイラと名付けられた。で、今はラジーナの背中に乗って空を飛んで進んでいる。次の目的地は隣国ベータスだ。ちなみに人間の国はアトワースとベータスの2つしかなく、あとは亜人の国と魔王国のみだ。ちなみにリーナの実家エルバンド領はベータスとの国境近くにある。国境を飛び越えるのはまずいので国境の検問所に向かう。すると
「賢者様ですね、すでに王様から許可は出ています。一度国王陛下とお会いしてもらえませんか?」と兵士から言われる。
どんな人なんだろう。フェイム王はかなり腹黒な感じがしたが果たして、、とりあえずラジーナを使って王都の王城に向かう。ちなみにアトワース国の首都はフェマス、ベータス国の首都はジーラだ。そのジーラに向かう。馬車よりも圧倒的に早いのでラジーナに乗って進む。到着して王城に入る。
「噂はかねがね聞いておる。今は公爵様だったかな。賢者殿。」
とりあえず王様の要件としては、研究成果をうちの国でも使わせて欲しいとのこと。研究は人類のためというか役に立つことが一番なのでそれは快諾する。そして次の要件が、、
「最近うちの辺境の地ボーツマスの森で魔物の数が少しずつ増えている。おそらくこのままだとスタンピートのおそれがある。故に賢者殿に調査を依頼したい。」とのことだった。
俺がエルバンド領で強力な魔物を前代未聞の方法で倒したことは当然隣国であるベータスにも伝わっていた。
ちなみにボーツマスはベータスの東の端にある港町だ。
地理で言うとアトワースは大陸の南西に位置し、ベータスは南東。魔王国は北西、亜人の国は北東に位置している。北の中央にドラゴンの里があり、ここで亜人国と魔王国は分断されている。
ちなみにこの依頼はベータスに来なかったとしても騎士団や王様経由で来ることになっていたらしく、こっちに来たのは正解だったようだ。平和になって軍事力が衰退した、というわけではなく強い魔物と戦う経験値が足りていないから手を貸して欲しいようだ。俺はリーナに事情を説明することにした。
旅に出るときにいちいち転移で戻って要件を伝えるなんて面倒だ。なにより緊急事態ならそんな暇はない。だからこの旅に出る前に新しい魔法を開発していた。携帯のメールのように使えるもの。でも別になんてことはなくテレパシーと言うやつだ。波として移動できるのであれば物体にしろ何にしろ光速cで動くことができる。転移魔法のときの説明を参考にして欲しい。で要は思念を波として乗せて目的地まで飛ばすのだ。このときの目的地は地図魔法を使って正確な位置を割り出している。まぁ光速なので一秒もかからず伝わるため、まず位置がずれることは考えなくてよい。つまりテレパシーを使って王様の依頼を受けることを伝えた、というわけだ。もちろん開発のときにリーナもいたので彼女もまたテレパシーを使うことが可能だ。でリーナから返信がきた。「私は護衛なのでもし大量で対処できない場合が想定されるのであれば私が行きます、ということでラジーナさんで飛んで例の森の位置に来たらうちに戻ってきてください。」
彼女は俺と同じく練習した甲斐もあり転移魔法が使える。だから戻るときに行けるようにしておいて欲しいということだ。もちろんラジーナも全魔法適正持ちなので使えるが基本俺と一緒に行動するのであまり意味がない。
というわけで森に飛んですぐに家に戻る。「リーナ、一緒に行こう。」「待ってましたよ。」玄関で待っててくれていたのですぐに森に転移を使う。
さて、妻二人と俺は森にやってきた。気配は多少感じる。でもリーナもラジーナもレベルが高くまず近寄ってこない。
「倒されそうな敵に挑むほどバカではないようですね。」
「そもそもラジーナがドラゴンだからなのでは?」
ドラゴンの魔力は強力な上に独特な質をしているらしい。しかも魔物を倒したり食べたりする生活が多いため、レベルが非常に高い個体が多い。ラジーナのレベル150でさえかなり里では低い部類らしい。とりあえず魔物が来ないのは好都合だ。俺達は魔物退治が目的ではなく、魔物が増えている原因の調査なのだから。
そもそも魔物ってどうやってできているんだろうか?
ホーンラビットやレッドベアはまだモデルがいるが問題は身体が変わってしまったメタルシープや、そもそもごちゃ混ぜの身体を持つキマイラである。あとゴブリンもまたどこから来ているのかも謎である。人間の遺伝子らしきものは入っているのだが。
ごちゃ混ぜの身体ができる原因って何だろうか。ごちゃ混ぜの身体を持つ魔物はまず生殖で作られたものではない。交配とかの問題があるためだ。となると遺伝子を弄られて作っていると考えるしかない。生物はたんぱく質の塊が複雑に活動していることでできていると言われている。遺伝子はそのたんぱく質の遺伝情報が載っているものだ。遺伝子は身体の様々な部分に入っている。それこそ抜け落ちる毛や、鱗などにもだ。この情報を使えば材料のたんぱく質さえあれば部分的な再現も可能だと思われる。つまり、ドラゴンの鱗、獅子の毛、蛇の鱗、山羊の毛を組み合わせて足りないたんぱく質で構成されたのがキマイラだと考えられる。
そう、キマイラなどのモンスターは身体の一部分+たんぱく質で構成されてできていて、これは繁殖もできずその世代限りのものになる。遺伝子を弄られた生き物はたとえ生殖器を持っていたとしても基本的に子孫を残しにくくなる傾向がある。特に複数箇所を弄るのはまずいと思われる。ゴブリンは人間の毛で構成していると思われるが、知能が低い。人間の赤ちゃんが弱いまま生まれるのは頭が巨大かつ脳が複雑だからだ。その頭の部分を小さくしたものがゴブリンではないだろうか。これにより繁殖がしやすくなる特徴がある。頭を大きくしないのであれば幼体を十分育った状態で出産でき、環境に適応しやすい。そして知能も下がるが量産もできる。量産をさらにしやすくするため基本的なゴブリンは成体でも人間よりもふた回りくらい小さい。これが妊娠期間の大幅な削減効果を生むのだ。創作物では1ヶ月程度で出産するとなっているが、こう考えると説明がつく。つまりゴブリンは「人間の遺伝子を組み込んだ量産型の人型生物」なのだ。オスのみなのもメスをわざわざ作るくらいなら量産しやすいオスのみにすると言う理由もあるわけだ。肺呼吸ではない理由も作られた存在なら人間と同じ弱点にしないためとも考えられる。そして同じ特徴を持つオークも同じだ。ただこれは豚の毛と人間のミックスだ。
だいぶゴブリンの説明が長くなったのは他の魔物とはかなり違う傾向だったためだ。つまり別の生物の遺伝子とたんぱく質の組み合わせで作られた生き物達が魔物と呼ばれる存在なのだ。もちろん地球では魔物が発生しないのは上記のようなことは魔法でもない限りできないためだ。材料と構造図だけで未知の生物を作れとか言われても無理なのである。
そしてスタンピート。魔物の正体がわかれば自ずと答えは見えてくる。たんぱく質は別に生物だけでなく、病原菌などにもあるのだ。つまり、魔物を発生させる物質または生命を考えてみると、それに取っては人間は病原菌と同じく異物であり、排除すべきものだ。人間にとってそれを排除したいと思うのと同じように、それにとっても魔物という細菌の代わりを使ってでも排除すべき存在なのだ。つまりスタンピートは人間が細菌を排除できなくて起こる熱のようなものだ。強制排除。そのために大量の免疫細胞(魔物)を繰り出す。これで人間(異物)がなくなれば少しずつ落ち着いて熱が下がる。そういうことだ。つまり、何者かが狩りすぎて排除の方向に移ってきてるからスタンピートの前兆現象が起きているのだ。ちなみに上の考えているものは俗に、ダンジョンコアとマスターあるいは魔王と呼ばれるものだ。
おそらく、この森にダンジョンが発生している。そして、そのダンジョンにはすでに何者かが侵入していると思われる。つまりこのまま放っておけばスタンピートが起きて、まずい事態になる。異物がなくなったと判定するまでスタンピートは止まらない。
ダンジョンコアを停止させるか、すでに入っている冒険者を止めて連れ出すか。ダンジョンコアは基本的にマスターがいなければ自動で動くロボットのようなものだ。だから停止させるためには莫大な労力がいる。ならば、方法は一つ。
俺達は急いでダンジョンと思われる領域に向かった。当然俺達も異物扱いなのでさっきまで出なかった魔物がわんさか出る。
地図魔法で例の冒険者を発見する。「ラジーナ、ここは頼む。リーナ、一緒に行こう。」ドラゴンのラジーナにヘイトを集めてとにかく急ぐ必要があった。ある程度コアに近づけばおそらくダンジョンコアはスタンピートを起こしてその冒険者も確実に死んでしまう。命を助けるためにも必要だった。
魔物を倒しながら俺達は例の冒険者の元に進んだ。そして遂に姿が見えた。一人の男が戦っていたのだ、しかも、、
「お前、あのときの!」そう、決闘で戦ったあの男だったのだ。
「俺は!このダンジョンを攻略して次こそお前を倒すと決めたのだ!止めようとするんじゃない!」あのときちゃんと騎士団の皆さんが捕まえて処刑されていたはずなのになぜ、、
「捕まったと思ったか?あれは俺のスキル身代わりだ。一生に三回しか使えないが自分の代わりを作ることができる。」
「剣で切ったときに雷属性魔法を直で受けて俺は確かに動けなかった。だから身代わりに変わってもらったのさ。身代わりはスキル発動時、自分は透明化して傷は全部負ってもらえる。」
つまり身代わり魔法の仕組みは本人がスキルを発動すると本人は透明化、つまり一旦実体がなくなる。そして新しい自分の身体を作ることができるスキルと言うわけか。だから捕まえたやつ自身も本人だし、今いるやつも本人ってわけだ。まぁ仕組みがわかったから俺も使える。便利だし三回は死んでも大丈夫になったわけだ。まぁ寿命は無理だが。
とは言え捕まえたとしても身代わりで逃げられては何の解決にもならない。どうすれば、、とリーナが
「解決方法はありますよ、要はスキルを発動する前に気絶させればいいんです。」とリーナは逆召喚魔法で岩を腹に当てようとした。でもそれじゃかわされると思ったとき、ストーンバレットがすでにやつの頭にクリーンヒットしていた。ちなみに逆召喚は召喚魔法とタイムラグがあることにリーナは逆召喚魔法習得時に気づいていたらしい。だからこそ逆召喚を警戒させてのストーンバレットが炸裂したのだ。
「気絶した今です。転移を!」近づいて転移を選択、屋敷に着いた。ラジーナにテレパシーで捕まえたことを報告した。
そして全員が揃う。これで様子は見る必要こそあっても、少しずつ魔物は減っていきスタンピートは起こらずに済むだろう。過度にダンジョン領域に近づかないように厳命しておこう。とりあえず出てきてしまった魔物はいずれ退治する必要があるから冒険者ギルドに頼むことにしよう。
すでに男はリーナの魔力封じ錠で拘束されている。この状態なら身代わりは発動できない。「どうする?俺を殺すのか?」
男が聞いてきた。でも死刑はすでに執行されているし、助けているのに殺すのも違う。でも悪事にまた手を染められるのも困るし、、「奴隷にして売り渡すのはどうでしょう」とリーナ。間違いなくこの男は犯罪者だ。おそらくそのまま解放したらなにをしでかすかわからない。犯罪奴隷としてどこかに売り渡すのか?奴隷は隷属魔法というものが使われる。この呪文を使えば主人への命令が絶対になる魔法だ。この男はレベル90で普通に戦力になるし、他の場所に出すというのもまずい。それに、隷属魔法が使えれば反対の解放魔法まで使える。後々の展開まで考えれば俺を主人にして冒険の旅をしてもらったほうが色々と都合がいい。
「お前を奴隷にする。とりあえずその前に名前だけ聞いておく」
「俺はニュートって言う。で、お前は隷属魔法は使えるのか?」
「賢者様は全魔法適正持ちだからイメージさえできれば使えます。」とリーナが冷静に返す。では、始めよう。
隷属魔法は簡単に言うと「絶対的支配」だ。その相手に対して害を加えることが絶対できないようにするのだ。そして魔法を脳に対して行うことで主人に対する支配を確実なものとする。これが隷属魔法の正体だ。で、解放はその逆と言うことだな。
できたぞ。ニュートにかける。
「これでお前はこの家の全員を殺せないし害せなくなった。それだけでなく、外にいる間に一切の犯罪ができない。」
「別にリーナと賢者を負かそうとしてただけだ。」「リーナはお前のものじゃない。リーナの意志で俺のそばにいる。それにすでにお前は負けたじゃないか、リーナ相手に」
リーナのおかげでニュートを捕らえることができた。つまりニュートよりも明らかに強いことは間違いない。何がそこまでこの男を駆り立てるのか。「俺はその女に負け続けたことで精神がおかしくなった。自分より強い女がいるなんて認めたくなかった。」
女性に対する劣等感の裏返しか。と、
「別に弱いのを認めるのも大事だと思いますよ?賢者様なんて最初は魔力も何もないただの異世界人でしたし。」「は?」
リーナは召喚から俺が強くなるまで育てあげてくれた師匠でもある。だから俺の努力を一番に見てきている。自分が弱い異世界人だってちゃんとわかっていたからこそ、投げ出さずにひたすら努力して必死に魔法作って今まで生きてきたのだ。
そして、リーナ自身もものすごい努力家だ。それはできない魔法があったらイメージを含めて練習してスキルなしに何でもできるようにしてきていたのだ。
ニュートが弱いのは自分が強いと思い込み過ぎているからだ。自分以上の努力をしている存在がいると素直に認めることができない。だから性別のせいなんかでと解決から逃げている。
「じゃあ、私と勝負しましょう!」とラジーナ。女である自分が強さを見せてやるとでも言うのか?「ああ、いいぞ、でも魔力封じは外してくれ、隷属魔法は効いてるから心配はしなくていい」
決闘は例の草原エリア。ホーンラビットしかいない分邪魔が入りにくい。「そちらからどうぞ」「遠慮なく行く!」ちなみに剣ではなく木刀だ。万が一でもけがしたら困るし。ちなみに魔法は肉体強化以外使用なしのリーナ戦を再現している。でもラジーナは剣を持ってない。「拳で十分です。殺傷能力もありますから。」
ラジーナは手をドラゴンの鱗に変質させて木刀を止める。何度打ってもラジーナは完璧に受け止めた。「なぜだ!」「単に反応速度が違うだけですよ。」「反撃をしないのはなぜだ?」「ちゃんと実力で負けている、性別なんて関係ない、ってことをあなたがわかるまでは反撃しません。」正直反応速度が違えば反撃なんていくらでも入れ放題だ。それをラジーナはわかっている。
ニュートは焦っていた。肉体強化をかけているのに目の前の女は全く怯まず全て受け止めてくる。では、反応ができないまで強化をかける。一撃にすべてかけるしかない。さらに腕に強化を集中させ速度をめちゃくちゃ上げる。反応速度よりも早く振るイメージで。その一撃は、、完全に止められ反撃を受けて意識を失った。「ここは、、」俺は屋敷に戻っていた。反撃で意識を刈り取られたようだ。「全く無茶しますねぇ、、」そう言うのは同居人のジューレだ。回復魔法を俺にかけていた。どうやら肉体強化をかけすぎて筋肉が悲鳴をあげているようだ。魔力がその限界(魔力容量)を越えれば細胞等が破壊される。回復魔法をかけなければ腕が動かなくなっていたところだと怒られた。
俺は完璧に負けた。もう嫌というほど実力差だと認識されられた。最後の一撃さえ完璧に止められた。ドラゴンの女の子に負けたのだ。奴隷になった俺はどうなるのだろうか。
すると、「なんか顔がすっきりしているぞ、心なしか。」と賢者がやってきた。「とりあえず奴隷の仕事に関して心配してるんだろうが、基本的には俺の旅に同行してもらうことになる」
俺の強さを買っているんだな、賢者は。女達は滅茶苦茶強くて必要なさそうだけど。「私が妊娠してるからその代わりですよ?」
とリーナが声をかけてきた。妊婦に負けたのか、俺は。
もうどうでもいい。奴隷としてでも俺は強くなる。人生はこいつの下僕だがと思っていると、、「あ、恋愛は自由だ。別に結婚しても構わないし子供を作ってもいい。ただ俺の家族に手を出さないことと外で犯罪を起こさないことさえ守ればあとはお前は自由だ。いずれは好きなところに住んでいい。」こんなやつははじめて見た。ここまで自由な奴隷なんて聞いたことがない。
孝二は自身の恋愛に関しては超がつくレベルの鈍感だが、他人の恋愛する権利が奪われることに対しては厳しい。ジューレが親が死刑になったから一生結婚できないという縛りを王様に撤回させたのである。そのおかげでアトラと付き合うことができ、いずれは結婚そして子供の誕生まで行くことができるのだ。だから隷属したニュートにさえその権利を奪うことはしなかった。
「とりあえずベータスの王様にはラジーナと決闘してお前が倒れてる間にスタンピートは起きなくなったこと、ダンジョン領域に入らないことと出てきた魔物の間引きをギルドに任せる旨は伝えてきた。」「で、次はどこ行くの?」「ニュートを奴隷にした件を王様に伝えたら、亜人の国から違法に奴隷が輸出されている件をついでに調べて欲しいと言われた。」亜人の国は人間から奴隷にされることを嫌って作った独立国だ。そんな国から奴隷をわざわざ持ってきているなど、全面戦争になりかねない。そしたらうちの国アトワースも例外なく巻き込まれるのだ。
「とりあえず手がかりを探しましょう。」とリーナは言う。
おそらく奴隷が売られるのは王都だ。需要はあっても金がない地方で奴隷を売っても買い手がつかない。
だからベータスの王都ジーラで調査をする必要がありそうだ。
とりあえず行ったことがあるのですぐに転移ができる。ただみんな大冒険したあとだしもう夕方だ。明日からにしよう。
このあとラジーナが「大変だったんですかね!魔物を一人で対処してなおかつヘイトを集め続けるのは!」と怒り心頭だったので、夜は彼女の相手をすることになる。
翌日。ツヤツヤになった彼女とは対照的に俺はげっそりしていた。というかドラゴンってどんな身体の構造してるんだ。人間と交配できる形態と通常形態があるけど。質量保存は全無視と前は言ったが、彼女がドラゴン形態になるとき大量の魔力を周囲から吸収していることが『分析』でわかったのだ。つまりエネルギーとしての魔力を使って質量に変えているのではないかと思われる。エネルギーは基本的に質量に比例するから、エネルギーさえ吸収すれば質量が大幅に増減すること自体はなんらおかしいことではない。さて、仕事をしよう。
ニュート、俺、ラジーナの3人は王都ジーラにやってきた。とりあえず怪しそうな場所を地図魔法で見つけつつ、せっかくなので王都の観光をする。食べ物は別にフェマスと特に変わらない。発展させた勇者が現代人ということもあり、麦や米、野菜や肉、魚などが普通に市場に存在している。
勇者は別にアトワースだけに支援していたわけではない。人間の国と魔王国だ。基本的に人間不振の亜人の国は勇者を受け入れていないため、中世のような生活をしているらしい。
で、地図魔法で怪しそうな場所を発見する。屋台で食べ物を買ってから行ってみることにする。
「いらっしゃいませ、なにか御用でしょうか?」紛れもなく奴隷商人の店だった。別に俺は奴隷システムそのものは否定しない。だって奴隷を禁止したところで奴隷的な制度が残っていたら全く意味がない。ただの言葉狩りでしかない。実際地球でもまだその問題は根強く残っているので、異世界だけの話ではない。
さすがに王様から調査を受けているなんて言えないので、とりあえず奴隷を見てみる。しかし見たところは人間ばかりで亜人であるエルフや獣人の姿はない。奥に隠してあるパターンかとも思ったが分析でもそんなことはなかったので外れだ。奴隷にしたとは言え犯罪奴隷だし成り行きなので奴隷を侍らせる趣味はない。そんなことをしたら妻達から白い目で見られる。実際近くのラジーナも疑う目線をしてるし。ただ、ちょっと気になる奴隷がいたので購入することになった。
購入したのは親子だった。母親が奴隷であり、赤ん坊の息子を抱えていた。分析で母親が病気持ちだとわかったので放ってはおけなかった。リーナ達には事情を説明して納得してもらった。幸い家には病気を治す聖職者がいるし。一応ダメなら病院があるので万が一には行く予定にはなっている。
店から出て転移をかける。親子はびっくりしていたが母親の病気はなんとかしないとまずい。ジューレは事情を聞いて教会から戻ってきていた。「とりあえず見てみます。」とりあえず女性を診療してるので部屋にはジューレとラジーナだけが残った。ラジーナも治癒魔法はきちんと習得済みだ。数十分すると出てきた。
「ガンみたいでした。回復魔法で治癒はできたのであとは静養すれば回復するでしょう。」アトラが尋ねる。「親子はどうなさるおつもりで?」「とりあえずお金がない以上はここで働いてもらって、給金を出してメドが立つのであれば解放も考えている。」
とりあえずはメイドさんに住み込みで働いてもらうことにする。
まぁ馬鹿でかい豪邸だ。住む部屋なら山ほどある。本当にジューレの両親なんでこんなの建てたんだ。一応子供の面倒は働いている間は他のメイドさんに見てもらうことにする。ここのメイドさんは基本的に既婚でかつ子持ちだ。前回も述べた通り協会が斡旋してくれるので選ばなくてもほぼ結ばれる。なので経験豊富な方たちが見てくれるほうがあそこにいるよりも良いと判断した理由だった。するとリーナが部屋から出てきた。「大丈夫だった?」
