10話
「改めて我らが秘密基地、及び【革命団】へようこそ、カビトくん」
エウレカは円卓の上座、部屋唯一の出入口らしい壁の魔法陣と最も離れた席に腰掛けて話を始めた。
「まず初めに……既に二人とは話しただろうが、私から重ねて紹介させてもらおう。こっちの乳のデカい美人がフラウディア、こっちの目つき悪いチビがタクミくん」
「誰がチビですか。学年平均を少し下回っているだけです」
「タクミくん、しー」
子供扱いしないで下さい、と少年は口をへの字に曲げたが、まるで意に介する事もなくエウレカは言葉を続けた。
「次いで乱暴な手段をとったことを詫びよう。決して本意では無かった、しかしそれだけ君の力を必要としているんだ。君、カビトくんにもそう考えてほしい」
「僕の力、ってここに居る人たちに期待されるような力、僕にはありませんよ。全く、これっぽっちも」
「ふむ、君はあれか。自己肯定感がやたら低いタイプの人種か。最近の若者にありがちだな、一人で立てたやたら高い目標と現在位置の乖離に絶望し、一人で勝手に悲観する愚かな考えだ」
エウレカは手を翳し、僅かな魔力を用いて小さな魔法陣を作り出した。中から現出したのはこれまた小さな一角兎、光の粒で構成された模型のような存在がぴょん、ぴょんと机を跳ね、下座に座る僕の手をつついた。
「可愛らしいだろう。これもオリジナルの魔法だ。マホラやデマホラといった教科書魔法とはまるで違う、何から何まで私の魔法だよ」
「……凄いですね、確かにこんな魔法見た事もありません。でもまさか、ただこれを自慢したくて連れてきたんですか?」
「ちぇっ、折角見せたんだからもっと良い反応をくれよな……ふむ、あんまり多くを語るのは性に合わない。だからほんの少しだけ明言しておこう。君はね、君自身が思っている以上に才能に溢れている。今にも体から漏れ出そうな程、熱い炎が君の中で渦巻いているんだ、私が保証してやる。そして私たち革命団は君のその才能を買っているんだ」
そう言ったエウレカが指を鳴らすと、僕の手元にいた兎が光の玉に姿を変え、火花となって散ってしまった。彼女の言葉にあった自己肯定感の低さ、あれは確かに図星だった。エウレカ程の人物に才能を見初めてくれた今も、僕は僕を信じられないでいる。何せ桁違いの才能を持つ幼馴染がずっと近くにいたんだ。自分が霞んで、ちっぽけに見えたって仕方ないだろう。
「はい話は以上、二人とも、革命団四人目となるカビトに盛大な拍手を!」
「え、ちょ、ちょっと待って下さい。僕入るなんて一言も……というか、革命団って」
「あらあら、もしかしてエウレカちゃん今の今まで説明してなかったの?」