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火魔法しか使えないけど意外となんとかなる魔法学校生活  作者: 千津カムイ
暴食全裸爆発編
14/69

13話

「……で、この格好はなんですか」

「何って、変装だよ変装。侵入には付き物だろう?」

 僕らは今、屋敷の前にいた。正確には門前に広がる草木の茂みの中。門番に姿が見られないようコソコソとしゃがみこんでいる所だ。

 屋敷というのは、街に駐在する軍部が使っていて、この街一番大きくて立派な建物だ。少し小高い丘の上に建てられていて、夜独特の街の喧騒が少し遠くに聞こえてくる。が、それはいい、問題はこの格好だ。

「流石に安直過ぎませんか、黒ローブに仮面って……」

「あぁ、タクミくん狐さんの仮面なんだ。とっても似合ってる、可愛いよ」

「どっちかと言うとフラウさんの持ってる黒犬の方が良かったです」

「ねぇフラウ、私はどうだい? ほら白猫、髪色に合ってて中々決まっているだろう?」

 この人たち大丈夫だろうか。これからガッツリ違法行為を行うというのにまるで緊張感が無い。まるで遠足にでも来たのかという具合に、キャイキャイと仮面の柄一つで盛り上がっている。そして僕の仮面は何故かトカゲの顔、他の人同様に口元は隠さず、そのせいでより目元が強調されている。爬虫類好きには悪いが、僕にはその良さがまるで分からない。あと黒ローブも趣味が悪いと思う。エウレカなんかが着れば似合うのかもしれないが、陰鬱な僕が陰鬱な服を着れば文句無しに悪役なのだ。トカゲ顔の悪役、マナが見たらハマり役だと笑うかもしれない。

「さてさてさて、仮面談義もそろそろにしてだね。突入前に目的の整理を済ませておこう。皆私の元に集合してくれ、そんで座りたまえ」

 エウレカに促され、僕らは小さな円になりお互いを押し合うように顔を近づけた。エウレカが人差し指を立て、自身の言う整理のために再び口を開いた。

「あの屋敷の中にはだね、私たち善良な市民からせこせこ奪い取った税金が溜め込まれている。それは本来、中央都市本部に全て納税され、国の一部としての役割を果たすための物だ。それがだ、奴らは一部書類偽装して横領、つまりピンハネしているんだ。私たちはそれを暴き、彼らの悪事を表沙汰にする。ここまで大丈夫かな、特に新米団員のカビトくん?」

「いや大丈夫なわけないでしょ。僕やっぱり降りますんで、後はよろしくお願いします!」

 言うが早いか僕は輪から飛び出し、茂みの中を走り出した。逃げるにしても門番に姿を見られる訳にはいかないと姿勢を低くしたまま走り……またも足を掴まれた。手の主はエウレカさんだ。そして顔面からぶつかる鈍い音と共に、今日二度目の地面とのキスは成された。

「あっ、つい……すまないねカビトくん。怪我は?」

「いえ、大丈夫です……というか」

「おぉい! そこに誰か居るのか!?」

 やってしまった。転んだ時の音は中々に大きなものだったらしく、門番が手に持った明かりと共に真っ直ぐ僕たちの方へやってきている。エウレカに体を起こしてもらい、茂みの中に体を潜めながら僕らはどうするか必死こいて思案し始めた。

(ど、どうしましょうエウレカ先輩)

(おいおい耳元で囁かないでくれ。ゾワっとしちゃうだろう?)

(言ってる場合ですか……あっ、いや。いや何でもないです)

(おっ、何か思いついたんだね。ほら言ってみな、エウレカさんは一般人の意見を鼻で笑うような愚行は犯さないから……だから、ほら早く。門番もうすぐそこまで来てるから! 早くぅ!)

「聞こえないのか? 出てこないなら水魔法でも撃ち込んでやろうか? もしくは闇魔法でアンデッドでも呼び出してみようか、アイツら日が明けるまで追っかけて来るんだぞ。怖いぞぉ」

 迷っている時間は無い、やるしかない。僕は意を決して息を吸い、エウレカの期待の籠った視線を受けながら一つ、頭に思い浮かんだばかりの案をそれはもう甲高い声で決行した。

「にゃ、にゃあぁぉ」

 そう、猫。猫の鳴き真似……エウレカがえぇ、とドン引きしているが気にする事はない。この窮地を脱するには今はこれしか方法が無い。日頃サラの高い声を聞いていたおかげか、クオリティは中々の物だったはず。もしこれでダメならエウレカを茂みからほっぽり出して僕は逃げよう。フラウとタクミには悪いが、そこはどうか勘弁して欲しい。

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