「ああ、問題ない。」「そう、よかっ、、」なんとリーナが前のめりに倒れてしまった。
「大丈夫か?熱が出てるぞ。」「心配しないで」「そんなわけにはいかない。ジューレ、このあとリーナに付きっきりで見てやってくれないか?あと、メイドさん達は熱が出たときの食事の用意をお願いします。」屋敷の奥様が倒れたことで大騒動になった。
すると、泣き声が聞こえてきた。連れてきた赤ちゃんだ。
どうしようと思っているとメイドさんの一人が「とりあえずおっぱいをあげます。今家で生後8か月の娘がいるので出ます。」と言ったのでお願いした。さて、こうなると男は無力だな。
とりあえず魔法を自作してみる。今最も必要なのは亜人達の行方だ。つまり、地図魔法と分析を合わせたレーダー魔法があればかなり事件の解決に繋がるだろう。そうなると記憶魔法から作った地図魔法はともかく、メカニズムを解明していない分析は組み合わせることができない。だから分析の解明だ。
そもそもなぜステータス情報を読み解くことができるのか。
そもそもその数値の示す値はなんなのか。これがわかれば分析は解ける。しかし後半はすでに序盤で解明しており、レベルは魔力の器の数値で、ステータスはそのレベルにおける魔力が人間の体力、攻撃、防御、素早さ、魔力強度に与える影響を表している。
では分析(鑑定)はどうしてその数値を読み解くことができるのか。つまり、レベルを読み取ってかつ魔力の質や適正を加味することでステータスを概算していると考えられる。ここで必要なのは亜人かどうかの判定である。つまり、人間かそうでないかの部分を見分けることができる程度で良い。人間と亜人種、ドラゴンや魔族では魔力の取る形がまったく異なる。これを魔力紋と言う。この魔力紋を使ってジーラ内にいる亜人の場所を特定すれば良いのだ。ただ、問題はおそらく今やったところで建物に魔力遮蔽が施されていればわからないと言うことだ。取り引きする彼らも違法なのは十分承知だ。だからなるべくばれないように遮蔽した建物内で取り引きを行うだろう。逆に通常の民家や店舗はする必要がない。遮蔽された建物を探せば自ずと答えは見えてくる。
レーダー魔法を自作したが案の定ほとんど反応はない。
遮蔽する理由はこんな規格外なレーダー魔法対策ではなく、探知魔法を避けるためだ。探知魔法では遮蔽されているかまでは判断できないので、捜査から逃れることができる。だが俺の分析の前には無意味だ。魔力の流れがわかるから遮蔽されてるなんて一発でバレる。リーナはなんとか落ち着いたようで、ジューレが大丈夫そうですよと声をかけてくれたのでこちらはほっとした。
リーナです。熱を出して倒れたことで賢者様を含む皆さんを心配させてしまいました。おそらく昨日頑張り過ぎたのでしょうとジューレから言われました。確かに妊婦なのにおもいっきり走ってましたしね、私。「護衛って言っても今のあなたは双子のお母さんなのです。賢者様には無茶するなって言うのに自分では無茶するんですね。」そう言われても、賢者様を一人にしておけないんですよ。あの人本当今なら自分で何でもやってしまいそうですから。「で、例のお母さんはどうでした?」「そうですね、健康に影響はあまりなさそうなので、2、3日したらメイドさんから指導を受けて新しいメイドとしてここで働き始めると思います。」
孝二さんにお母さんが恋をしてしまうかもしれませんが、おそらく息子がいるのでそんな暇はないはず。「まぁ再婚相手はおいおい先輩たちから紹介されると思うのでその心配は薄いですね」
「まぁここの暮らしに馴れてもらいましょう、そのあとの話をするのはやぶ蛇ですね。」
とりあえず翌日は遮蔽された建物探しからだ。
レーダー魔法を人間に切り替える。そして地図魔法と合わせる。
地図魔法は魔力ではなく書物内のデータを呼び出しているに過ぎないので、遮蔽がある建物だろうが普通に映る。すると建物はあるのに人間がいない場所が見つかった。空き家だとすれば外れだが王都ジーラに空き家はほとんどない。基本的に王都は人気でまず住宅が余っているなんてほぼない。所有者が亡くなってもほぼすぐに埋まる。だからお目当ての建物の可能性が高い。
行ってみるといかにも闇な香りがする建物だった。
間違いない、ここが亜人取り引きの現場だ。
「ラジーナ、ニュート。ガサ入れだ。まず違法商人達を捕まえる。」そう言って俺達は建物に突入した。
入ると明らかに悪そうな連中が用心棒を使って奥に入らせないようにしていた。やっぱりこいつらをなんとかしないと亜人達の保護は無理だ。
さすがにこの手の展開はすでに予想していた。リーナが暗殺者を捕らえた拘束魔法は俺も使える。でも、さらに強くしてある。
「シャドウバインド!」闇系の拘束魔法だ。暗い場所では影が大量にあるので使いたい放題。ラジーナとニュートが意識を刈り取った。リーナ経由ですでに騎士団に連絡してあったので、すぐに連行されていく。テレパシー便利すぎ。
奥にいた亜人の奴隷を全員救出完了した。まず事情を聞く。とりあえず事情を聞かないと国に返すのが正解とは限らないからだ。で、亜人達の証言をまとめると、、
国で最近大飢饉が起きたことで食べ物が争奪戦になった。生きていくためには金が当然必要だ。だから、違法とわかっていても自分の身体を売ったり、口減らしのために売らざるを得なかった者も多いことがわかった。奴隷なら最低限の生活は保証されるという側面もあるからだ。その数50人。エルフや獣人もいる。
これは正直厳しいな。亜人の国に返したところで食料が確保できないのでは意味がないし、この50人だけ救っても意味はない。国単位で救う必要がある。幸い褒賞金、特許料金で物凄い金がうちにはある。だから助けられないわけではない。だが、問題は大量の食糧をどう運ぶかだ。輸送手段としてラジーナがいるが便利な収納スキルはないのでどうするか。もう自作するしかない。
そう彼はラノベではお馴染みのスキルアイテムボックスを自作することにしたのだ。ただ、容量に限界はあるので原理を伝えてリーナとニュート、ラジーナにも運んでもらうことになるだろう。
まず、王様に事情を説明する。ベータス、アトワース国両方だ。そして、資金は捻出するので備蓄食糧を出して欲しいと頼んだのだ。
アイテムボックスは唐突に出てくることが多いスキルで原理の謎なまま、がほとんどだ。突如として異空間が出現して物を収納する。でもすでに異空間を通す魔法は存在している。そう、召喚魔法だ。本当にこの魔法は何度も作中登場することになる。
つまり、この異空間をとどめて収納できるようにすればいい。ただ召喚魔法は召喚することが目的なので異空間にアクセスできるようには改良はできない。
アイテムボックスは時間が止まっている非常に便利な空間として扱われている。でもなぜ時間が止まっているのか、考えられた作品もほとんど存在しない。
でも、とある概念を導入するとアイテムボックスの説明も、時間が止まる理由まで説明できる。それが複素数、複素空間である。
虚数と言う数を知っているだろうか。具体的には
x^2=-1を満たす解xのことを指す。そして、そのxは
x=±iとして定義され、このiを虚数と言う。
でこのiと実数(虚数を含まない項)が混ざっているのものを複素数と呼ぶのだ。で、この複素数は普通の数字がプラスとマイナスの横軸方向しか存在しないのに対して、複素数はiを縦軸とした2次元の空間を作る。これが複素空間である。
つまり普通の空間が普通の数と考えるのであればアイテムボックスはこの複素空間に対応しているのだ。で、時間軸は一次元で縦軸は存在しない。そんなものに虚数をかけたとしても0になるはず。つまり時間が止まっているのは虚数時間の概念が存在しないからである。
つまりアイテムボックスとはよくわからないが存在している複素空間にアクセスしてその中に物を入れられるスキルなのだ。
少なくとも概念さえ理解すれば発動するはずだ。
「アイテムボックス」空間に穴が空いた。成功のようだ。
聞いたみんなは頭を抱えていた。
「なんだ、虚数、複素数、複素空間って!」
数学の中でも高校数学の部類だからかなり難しい。マイナスの数とか√(ルート)でさえ知らないのだから当然だ。
とりあえず原理さえ教えればスキルのおかげでなんとか発動するラジーナはなんとかなるとして、リーナとニュートは数学を勉強してちゃんと原理を理解しなければいけない。ちなみに俺の記憶を移した魔道具は今現在3つある。リーナが持ってるもの、ニュートに渡したもの、学園の理事長であるリズさんに渡したものだ。特にリズさんに渡したものは学園の教育に大きく影響しており、貴族女子の憧れということでどんどん注目が集まっている。
来年にもなればおそらく入学希望が殺到するだろうとリズさんがこぼしていた。ちなみにフェイム王も欲しがったが勝手に公表されても困るのでやめている。
とりあえず亜人の国は今も餓えていて、すでに餓死者が出ている。このまま放置すればさらに餓死者が出かねない。
転移とアイテムボックスを使って何回も食糧を置いて移動するのを繰り返す。政府が配給をすると公表したので広場には多くの人達が集まっていた。とりあえず数ヶ月分の食糧を送ることに成功した。この作業には数日を要した。その間にリーナ達も参加してなんとかしたのである。この間に麦や米、いもなどの災害に強い植物を植えて、自給率も上げて、交易を再開させることで食糧不足にならないようにするのだ。亜人の国は工芸、魔道具開発に独自技術を持っていることが判明したので交易品を作るように政府と交渉する。亜人国政府としても賢者の自費でここまでの国家規模の食糧を賄ってくれた手前、断れるはずもなかった。ちなみに保護した50人も食糧問題をなんとかしてるのでちゃんと亜人の国に帰国させている。このとき奴隷契約を解放魔法で解除している。ちなみに植物に関しても科学肥料がアンモニアから作れるので、火を発動させずにアンモニアの生成に特化させれば肥料の大量生産ができ、(詳しくは火属性魔法のメカニズム参照)大幅な食料自給率の改善が期待できた。
こうして、とりあえずは一旦民が餓えずに住めるようになった。
前世技術の井戸や衛生環境の改善は勇者がすでに行っていたため人間側の国がなんとかしてくれるらしい。
こうして、俺達は亜人の民を救ったとしてまた表彰されることになったのだ。もちろん、亜人の国で。
「賢者殿、我らの民、国を助けてくださり本当に感謝する。我々が勇者の知識を拒んだせいで多くの国民を飢餓に晒し命を奪ったことは反省しなければならない。それでも賢者殿は関係なく我々を助けてくれた。公爵であり様々な特許を持って莫大な財産を持ちながらそれのほぼ全ての財産を我々を助けるために使ってくださったことに本当に感謝している。そこで賢者殿には感謝の印として我が娘ルーシャ姫を嫁がせることにする。金銭は用意できず、このような形でしか感謝を表現できないことを深くお詫びする。」
またかよ。表彰か使者が来る度に嫁さんが一人増えてるんだが。
確かに今のこの国はとてもじゃないがお金に期待できない。その中で彼らの中の最大限の感謝の形が女王の娘の嫁入りだったのだ。これはもう諦めるしかない。ラジーナのときもそうだが受け取らない選択肢なんて存在しないのだから。拒否=感謝を受け取れないってことだし。現在ハーレムになっているが本当に俺が嫁になって欲しいと思ったのはリーナだけだ。ラジーナも現在こそ愛情があるが仕方ない気持ちも当時は多分にあった。ルーシャ姫もそうなれたらいいなと思う。
とりあえずルーシャ姫と初対面することに。
ルーシャです。はじめまして。
国をお救いになった救世主様、改め賢者役目孝二様の元に私が嫁ぐことになりました。本当に素晴らしい活躍をされたのでそんな英雄様の元に嫁ぐことができるのは私個人としても大変光栄なことです。賢者様にはすでに二人の奥様がいらっしゃるそうですが、英雄色を好むとも言いますし、問題ありません。
「はじめまして、ルーシャです。あなたの妻になるものです。」
「はじめまして。賢者って言われてるけど孝二って呼んで欲しいです。みんな僕のこと賢者呼びするし奥さんにはそう呼んで欲しいんです。」「わかりました、孝二さん。」
「ところで、王様には他にご子息はいらっしゃらないんですか?」「いません。エルフは本当に子供ができにくい種族なんです。」その理由を説明してもらった。
まず、ドラゴン同様長命なので月経の周期が長いこと、そしてエルフのオスは機能不全ではないにしても性欲が非常に弱く、エルフ同士の夫婦は本当に子供が生まれにくいのだそうだ。そのためエルフ女性は獣人族の男と結婚することがほとんど(ちなみに男女逆パターンも多い。)で国王夫妻もそうなっているらしい。基本的にこの国ではエルフのほうが賢いので女性のほうが権力が高く、女王がほとんどなのだそうだ。
国交が回復したことで人間族との結婚も増えるだろうな。
さて、問題は解決したがまた新たな問題が。
「屋敷のお金がなくて今ある食糧だと1日ぶんしかありません」
まぁそうだな。白金貨何百枚とか超がつくレベルの大金持ちだったけど、今本当にわずかな金額しか手元に残っていない。国家単位の事業を無理やりやったら当然と言えば当然なのだが。
なぜ個人でやる羽目になったかと言えば、亜人達の自業自得という意見が蔓延しかねなかったからである。亜人達に大事な血税を使おうとすれば、勇者がいる間に鎖国してた彼らの責任という理由で通らない可能性が高い。だから大量に販売するときに少しでも金額を下げたりしてもらってようやくなんとかなったのだ。
「フェイム王にお願いして当面はお金をお願いしよう。」という話になった。もちろんフェイム王も完全に予想しており、
「まぁ、国を救って賢者殿が飢え死にされても困るからな」
という理由で当面はお金を借りることになったのだ。
しかし、借金は当然返さなくてはいけない。
そこで一旦旅は中断して魔道具をたくさん作ってお金を稼いで返す作戦に出た。まず取り組んだのが映写機の改良だ。今のこの異世界の映画は1940年台辺りの古い映画と同レベルだ。これを改良した光魔法を取り入れた映写機を作って映画館をたくさん作ってもらうことにした。また映画自体も俺達で撮って稼ぐことに。幸い役者というか動かせる人数も多く、記憶を見ることでどんな映画が人気があるかがみんなが理解したので、撮影は順調に進んだ。できたのは素人レベルだが、前の映画のクオリティもそこまで高くなく、新しいジャンルの作品が多かったため大ヒットすることになり、映画館の投資ぶん含めて取り返せるようになった。
そして次に作ったのがマジックバッグだ。アイテムボックスの簡易版のようなやつだ。これは直でアイテムボックスの魔法陣は形成できなかった。なぜなら複素数とかいう難しいものを使っているからであり、再現は無理と判断。そこで使われたのが闇魔法だ。真空にしてさらに圧力をかけてかさを小さくし、取り出すときにもとに戻す機構を開発したのだ。闇魔法と圧力魔法の合わせ技だった。これが大ヒットなんて生ぬるいレベルで爆発的に売れた。銀貨2枚で売り出した結果5万個も売れてあっという間に借金を完済することに貢献した。
3つめが図書館のデータベース用魔道具の設置だ。これはかつて個人で使っていたものを公共施設に置いて、使用料を取る形にしたのだ。これもまたわざわざ本を借りて情報を探す手間が省けると評判になり大ヒット。正直あまりの人気ぶりに閑散とするはずの図書館でさえお目当ての本を見つけて借りる場所になっていた。銅貨3枚という庶民価格が大ヒットの要因だ。まぁ一応今出てきた貨幣のは100枚ずつで単位があがっていく。(白金←金←銀←銅)とりあえずこの間に4か月以上も経過してしまった。
借金は無事返せたので問題ない、、と思いきや。
「私、実は妊娠してました。」とラジーナが突然爆弾をぶっ込んできたのだ、、
ここからは何が起きていたのかを振り返る。
まず、ルーシャ姫を屋敷に迎え入れた。お金が少なくなっておもてなしが厳しいかもと伝えると、
「身銭を切って助けてくださったのに贅沢なんて言えませんよ。むしろそこまでしてもお金が残るこの家がすごいです。」
まぁ王様から借金したんだけどね、厳しすぎて。
まぁ結婚初夜なので、当然した。
このあと彼女は第一夫人であるリーナの元に向かった。色々家のことを教えてもらうためだ。そこで彼女は衝撃を受ける。
なんとエルフ最大の問題を解消できる方法があることにだ。エルフの人口は200名にも満たない。獣人族とドワーフがそれぞれ1500人程度いるのにだ。受精の魔法はそれを大きく変える方法だった。ちなみにこの魔法を使えば常に妊娠できるほど万能ではない。人間ならともかく、ドラゴンやエルフは期間が長い。着床するためには子宮内膜がきちんと張っている必要がある。着床できずに子宮外に流れてしまったら何の意味もないからだ。
月経までの期間が長いエルフ達が人口を増やす方法を賢者に嫁いだルーシャ姫が思いついた、その噂が亜人の国に広がるのにそう時間はかからなかった。食糧問題が尾を引いたことでだいぶ人口が減ってしまったのでエルフの繁殖問題は予想以上に深刻な問題だった。受精の魔法の方法がエルフ女性に広がり、彼女の母親である女王が懐妊したことでより説得力を持つ方法となったのだ。
人間の男なら怖気づくかもしれないが、種族が滅びるかもしれないとなれば話は別だ。獣人族やドワーフの配偶者も積極的にエルフの滅亡を食い止めるべく協力した。これにより超がつくほどのベビーブームが亜人の国に到来することになり、賢者を再び悩ませることになるのだが、それは後のお話。
で、すごい話が逸れたので戻そう。で、そこでルーシャ姫はこう言われる。「ラジーナが妊娠するまで子供は待って欲しい」と。
ドラゴンの妊娠期間は2年だ。彼女はしかし月経期間的に今ならほぼいつでも妊娠することが可能だ。でも旅には必要、ってあれ今は旅は中断してる?リーナは話をルーシャにしていて今こそがラジーナの妊娠すべきタイミングと踏んだのだ。姫として嫁いできたルーシャになるべく早くお世継ぎができないと色々賢者としても問題がある。
でも第2夫人が第3夫人に先を越されるのはラジーナが傷付く。
だから、このタイミングで彼女に妊娠してもらうことになった。
(先に妊娠したとしても期間の関係でルーシャ姫に確実に子供の年齢的には先を越されるのだが、それはそれ。)
次の昼間、ラジーナはリーナに呼び出された。
「ラジーナ、妊娠してもいいわよ、というか今日作っていい。」
「本当ですか!やった、待ってたんです。でもどうしてなんです?」「旅はしばらく無理そうでしょ?孝二は今お金稼ぎしないといけないんだし。」「そうですね、、あ、だからそのうちにということですか。」「そういうこと。転移である程度は孝二も移動できるし、飛ばなくていい今を逃すとだいぶ先になっちゃうわ。」「なるほどです。」メスドラゴンが獲物を狙う目になった。孝二はラジーナに求められるままに夜伽をすることになる。
まだ旅もあるから彼女はしばらく避妊しっぱなしだと思って油断して男性版の避妊魔法をかけ忘れたのだ。すでに術中にはまっていると知らずに、、ただラジーナはとある方法を持っていたので孝二が避妊をしていたとしても大して結果は変わらなかった。
孝二は日々魔道具開発をしていて妻達と代わる代わる交わることになる。完全にハーレムライフを彼は満喫していた。正直地球にいるときは一人でいいと思っていた彼も素直に好感を持ってくれる3人の妻達に好感を返さざるを得なかったのだ。
ちなみに映画にはアトラ、ジューレ、ニュート、メイドさん達、妻達も出演した。特にラジーナはドラゴンに変身できて映画の特撮にぴったりだった。まぁそのシーンは前半のみ(変身できなくなったため)使われたのだが。ただ、部分的変身はできるので結構使い道はあったようだ。このとき、同時に結婚したリーゼ、リーラ姉妹の妊娠が発覚している。受精魔法を持っていたので孝二達は全く驚いていなかったが。
マジックバッグの量産とデータベースの貸し出しが借金完済を達成する大きな原因になったが、他にも当然彼は魔道具を作っていた。地図魔法の魔道具だ。これは即効性が高い。しかし、問題があった。魔石がマジックバッグに使われて市場にほとんどなかったのだ。原理さえわかれば作れるだろうと高をくくっていた彼だったがすぐに足元を掬われることになる。
そう、魔力を高温、高密度に保ち続けながら石の形に収束させるのが超絶技巧だったのである。とある作品ではわりと簡単に作っていたが、上級魔法使いでもないと精度良く魔法を放出し続けることが大変だったのだ。孝二はスキルであらゆる魔法を使えるようになるものの、言ってしまえばそれだけである。そう、熟練度を上げるのが難しいのだ。あと単純に魔力制御の回数が足りてない。戦闘することをあまり念頭に入れていないからだ。
しかし、魔石を安定して作らなければ次の地図魔法の魔道具を売り出すことはできない。彼は練習と魔力制御の特訓を毎日行うようになった。妻達からめちゃくちゃ心配されながらも必死になって特訓を行って2か月。ようやく彼は安定して魔石を作れるようになった。で、ようやく前の時系列のラジーナ妊娠発覚に戻るのだ。彼が全く妊娠に気がつかなかったのはドラゴンの子供の成長がお腹の中でゆっくり成長するためもあるが、この特訓を行っていて妻にそんな事態が起きていたとは知らなかったのである。
