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火魔法しか使えないけど意外となんとかなる魔法学校生活  作者: 千津カムイ
暴食全裸爆発編
18/69

17話

「さて諸君、呼び名も決まった事だし、早速行くとしようじゃないか」

「はい質問」

「挙手ありがとうカビ……ペッパーくん。おほん、言ってみたまえ」

 コードネームを提案した彼女自身、普段と違う呼び名には慣れないらしい。らしくもなく少し恥ずかしそうに咳払いをしてから、僕の名前を呼び発言を認めた。

「ソルトは何処に何があるか知っているんですか? さっき言ってた書類とか、隠されてるお金とか」

「良い質問だね。恐らく皆同様の疑問を持っていると思う。そしてその答えはノー、だ。なので今からそれを調べる。以上だ」

「うん、わかった」

「最前衛は僕ですか?」

 なんで二人はこんなにすぐ受け入れられるのだろう。今エウレカ……もといソルトは結構とんでもない事を言ったはずなのに。目的地不明のまま敵地を探索するなんて、わざわざネズミ捕りにネズミが捕まりに行くような物じゃないか。現在の状態があまりに無防備で、危険過ぎる事をようやく理解した僕は、心に芽生えていたワクワクを完全に萎ませた。今は代わりに不安の芽が顔を出している。今すぐ帰りたい。

「前衛は私とペッパーが務める。二人はその二歩後ろから着いてくるように」

「「了解」」

「いや、いやいや了解じゃないですけど、僕が前衛とか無力にも程がありますって!」

「えぇい駄々を捏ねるな! 私が決めたんだ、もう結果は変わらん。世の中が絶えず移ろいゆく物だとしても、私が一度決めた意思が揺らぐ事は決してない。分かったね?」

 分かったね? と言われて分かった! と言えるほど僕も純粋馬鹿じゃない。火魔法しか使えない前衛なんて肉壁にもなりやしない。身の安全を考えるなら後衛。それも後ろに人が居てくれる真ん中辺りがベストなのだ。

「あの、後十秒後にまたさっきの警備が来ます」

「もー、カビトくんが無駄に話し込むから出遅れちゃったじゃないかぁ」

 いや普通に僕の名前呼んでるし。兎角、再び鎧模型に隠れ過ごした僕達は、そろりそろりと薄暗い廊下を進んでいくのであった。


▷▷▷


 当たり前の事ではあるが、屋敷の中はやはりとても綺麗だった。石造りの内装はどこもかしこも掃除が行き届いて、埃一つ見受けられない。街であれだけ粗暴に振舞っている連中が、自分たちの家を小綺麗に掃除して回っている姿を思い浮かべると滑稽で少し面白い。

「この壺とか幾らするんだろう……」

「おいおい不用意に喋るんじゃあないよ。今が敵地潜入中だって忘れてるんじゃないかい? 気を抜くのは関心しないぞ、ペッパー」

「その言葉、貴方にだけは言われたくありませんでした」

 ソルト(エウレカ)の指示通り、僕は今彼女と共に前衛を歩いている。残る二人は数歩分後ろを慎重に進んでいた。つい先程までの緩やかな雰囲気は多少陰を潜め、ソルトのご機嫌な鼻歌以外は酷く静まった緊迫の時間が流れていた。

「というか一人だけ魔法で姿を隠すなんて、ちょっとズルいと思うんですけど」

「何を言う。君は勉強を頑張ってテストでいい結果を出した同級生に向かって同じことが言えるのか? これは私の努力の成果だ。悔しかったら君もやってみたまえベロベロバー」

 姿は見えない。けど間違いなく今、彼女は人を馬鹿にするような顔をしているのだろう。全くもってムカつくが、言っていることは実際その通りだ。天才の所業を羨む方が愚か、凡人は凡人らしく黙って歩くばかりだ。

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