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火魔法しか使えないけど意外となんとかなる魔法学校生活  作者: 千津カムイ
暴食全裸爆発編
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9話

 フラウの指差す方には円卓があり、いつの間にか席の1つに腰掛ける少年の姿があった。少年は机に積まれた本の一冊を手に取り、時折コーヒーを啜りながらページを捲っている。耳が見える程の長さに切られた髪は、黒ずんだ頭頂部から降りていくに連れて金色へグラデーションが掛かっている。やたら鋭い目つきは本の文章を睨みつけているようだ。背は小さく、目も含め幼さの残る顔立ちからしてまだ中等部といった所だろうか。それにしてはやたらと落ち着いていて、雰囲気のある子だなぁ。

「……あの、あんまりジロジロ見ないでもらえますか? 気が散るんで」

「あぁ、タクミくんまたそういう事言って。初めましての人にはちゃんと挨拶しないとダメだよ?」

「さっきフラウさんが挨拶したんだから良いじゃないですか……はぁ、中等部一年タクミですよろしく。以上」

「タークーミーくーん?」

 本から目を離さず、無愛想な態度を改めようとしない少年に、手をワキワキと動かしながら詰め寄るフラウ。わちゃわちゃとした光景をぼんやり眺めていると、ふと脳裏に一つ記憶が蘇った。先程フラウが言っていた「タクミ」という名前、確か聞き覚えがある。中等部一年、確かそれくらいの学年にこれまた素晴らしい才能の持ち主がいると噂があった。もしかして彼がそうなのだろうか。

「うりうり、良い子にしないと本読ませてあげないぞぉ」

「もー、止めてくださいよフラウさん! コーヒー零して本が汚れても知らないですからね、エウレカさんにはフラウさんがやったって言いますから!」

「なんだとぉ、うぅんそれは……困るなぁ。絶対エウレカちゃん怒るもんね」

 あんな和やかな会話をしているのが、本当にそうなのだろうか。少し不安になってきた。いやでもきっとそうなのだろう。脳ある鷹は何とやらという奴なんだ、多分。気持ち改め、僕もタクミくんに挨拶しなければと彼に近づき「はじめまして」と言った。

「はいはじめまして。もし良かったらこのひっつき虫剥がしてくれませんか」

「タクミくん、女の人を虫だなんて酷いぞー」

「あはは……」

 二人は仲が良いのか悪いのか、お互いの事を引っ掴んで戯れている。せめてタクミくんがコーヒーを零さないようカップを二人の手から遠ざけるくらいしか僕に出来る事は無かった。問題のエウレカが部屋へやって来たのはそれから少ししてからだった。


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