で、妊娠4か月と聞かされた彼は、
「いつの間に僕は父親になっていたんだ、、でもありがとう。僕達の子供を授かることができたんだから。」と素直に喜んだ。飛べなくなるからダメだなんて無粋なことを言うほど彼は堕ちてはいない。すると、唯一妊娠していないルーシャ姫が、
「私達も子供を作りましょう。」というのだ。さすがに妊婦三人になるとまずいと言おうとした孝二だったが、その前にルーシャが「今、亜人の国ではリーナ様の受精の魔法を改良してエルフ用にしたものを私が作った魔法として広めています。母上もすでに妊娠しておられるので説得力はそれなりですが発信者の私が妊娠することで確実になります。だからお願いします。」と言われてダメと言えなくなってしまった。エルフ存続の危機であることは食糧危機を救ったときにすでに知っていたが、かなりひどいらしい。仕方なく俺は種馬になることにした。
2ヶ月後、亜人の国にルーシャ姫懐妊の知らせが届いた。
国を救った賢者と王の娘としてエルフ存続の危機を救おうとする姫様の子供ができたこともすごいのだが、双子だと言うことが国民を驚かせた。エルフの双子などまず出来ないとされてきたからだ。実はルーシャ姫はリーナを通じてリズさんから双子ができる改良魔法を教えてもらっていたのだ。このインパクトは凄まじく、エルフ達のベビーブームがさらに加速した要因となったのだ。そして、リズさんとマイナさん、リーナが臨月になった。
そんな身重な妻三人を抱えた俺に同じく身重な妻がいるエルバンド領から連絡が届く。記憶を失った女性達を覚えているだろうか。ゴブリンの母親にさせられていた5人の女性である。その女性達が無事に全員結婚することができたらしい。もちろん相手の男性には事情は知ってもらっている。二人はすでにお腹に赤ちゃんがいるらしい。もちろん、職業もつけるようになった。
エルバンド領の取り組みが良かったのもあったが、一番は記憶を失った女性達の頑張りである。0から始めたはずなのにすぐに記憶していき、数ヶ月後には通常生活が送れるほど全員が回復した。可哀想な女性と見合いが来ないのではとボールさんは警戒していたがそんなことはなく、普通に良い男性と巡り会うことができたのだ。
それともうひとつ厄介な案件が来た。こちらは言葉が一切通じない女性が森で保護されたと言うのだ。これはもしや、同じ日本人
なのではないだろうか?魔力がないのであれば納得はできるが魔力がなくても異世界言語翻訳だけは発動していた。なぜだろうか。とりあえずエルバンド領は転移ですぐ飛べるのでニュートだけ連れてやってくる。あ、ニュート連れてくるの初めてだった。
「俺はニュートだ。賢者の用心棒をしている。」相手は公爵貴族なんだからさすがに丁寧語使おうよ。
「すいませんね、で、その女性はどこにいますか?」
「ここに連れてきてます。」
そこには警戒心MAXの女性がいた。それはそうだ。もしあのとき王様との会話ができなかったら全く同じような状態になっていただろう。「とりあえず、大丈夫ですか?」
「日本語!良かった、話せる人がいて。」女性はとても安堵した表情になった。「はじめまして、私は佐々木満里奈って言います。よろしくお願いします。」「僕は役目孝二。この世界では賢者として召喚されて今も賢者様と呼ばれています。」
「すいません、よくわからないままこの森にいたんですが、ここは日本なんですか?外国人っぽい人ばかりの屋敷に案内させられたんですが。」とりあえず満里奈さんにこの世界の状況を説明する。ここは日本ではなく異世界であること。勇者が魔王軍を無力化してとりあえずは平和な異世界であること。一応亜人なども存在して魔法もある世界だと言うこと。そして勇者によってそこそこは発展した異世界であることだ。「へぇ、ライトノベルにあるような世界なんですね。でも、私に魔法なんて使えるんでしょうか?」残念だが今の彼女には無理だろう。一応、魔力を習得する方法も、現代知識のある彼女なら俺がメカニズムを解明したある程度の攻撃魔法を習得することは可能だろう。
「そのままでは無理ですが、ちゃんと方法はありますよ。」
とりあえず分析で見てみる。彼女のスキルは、、錬金術!?
佐々木満里奈と言います。なんかよくわからないまま気がついたら森にいて、魔物みたいな異形な生物が食べようと襲ってきました。でも近くにいた男性に倒されて救助されたんですが、全くもって言葉がわかりません。言葉がわからなくてもなんとなくで助けて安全な場所に避難させてくれそうなことはわかるのですが。
で、やってきたのは大きな屋敷でした。なんか主みたいな人出てきたんですけどこっちも全く言葉がわかりません。とりあえず誰かに道具で連絡を取っているようです。するとなんか一瞬で日本人らしき人とその従者がやってきました。よかった、話ができそうな人に連絡を取っていたんですね。でやってきたその人は日本人で賢者で魔法の研究をしているそうです。ここが異世界ってことも教えてくれました。「とりあえず、ここでは落ち着かないのでうちの屋敷に行きましょう。」まぁ、ここをよく知ってる日本人の言うことは聞いたほうが良さそうです。
とりあえず、彼女とみんなが会話できるようにしなきゃいけない。異世界言語翻訳をつけたところで魔力を持ってないので習得は彼女が魔力を身に付けてからじゃないと無理そうだ。
だからここはこのスキルを解明しよう。
異世界だろうが日本語だろうが英語だろうが、人間は何かしらの意図を持って言葉を発している。日本語のこの意味みたいな感覚は母国語では持たないだろうが、外国語を習うときにはI have a pen.とするだけでも頭では私はペンを持ってますと言う意図で発言するのだ。つまり、この意図の部分を読み取って相手に伝わるチャンネルのように相手が分かる言語を切り替えて発言するスキルが異世界言語翻訳なのだ。この意図を切り替えて発言するのにはおそらくほとんど魔力を消費しない。だから魔力0でも外部魔力だけで発動できるのだ。もちろん受け手側も同じ。相手の意図を読み取って、自分が分かる言語として翻訳される。
テレパシーが使えるリーナ、ラジーナは一瞬で習得できるだろう。意図を読み取るスキルなのだから。
で、屋敷に満里奈さんを連れてきた。
で、スキルの説明を家の全員に行う。今回ばかりは全員と会話できないと彼女が不安に感じるからだ。
予想通り、ラジーナとリーナは一瞬でできた。
ニュートとルーシャ、アトラ、ジューレとメイドさんは割りと早かった。問題は奴隷のメイドさんである。彼女は貧困の村で生まれて男に手を出されて妊娠した際にその男によって奴隷になったらしい。
なので学という学がなく、話し言葉でさえ怪しいのに書き言葉の理論で説明されても彼女には理解できなかった。一応、最低限の教育としてはメイド教育の際に叩き込まれているので話したり書いたりすることはできる。でも彼女は「頑張って覚えます。話せなくって不安になる気持ちは誰よりもわかってます。」と一生懸命に頑張ってくれた。そして3日でなんとかできるようにしてくれた。
「はじめまして、リーナです」「ラジーナです」「ニュートだ」「アトラと申します。ここの執事をしています」「ジューレです。」「ルーシャです。」とメイドさん達が挨拶する。満里奈さんが気になったのは一人だけ話せないメイドだった。
「あのメイドさんはどうして話せないんですか?」「これ、皆さんに急遽覚えてもらったスキルなんです。だから彼女はちょっと特殊なのであまり詮索は避けて頂くとありがたいです。」
「え?皆さんスキルで会話してるんですか?日本語で会話できてると思ってました。わかりました。」
とりあえずフェイム王に異世界人を保護した旨を伝える。
「錬金術か、、この世界では聞いたことのないスキルだ。とりあえず賢者の家で保護しておいてくれ。」まぁ彼女が錬金術が使えることとその真価がばれたら間違いなく貴族が囲いそうだしな。実際俺もそうしてるけどスキルがあるから囲っているわけじゃない。同じ日本人をワケわからない異世界人に任せるのが怖いからだ。「フェイム王。とりあえず彼女に魔力を与えてスキルを発現させてみます。」「そうしてくれ。魔法の研究がさらに進みそうなスキルだろうからな。」
満里奈です。賢者様の家に来て初めて家の皆さんの言ってる言葉がわかります!怖かったんです、ずっと言葉がわからない人と一緒に生活していくのが。で、賢者様の家に来て驚きました。屋敷がめちゃくちゃ大きい!地球のイメージする豪邸よりだいぶ広いです。そして賢者様には3人のお嫁さんがいることです。日本人だから一人だけにこだわる人だと思っていたのですが違いました。皆さん成り行きで結婚することになったそうで積極的にアプローチしてこうなったわけではないようです。で、その奥様達全員が妊娠していました。とくに第一夫人のリーナさんは双子で臨月だそうで本当お腹がパンパンでした。それだけでなく賢者様からでなく奥様達が自発的に妊娠するように仕向けたみたいですからもう日本の常識がここの屋敷では通用しませんね。そしてまだ驚いたのがリーナさんは人間ですが、ラジーナさんはドラゴン、ルーシャさんはエルフじゃないですか。もうライトノベルの異世界ものの世界に入ったんだなって実感しましたね。ジューレさん、アトラさんは付き合ってるカップルらしく暇さえあればイチャイチャしてました。ニュートさんはかっこいい感じの人ですが、なんか闇を感じるんですよね。別にそういうのは今はないって言ってましたけど、過去に何があったんでしょうか。
メイドさん達は一人を除いて普通です。詮索しないでと言われると余計気になるんですよね、、とそのとき赤ん坊の鳴き声が。
まだ異世界から来て一年ちょっとの賢者さんに生まれた子供はいません。すでに5人のパパになることが確定してるのもすごいですが。誰かなと思っているとその部屋にさっきのメイドさんが入っていきます。子持ちで住み込みってかなりわけありそうですね。これは聞けるのであれば事情が聞きたいですね。
賢者さんはすごい魔法の研究をして勇者様の偉業を引き継いだとか、魔力嵐なるとんでもない台風みたいなやつを消しただの、亜人の国の食糧難をたった一家族で解決したとか私にはわけのわからないレベルの偉業をしてました。この話しはリーナさんとお話をしてたときに出たものです。もう出産が近いので暇でしょうがないとおっしゃるので聞いてあげたのです。地球でも十分ノーベル賞取れますね、これ。
とりあえず賢者さん曰く、私にもスキルがあるらしいんですけど魔力を発現させないと使えないらしいので明日から草原エリアにニュートさんという護衛さん一人で行って欲しいそうです。
賢者様は魔道具や魔法開発で毎日忙しいみたいで、今回の私の件もリーナさんの実家のエルバンド家なる貴族の家から連絡が来たから行っただけらしいです。よかった、賢者さんの実家の森で。まぁ賢者様のときは護衛がリーナさんだったらしいですが今の奥様達は妊娠してますしね、、
翌日。私はニュートさんと一緒に馬車で草原エリアに向かいました。あのビュンと飛ぶ魔法は賢者様とリーナさん、ラジーナさんしか使えないらしいので、馬車移動です。
ニュートさんが言います。「俺が魔物を仕留めて調理するからまずいけど頑張って食べてくれ」なんというか、この人敬語が使えないんですかね。まぁ問題はなさそうですけど。というか私も料理は最低限できます。まぁ食べる必要があるなら食べましょう。まずくても。なんか兎の魔物が出てくるんですけど一瞬で仕留めてます。強いですね。
とりあえず2、3匹仕留めて料理します。唐揚げみたいですね。
食べてみました。やっぱりまずいというだけはあり苦味が強いです。少しずつ何か熱いものが身体の中を流れている感覚がします。「何か感じたか?」「少しずつですが。」
「ならもう少しだな。賢者さんが言うには少しずつ魔物の魔力を自分の器として慣らしていくだってさ。」なるほど、そういう作業なんですね、これ。何事もなく平然とバンバン魔物を倒しているのすごいですね。さらに食べてそれらしいものがようやくわかりました。ニュートさん曰く「これでようやくレベル1だって」
RPGって恵まれてたんですね。レベル0のこんな作業なんておんぶに抱っこですよ、これ。しかもくそまずい肉を食べるなんて拷問か何かですかね。やっと私もこれで魔法が使えますよ。
戻ってみるとリーナさんの容体が急変、すぐに出産に入るそうです。病院に着くと賢者さんも心配そうな顔してます。勇者さんが教育機関と共に真っ先に整備したらしいですけど、これは命を守ることなので正解ですね。隣には同じく奥さんのルーシャさんが励ましてました。「リーナは強いわ。必ずちゃんと産んで、あなたの元に帰ってくるわ。だから無事だけ祈ってあげて」
数時間経ち、赤子の泣き声が聞こえてきました。元気な男の子と女の子です。「良かった、本当に良かった、、」と涙を流してました。そりゃ大事な奥さんがちゃんと産んでくれて嬉しくないわけがありません。男の子の名前はケンジくん、女の子の名前はリマちゃんと名付けられました。これでお家がさらに賑やかになりそうです。
リーナが双子、ケンジとリマを産んでまもなく、リズさんとマイナさんも出産した。マイナさんの待望の長男はディートくん、リズさんは男の子の双子だった。それぞれマットくん、ライルくんと名付けられた。リーナにとっては年の離れた弟が二人、それも自分の産んだ双子と同い年という奇妙な関係になった。
とりあえずこの数日で色々と受け入れ準備をしてケンジとリマを連れたリーナが病院から戻ってきた。もちろん転移魔法だ。
非常に二人とも食いしん坊でおっぱいをたくさん飲んでる。
元気に育ってくれれば、親としてはそれでいい。
子供が増えたのでメイドさんを増員する。借金もないし、特許料もまた入ってきたのでお金の心配は今のところないからだ。
ボールです。妻が双子を妊娠したと聞いたときは浮気かと一時は離婚すら考えましたが、妻が産んだ子供たちは間違いなく私の特徴を持っていたので安心しました。妻の行動にはさすがに驚きましたし怖くもなりましたが、赤子が生まれたらそんなことは関係ありません。マイナさんも男の子が産まれてエルバンド家は安泰になりましたし、リーナは双子を出産、その妹二人も妊娠中と私の家族がたくさん増えることになりました。領主として親として祖父としてこれから頑張ることが山ほどあり50歳ですがまだまだ現役で頑張ります。
とりあえず赤ちゃんを見せるべく、あちらの赤ちゃんに会いにいくべく、エルバンド領に向かうことに。満里奈さんは魔力を習得して言語翻訳を覚えてもらったのでみんなの言葉がわかるようになった。しかしもう1つのスキルであるMP消費大幅減少をもってしても、彼女のスキル錬金術は発動しなかった。ちなみに消費減少は固有スキルっぽく、これは習得は無理だった。まぁ威力そのまま魔力消費を抑えるのは理屈だけでは無理そうだしな。
会いにいくとお祖父さんのボールさんは孫二人を見てデレデレだった。わからんでもない。俺もそうなった。もう1人の孫ディートくんは本当クロードさんそっくりだ。リットちゃんも弟ができて喜んでいる。そしてリーナの弟達だ。本当にお祖父さんそっくりだ。男の子ってここまで父親に似るかってレベルでみんな似ている。まぁケンジもだいぶ俺に似てるってみんなから言われたけど。「赤ちゃん本当にかわいいですね」とルーシャが入ってきた。そう言えばここ初めてだったな。「ルーシャ、挨拶を。」
「ルーシャと申します。賢者様の三人めの妻です。そして双子を妊娠してます。はじめて生で会いますね、リズ様。」
あ、双子妊娠ってリズさんから教わったのか。そう言えばエルフはまず双子にならないって言ってたしな。
「ルーシャさん、はじめまして。満里奈さんもはじめまして、領主の妻で学園の学園長をしていますリズと言います。私も双子を出産しました。」
いや、前回来たときはわからなかったけどすごい状態ですね、エルバンド家。なんでも長男の嫁さん、奥様、娘三人が全員妊娠してるって言うじゃないですか。どうなれば一体こんな一家族に赤ちゃんが5人も集まるような事態になるんですかねぇ、、
しかもなにやらルーシャさんの双子妊娠にはリズさんというこれまた双子を出産した人が関わってるようです。うわぁ、家族関係ぐちゃぐちゃですよ、こんなの、、さすがに秘密が気になりすぎたので、家に帰ったあとリーナさんに聞きにいきました。すると受精の魔法なる魔法があって人間なら行為中に打てば百発百中になるらしいです。そりゃこうなりますね。でも、ボールさんっていうお祖父さんもクロードさんも優しそうな方であんまり奥さんに手を出す、、いや、待てよ?こんな話賢者様で聞いたような、、自発的に出すように仕向ける?気になったので聞いたら完全にホラーでした。怖すぎます、、異世界女性ちょっと怖すぎて現代人の女である私の存在がちょっと浮いてる感じがします。
私はこの異世界から帰れるかどうかはわからないんですけど、さすがにこの異世界の超がつくほどの肉食系女性にはなりたくないです。というかこの話だいぶお腹一杯ですよ、もう。
翌日。賢者様や奥様達は相変わらず忙しいようです。ルーシャさんは時々魔道具で連絡を取り合っています。ラジーナさんは賢者様と作業中のようです。なのでニュートさんを借りて馬車で草原エリアに。「軽減があるならとりあえず、魔法を覚えていこう、満里奈さん。」ちょっとはマシかな。まぁいいや。なんというか異世界って感じがすごいです。魔法が使えるんですから。
一方、満里奈さんが魔法を覚えている間にラジーナと一緒に錬金術についての考察をしていた。
錬金術は鉄を金や銀に変えたりする技術だ。古くの錬金術は後に新しく科学とされていくことになる。で、この技術の肝は核融合だ。錬金術は核融合によって元素番号を変えて重金属等を生み出す技術だ。ただ、普通にやってはまず無理だ。例え魔法であったとしても。要求する魔力量があまりにも大きすぎるからだ。
エネルギーが莫大という縛りは魔法なら無視できるだろと思われがちだが、魔力は正体こそ不明ではあるがれっきとしたエネルギーの一種だ。だからその縛りは無視することはできない。
太陽において核融合反応が起きてもエネルギーがプラスになる最大の要因は超高圧、超高温だからである。
つまりまだこっちの状況を作り出す魔力のほうがまだ安く済むはずだ。これのヒントはなんと前作った魔石の生成過程だ。
そう、魔石は魔力を高圧、高温にして圧縮していくことで生成する。必死に練習した甲斐があったってことだ。つまり、魔力を魔石を作る前段階の状態で維持。でこの中に材料を入れる。そしてそこに魔力で圧力をかけていく。材料があるためどこまで高温、高圧にしようが魔石になってしまうことはない。
これで圧力をかけていけば元素が変わっていく。窒素なりを突入させていけば自ずと変わり、材料が金になるまで変える。これが錬金術の現実的な魔法における金属の変質方法である。
ラジーナと一緒にこの「錬金術」を試してみる。
一応、材料として拳大のくず鉄を用意しておいた。このくず鉄をラジーナに入れてもらい、俺が魔力でひたすら圧力をかける。
きつすぎるな、これ。こっちの魔力が切れそうになるし、その魔力の高圧状態を保つのも辛い。マナポーションを飲ませてもらって、一時間ぐらいしてようやく小石程度の大きさの金ができた。
まじで前世の実験を行うレベルで辛いわ、これ、、
おそらくこの方法は彼女のスキル「錬金術」とは明らかに違う。
でもスキルなしの錬金術はこうやって魔法で地道にやっていたのだ。これはあれだな、記録すべきだな。
記憶魔法の魔道具の応用で記録魔法の魔道具も作った。映像や動画を残すカメラのようなものだ。もう一回しんどい思いをして記録する羽目になった。本当に効率悪いのによくこんなことやるよ、と改めて思ったのだった。錬金術、全然万能じゃなかった。
創作物のあれってだいぶ美化されてることを実感した。
その記録映像を見たリーナは「さすがにこれは彼女の錬金術とは違いますね。間違いなく。」ルーシャは「でも使い道のない金属が金に変わるのは良いのでは?」ラジーナが反論した。「マナポーションをあれの度に4、5本も飲んでできるのがちっちゃい金じゃ割に合わないわ。」金額的にも確実にマイナスであり、よくこれを昔の人は研究しようと思ったなと俺は思った。ちなみに地球だと核融合一回ごとに核爆発レベルのエネルギーが必要でもっと意味がわからないレベルで損をする。
なんか帰ってきたら賢者様が私のスキルを検証してくれたようです。どうやら私のものとは違うようでしたが、賢者様が言いたいことは「損しかしないからこの錬金術は封印安定」らしいです。
ちなみに私のレベルでは鉄から変化することはなかったです。魔力が全然足りないようですね。あ、あのメイドさんとようやくお話ができました。どうやら奴隷として売られていたところを賢者さんが買ったようです。なにやら子持ちで病気持ちだったらしいですからね、それは心配にもなりますね。で、メイドさんの名前はフーシュさん。フーシュさんの村は本当貧しいみたいで文字もろくに教えられないような環境だったようです。国をなんとかしたんだから賢者様がなんとかすべきではないでしょうか?
