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火魔法しか使えないけど意外となんとかなる魔法学校生活  作者: 千津カムイ
暴食全裸爆発編
16/69

15話

「うんうん、素直でよろしい。タクミくんもこれくらい分かりやすくなってくれても良いぞ。君のクールガイっぷりも良いが、私は素直な子が好きだからな」

「考えておきます……というか、お喋りがしたいならお二人共あっちでお願いします。気が散るんで」

 そう言ってタクミは遥か遠くを指差し、それっきり口を噤んでしまった。瞬きすら最小限に留め、集中した様子で屋敷の中を探っている。

「……よしっ、出来たよ。これで多分大丈夫」

「おぉ、流石に早いな。軽い雑談の合間に計算を済ませてしまうとは。良き友人をもてて私は幸せだよ」

「えへん、そうでしょう……あぁ、そうだタクミくん、私は静かなタクミくんも、笑ってるタクミくんも可愛くて好きだよ」

「その話もう終わりましたから。今、手前通路に警備は居ません。行くなら今です」

 タクミは屋敷から視線を切り、フラウの書いた文字列の傍へと寄ってきた。小さな背が丸まっていてより小さく見える。エウレカもまた同様に文字の傍でしゃがみこみ、それから僕も来るよう手で促した。

「何をするんですか? というか、今更ですけどどうやって中に入るんです。壁登ってとか無理ですよ、僕」

「いかにもインドア派の君にそんな無茶を頼む人は居ないよ、それよりずっと確実な方法もあるしな。ほらこれだ、フラウのお手製転移魔法」

 エウレカの視線を受け、フラウは文字列の周りを円で囲み小さな声で『デルマホラ・テラルポート』と囁いた。言霊は宙で形になり、地面の文字列たちは薄らと光を帯び始めた。光は徐々に円形に大きくなり、僕たちの体をすっぽりと中に収めた。

「じゃあ飛ぶよ、皆目と耳と……あと鼻も塞いでてね!」

「えぇっ、いやそんな急に言われて―――」

 僕の言葉は途中で途切れた。口は動いているはずなのに自身の声が聞こえなくなったのだ。僕は今、光の渦の中にいた。見た事もない、宇宙の隅っこを遊覧飛行しているような光景が視界いっぱいに広がっていた。

 そういえば、以前本で読んだ事がある。長い距離の転移魔法に飲み込まれると、世の深理を知り頭がぶっ壊れる恐れがある。だから皆自分の脳を守るために視覚や聴覚、ついでに嗅覚も塞いで身を守るのだと。うぅん手遅れかもしれない。けど一応、僕はエウレカら他の人に習い、両腕を用いて目と耳と鼻を急いで塞いだ。

「……おーい、大丈夫かい? 生きてなくても返事だけはしてくれー」

 聞こえたのはエウレカの声だった。恐る恐る両腕を解き、ゆっくりと目を開けると心配そうなサラの顔がすぐそこにあった。何故だか彼の顔を久しぶりに見た気がする。日がな一日一緒にいるのいうのに、こんな顔を合わせなかった時は今まで無かっただろう。

「キュウ?」

「あぁうん、大丈夫……何とかね」

「ほう、君この子と対話出来るのかね? この可愛らしい鳴き声に込められた言葉の意味も、キチンと理解していると」

 エウレカに詰め寄られた僕は思わずえぇ、まぁ。と曖昧な相槌を打ってしまった。実際サラの言葉を理解しているかと言われれば、自信があるわけではなかった。ただ何となく僕がそう思っているだけだ。

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