記録魔法を作ったのでせっかくなのでレーダー魔法同様の魔法、つまり防犯カメラ魔法を作ることに。原理がわかっているので簡単にできた。これで色々便利になるな。
で、満里奈さんから奴隷メイドのフーシュさんの村を調査すべきって意見が出た。まぁそれはいいんだけどラジーナは妊娠中で飛べない、、って飛行魔法を作ればいいのか。
流体力学とかベルヌーイの定理が必要になるのかな?ちなみにベルヌーイの定理とは以下の式である。
1/2V^2+P/ρ=定常 (Vは速さ、Pは運動量、ρは密度)
人間が空を飛ぶって非常に難しい。向いている形状をしていないからだ。鳥なんかを見てもらうとわかりやすい。あれは飛ぶことに特化している。筋肉が翼になって軽量などわかりやすい工夫がある。でも魔法は圧力操作、もとい重力操作が可能だ。グライダースーツ的なものを身を包んであげれば高度を上げるのは魔法で十分可能なので(一度ジャンプして落ちる圧力を軽減、逆に浮力となる力を増やすことでなんとかなる。)これをイメージする。グライダースーツのようなものは付与に風魔法をつけて地球のイメージを持って作った。スーツは外注だが付与は俺自身が行った。で、いざ本番。グライダースーツに身を包んでジャンプ。圧力魔法を使って徐々に上昇。そしてある程度上がったらスーツの風魔法で推進力を得て進む。これでなんとか飛行できた。
翼持ってない人間が飛ぶのはだいぶ大変だな。でもこのスーツもまた売れそうではある。飛行機じゃなくて飛行船でも充分移動は楽になりそうだな。空港の整備と機体を作る必要はあるけど。勇者はそこまで手が回らなかったのかノータッチだったからな。
ちなみに創作物であるほうきで空を飛ぶのは圧力魔法を使って周辺の気体を操作して飛んでいると思われる。本題に戻ろう。
フーシュさんの村は本当に寂れていた。ちなみに地図によるとベータスの北部の村だった。あ、スーツはめんどくさいのでそのままではあるが光学迷彩魔法を施してある。これは人間が飛ぶと色々とめんどくさい制約があるから迷彩で見えなくするのだ。
「誰かいませんか?」「珍しい、お客さんですか?」「そうですね。」「村長さんはいますか?」「あの大きな家にいますよ」
どうやら大活躍している賢者本人だとは知らないようである。
「村長さんのお宅ですか?」「そうですが。」「この村ってかなり寂れてるんですが、どうしてなんですか?」
すると話してくれた。王都に向かう人が多く、ここはなかなか発展しないこと。周辺の発展が優先されること。ここは農作物が育ちにくい環境で住みにくいこと。若い夫婦がいなくて子供がどんどんいなくなっていること辺りが理由のようだ。
広い土地自体はあるから、なにかできないか、、あ、さっきの空港だ。空港ができれば便利だから人は集まる。であとは住宅を建てていければベッドタウンになる。これはおそらくアトワースでも同じ現象が起きてるからそうやって空港を建てれば国を簡単に行き来できるようになる。リーナ達にテレパシーでアイデアを説明した。「画期的じゃないですか」「素晴らしいですね」まぁ、今の世界に空港なんてものがないから辺境で過疎化が進んでいるのだ。まあ地球では建てすぎてあんまり効果をなくしたりしてるが、過疎化対策は大事な考えだ。あと、亜人の国にも作ればかなりの収入になるはずだ。
飛行船は前世というか地球知識で作ればいい。基本的に浮上には大気より軽い気体、ヘリウムを使えばいい。気体中には十分な量がないので、地中を掘って集める必要がある。探知+分析魔法が必要だな。あとの機体は先ほどの流体力学を意識した流線形を意識して作れば良い。とりあえず機体はそうだ。工芸は亜人の国の得意分野だ。これで機体を作って運行すれば大儲けできる。亜人の国は今お金が非常に重要だからな。とりあえず転移が使えるし、女王に会いにいこう。
女王に会うとゆったりした服装をしていた。ルーシャのいう通り、妊娠しているらしい。「まず我が娘との間に子供ができたことは本当に感謝している。それとエルフ達に知識を伝えてくれたのだろう?私ももう身籠ることはできないと思っていたので本当に感謝している。で、用件は何であるか?」
飛行船計画とそれを造る職人を探していることを伝える。
「なら、ドワーフ達に頼むといい。設計図と言うかどういうものを作ればいいかさえ聞けばあとは彼らがやってくれるだろう。」
とりあえずドワーフの工房を探す。王城のすぐ近くにあった。
「こういうものを作ってほしい」俺は記憶の魔道具を使い飛行船のフォルム、内部の気体、大まかな構造を説明する。「とは言え、ここでは小さすぎてそんなでっかいもん作れんぞ」確かに。
じゃあ工場を建てるところからのスタートか。フーシュさんの村の建て直し、どんどん話が大きくなってるぞ。まぁ一時的ならともかく常時活気をってなるとこの規模になるのは仕方ない。
工場を建設するのも別のドワーフにお願いし、資金はこちら持ちでお願いする。一旦帰るか、もう夕方だし。
家に帰るとケンジとリマがリーナのおっぱいを吸っていた。
「もうメイドさんが大変なんでパパもなるべく手伝って」とリーナからのお願いが。外にいる間は無理だな。だから家にいる間におむつを変えたり、お風呂に入れたりを手伝うことにしよう。
ラジーナとルーシャも「子育てって大変過ぎない?これから自分の子供の子育てもあるのに。」とこぼしていた。
フーシュさんに伝えると「すごいことになってますが、村のみんなをよろしくお願いします。」と言う言葉が帰ってきた。フーシュさんもリーナ同様赤ん坊の世話に追われている。ちなみに男の子の名前はシュンくんだそうだ。
で、肝心の満里奈さんに話を降ろうとするとニュート曰く魔力切れで寝てしまってるらしい。火属性魔法を覚えてホーンラビットに当てようとしてるが難しいらしい。俺も動く的に当てる練習をさんざんした上で臨んでいたんだから厳しいだろう。
とりあえず赤ん坊の世話をしながらなんとか就寝しようとする。赤ん坊は夜泣きもあるので近くに待機している。で、ベッドの隣にいるリーナが「手を出す気にはならない?」と聞いてきた。
「赤ん坊がいるし行為中に泣いたら雰囲気台無しだろ?」
「その通りね、お母さんもこうやって育ててくれたのね。今のお母さんも双子の世話で大変だろうけど。」
エルバンド家は今までの2倍にメイドを増やしたらしい。子供が4人もいるためだ。うちもシュンくん、ケンジ、リマで3人だ。
子供もいるし、父親として頑張らないとな。
翌日。工場はすぐには建たない。
だから俺は工場が建つまでの間浮上させるガスであるヘリウムの捜索プラス、アトワース、亜人の国での空港の建設予定地を見繕うことだ。アトワースはフェイム王に尋ねるとそれらしい土地はあっさり見つかった。王都フェマスから南西に50キロほど。フェマス自体がエルバンド領同様隣国ベータスに近いので、アトワースはかなり広いが南西部の開発は進んでいなかった。魔王国の国境に近い西部は交易で栄えているのだが、それ以外が追い付いていないのだ。そこにある村、ヴェーラ村が建設予定地になった。
農地はあっても肝心の人が交易がない分来なくて困っていたらしい。もちろんアトワース内では俺は英雄なので村人から大歓迎を受けることになったのは必然だろう。
で、亜人の国の候補地はルーシャがすでに調べていてくれてるので、俺は探知魔法と分析の組み合わせ、解析魔法の開発に入った。これで地中に気体があることを調べて、その気体にヘリウムがあるかを確認するのである。歴史的には天然ガスのついでに産出されていたが、有用だったので活用されたのだ。だから天然ガスであれば、ヘリウムもある可能性が高い。探知魔法の仕組みは基本的に鑑定とかの仕組みと同じだ。しかしとある物体を探すことに特化しているという点が異なる。金属探知機はコイルと交流電流を流す振動子と呼ばれる部品でできている。金属があると誘導磁場が発生して磁場の値が変化するのでそうやって金属を探す。探知は変化を探り、その変化を観測できるようにすることだ。探知魔法に使うのは魔力だ。魔力を流すことである物体、生物を探し当てる。だからそれを地面に流して、変化があるかを確認する。地中には液体があることも多いのでそれを避けるために分析も並列で起動して気体を探し当てるのだ。
とりあえず俺はヴェーラ村周辺で探してみる。すると、南部方向に向かって気体だまりができていることがわかった。で、その正体は天然ガス。ヘリウムも含まれていた。天然ガスはアンモニアもあるので魔法でちょっとずつ造るよりはかなりいい。それに化学製品に関しては異世界は全く進んでいない。だからこの天然ガスで化学の発展を進めるのだ。あまりにも工業的な分野は俺もズブの素人だが、大学の化学レベルなら当然知識はある。
それに俺はこういう分野をひたすら研究してたんだ。
魔法も大事だが、化学の発展もまた人類の発展には欠かせない。
そもそも魔力というベールがあるだけで今のやっていることは科学なのだ。つまり一貫して進めてきたことなのだ。
あることはわかった。だが、地下深く掘る技術と採掘した気体を保存する技術もないのだ。貨幣があるので鉱山があったりするだろうことは想像がつく。だが地下深く掘るというのはかなり大変だ。基本的に地球では杭打ち機や油圧ショベルカーなどを使う。
とりあえず穴を開ければいいのであれば爆発魔法を使って、そこから圧力魔法で杭を打ってパイプを通して気体を地下から採掘する。魔法であったとしてもなんでもかんでもすぐできるわけではない。異世界においては魔法も現実の現象だ。そこまで現実とかけはなれた挙動が取れるわけではない。錬金術でいやと言うほど理解させられたからな。とりあえず、爆発魔法を考えてみるか。爆発魔法は通常は周囲に放射状に広がる。だが今回使うべきは穴を掘るのに使うので指向性(一定方向のみ)を持たせたものだ。地球の爆発ではなく魔法なのであくまでもイメージの問題だから指向性を持たせることは十分可能と言える。で、問題の爆発部分だが、窒素をニトロ化化合物に変化させれば十分な威力が期待できる。ニトロ基自体はNO2であり、これを作ることは火属性魔法の応用でできる。ダイナマイトはニトログリセリンを安定化させてわすがな衝撃で起動して爆発させる爆弾だ。で、求めているのは指向性を持った爆発であり、穴を開けるには発破のほうがイメージとしては正しい。基本的に地面にひびを入れて指向性の爆発魔法で大きく削るのだ。ニトログリセリンは一部分が凍ることでさらに爆発性が増す。そして原料のグリセリンは油脂の加水分解反応で得られる。
で、方法はこんな感じ。まず、ある程度穴を掘ってからひびを開ける。そこに油脂を加水分解して得たグリセリンを流して反応させる。基本的に硝酸は魔法で作れるので、硫酸との混合液にして硝酸エステル反応をさせることでニトログリセリンを作る。そして冷凍魔法を一部使用して爆発しやすくして爆発魔法を穴の上から発動して大きく爆発させる。魔法でも原料を作ることができるが最初から作っておけばさらに爆発を大きくできる。
穴を掘る作業も圧力魔法でなんとかできる。人力だとしんどい部分は多いし、均等に掘れない。油脂は当然この世界にあるので取り寄せて反応させてグリセリンにする。硫酸は鉄の硫化物から原料の二酸化硫黄を反応で取り出して窒素酸化物を触媒にして作る。窒素が反応に入るなら魔法として簡単に使えるのがこの世界だ。で、爆発魔法の出番だ。大気中でニトロ化合物を作り爆発させる。爆発物と爆発魔法でかなりの衝撃がきた。もちろん予想はしているので物理障壁を張ってガードしている。
だいぶ掘れたようで、気体が産出できる地点まで20メートル程度まで来たようだ。あとはパイプを整備して圧力魔法で掘っていくだけだ。とりあえず気体を産出する準備は整った。圧力魔法は他の人でも少しずつやれば俺がいなくてもできる。ちなみにこれだけの事業なのでヴェーラ村の住民も手が空いている人が手伝ってくれている。論文のおかげで属性魔法に関してはかなり使える人が増えてるようだ。
次にヘリウムを産出して保管するプラントだ。天然ガスももちろんこの世界の発展に大きく貢献するだろうが今は飛行船の計画に必要なヘリウムの話だ。とりあえず蒸留なりで気体は分離できて、闇魔法で密閉された空間を真空にすることで産出された気体を保管するプラントが作れる。イメージとしては地球のガスを保管するプラントを自作する感じだ。蒸留を使わなくてもヘリウムと天然ガスは性質が大きく異なるので魔法で分離することはおそらくできる。まぁでっかい気体を入れる入れ物を作る必要があるがいくら亜人の国が作るのがうまいとは言っても距離が遠すぎるのでここはアトワース国内の建設業者に依頼することに。
圧力魔法の開発で彼らは住宅の建設を含めて大忙しだったが空港も含めてプラントを作ることを快諾してくれた。ちなみにフーシュさんの村に作る空港に関してはベータス国内の建設業者に依頼することになるだろう。
とりあえずこれで、、と思ったらやっぱり作業してて夕方になってしまった。一応のメドは立った。あとは少しずつ作業を進めていくだけだ。家では子ども達が待ってるしな。
魔族の強硬派。彼らが蒔いたスタンピートの種は事前に回避されてしまった。ダンジョン領域に入らず、溢れた魔物を冒険者が駆逐することでボーツマスの平穏は戻っていったのだ。
正直ダンジョンコアを遠隔で暴走させればすぐにスタンピート自体は起こすことができる。ただ、暴走には致命的すぎるデメリットが存在する。ダンジョンコアが二度と使えなくなるのと、一方向に押し寄せる創作物のようなものではなく、コアを中心に大量に魔物が出現する。ただ、暴走により数優先になってしまうため、簡単に複数体いようが倒せる魔物ばかりになってしまうのだ。(例で言うならゴブリン)
しかも彼らにとって誤算だったのは亜人の国と人間の国が賢者を通じて国交を回復してしまうことだった。亜人の国は工業的な技術力はあるが数が少ない。人間の国は数が多いが発展は遅く、実際問題開拓が進んでいない場所も多かったのだが、そこが手を組めば、賢者の研究と合わせて文明がさらに発展してしまうことが予想できた。彼らの主張は力で弱いものを支配しようというかつての魔王が取っていた明らかに前時代的な考え方だった。文明が進歩をすればするだけそんな化石のような意見が受け入れられる余地はどんどんなくなっていく。
で、賢者が空港を建設すれば技術の交換、人流ができる。人流ができればその周りがさらに発展するというループができる。
魔王国にも空港ができれば人間との交流ができ、いずれは反乱分子である我々は処分され淘汰される未来になる。それは予感していたのだ。だから、賢者を一刻も早く処分する必要がある。
しかし本人も相当な実力者であり、妻達も油断ならない賢者を処分するのはめちゃくちゃハードルが高い。賢者が空港建設で一人で作業してることが多い今しかチャンスはない。
「我々の切り札、「音無」で倒す他あるまい。」「我は音無、殺せぬ敵など皆無。必ずや仕留めてみせます。」音無は体内魔力を持たず、外部魔力で隠蔽と消音をして確実に獲物を仕留める魔王軍の暗殺のスペシャリストだ。しかし勇者にはそれすらかなわず捕らわれて今は強硬派として監視対象になっている。勇者なき今、返り咲きを果たして権力を掌握するにはまず賢者は逃せない敵だった。先に賢者ではなく権力者を倒せば、魔王国内の反対派と同盟を結んでいるアトワースの騎士団によって壊滅するのは目に見えていた。賢者を倒してそのニュースが広がっている間に国内での反対勢力を倒す。これであれば騎士団は国内しか目を向けられなくなり、魔王国を援護するのが遅れるだろうから短期決戦で勝負を挑めばまだ勝機は十分あると思われた。しかし彼らは賢者をいろんな意味でなめていた。とあるスキルがあることを知らなかったことが破滅の一歩になったのだ。
この日も孝二は採掘できるよう作業をしつつ、転移でドワーフ達の工場の建設具合を確認していた。工場は完成が近いらしい。圧力魔法のおかげで重機はほとんど必要ないためわりと建築に時間はかからない。
で、ドワーフ達の確認が終わり作業を再開しようと転移で戻ったときだった。突如として腹に剣が突き刺さった。口から血を吐いて倒れる。暗殺者は絶命するのを待ち、絶命を確認すると翼で飛んでいって消えた。このときとある2つの魔法が発動していたとも知らずに、、
意識を失う前にスキルの身代わりを発動した俺は、追跡魔法を暗殺者にかけた。地図魔法とマーキング魔法の組み合わせでどこにいるかがマップ上で一目瞭然になる。暗殺の危険というのはリーナ達からも常に指摘されていたため、必要になって作っていた。
身代わりスキルを発動して俺本体自体が生きてることは悟られなかったようだ。身体から細胞をもらって少ない魔力ながら回復魔法をかけて構成する肉体を少しずつ取り戻す。さすがに明らかに死亡した俺の死体が目の前にあるし、すぐに帰るのは肉体が完全に元に再生するまで難しい。おそらくニュートの場合は生きていたからわりと簡単に復活できたのだ。実体のない本体に細胞を少しずつ再生する作業を繰り返す。人体の細胞は60兆個もあるのだ。再生に2日間もかかってしまった。
賢者が空港建設作業中に暗殺される。
そのニュースはすぐに人間国と亜人の国に伝わり大騒動になった。当然、賢者の家にもその知らせはすぐに伝わった。
妻達は悲しみに暮れた。なぜ暗殺の危険があるにも関わらずついていかなかったのだろうとひどく後悔した。
しかし、家の中で唯一生存を確信している人物がいた。
ニュートである。彼は賢者を主人とする奴隷の契約をした。
隷属魔法は主人に○○をしてはいけないと言う主人の存在が絶対の契約をする。そのため主人がなくなれば命令は意味をなさなくなるため契約の証である隷属紋が消える。
しかし、彼の隷属紋は消えていなかった。彼が本体とは言え生存しているからだ。で、彼はあのときを思い出していた。そう、彼のスキルについて彼に語っていたときだ。そのとき頷いていたからおそらく身代わりの魔法を使ったのだ、と確信した。
妻達は深く悲しみながらも彼の葬儀に参列した。主賓として。
当然功績が大きすぎたため国葬として執り行われることになった彼の葬儀は大きく国中を悲しみに包み込んだ。実際に彼の遺体を見て本当に死んでしまったのだ、と大粒の涙を流す妻達。
満里奈もまた、同じ日本人が死んだこと、そして大変家でお世話になっていたので涙を流していた。そんな彼女にニュートはこう打ち明ける。「おそらくじゃなくてあいつは生きているぞ。」「え?確かに遺体はあそこにありますよね?」「俺もあのスキルを持ってるからな、理屈はわかるんだ。」
そんな様子を防犯カメラ魔法で見る孝二。嫁さん達を悲しませたことは謝らなければいけない。でも俺は生きている。火葬される前に俺の死体を回収して今の身体と一体化させる。すでに遺体には召喚術式を組み込んであり、いつでも回収することができる。発見までだいぶ時間かかってたから埋め込むこと自体は簡単だった。とりあえず葬儀が終わって運ばれるときに回収しよう。
遺体が消えるというニュースが当然流れるのだが後になかったことになった。
ニュートは生きていることが色んな理由からわかっていた。しかしそれを説明してかりそめの希望を与えたとしてもおそらく遺体を見たら違う、本当に死んだと思ってしまうだろうと考えていた。彼が身代わり魔法が使えるようになっていたことは実は誰も知らなかったのである。だから葬儀が終わるまでは関係ない満里奈にのみ真実を打ち明け、おそらくすぐに戻ってくるであろう本人に説明してもらうことにした。
屋敷に戻っても妻達は泣きこそしないものの大きな悲しみで意気消沈していた。愛するものが奪われた悲しみは形容できるものではない。と、死んだはずの本人が屋敷に戻ってきた。
「賢者様!!」全員が叫んだ。ニュートを除いて。
妻達全員が抱きつき泣き、他のメイドさんやアトラ、ジューレも泣いていた。「心配しました!あの遺体を見てみんな全員死んだとしか思ってなかったです!なんで連絡しなかったんですか!」
と妻達が抱きつきながら言う。身代わり魔法によって命が助かったこと、追尾ですでに犯人の位置はわかっていることを伝える。
「なら、夫を殺された恨み、しっかりその人達に分からせる必要がありそうですね、、」とリーナがキレている。
「無事に帰ってきたのなら、わがまま言っていいですか?」リーナが言う。「今日1日、あなたと愛し合いたいです。本当に本人か確認するためにも。」まぁ、これは仕方ない。死んだ夫が無事に帰ってきたら普通はそうなる。ちなみに俺は公的には死んだことになったのでこれからの名前は名字の役目を英語にしたロールと名乗ることになる。で、その前に王様にロール名義で報告。もちろん王様も生きているのはわかっているが突っ込まない。
そこで影から渡されたのは転移ポータルだった。アーミア妃が一刻も争うだろうと自身の帰還用のポータルを渡してくれた。
確かに暗殺者を野放しにすればどうなるかわからないからな。
俺と妻3人、ニュートは子供達の世話をアトラとメイドさんに任せて転移した。
音無は予想外の事態に戸惑っていた。
今まで絶対に成功していた暗殺が賢者を殺害して以来、一件も成功しないのだ。そもそもその後にやった暗殺はターゲットに全て気づかれてまず成功していなかった。体内魔力0で敵の探知魔法に引っ掛からず、外部魔力での隠蔽、消音で全て成功させてきた成功の方程式が崩れていた。実は賢者が回復魔法を使う想定で居座り、実際回復をかけようと動作をしてたのでとどめを刺したまでは正しかった。魔法世界においては回復魔法があるため通常の暗殺より難しい場合が多い。
ただ、身代わり魔法ですでに分離していた本体に絶命確認をした際にマーキング魔法を当てられていたのだ。しかも地図魔法との合わせ技というおまけつき。このマーキング魔法は外部魔力でマーキングをしてマーキングをした人物は追いかけることができる。つまり音無の成功の方程式を完全に崩してしまうものだった。そう、音無はかけたつもりになっているがマーキングのせいでうまく魔法がかけれていなかった。探知を掻い潜るために体内魔力0にしていることが仇となり自分でかけ直すことさえできない。これで暗殺者が嗅ぎ回っていることがバレバレになってしまい、一回め以降は警戒度が非常に上がってそもそも侵入さえ難しい。組織からも見放されてしまっただけでなく強硬派が動こうとしたことがバレて組織自体も解体されて全員が捕縛された。組織は魔王国内では地球で言うところの暴力団みたいな扱いになっていたためだ。そして、音無はマーキングがついていることを逆手に取った。必ず奴らは俺を殺しにくるだろう。だからこっちが有利な場所で戦えばまだ勝機はあるだろうと。
ポータルで移動した俺達は、暗殺者が潜んでいる都市の路地裏にやってきた。おそらくまだ奴は勝つことを諦めていない。ちなみに今は昼で路地裏でも普通に光が差し込んでいた。
マップ上には奴の姿は写っているがこの路地裏だ。隠れていたら場所はわかるが不意はつかれる。すると隠れていた奴が上から襲ってきた。確かに地図魔法だけでは上下はわからない。俺を気配探知すらさせずに倒した男だ。しかしおそらくやるであろうネタはある程度想定していた。マップ機能に頼っているならどんなに逃げても追い付かれる。が、マップはさっき言った通り上下は分からない。だから上空と言うか上に隠れられる路地裏に逃げたのだ。だから、、上からの攻撃を物理障壁で食い止めた。怯んだ隙に嫁さん達が攻撃魔法で翼や身体を攻撃する。「なぜわかった!」攻撃されて捕縛された奴がそう言う。確かにマーキングを消して地図魔法のみにさせて正確な位置を把握させないようにする作戦はある意味正解だ。しかしセオリー通りすぎる。正面切って挑んで勝ち目がない以上こうするしかないのはわかるがバレバレだったのだ。だから最初から上からの攻撃しか防ぐ気がなかった。そもそも人数が多いのだから正面突破しようにも無理だからどう考えても詰みなのだ。手錠をつけられて完全に逃げられなくなった奴にこう聞く。「どうする?このまま捕まえて突き出していいのか?」「いい。お前らに負けたんだ。命など捨てる。」
俺はこう思っていた。こいつは暗殺者だ。しかし一度たりとて命令以外で殺しただろうかと。そもそも命が惜しいから捕まらないように奇襲したのだ。矛盾している。
「お前は命令以外で人や魔族を殺したことはあるのか?」「ない」「ならおそらく大丈夫そうだな」「?」「命が惜しくて襲ったんだろ?だったら捕まえて殺すのは目覚めが悪い。奴隷にして俺達の影として働いてもらう。ただ、殺しはこれ以上させない。」要はボディガードだ。奴の能力はボディーガードとしても最適だ。とりあえず俺達の元で働かせるため、国と司法取引をすることに。「なぜそのような暗殺者を雇うのです?」「暗殺者だから、目立たずに守ることができます。殺す以外の力を買ったのです。」とりあえずお金を俺達が払うことで奴は死亡した扱いとなり、身柄自体は俺達が引き受けることに。もちろん奴隷契約をして、俺達家族はもちろん、他の人間も殺害できないようにしてだ。後日、ポータルを返還するときにフェイム王に正式に護衛として認められ、影の一族として護るように命じられた。
影の一族とは、隠密魔法を受け継ぐ一族であり、隠密魔法を引き継いだものが代々影として王に認められ影から身を守るのだ。
その性質上、まず普通の人間とは結婚できないため、影の一族の者同士で結婚することになる。受け継がなかったものはあくまでも普通の人間として生活が送れるので問題はない。
つまりこの男もまた影の一族の女性と結婚するのである。
で話は戻る。妻一同が「どうしてあんな奴生かすんですか!」
とキレてる。まぁ気持ちはわかる。俺のスキルがなかったら普通に死んでて復讐したに違いないだろうし。でもな。勇者の代わりにやってきた俺だ。俺が勇者のやったことで認めてるのが文明を広げて人口拡大を目指せる平和な状態になったことともう一つ。
「勇者が誰も殺さずに平和にしたんだ。俺もなるべく殺したくはない。」そう、勇者は無力化に留めて強硬派も含めて誰1人殺さなかった。それだけ実力がなければできないことではあるが、人類と魔族の余計な軋轢を生まずに済んだことで今の平和と魔族との友好的な雰囲気がある。じゃあなんで教会の連中は殺されたんだ、となるが、あくまでも法律だし不敬罪なんてのは改訂すべきだとは思うが出されて執行されてしまったものは仕方ない。
それは向こうの王族が向き合うべき問題だ。簡単に偉い人を害そうとしたからって計画を作っただけで即死刑なんて重すぎる。
まぁそれはおいおいアトワース、ベータスに掛け合って直すように言うだろうな。不敬罪が出たらその前に。ジューレのためでもある。またもや話が脱線してしまったが、要は犯罪者であっても犯罪奴隷という制度があるのだから、使える人間は雇用していこうと言うのが俺の考えだ。これを聞いた妻達は「あなたが許すのであればこれ以上言いません。でも無茶してこっちを心配させないようにお願いします!」とりあえず連れてきた元暗殺者はギレーノと言うらしい。「ギレーノは隠密をかけて常に俺の側にいてくれ。それが俺のためになる。」「御意。」
で、問題の夜がやってくる。
リーナは本当に甘え上手だと思う。
「ケンジやリマも大事ですけど、あなたがあってこそです。だから、あなたのことが欲しいですし、もっと子供が欲しいです。」
ちなみに全力で愛し合うため、ケンジもリマもフーシュさんに預けている。無音はかけるが大きすぎるとダメらしくさすがにリーナの甘い声を赤ちゃんとは言え子供に聞かせることはできない。
なのでフーシュさんの部屋にも無音をかけてある。
ちなみにラジーナとルーシャは「リーナさんは妊娠できるのに私たちは今妊娠してるからさらに妊娠は不可能、だから出産したらやってもらいますからね?」と約束させられた。おそらくこちらも全力で種馬にならざるを得なくなるだろう。というかめちゃくちゃ子供が増えちゃうだろうな。
本当に激しくリーナと俺は求め合う。なんかリーナ、行為中めちゃくちゃ魔法かけてない?嫌な予感がプンプンするぞ?
「本当、生きてて、よかったです、あなたを、感じる、ことができて、私は、本当、幸せです。」(、は喘ぎ声を出してる)
「俺も、お前を感じられて、幸せだ。愛してる。」「私も、、」
絶頂を何度もお互いに迎えて、朝になった。
ちなみに結構音が漏れててリーナはみんなに聞かれててめっちゃ恥ずかしがっていた。で、リーナはリズさんにめちゃくちゃ怒られた。なぜなら、受精の魔法をかけまくっていたからだ。女性の卵子は最大でも500個までしかない。しかも体内で作ることができず減っていってなくなれば閉経となる。卵子を魔法で移動しまくっていたので女性ホルモンのバランスがめちゃくちゃになってしまうはずだ。当然リズさんはそれを知っていたので怒ったのだった。事実翌日からリーナはみるみる体調が悪くなる。吐いたり、熱を出したりだるくなったりしてるようだ。ちなみに事件は解決してるので賢者を継ぐ者ロールとして空港建設を続行している。工場は完成し、飛行船は組み立てが始まっている。採掘も後少しでできそうで、空港も建設が始まっている。まぁ、暗殺者も味方にしたし、ラジーナかルーシャのどっちかがそばにいてくれるのでまず危険はない。リーナはさっきも言った通りの状態だ。
満里奈です。賢者さんが戻ってきたので奥様の1人のリーナさんと全力で愛し合っていた様子が音で聞こえました。眠れなかったです。今やっと賢者さんの改良した属性魔法をだいぶ習得ができてレベルが9まで上がってます。あとニュートさんの秘密を聞きました。リーナさんに負けてたから賢者さんに勝負を挑んで一回めは痛み分けで二回めは普通に敗北したみたいですね。
それで賢者さんの奴隷となって今に至ると。国中や家の誰もが死亡を信じる中奴隷契約が消えなかったから生存を確信できたって言うのもすごいですけどね。賢者さんの復活要因となった身代わりの魔法は彼の魔法です。私も狙われてるなら必要かななんて、、と思ったそのとき、草原エリアの影から矢がこっちに飛んできました。ニュートさんが間一髪防ぎます。「大丈夫か?」「平気です。」「何者だ!」逃げようとする影を捕えます。
なんとその男、「賢者の家の異世界人の女はこの世界に不幸をもたらす」と発言したのです。なぜそんなことを言われなければならないのでしょうか。私も来たくて来たわけではありません。
捕えた相手は騎士団に連れていかれました。「平気か?」「ああ言われて平気なほど心が頑丈じゃないです」「気にするなよ」
本当ボディーガードとしても優秀ですね。心を慰められるなんて。そしてレベル10になるととあるスキルがついていると言われました。スキル譲渡です。対象は1人。渡すと基本的には帰ってきません。でも私はこのレベルになっても鉄を変えることはできなかったのです。しかしこのスキル、別の使い道がありました。そうです。文字通りの錬金術は賢者さんがMPをガンガン使ってようやくできるものだったので、私が下手な真似をしてもできるわけがありません。しかし、鉄は変えられないのに何もないところから物体を作ることができました。これは砂糖かな?大気から砂糖を産み出せるとか凄すぎでは?
満里奈さんが襲われたと聞いたので転移して戻ってきた。大丈夫そうだったが影をつけるように言っておくか、王様に。異世界人に良い印象ばかり持ってる人ばかりではない。俺も賢者として活躍はしてるがあまり俺も異世界人であることは知られていないらしい。召喚って異世界人限定なのに。別に創作みたいに黒目黒髪は忌み嫌われているとかなく数もいて珍しいわけではないのだ。だから見た目だけでは気付けないらしい。まぁその大元の召喚魔法についてもいつか調べよう。なんと満里奈さんがスキルで砂糖を産み出したらしい。まぁ植物と同じ反応だなと俺は気付いた。グルコースを光合成で作り出し余った酸素を放出するって言うのが酸素が出る反応の全てだ。まぁ角砂糖みたいになってるのはすごいけどね。このグルコースをさらに反応させたものを作れるのか試してもらうとできるようだ。彼女のスキルは何もないところから作り出す能力でそこからさらに反応させる魔法だったようだ。おそらく砂糖以外でも空気中の物質を反応させて作れるなら
行けるだろう。彼女が科学知識さえあれば反応を加速させたりもできるはずだ。これ、ニトログリセリンとか彼女いれば簡単に行けたな。わりと条件きついものでも彼女なら反応させられるみたいだし。なら、アルミニウムを取ってくれば、条件ある程度無視できるのであれば宝石であるルビーなどを作れるんじゃないか?酸化アルミニウム結晶のコランダムに少しの不純物を入れることで色んな色に変わり、ルビー、サファイアができる。ただ、酸素は大気中にあるから反応自体はさせられるのでアルミニウムを取ってくればいい。ただこの世界には缶詰めがまだ無かった。ないものいっぱいあるな、ここ。缶詰めのアルミから反応させて宝石を作ればエネルギーも少なく、かつ市場にないから大量に儲かる。あと缶詰めは災害に対しての備蓄の意味でも重要だ。誰も彼もアイテムボックスなんて覚えれないし。とりあえずアルミ鉱山探しか、、この世界研究以外にもやること多すぎる。
ラジーナです。孝二さんが死んだと聞いたとき死ぬほど後悔しました。ついて行って護衛をしなかったことに。妊娠中ということでつわりもそれなりにあるのでたまたま行かなかった日でした。
本当に時間よ戻ってお願いと思っていました。リーナさんも同じ気持ちでした。ただ、孝二さんは戻ってきてくれました。
このとき、もし本当に戻れるなら、大切なもの、、つまり無実の罪で追放されたお母様を助けることができたんじゃないかと思ったのです。このとき、リーナさんが量子力学をやっていたのである式を見ていました。黒体放射の式です。nは整数。
E=nhν、νは振動数、つまり時間の逆数です。ちなみにhはプランク定数でh=6.6×10^-34(J·s)です。
つまり、t=1/ν=h/Eです。つまり時間はエネルギーと関係してるという式なのですが、孝二さんはこの式を否定しました。
そもそもこれが成立するのはミクロの世界のみ。時間溯行は莫大なエネルギーが必要だということは容易に想像がつく。
だからt=E/mavのような形になるだろうと。あくまでも式の形は正直単位系を一致させるために当てはめただけで正解ではない。vは速さで今は光速と一致するかはわからない。
aは加速度で速さを時間微分したものだ。つまり速さの変化の傾きの値となる。mは質量だが、ただの質量ではなく魔力をかけるときにかかる質量、魔力質量として再定義する。
地球で時間を巻き戻せない最大の理由はエネルギーが足りないことではなく、時間を巻き戻すためにエネルギーを使うということができないからだ。つまり、時間溯行は魔力世界でしか定義することができない。魔力の世界なら魔素である窒素を触媒として時間に対してエネルギーを使うことがまだできるからだ。
時間溯行にはまず、今の時間軸から離脱する必要がある。進み続ける時の流れに逆らうためにはまず止まって目的地点を見つける必要がある。で、離脱したらさらに溯行用の魔力が必要になる。
とりあえず私視点に戻ると、時間溯行には魔力が大量に必要らしいです。人間の孝二さんよりドラゴンの私のほうがまだ可能性がありそうですね。ただ魔力が大量に必要なので里で修行をする必要がありそうです。ドラゴンの姿で。ということは出産してすぐ赤子を預けて行かなければなりませんね。愛しい我が子なのに。
ただ、歴史を変える以上、孝二さんから以下の2点を気をつけろと言いました。魔法を使う以上当時の状態に戻っても現在の魔法は使えるだろうが体力とかレベルは当時の状態になると。まぁこれはわかります。魔法さえ使えればいいのです。二番めは孝二さんとの出会いのきっかけがなくなってしまうことと未来は書き換えられるなら教えても意味がないということ、つまり過去で起きたことは確実にその世界で起きるとは限らないという意味です。母がアンデッドドラゴンになったことがきっかけで出会ったわけですから、そこが変わって会えなくなればお腹の子も二度と会えなくなります。大丈夫です。母があなたに会った日は忘れてませんから。おそらく母が追放されたくなければお前が能力を発揮しろというタイムリミットの日の前日に飛ぶことになるでしょう。5年前ですね。満里奈さんにも説明したら、莫大なMPの少しでも足しになれば、と軽減スキルを渡してくれました。赤ちゃんはお腹にいるけど修行しないといけないんです。あの日に戻るため。
ラジーナはお腹に赤子がいるのにドラゴンの里の近くの森で修行を始めてしまった。まぁ仮に流産したとしても過去に飛ぶわけだしな。何とかなってしまうだろう。とりあえずラジーナのアイテムボックスには俺の声を入れた魔道具を入れておいた。過去の自分に説明する用だ。まぁいきなりドラゴンが現れて、人化して人間になったら意味わからないからな。
とはいえ彼女が過去を変えてしまうと俺の変えてきた過去も変わってしまうかもしれない。まぁ彼女が暗殺者から俺を助ける未来になりそうではあるが、ギレーノは無音で隠蔽をかけて探知に引っ掛からないから厳しいと思うが。
満里奈です。自分の軽減スキルはこのためにあったようですね。
全く、私の異世界転移は時間溯行のためのパーツに過ぎなかったなんて。とはいえ、ラジーナさんは本気で戻りたいようです。まぁ戻れて取り戻せる過去があるのなら、自分でも戻りたいと思いますね、家族に関することならなおさら。ちなみにラジーナさんが時空魔法を使えるのは彼女のスキル全魔法適正によるもので私とかでは無理らしいです。賢者さんは時空魔法も獲得できることを確認してました。実際項目だけは出せたそうですが当然発動は無理だったようです。ニュートさんとの話し合いでエルバンド領のあの森でレベル上げをしてみることにしました。さすがにホーンラビットだけ倒して効率的なレベル上げなんて無理ですからね。さすがに賢者さんの4日間で8→70は無理ですから、あのエルバンド領でお泊まりすることになりそうかなと思ったんですが、ニュートさんは転移を使えるように勉強していたのでどっちでも大丈夫だそうです。まぁ向こうの人達にも会ってみたいし、泊まりになりそうです。
さて、少しお話が脱線するが、現在の魔王国でなぜ音無の暗殺が通用しなかったのかを話していこう。
魔王軍は人間と対立して戦線を押し上げていた。魔王側有利で人間側に犠牲がたくさん出ていた。そんな窮地を救ったのが勇者召喚である。しかし人間側の王様たちの思惑と勇者の取った行動は違った。王様たちは大量殺戮兵器としての勇者に期待した。しかし、勇者は魔法で一気に魔王軍を無力化して魔王に降伏を迫った。魔王は殺さずに力で降伏を迫られたため降伏せざるを得なかった。魔王が狙っていたのは力による人間側の支配。しかしそれ以上の力を持って逆に抑えつけられたのだ。そもそも殺さずに無力化できる時点で十分全員を殺せたのだ。そんな化け物相手には勝てるはずもなかった。で、勇者が要求したのが人間側同様に文明を発展することを許すこと。封建的な制度が残っていた魔王国のほうが発展は途上であり、食糧が足りなくなっていた。そのために侵攻して食糧確保をしようとした。でも勇者の知識で肥料を作ることで魔王国では無理だと思われていた土地の開墾、そして食糧作物の栽培に成功した。もちろん、教育や医療にも力を入れた。これに伴い勇者の評判は上がっていった。人間国側も勇者は支援していたが発展が遅れている魔王国側を特に優先したと語られる通り、勇者を発展させた恩人、人間側との和平を魔王は考えるようになった。ここで殺さずに恨みを買わなかったことが活きてくる。で、ここで相変わらず力による支配を企む強硬派の暗躍だ。魔王軍幹部の暗殺が各地で起こり始めた。そして勇者も当然この空気を作り出した張本人として狙われた。しかし相手が悪すぎた。数万の兵を一瞬で無力化できる敵に暗殺など通用しなかった。音無も狙ったのだが、勇者はあらゆる隠蔽を解除可能な武装解除があったので、すぐにバレる。
(魔王軍を無力化したのもこのチートスキルのおかげである)
これで強硬派は一度捕えられた。そして魔王にこいつらはテロリスト指定して常に監視しろ、という命令を勇者が下した。そして音無を含む配下の暗殺者が近づくとそれだけで反応する魔道具も開発されていた。音無はこの件以来目をつけられていて監視が一番厳しく、そうそう動けなかった。賢者暗殺のために移動した段階ですでに魔王国内ではやつの暗殺を警戒した警備になっていたのだ。たとえマーキング魔法がついていなくても魔道具のせいで場所がバレれば隠蔽ができてもすり抜けることは難しい。守りの兵と戦闘になれば暗殺ではなくなり、暗殺に特化した兵だけでは数には勝てない。成功の方程式と言っていたが、あれは目をつけられる前の話だったのだ。個人マークされてて成功などあり得ないからだ。作中ろくに動けずほぼ敵役にすらなれなかったのは魔王国内ではマークされていたことが原因である。そして国外に配下を送りこんで混乱させてなんとか復権を狙っていたからだ。
さて、空港、飛行船が完成するところまで時系列は飛ぶ。
これによりヴェーラ村とフーシュさんの村と、亜人の国がすぐにアクセスができるようになった。これで都市部に集中していた人口が空港周辺にも集まってくることになる。
さらに天然ガスだ。ヘリウムも飛行船以外の活用方法があるが、天然ガスは化学製品の元になる原料だ。
ちなみにこのときにはリーナの妹さん二人も出産していて第2王子の子も男の子だったこともあり(国民はすでに王子が継承権を破棄していることは知らない)、空港完成と合わせて盛り上がることとなった。
話は戻ってまずどんな化学製品を作ればいいだろうかと悩む俺だった。基本的には天然ガスはメタンやアセチレンとそれを反応させた物質が主軸になる。だからそれらを色々使っていくことになる。まずは化学溶媒だ。これからのこの世界においては化学反応もまた魔法によって行われたりするはずだ。そのときに溶かしておくかどうかで反応のしやすさは大きく変わる。魔法でも反応しやすいかどうかは起きやすさ、効率の良さに直結する問題だからだ。次に酢酸。酢の原料だ。調味料の開発は食を豊かにする。ただ、酒は地球同様古くからあって放置すれば酢酸が発生するのでややこれは微妙だ。ただ現地人は存在は知ってても調味料になることは知らないようだ。もちろん次の目的の原料にも使われる。
最後が化学樹脂だ。この世界に樹脂というもの、要はプラスチックという便利なものがない。廃棄物とか燃やすなとか地球の教訓は取り入れる必要があるが、これを取り入れることができればビニール袋とか色々便利なアイテムが作れる。まぁ服が大きく変わるだろうな。貴族の服ならともかく庶民は服がそこまで生地がよくないものが多いから、樹脂があればかなり快適さを持つ服を安価で製造できるようになる。貴族は絹とかの高級品が中心で庶民は麻とか羊毛の布が中心らしいので、繊維の幅が増えるのは革命なのだ。ちなみに反応してできるポリ酢酸ビニルは接着剤として非常に重宝できる存在である。
つまり、天然ガスは溶媒、食事、服、プラスチック、接着剤と非常に重要な役割を持っているのだ。(もちろん地球でも活用されている。)
研究を早く進めればおそらくまた特許が出るので収入も安定するだろう。日用品の特許ほど金のなる木はないのだ。まぁ正直リーナが何人妊娠してるか知らないけど、我が家も相当子供が増えるのは間違いない。だから収入がたくさんあるのは必須なのだ。
(たとえラジーナがタイムスリップしたとしても大きくは未来は変えるつもりはないみたいだし、おそらく問題はない。)
ちなみにヘリウムは液体にする温度沸点がものすごい低く、マイナス269℃(絶対零度がマイナス273℃)である。リニアモーターカーに使われる超電動現象は液体ヘリウムが冷却材として活用されている。つまり、冷凍魔法等を使って液体ヘリウムを作れば応用がかなり効くことになる。おそらくではあるが電磁気学の方程式と似たような式で描かれる魔力もまた、超電動ならぬ超魔導現象が発生するのではないかという推測もできる。
ここからこの2つの活用の研究も俺の活動の対象になっていく。
ところで魔法研究はしてないの?と思っている人。主要な魔法が終わっている以上ないとまでは言えないが俺の場合は地図魔法や分析魔法など応用しやすいものが中心だった。ただ、あの謎は解き明かす必要がある。そう、俺をこの世界に呼び、水や雷属性など幅広く使われている魔法、召喚魔法である。
召喚魔法の大元の動作原理は「異空間を通じて物体を呼び出す」
これだけである。この物体が様々なものに変わる。
例えば創作物であるのが契約した魔物を呼び出すものだ。おそらくだがテイムしたときに魔力の証のようなものができるはず。そしてその証を通じて呼び出すと思われる。ちなみにテイムは自身の魔力で相手の脳に対して契約するものだと思われる。
おそらくだが、勇者に関しても、賢者にしても同じだ。創作物ではだいたいが神の間とかに案内されたりする。そこはアイテムボックス同様、異世界側からアクセスできるようになっている場所なのだ。だから召喚魔法で呼び出すことができる。
ただ、現世から直接呼び出している作品も多く存在する。これはおそらくだが、こう手順を踏んでいるのだ。異世界側が召喚魔法で神界にアクセスする。すると神界は候補をリストアップして召喚魔法を候補者に直接繋げる。この繋げるときに異世界で簡単に死なないようにチートスキルなりを付与しているのだ。
そして召喚されるという流れだ。
この考察からわかるのはアイテムボックスの奥には神界があるのではないだろうか?という理論である。虚数の空間なんて人間には当然作成はできない。もともと神の住む場所は人間から行くことは絶対できないとされている。しかし神からは多分に人間界に影響を及ぼせる。で、アイテムボックスは何を隠そう神からのスキルとしてしか付与されない。
つまりアイテムボックスと同じ空間に神界が存在するが手出しができないように空間に容量を持たせている、と考えるとつじつまが合う。逆に言えば容量無限を持つ者は神に認められ、神と同程度の力を持っている存在、亜神であると言える。そして虚数時間が存在しないため肉体の時が流れない神界で神は世界を永遠に見守ることが可能なのだ。
また一度人間界に落ちると戻れない設定も多い。しかし考えてみよう。複素数のものがいきなり実数として現れたら、実数部分しか反映されなくなる。これは空間軸が2本の世界から一本の世界に行ったら、本来神として持っていた部分は大半が虚数成分に対応しているはずなのだ。それが反映されなくなれば力が出せなくなるのは納得が行く。あとで述べるが、神はその性質上実体として魔力を持つことができない。つまり魔王討伐だったりを異世界人に任せる理由は自分が実世界でなんとかすることが不可能だからである。ただ、邪神は堕ちて暴れることが前提になっていることが多い。だから、神力(ここでは魔力の虚数成分とする。神の力の源)を変換してすでに魔力を戻した状態から始めるため非常に強くなっているのだ。
話は戻してある程度生き残るためには次の要素が必要である。
異世界の言語が理解できて読み書きもできること。異世界の食事をゲテモノ以外は食べられること。基本的に魔物を倒せる力か自分だけで経済力(最果てとかの場合は生存できる力)を持てるスキルのどちらを所有していること。この三点である。ただ、満里奈の場合は二番めは例外としてもどれも当てはまらない。つまりこれはエラーである。本来召喚すべきでない状況と、本来生存に必要なスキルを持っていない(錬金術は単体では何もできない)ことからもそう考えられる。
逆召喚で戻せるのかもしれないな。俺は色々この世界でやりたいことがあるし、子供もいるので戻るつもりはない。
するとアイテムボックスが自動で開いた。ああ、神とやらがお怒りかな。そして予想通り中に吸い込まれて開けた場所にワープしていた。ここが神界ってやつか。すると神らしき人物がいた。
「ここは神界なんですか?」「そうだ。お前さんの考え方はだいたい合ってる。満里奈という女性はこちらのトラブルでなぜか転送されてしまったのだ。お前さんの考える通りスキルにはそういう意味がある。」「召喚のときにここを通る意味はなんですか?」「ここはお前さんの言うところの真空だ。肉体の時が止まっているので平気ではあるが、もし時間が流れていれば数秒後には酸欠で死ぬ。つまり魔力を使うときの抵抗が0なのだ。だから魔法を作り出した人物はここを通る魔法を作り出した。お前さんが考えた理屈の転移魔法もまた、肉体の時が止まっているから再構成もリスクなくできるのだ。」
なるほどな。つまりここは魔力を使う上での理想空間なわけだ。
俺が考えた転移魔法のリスクは肉体をミクロに分解して光速cで移動するときに一瞬とは言え完全に原子になってしまうのだ。
つまり時が動いているのであれば即死である。肉体の時が止まるからこそ、生きている状態を保持しながら移動して再構成もリスクなくできるのだ。あ、ということは、、
「時空魔法ってここだとめちゃくちゃ簡単なのでは?」
「仮にも私もお前さんの言う神だしな。」「そもそも時が止まっているこの空間なら、時間からの離脱を一切気にしなくていい。で、抵抗0でエネルギーを使えるからロスはほぼない。」
そう、ラジーナが気にしていた条件はおそらくクリアできる。
「つまりここに入ればラジーナは時を遡れるのですか?」
「いや、そう簡単ではない。ここに入るためには神である我々から認められる必要がある。そもそもラジーナという娘は時の巫女というドラゴンにおいて重要な役目を持つ者なのだ。」
時の巫女とは、イレギュラーな歴史が発生したときに時を戻して改変するパラレルワールドの存在を消すための巫女らしい。
基本的に時間は一次元であり、神によってだいたいの未来は決定している。しかしだいたいなので不確定要素もある。その不確定要素が大きく、かつ重要な出来事が起きたときは彼女達が代々受け継いだ手法で未来を変えるのだ。そのためにも彼女は修行して試練を受ける必要があるらしい。彼女が全属性適正を持っていることこそが証明だと言う。ということは、、
「もしかして私と出会ったのも必然だったんですか?」
「そうだ。お前さんは必ず地球の知識を用いて魔法の秘密を解き明かすと言う風に役割付けられていた。そして彼女に巫女としての技の使い方を伝授する役割だったのだ。」「待ってください。エラーで呼ばれたはずの満里奈さんにも役割がありましたよね?もしかしてですがもう一人正式に呼ぶつもりだったのではないでしょうか?」「その通りだ。」なんてことだ、完全に管理されてるしスキル譲渡まで予定通りではないか。いや、こう言ってるが実際にはエラーに見せかけてるだけだ。ちゃんと満里奈も役割を持ってる時点で予定通りに進行しているのだ。
「いくら時が止まっていると言ってもさすがにこれ以上は体内魔力で肉体が持たなくなる。生き物を入れられない理由はそれだ。だから転移させてもらう。」死体には内部魔力はほとんどなくなる。だから入れられる。だがここは魔力抵抗が0の世界だ。つまり肉体より圧倒的に魔力が流れやすい。そんな状態でいたら体内魔力が肉体から飛び出して死んでしまうのだ。まぁ神がいつまでもこの空間に入れるのは実体魔力のない存在だからなのだ。
「色々ありがとうございました。」「真理を知ろうとする人間と語り合えるのは嬉しい。だからまた呼ぶやもしれん。」
また呼ぶんかい、、とりあえずラジーナには話さないといけないな。「あ、あの娘の身籠っている娘もまた、時の巫女で何があったとしても必ず生まれてくる。」最後にまたもや爆弾投下されたわ、、
ラジーナに真実を話すことになった。「というわけなんだ。」
「なるほど、やっぱりでしたか。」「まぁ、偶然ならできすぎだしな。」「この子もまたその未来を変えるために生まれてくるんですね。」「ああ。つまりは時の巫女としてこれからも修行をしていくのが近道なんだろうな。」「そうですね。」
この時期にはルーシャが臨月になっていた。ルーシャもまたお腹がパンパンになっている。「リーナさんはこんなに大変だったんだですね、、」と前に双子を産んだリーナの苦労がわかったようだ。ただ今度は双子どころじゃなさそうなんだよな、、
行為中に受精の魔法かけまくってリズさんに怒られて女性ホルモンの変動のせいで体調を崩すレベルだからな。
試しに見てみた。なんと5つ子だった。かけた回数的におそらく上限だな、これは。あと子宮のサイズ的に子供がちゃんと育つ限界までしか入らないのだろう。「5人ですか。たくさんで子育て大変になりそうですね。」産む側の考えそれでいいのか、、
ああ、ルーシャが言ってたけど女王を初めとして出産ラッシュ、ベビーブームが来ているらしい。しかも超がつくほどの。これ産着全然足りないだろ、とか思ったら案の定だった。大人のボロ着を直して使ってるらしい。衛生面とかに良くないな。今こそ化学の力が必要だな。天然ガスから化学繊維を作って亜人の国に大量に送る手続きをする必要があるな。空港もあるし輸送はそこまで気にならない。とりあえず満里奈の錬金術の出番だろうな。エルバンド領で頑張ってるらしいけど緊急事態だし手伝ってもらおう。満里奈です。頑張って魔物を倒してレベルを上げていたら亜人の国のベビーブームのための産着とかオムツ用に大量の化学繊維が必要なので手伝ってくれと賢者さんに言われました。
錬金術の正体はよくまだ賢者さんでもわかってないみたいですが、化学反応させる魔法ではあるみたいなので頑張ってみます。ちなみに全属性をしっかり覚えることができたのでニュートさんなしでもある程度は魔物を倒すことができるようになりました。賢者さん曰く適正がないものは覚えにくいみたいに言ってますが実は知ってます。執事のアトラさんやジューレさん、エルバンド領やうちのメイドさん達全員もまた賢者さんの魔法なら全属性使えるようになっているんです。これを見ると魔法は適正よりも原理をしっかり理解できてるかどうかだと思うのです。
さて、赤ちゃんの話題はともかく女性にとってはとても大事でしょうし、行ってきますか。
実は採掘の際に保存用のプラントだけでなく、加工用の工場もまた建設業者にお願いしていた。まず間違いなく重要技術だからな、この世界には。ロール名義で作ったのは繊維工場が複数個だ。何しろ合成繊維次第で性質とかが大きく変わるから、一個一個別々のほうが反応も一回で済むしやりやすい。アクリルやナイロンなど用途に応じて作る繊維も変える。基本的に合成繊維は重合という多分子化が重要になる。反応によって分子同士をくっ付けて高分子にする。ここに魔法要素を加えることでより反応しやすい環境だったりを作れるのだ。ちなみにヴェーラ村は空港による人口増加と繊維工場の雇用創出による人口増加が重なって、アトワース南部随一の市に後年なることになった。
話は戻り、繊維工場は魔法を使って熱などを管理して反応しやすくしている。満里奈にはとりあえず、高分子化を促進してもらう。俺は輸送準備とかで忙しいので手伝えるときはがんばるのだが、時間はあまり取れないな。
大量生産のおかげで市場にたくさん出回り、なんとか赤ちゃんにだいたい行き渡ったようだ。とはいえ消耗品だしこれからも産まれていくらしいから、まだまだいるみたいだ。ちなみに個人に売っているのではなく亜人の国の政府に売ってからある程度値段を抑えて国民に売っていた。これで転売のおそれをなくしたのだ。
またもやルーシャの母である女王に感謝されてしまった。ちなみにルーシャには弟が産まれた。
とそうこうしてる間にルーシャの出産が来てしまった。
こちらも数時間かけて出産し、女の子二人。それぞれテーラ、セナと名付けられた。これで子供が4人になった。リーナの5人とかもあるし、次に備えてうちもメイドさんの数を2倍にした。
ジューレです。リーナさんの声を聞いたり、ルーシャさんの出産もあってアトラといつ結婚して子供を作ろうかという発想しかなくなってます。アトラはまだ早いとか言いますがそんなことはないはず。ちなみにリーナさんから例の魔法は習得済みです。まぁメイドさん達も妊娠している人がいるので間違いなく伝わってますね。実はリーナさんからアトラとの関係が煮え切らないのでさっさと進めるためにとある魔法も習得しました。兵士達が耐性を獲得しないと状態異常耐性を事前をかけるのが不可能な魔法。
その耐性を獲得するのはその魔法を知る必要があるらしい。
で、この魔法は魅了魔法です。サキュバスの得意技です。夫婦関係でも恋人関係でも冷めていたり、関係が進展しない相手には有効な魔法です。基本的にはこの魔法を使うと媚薬を使っている状態と同じになって男女ともに性欲を抑えられなくなります。相手がいる場合効き目がさらに強くなります。数日間は有効です。
魅了魔法にかからないようにするには脳に干渉されないようにします。状態異常は身体に当たることが多いですが、この魔法は脳からのもので対処なしでは確実にかかります。
とりあえずアトラを部屋に呼び出しました。「ジューレ、何ですか?」「とりあえず魔法かけます」「何をしたんですか?今興奮が抑えきれません。」成功のようですね。
「君が猛烈に欲しくて欲しくてたまらないんだ!」「そうみたいですね」私は裸になってその欲望を受け入れることにしました。
で、このことが賢者様に知られて正式に結婚しました。当然、後に妊娠してることが発覚します。ちなみに子供が産まれたらこの家を出るつもりでいます。確かに実家だけど今は賢者様のお家ですからね。いつまでも甘えるわけにはいきません。
サキュバスです。魅了魔法は得意技と書きましたが、これがかからない相手から精子をもらうのは無理なので生きるために必須スキルです。ちなみにリーナさんの子供の数で分かると思いますが受精の魔法は5人までが限界です。さらに長命種族のドラゴンやエルフは一度に妊娠できる数が少なく、3人までです。長命種族のバランスの問題もありますがドラゴンの場合は子宮内部でゆっくり育つ関係上、3人までしか無理なのです。ちなみにエルフは11と言う意味があり、生涯で産める数を現しているとされています。そもそもそんなに性欲旺盛なエルフを見たことがないのでこれが正しいかどうかは知りません。
テーラとセナが家にやってきた。テーラはエルフでセナはハーフエルフと言うらしい。この辺の違いもまたこの異世界を理解する上で重要だ。今ドワーフ、エルフ、獣人について解明していくことにする。亜人と言われる彼らは異世界では人間とともに生きてきた。つまりは人類の進化の分岐とも取れる。まずはルーシャがいるエルフだ。特徴は耳が長いこと、長命であること、魔力の使い方が人間より上手い、森に住み森の精霊と会話したりすることができる、性欲が弱いなど。エルフが長命な理由はおそらくなのだが、魔力を老化防止に使うことができるか、そもそも老化物質と名高い活性酸素が体内に溜まりにくい仕組みになっているのではないだろうかと思われる。まぁ老化の原因物質を素早く排出できるほど魔力制御がうまいから長命になるとも言える。魔術師もまた人間の寿命とは比較にならないレベルで生きる作品も多いが、これもまた魔力による強制的な老化防止が行われていると考えればつじつまが合う。ドラゴンもまた魔力の扱いが得意なので長命になると考えられる(飛行も体重の重さ的に翼だけでは不可能なので魔法で補助している)。つまり俺もまた老化を止めることは老化の仕組みを知ればおそらく可能だ、もちろんリーナも。(ドラゴンとエルフは長命)。人間でなくなる危険性もあるが、パートナーであるラジーナやルーシャと少しでも長く生きていたい、という思いは間違いなくある。これは要相談だな。安易に決めたらまず後悔する。すごく長くなってしまったがエルフの続きだ。で森の妖精(精霊)と会話できたり、その力を出すことができる。英語でフェアリーと呼ばれる彼らは基本的に身体が小さい。で、羽根を持って飛んでいる。まぁこれは魔法を使わずとも十分軽いだろうと思われるので普通に飛べるはずだ。自然霊を現したものだと言われている。で彼らは森で住んでいるため、金属や人工的に作られた物質を嫌うらしい。森の人というエルフは十分理解していて武器も森での狩りは金属を使わないか魔法を主に使う。性欲が弱いぶん、種族として長命にして種を残せるようにし、魔力の扱いを高めることで敵を倒せるようにしていると思われる。ただその分体力は人間より弱い。
エルフに関しては長くなったがこの辺りで締めよう。
次にドワーフだ。小人族とも呼ぶが身長が一回り人間より小さい。ただ力は強く重いものを持ち運ぶパワーを持つ。また鉱石の加工を人間よりも先んじて行ってきた歴史があり(パワーがあるから道具さえあれば採掘ができるためだろう)、彼らが武器屋をしていることが多く、そのため亜人の国以外にもドワーフの子孫はたくさんいる。またお酒が大好きで、この世界で酒を作ったのはドワーフだと言われている。そのため酒蔵とか酒造関係にも彼らの子孫がいる。男性はひげが非常に生えやすいためだいたいひげが蓄えられている。またエルフとは逆に種族的に性欲が強いとされている。性欲が強いのは体力や生命力が強いことに繋がり、ひげが生えやすいことやパワーがあることの裏付けとも言える。
こちらも説明が長くなってしまったが次に行こう。
次は獣人だ。彼らは動物のしっぽや耳が生えてることが大きな特徴の一つだ。基本的にその動物は猫や犬、うさぎなどが多い。地球でも古くからペットとして親しまれてきた動物だからだろうな。そして種族的特徴として肉体強化が得意で運動神経抜群なことだ。魔力はあるのだが魔法として発射するより彼らには肉体を強化して殴ったほうがダメージが多いことがほとんどらしく、基本的に戦い方は武器を使ったり素手の肉弾戦がほとんどだ。
獣人の産まれ方はある意味謎だ。獣人は獣人としてしか産まれない。つまり元の生物と混ざる瞬間はどこにあったのかという疑問が残る。一つは魔物の誕生と同様の理由で産まれた説。これはまぁ説明はできるのだが、繁殖力は人間以上らしく多産も多いので遺伝子を弄ったとするには疑問がやや残る。多産にしたとも考えられるが。もう一つは獣人達の間で囁かれている起源だ。
「ある日男がメス猫の魔物に重症を負わせてとどめを刺そうとしました。そこで魔物は生き残るために人化をしました。魔物にも擬人化するものもいますから戸惑いましたが変わらずにとどめを刺そうとしました。そこで魅了の魔法を使って男に手を出させました。男はすっかり擬人化した女に虜になり、周囲の反対も押しきって女と家庭を築くことになり、多産も相まってたくさんの子供が産まれました。世代を経たことで反対の声も薄れていたことでその子供達と結ばれるものが現れたのです。これが獣人族の始まりです。」ただこれは猫の説明にはなっても犬とかが入っていることの説明になっていないから違うと思うな。
おそらく魔物と同じ経緯で誕生したデザインされた人類なのだ。で、動物の遺伝子が入っているので多産のものをそのまま残したと考えられる。
おそらくこの獣人族は人間が消えそうになったときのある意味保険として作られたのだ。女性は多産でありたくさんの子孫を残せるようにと。ちなみにエルフ、ドワーフ、獣人がそれぞれカップルになったときエルフドワーフの組み合わせはそれぞれ半々で産まれる。エルフドワーフが混じり合うことはない。獣人族とカップルになったときは4:1でエルフやドワーフが誕生する。つまり種族の特性が劣性遺伝子なのだ。このことも保険説の裏付けとなる。ちなみに人間がそれぞれ結婚した場合はエルフが2:1:1でそれぞれエルフ、ハーフエルフ、人間で、ドワーフが1:1でドワーフ、人間である。ハーフドワーフは特徴としていないというかこの人間ってなっているのがハーフだと思われる。獣人族は1:3でありやはり人間がたくさん産まれるようにできている。
またハーフエルフは人間とエルフの混血で基本的に寿命はエルフより短くなるようだ。とりあえず、女の子の双子が家にやってきたわけだ。まぁ当然だけどケンジとリマが来たとき以上に家は大騒ぎだ。当然赤ちゃんなので放っておくと全員が何かしらやらかす。メイドさんが走り回っているカオス空間だ。俺も手伝いたいがなにぶん仕事が忙しい。研究とか色々あるし。5人の赤ちゃんがこのあと来たらこれ以上になるぞ、、で、フーシュさんが結婚相手を紹介で見つけたらしくここを出るようだ。引き続きメイドとして働きたいとのことなのでそのまま残留。まぁこんなに人の赤子がいる空間に自分の子供がいると落ち着かないだろうしな。
で、結婚したアトラとジューレも家を出るから部屋は確保できるけど元々たくさん余っているのだ。まぁ子供がたくさん増えるのはあの約束的に間違いないし結局全部使いそうだな。
で、子供でてんてこまいになってる我が家にエルバンド領から連絡が。リズさんがまた妊娠したらしい。しかも3つ子。あの人まだ魔法を改良してるんかい、、マイナさんはこれ以上というか子供のお世話で大変なのでしばらく産むつもりがないらしい。まぁディートくんが産まれたから満足なのだろう。リズさん、今度は何をしてボールさんに手を出させたんだろうか。まぁうちもリーナが5つ子を妊娠してると報告しておいた。喜んでいるようで何よりなんだが今の数倍生活が大変になるんだよな、、収入もその他のことも。
ボールです。リズが妊娠しましたが今回は私の意思です。
放っておいたらまた何か毒物のようなものを入れられる危険性がありますからね。今回は魔法を開発したと聞いた段階から気になっていました。おそらく私が手を出さないならまた何かしかねない顔もしてましたし。でもあのとき以来、魅力的に見えて仕方ないんです。子供たちはかわいいし、年を重ねてもあの美貌は反則ですね。のろけはここまでにして、それでやらかす前にこう言いました。「君が最近可愛くて仕方ない。」と。すると「何を言ってるのかしら?私はすっかりおばあさんよ?」「よく言うよ、双子を産んでおいて。」「で、そんなこと言うなら手を出してくれるのかしら?」「まぁな、マットとライルが産まれた理由があまりに情けないからな、今度は自分の意思で欲しいと思った。」
「自覚がおありならもっと前から欲しかったですわ。」「それはすまなかった。」というわけです。しかし妊娠したら3つ子ですか、また大変になりそうです。リーナも5つ子でおそらく出産そのものが普通の出産より大変でしょうが頑張って欲しいです。
リーナは子育てをしながらも妊娠による体調不良と戦っていた。
熱を出したり、風邪を引いたりと症状は様々だ。ルーシャもまた子供達のお世話しながらリーナの様子を時々見ている。まぁ5人も子供が体内にいたら栄養とか色々な面で大変だろう。その証拠にめちゃくちゃ食べては吐き戻すという日々を繰り返していた。
病院も2、3日に一度は行くレベルで通っている。
同じ妊婦のはずのラジーナは元気に森で魔物と戦っているのだが。一方のラジーナ。ミノタウロスやオーガなどの巨大で強い魔物がうようよ生息するドラゴンの里周辺の森。この辺りは魔力が高いぶん、魔物も強いものが多い。ちなみに一年と半年経ってお腹はやや目立つ程度にはなったが、そんなことは微塵も感じさせずひたすら魔物を倒していた。ラジーナが心配なので孝二は万が一がないように影の皆さんをつけていた。ちなみに彼女のレベルはだいぶ上がり、250まで到達していた。「神に認められるためにはまだまだ頑張らないと。」孝二が神に会った話自体は信じられないと思っていたが、満里奈のこととかを考えれば、真実と思わざるを得なかった。「時の巫女なんて話、里では一切聞かなかったですね、、」彼女が強引に里から追い出された後のドラゴンの里は不穏な空気が漂っていた。ドラゴンの里は異世界からの勇者が召喚されてたった2日で魔王軍を無力化したという報告を信じられなかった。そしてそれだけの武力をいずれドラゴンの里にぶつけてくるのではと恐れていた。だから先手を打って無謀にも勇者に挑んで倒そうとしたのだ。ドラゴンは鱗が頑丈、武装は身体のみで十分、魔法も使えて高速で飛んでいく存在だ。だから彼らは自らの敗北を微塵も予想していなかった。勇者は大量のドラゴンを無力化を試みたが武装解除は不可能、力が強く拘束魔法も効かない。だから最終手段である殺害を選択せざるを得なかった。勇者は当然ドラゴンを大量に殺せるだけの魔法を持っていたのだ。命からがら逃げ帰っていたドラゴンに勇者はついていき、交渉して人間と魔族に不干渉という条約を結ばさせられたのだ。
そう、この平和は多大な犠牲な上に成り立っていた。ドラゴンの。そもそもちゃんと報告を信じて手を出さなければ余計な犠牲だったことはドラゴンたちもあとで気づいた。しかも飛び出していったのが大半がメスを守るために飛び出したオスであり、性別のバランスが傾いていた。つまり、遠い未来には滅びかねない。
長命ゆえに妊娠しにくく人間がパートナーではパートナーが死ぬまでに子供を授かれないこともざらである。しかも体内には濃い魔力が流れているので、同じぐらい魔力を持つ人間の精子でないと精子が移動中に魔力の濃さでやられてしまう。ちなみに逆も人間の女性だとどんどん濃くなる胎児の魔力にやられて流産や女性が死亡する場合も多くなる。非常に魔力の高い孝二がラジーナの夫に選ばれたのも必然だったのである。ちなみに一番ベストなのはエルフである。魔力が濃くお互い問題なく妊娠はできるが、妊娠し辛い問題は双方ともに抱えているのでそこは難しい。
ラジーナが変えるのは母の死の運命だけでなく、この無駄死にもなのだ。ラジーナの母レヴェーナは里で宰相をしていた。ドラゴンの里という名前だが実態は一国の政府である。
夫も官僚だったのだが、彼が気に入らなかったことがラジーナが無能であったことである。今では全属性使えるが当時のラジーナは無属性ブレスのみしか使えない子供だったのだ。で、夫は時の巫女という役目を娘が持っていることを知っていた。だが信じられなかった。適正が彼女が時の巫女である証明だとレヴェーナは言うが、ラジーナは通常の魔法がイメージできなかったのだ。というかドラゴンたちがどうやって魔法を使っているのかは見てれば覚えると思っていたのだ、夫を含む多くのドラゴンは。実際は継承した魔法スキルで見て練習しているからなんとかなっているだけであり、通常の覚え方ではなかったのだ。だが、適正スキルはきちんとイメージしないと見ただけでは発動できないのだ。もし見てるだけで発動できるなら孝二が最初に覚えたのはファイアーボールではなくストーンバレットだっただろう。ドラゴンたちはなんとなくのイメージで発動できるだけのスキルがあったが、適正ははなからそれを許してくれないのだ。だからレヴェーナは夫の魔法スキルを覚えていない子供を産んだ浮気者として追い出された。でも時の巫女としての使命が優先されただけでレヴェーナのせいではない。時の巫女とは代々受け継がれるというがその世代の子供に引き継がれるというだけで巫女の子供に確定で受け継がれるということはない。レヴェーナは優秀な宰相であったため、王に仕える官僚の意見はいつも宰相に付随するようなイエスマンだった。要は自分の頭で考えてこなかったのだ。でも追い出されたとき、彼らはどう動いたらいいかわからなかった。ドラゴンの里は基本的に中立で強いドラゴンしかいないので時間が経ってもほとんど問題が解決しないこともざらである。ドラゴンの長命さゆえに年月が経っても解決しないのに宰相不在問題を放置したのだ。そして彼女がいないまま勇者と対峙して、官僚たちの多くは夫として戦場に行き死んでしまった。王の周りには誰もいなくなり、王のイエスマンだけが残った。それゆえに優秀なはずのレヴェーナの娘ラジーナの本質を見抜けず追い出してしまったのだ。ラジーナは多くのドラゴンが戦死したことは知っていたが母がやっていたことは知らなかった。そして父や母はちゃんと自分が巫女であることを知っていたと言うことも。
ドラゴンもまた受精の魔法が必要だと思われる種族だ。長命だがドラゴン女性は極端に妊娠しづらく、人間の女性相手では命の危険がある。ドラゴンの里は人間が簡単に侵入できないように崖の上に建っている。その下にラジーナが修行している森がある。
出産が終わったらきちんと巫女として父を含むみんなに認めてもらう。そして神たちの試練をこなすんだ。神の試練があることは孝二から聞いていた。おそらく里のドラゴンでも簡単には達成できないものだろう。だからもっと強くなっていくのだ。
ニュートだ。最近満里奈は工場に仕事に行くことが多い。俺も護衛として向かうが工場には企業秘密が多いらしく入れない。
なんか俺は寂しい。いつも顔を合わせているのが当たり前だと思っていたから、いなくなるとなぜか寂しくなる。ただ転移で送り迎えしてるだけだから余計に、ね。
このときニュートは負け続けたリーナに抱いていたような感情を満里奈にも抱いていたのだが、まだ気付いていない。
満里奈です。今日も仕事が終わりました。錬金術って本当に色々な反応に使えるんですね。終わり際は常に魔力が枯渇するので本当に眠くなります。だいたい転移で送ってもらって部屋まで来たらあとはベッドでちょっと仮眠なんていうことがよくあります。
あ、今日も待っててくれました。あとは転移して、、
魔法が飛んできました。しかも複数方向から。
とっさに魔力障壁で防いでくれます。「下がれ!ここは俺が倒す。」「私も戦います」「危険だから身を守ってくれればいい」
かっこいいです。とりあえず障壁を作ります。物理と魔法障壁はガード魔法なので攻撃魔法の次に覚えました。
「不幸をもたらす異世界人を排除する。」「工場で働いてる人間に言う言葉か?」「工場?よくわからんものを作るのだな賢者も。」明らかに工場の設置理由を理解してない人達のようです。
とりあえず言われっぱなしもあれなので聞いてみます。
「なぜ私が不幸をもたらすのですか?」「お前は賢者のようにこの世界に必要とされて召喚された人間ではない、だから放っておけばいずれ不幸が起きる」なるほど、そう来ましたか。
でも賢者さんは言ってました。私は時の巫女のために必要な人間としてこの世界にやってきた人間なのだと。「私は時の巫女を補佐するために召喚されたのです。きちんと必要とされて召喚されたんですよ。」「時の巫女だと?」その口調は禁忌に触れたようなトーンでした。「時の巫女は我々人間の歴史を常に修正という名前で変更してきた存在だぞ。戦いで勝利したという書類ですら書き換えられたような痕跡がある」つまり人間や魔族両方に重大な損失などが発生した際に、歴史を書き換えてなかったことにしているのです。そもそも戦いが発生しないようにしたり、双方の犠牲が少ないように変更したり。「ところでなぜあなたは時の巫女を知っているのですか?」「時の巫女は人類のこの発展さえなかったことにできるほどの力がある。だから抹殺対象の一つなのだ。」「つまりあなた達は人類至上主義者ということですね。」
「そうだ、ドラゴンや魔族、亜人どもに媚びへつらうことなどない!時の巫女の補佐をして邪魔をするならお前らも消してやる」
こうして4対2の戦いが始まりましたが勝負は一瞬でした。魔法名すら唱えずにニュートさんが放ったのは足と手を凍らせる氷の腕輪。拘束魔法の氷属性版です。手が凍ったら発動はできなくなるので勝ちです。そもそもご丁寧に私と話してる間に氷属性魔法を自分で用意して、セリフが終わるまで待って逆召喚魔法で一瞬で手足を拘束したようです。お約束は異世界の人でも守るんですね。ちなみ彼らは賢者様が不敬罪で死刑となるところを助けられて犯罪奴隷として売却されたそうです。命を助けたんですからちゃんと働いてもらいたいですね。するとニュートさんがこう言いました。「もし帰れるなら帰りたいのか?」と。なんでこんなこと聞いたんでしょう。まぁ前世というか地球ではOLをしていたんですが、幸せかと言われたら微妙です。ブラック気味でしたし。ここの工場は賢者様出資もありますが王の肝いりの工場なので給料もよくて休みもちゃんとあります。特に肝心の反応させる人は給料が高いそうで私も給料が高いです。ここなら働いてても幸せになれるかもしれません。「そうですね、必ずしも帰ることが幸せとは思えませんが、、」「なら、俺と一緒にいてくれないか?これからも」えっ、これプロポーズ?でも戦ったときかっこよかったのは事実ですし、、「いいですよ。結構かっこよかったので。」「本当か?俺さ、お前がさっきのやつらに質問してたとき本気で心配してたんだ。不意打ちの攻撃で死んじゃわないかって。」確かに殺そうとした相手にするべきじゃなかったと反省ですね。だからすぐに変な動きしたら倒せるようにしていたんですね。「でも言い負かした。お前は本当に強かったんだな。」私はレベルなんて30で賢者さんや奥様達よりだいぶ低いですが、、
「私はだいぶレベルは低いですよ?」「心が、だよ。レベルなんて強さの一部分でしかないんだ。賢者に負けて気付いた。本当に強いのは心で負けないことだって。」「なに二人でイチャイチャしてるんだ?」そこには賢者さんが待ってました。
「どうしてここに?」「夕飯ができてるのに二人とも工場から全然帰ってこないから呼びにきたんだよ」「襲撃があったので色々話してたんです。」「なるほど、、」ここで賢者さん、何かしてますね。「とりあえず食べないか?」「そうですね。」
転移すると「カップル成立おめでとうー!」ってお祝いが。
「違う!」「違います!」と揃って否定します。が、
「そこで揃っちゃうのが初々しいわね」とリーナさんが発言します。これ確実に賢者さんの差し金ですね。あ、テレパシーで会話したからみんながお祝いしたんですね。さすがにテレパシーで会話してるのは知っています。メールみたいに便利なので使いたいんですよね。今度教えてもらいましょう。
夕飯を食べたあとに賢者さんが聞いてきました。
「神様曰く、満里奈さんは役目を終えたから逆召喚で地球に返してやることはできるらしい。だから本当に帰らずにいいのか?」
そうですね、、帰ってやることはあります。でも、、
「ニュートさんのそばにいると約束したんです。」と否定しました。すると、「ニュートも連れて帰るなら?」と聞いてきました。ここでの生活は確かに魅力的ではあります。でも、両親も健在ですし、地球に戻りたくないわけありません。なら賢者さんは戻るのでしょうか?「逆に聞きますが、地球に戻りたいんですか?」「いや?俺は戻らない。研究は確かに忙しくてなかなかできないけど、魔法の研究は仕事しながらでもできる。あと子供もたくさんいるし。」まぁそうですね。子供がすでにいたなら迷うことなく残る選択をしたでしょう。でも、
「帰ります。ニュートさんがどう選択するかは知りませんが、私が帰るべき場所は地球です。」「じゃあ、3日後に帰還させる予定だから色々と準備をお願いする。」ちなみに逆召喚のときには全てのスキルは返還する必要はないそうですが、神様が与えたスキルは返却されるそうです。まぁ地球でも窒素はありますからね。でも魔力はないんですよね。じゃあ魔法は使えないのかな。
「いや、俺の読みでは使える場所はあると思うぞ?」「え?」
「俗に言うパワースポットってやつだよ。おそらく魔力が使えない現代人にはただ力をなんか感じるだけだけど、魔力が使える満里奈さんなら使えると思うよ。」なるほど。魔力は地球ではパワースポットを中心にほぼ0の魔力分布が広がっているというのが賢者さんの考えのようです。低いところから高いところに流れるので、パワースポットのようにスポットで高いところができるんですね。帰ったら試してみます。
そしてニュートさんも奴隷で特にここに未練はないようなのでついてくることになりました。彼は茶髪なので別に怪しまれないはず。あ、彼の日本語どうしよう。「言語翻訳は魔力があんまりいらないからおそらく自動で発動するはず。」と賢者さん。
なら、様々な言語がペラペラになるんですね。なら前の会社に戻っても給料が上がりそうですね、海外支店を持ってる会社なので。「神様とやらは異世界から来る不都合は全部解消しとくってさ」一番は彼の戸籍でしょうかね。あとお金。おそらく異世界の通貨はすべて日本円変換でしょう。賢者さんが、
「逆召喚強化魔法、送還魔法発動」私とニュートの身体が光に包まれます。「元気でね!お幸せに!」皆さんの声が聞こえました。そして、久しぶりに戻ってきました、日本。
時間はあっちとほぼ同じでだいたい7か月経っているのでしょうか。もちろん会社はクビになってましたが、関係ありません。
行方不明の娘がイケメンを連れて帰ってきたもんだから実家は大騒ぎです。海外に渡航していたと嘘をつくことにしました。あっちからわざわざ連れてきたので結婚するんだと伝えたら驚愕してました。神様によってニュートはアメリカ人になっていたので簡単に信じてくれました。で、早速帰ってきたら試してみたいことが。とりあえず調べたら東京から近い箱根がパワースポットみたいなので行ってみます。すると、「賢者さん、流石すぎる。」
本当に魔法が使えちゃいました。ちなみに言語翻訳とかの体内魔力を使う系の魔法はパワースポット以外でも普通に使えます。
使えないのは攻撃魔法などの窒素を無理やり変えちゃう反応です。するとニュートが「こうすれば家でも魔力が使えるんじゃないか?」と適当な石を取って魔力を込めはじめました。「なにしてるの?」「賢者が魔石を作ってるところさんざん見てたからな、こうやれば魔石の代わりになってスポットを意図的に作ることができると思ったんだ。」つまり色々なところで使える局所的な異世界環境を携帯できるようにしてるんですね。ニュートは何個か同じものを作ってます。「こうすれば転移魔法がいつでも発動できるぞ。帰る前に教えてもらっていたからできるだろ?」
確かに転移魔法はぶっ壊れレベルのチートスキルです。だからポータブルの魔石でほぼどこからでも家に帰れます。でもそんなに魔石を作ったら魔力足りないんじゃ、、「マナポーションを30本持ってきてるぞ?」え?あ、そういうことですか。彼はアイテムボックスが使えますからね。「それに家に帰ったらパワースポット扱いにしておけば勝手に魔力は回復するらしいぞ」
地球には魔力がほぼないので寝ても当然魔力は回復しません。
しかし異世界環境さえ再現すれば話は別です。
とりあえず私はスキルを生かして翻訳の資格を取って通訳として活躍することになります。彼はアイテムボックスと転移を生かして便利屋をやっています。普通の便利屋なら1日のところを移動距離も荷物の大きさも無視して運びますからね、件数をめちゃくちゃこなしてガンガン稼いでいるようです。転移があるので結婚生活も順調で生活中に妊娠が発覚しました。まぁ生活する中でリーナさんから色々教わりましたしね。
と、現実で幸せいっぱいな生活を送っている二人がいる一方、異世界ではリーナが帝王切開で5つ子を出産していた。狭い子宮に5人もいたせいで超未熟児で産まれた5人はしばらく病院で過ごしてちゃんと成長したら家に帰ってくるようだ。ちなみに全員女の子。俺がさすがにリ縛りはきついと付けた名前のマーサ、アンナ、リーナが付けた名前のリサ、リン、リカ。まぁ4文字とかだとこの先たくさん産まれるしあとが大変だからなぁ、、
で、5つ子が戻ってくる前に事件発生。なんと我が家にサキュバス襲来。何事かと全員臨戦態勢。修行中のラジーナさえ転移で戻ってきた。さすがにそろそろ出産だから無茶はやめて欲しいけどね。まぁ2年間身籠ってきて使命をこのお腹の子とともに言い渡されて複雑な思いがあるのは間違いない。
「まぁそんなに慌てないでくださいよ、賢者さんを取りにきたわけではありませんから。」やってきたサキュバスは礼儀正しい感じで釈明する。「ちょっとお願いがありまして、異世界人の誤解を解いてほしいんです。」彼女は現状を説明した。
サキュバスはご存知精を吸って生きる魔族だ。夢の中に侵入して夢精をさせてその精子を頂く。もちろん普通に性行為をして集めることもあるらしい。ただ、精子は普通にやっては簡単には集まらない。そこで彼らは受精の魔法、避妊の魔法を作った。この避妊の魔法の方法が異空間に精液を発射させて膣内に残さないようにするもので、この精液は魔法の発案者であるサキュバス全員が使える空間に移動する。これでサキュバスはほぼ餓えに怯える必要がなくなった。で、問題だったのはこの部分。魔力の濃い男性の精液の場合、魔族のサキュバスであっても妊娠できる。つまり、、「じゃあ俺は知らない間に10人のサキュバスの父親になっていたってこと?」そう知らないうちに勝手に使用されていた。魔力の濃い男性の精液は専用で集められる。食用は風俗やソープなどで毎日たくさん集まってくるので問題ないらしい。でもそんなに魔力の高い男性なんていないから、、「あ、勇者様の精液も使ってましたよ、賢者様が来る前に」じゃあ一切お話には登場してないけど、勇者にもパートナーがいるんだな。
受精の魔法はサキュバスが妊娠するために作った魔法だったそうだ。今ではエルフ族が活用してる。そのせいで大変だったけど。「で、誤解を解いて欲しいってなんだ?」「サキュバスは精液を吸ってそのまま命まで吸って殺してしまうという誤解が平然とまかり通っていて、魔族の中でも一番評価が低く、人間から嫌われているんです。」確かにこれは深刻な問題だ。人間と魔族は協調路線を歩み始めたのに輪に入れないのはまずい。
この誤解が溶ければ見た目も相まって人気は出ると思うけどな。リーナ達や子供がいなければ間違いなく見とれる大きなものがぶら下がってるし。「アーミア妃にちゃんと誤解を解いてもらえるように掛け合ってみよう。」彼女は魔族との架け橋だ。彼女の発言で誤解はどうとでもなる。一歳のパイラ王子とサキュバスを一緒に映せばおそらくさらに効果は高い。
フェイム王を通じてアーミア妃とお話ができた。「そうですか。私も悪い噂しか知らなかったのでかわいそうなことをしてしまっていたようです。王に代わりお詫びします。」
「いえいえ、誤解さえ解いてくれればいいんです。パイラ王子との共演は大丈夫ですか?」「はい。この子女性がこの年なのに大好きでね、大丈夫だと思います。」ちょっと別の意味で大丈夫じゃなさそうだけど突っ込まずに置いとこう。指摘するだけ無駄だ。翌日、王による
放送が行われた。
「サキュバスは人を殺す魔族として人々に嫌われ、恐れられてきた。しかし我々が考えているサキュバスと今現在のサキュバスはまるで違う。まずサキュバスは今や食べ物である精液には特に困っていない。彼女ら曰く10年放置しても大丈夫らしい。それはなぜか。彼女らは避妊の魔法を作り、自らの食糧を確保できる仕組みを作ったからだ。これは彼らの食糧確保のためでもあったのだが精液が合意がない場合以外膣を通らなくなったことで性病の割合が急減して今やほとんどかからなくなった。これは間接的にではあるが人類を助けたことになる。次に、彼女らは受精の魔法を作った。これは自分達が妊娠できる相手を探さなくても済むようにするためだ。ちなみにこの魔法は貴族女子魔法学園長のリズ·エルバンド女史が改良し、今では男子を産む魔法、女子を産む魔法、双子になる魔法、3つ子になる魔法を開発し、自身や娘のリーナ殿によって最大は5人まで、一つの卵子で魔法で分割できるのは3つ子まで、ということまではわかっている。これでエルフ族のルーシャ姫が双子を妊娠したの皮切りにエルフ族のベビーブームが起こっている。つまりまた間接的にエルフ族の窮地を救わんとしているのだ。」ここまで聞いていた聴衆の評価はサキュバスの評価を大きく変えていたのだ。ただ今までの噂がまだあることもあって怖い印象までは変わっていなかった。
「さらに、彼女らが誤解される原因となった命まで吸うという噂だが、真っ赤な嘘である。その証拠を見せよう」
そこには一歳になったばかりのパイラ王子がいた。そばにはサキュバスがいた。王子が害されるのでは、と見ている市民は心配になったがすぐにそんなことはないと気付いた。
王子から近づいていっているのだ。それを抱き止めるサキュバス。微笑ましい光景が繰り広げられていたのだ。
「ここまで見てまだあの噂が本当だと思うのか!ここまで貢献できる友好的な種族が命を吸うなどあり得ない!」
王にここまで強調されたら否定できる者などいない。
「サキュバスとこれから友好的な関係を築いていこうと思っている。彼女らは魔法の研究を行ったり、風俗嬢として生活すると言っておる。だから仲良くしてあげて欲しい。」
この演説は大きくサキュバスの好感度を上げることになった。サキュバスがいる風俗は大盛況になったし、賢者との共同研究もこのあと公表されたりしていくことになるのだった。
「ありがとうございました。これでやっと魔族側の評価も変わります。」「それは君たちが今まで頑張ってきたからだろ?」「そうですね。賢者様、私たちが勝手に子供を無断で作っていたことをお詫びします。」確かに無断では困るが、、
「子孫が必要なんだろ?だったら気にするな。でもさすがに勝手に父親になった以上、俺にも赤ちゃんたちに会わせてほしい。」
「それはもちろんです!ご案内致します。」するとポータルを渡してきた。「これはサキュバスの町に案内するポータルです。これで全員転移できますよ」「普通の転移魔法は使えないのか?」
「サキュバスは迫害をその評価によって受けてきましたからね、転移が使えると外敵が入ってきて大変なんです。」テレパシーでリーナたちに説明するとすぐに転移で飛んできた。「そりゃあなたの娘たちですもの、見たくないわけないじゃない。」妻達全員の意見だった。もうまもなくラジーナは臨月だ。出産が終わればいよいよ彼女の時空を巡る冒険の旅が始まる。
サキュバスの町に着いた。古い街に見えるが隠蔽の結界が貼ってあって普通には来れないようにできている。仕組みとしては視界を操る器官をおかしくしてさらに三半規管をおかしくすることで近くをぐるぐる回っていることを気付かせない仕組みだ。
で、大きな建物に行くと子供が集まっていた。
「こちら側が勇者様の子供で、向こう側が賢者様の子供になります。」勇者様も10人子供がいた。時期的に幼稚園児ぐらいの女の子が多い。サキュバスの特徴である角、しっぽ、翼がある。
で、俺の子供たちはやっぱりと言うかうち同様赤ちゃんばっかりだ。そして、、「やっぱり賢者様の子供の特徴ですねぇ。」
俺の子供で一番よく言われる特徴が大きな鼻だ。リーナもラジーナもルーシャも鼻が小さいので赤ちゃんの鼻が大きいと俺似だと話題になる。ケンジは特に俺にそっくりで一歳になりそうな今、本当親子だと母三人から言われるのだ。
それ以外も確かに俺が父親だな、と思う部分がある。女性ばっかりで子孫を残すのが大変だろうけど、頑張ってほしい。まぁ俺が妻達といちゃつくとその分彼女たちの子種が増えるんだけどな。
おそらく勇者さんは10名にした理由は別に受精の魔法と一定量の精液があれば妊娠するがその限界だったのだ。ただこちらはやってる回数がすごい多い。だからストックは、、
「お察しのとおりめちゃくちゃありますよ?」だよね。おそらく勇者と同じ人数にして俺の了承が取れたら増やす予定だったのだ。彼女たちは子供含めても100名程度しかいない。しかもエルフと違って長命でもない。だから俺が了承したら全部使う勢いでストックを使うだろう。「5年経ったら人口が倍になって俺の子供だけで半分越えそうだな、、」「おそらくそうなるでしょう。魔族は近親相姦上等の種族です。むしろオーガとかは血を濃くすることが強くなる秘訣だと言ってます。」おそらくこれはそうプログラムされているからだろうな。一体とか少ない数から一気に増えるのが魔族だ。その過程でまず間違いなく近親相姦が発生する。で、人間で起きる遺伝的な病気とかの問題も魔族自体が魔力、力をつけて人間の上位互換として作られた人間なのだとして考えると、魔力が高い場合、老化が起きにくくなるだけでは死を防げないはずなので病気にもなりにくくなる。そして力を持っているなら獣人とは逆の優勢遺伝子を持っているはずだ。つまり、どんな種族と交わっても魔族が産まれやすいように変更されている。で、そうなると血が薄まるのは魔族が最強とするなら弱くなることなので、避けるということだ。ただ獣人とは逆の一人ずつになるのでそう簡単には増えにくい。理由は複雑に絡み合っているがこんな創作物の中でさえ法則があるのだ。理由を考えるというのは大事なことだ。
「とりあえず5年後までには必ず来るよ。何かあったら連絡してきてくれ。」「わかりました。お待ちしてますよ。」
そう言って俺たちは家に帰ったのだった。
臨月になっても相変わらずラジーナは修行を続けていた。お腹は双子が入っていたリーナやルーシャより大きくなっている。成長すごくない?でもそんな中でも修行して魔物を倒してレベルを上げ続けていた。ついに大台の300まで到達したらしい。修行前の2倍か。本当に頑張っていたんだな。俺は地図魔法を発売したのを皮切りに防犯カメラ、レーダーなどの虎の子の魔法の魔道具を売り出すことにした。魔石を大量に毎日作っても足りないレベルの大フィーバー。魔石工場も作っていて毎日フル稼動なのに全く足りない。10万は余裕で越す勢いだ。これのおかげで白金貨がある生活まで戻ってきた。さすがに散財(国家予算レベルの救済事業)は今のところないが、子供が10人まで増えるのだ。さすがにどんな出費があるかわからないうちはちゃんと貯める予定だ。
ちなみに公爵として国にちゃんと税金は納めている。
あ、ルーシャとの約束を果たすことにこの前なって鑑定したらなんと赤ちゃんが4人いました。リーナ同様めちゃくちゃ激しくて「こんなことしてたんですね!」と嬉しそうだったが。
メイドさんは大変そうだ。何しろ5人が今退院して倍になってるからどこかで誰かが泣いてるという状況。メイド長が「奥方様方、さすがにこれ以上は双子とか人数が増える出産はおやめください。夜伽をするな、とは言いません。旦那様との営みを止めることは残酷なので。ただこれ以上同世代が増えすぎると過労でこっちが大変になります。なので次のラジーナ奥様が妊娠なさったら、3年間は避妊をしていただけるとありがたいです。」と警告を出した。確かに嫁さんが完全に暴走しちゃってるしな。お互いに子供が多すぎるのも一人一人見れなくなっちゃうし愛情不足に陥る子供が出るのは避けたい。だから俺がこう言った。
「リーナ、ルーシャは妊娠してから次が早すぎるし人数が多すぎるから、メイド長が言う通りにすべきだ。俺たちが愛し合うのはいいんだが、子供たちに親の愛情が伝わらない子供が出てくるのはまずい。だから今後は産むのは一人にして欲しい。別に俺もリーナもラジーナやルーシャと共に生きると決めたんだ。時間はちゃんとある。だから三年はちゃんと避妊しよう」「わかりました。ただ、ちゃんと愛し合うことはしてくださいね?」「それは承知している。」「ラジーナはもうすぐ出産だし例の件もある。もしかしたらあの事件が変わっているならここの未来も変わるだろう。だから時の巫女としての責務を果たしてくれ。まずは俺との子供、次代の巫女の出産が一番大事だ。」「わかってます。ギレーノさん本人に弱点は聞き出しましたからね。あれは防げますよ。」もちろんあの事件とは俺が殺害された事件である。リーナやルーシャの暴走は完全にこれのせいだ。もし過去改変が起こったら一応名前をつけたマーサ、アンナ、リサ、リン、リカは女の子の産まれた順番でつけることでリーナも納得してくれた。
まぁリーナは知っての通り甘え上手でエッチ大好きなので間隔を開けるのはあったとしても未来では女の子5人は結局産むことになるだろう。上に書いた通りリーナと俺は老化防止をかけてなるべくラジーナやルーシャといることを決断した。だって配偶者が先に死んだら悲しいし、その感覚を数百年間かけないで与えるのならなるべくそばにいて、それでもおそらく先に死んでしまうけど、思い出を山ほど残したいと思ったのだ。まぁ彼女たちの子孫は間違いなく数百の単位になる。年月もあるし俺のことを本気で愛してるからあそこまで暴走してしまうのだ。だから子供たちとラジーナやルーシャは共に歩むのだろう。
そして、ラジーナの出産のときが来た。
胎児がものすごく大きい。おそらく推定でも10キロはある。
これがドラゴンの出産なのか。うめき声をあげるラジーナ。
あまりにでかすぎて、子宮口が開いても全然出てこない。
その間もラジーナは苦痛で悶絶している。
頭がようやく出てきた。角は赤ちゃんのときはないようだ。基本的に魔法で隠してるだけで普通はあるからな、角。
でようやく全身が出てきた。途中で彼女は気絶してしまったようだ。元気な女の子。名前はラジーナが「リーナさんとルーシャの名前をもらいます!」としてナリシャにした。ナリシャもまた、大きな運命に抗うのだ。おそらく時の巫女として、もう二人の母親の名前をつけることで家族が見守っているよ、という風にしたかったのだ。もちろん確認したが彼女も全属性適正を持っていた。紛れもなく時の巫女だった。
「では、行ってきます!」産んだばかりのナリシャを放置して彼女は里に戻る。かなり薄情な母親だ。でもこれは運命に抗うためなのだ。決してナリシャを愛していないわけじゃない。それでも彼女の大切な母親やオスドラゴン達を取り戻すためにはラジーナが頑張るしか方法はないのだ。「過去を変えるのは想像以上の困難があるだろう。おそらく過去の未来もまたそれによって大きく変化する。ちゃんとここに戻ってきてくれ、ラジーナ。」「はい、わかってます。必ずこの時間に戻ってきます。」
ここから彼女の時間溯行の旅がスタートするのだ。
第2章は勢いで一気に書き上げてしまいました。
考察をねじ込むために展開がかなり不自然なところが自分でもあるのは自覚してます。それぐらい考察部分が多いのです。というか1章の恋愛要素削れば?と思った方。ちゃんとそこは一応は回収しましたよ。
次回がついに最終章となります。ラジーナの旅の結末、そして異世界魔法理論の根幹をなす方程式が登場します。
ニュートンの運動方程式同様式はめちゃくちゃシンプルですが、非常に多くのことがわかり、魔力の謎を解き明かす最終章となります。お楽しみに。