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敗北と渇望

本日は同じ県を本拠地とするジュエル磐田との試合。

以前麻呂はジュエル磐田には見るべき者はいないと言ったが、そこは麻呂の目の節穴さに免じ許して頂きたい。


麻呂達エスプレッソは負けた。


それも5ー0で。


「…完敗だなこりゃ。」

麻呂の隣で常光が肩を落とす。

勝った、と飛び跳ねる女性(にょしょう)に見紛う美少年…名を守伊藍(かむいあい)といった。

この者は速さと技術が群を抜いており、麻呂達は守備を散り散りに切り裂かれラインをガタガタに崩され失点した。

更にゴールキーパーのギャエル・ギャロスとやら。

この者は紅毛人であり、果断な飛び出しとセービングにしてやられた。

何度か良い場面は作ったのだがな。完敗である。


「噂通りのテクニックだったのです。」

守伊が麻呂に握手を求める…。好青年故に握手を受けたが、敗者の傷に塩を擦り込むのではないわ、全く。

引き上げる両軍の選手たちであったが、麻呂は磐田の紅毛人に興味を惹かれて彼に話しかけた。


「そこな紅毛人。名を何と言う?」

「は?俺か?俺はギャエル・ギャロスだ。」

「ぎゃえるぎゃろす…。風変わりな名よの。」

麻呂の言葉にギャロスは顔を顰める。

「俺はフランス人なんだよ。フランスの日本人学校の連中とこっちでいう小学校でプレーしていてよ。

で、パパが日本で仕事する事になってこの磐田のジュニアユースでプレーしてんだ。」

「ふらんす…。宣教師達の国かの。」

「いつの時代だよそれ。」

ギャロスは大笑いした。見ると愛嬌のある顔立ちをしておる。

「今日の所は麻呂達の完敗よ。

だが次は無い故に覚えておくが良い、ギャロス。」

「へっ、次も俺たちが勝つ!」


ーー


「もう少し苦戦するかと思いましたが、案外楽に勝てたのです。」

磐田の控え室。守伊はギャロスに話しかけた。

「点差ほど実力離れてねぇけどな。俺も当たってたし、藍の事無警戒だったからエスプレッソは。」

磐田は氏真のゲームメイクを警戒して真っ先に潰しにかかった。

清水は相手の出方を伺っていた。

差はほんの少しだった。


磐田は清水を警戒し、清水は磐田を舐めた。差があったとしたらそのような気持ちのあり方だ。


ギャロスは家庭環境に問題があり、荒っぽい性格をしているが…反面根はとても素直であり、一度相手を認めると素直であり、自分がこれをやると決めたらやり抜くところがある。

故にキーパーとしては体躯に恵まれない彼でも努力の末に正ゴールキーパーの座を勝ち取った。


相手はもっともっと強くなる。この敗戦を糧に更に強く。


確信めいた予感にギャロスと守伊は微笑んだ。


ーー


「完敗だったなーくそ。」

「点差ほど実力の差は無い。差があったとしたら麻呂達の慢心よ。」

事前情報というのを疎かにしていたコーチ達の責任ではあるが。

「氏真君と常光とお兄ちゃん、徹底的にマークされてたしね。DMFにマンマークなんてよくやるわ。」

「DMF故に麻呂達のロングパスに警戒しておったのじゃろうて。カウンターアタックは現代の蹴鞠の美よ。」

さとみは頷く。

「磐田にあんな選手がいたなんてね。」

「守伊か?あいつは札幌の選手だったんだけどな。引っ越しか?」

「有名人なの?」

「全小の時にドサンコーレ札幌のU-12にいた。えらく可愛かったから女かと思ってたら男だったから覚えてる。」

「さとみ殿より愛い顔立ちであったな。」

「うーわ。認めるけどムカつく。」

さとみは不興げに顔を顰めた。


「さて、麻呂はこちらじゃから離れるが…常光、逸ってやや(赤ん坊)など作るでないぞ?」

「作るか!」


この世界に来てからやれ神童よ、と呼ばれて来た麻呂の初の敗戦。

だが気分は悪くない。


勝ち戦よりも負け戦から学ぶ事が実は多いものであり、麻呂も少々自惚れていたところに頭を冷やす機会があり慢心を悟らされた。


「次は勝つ。」


麻呂の心に宿った小さな炎。

それは麻呂に生前欠けていた狂おしいまでの勝利への渇望であった。

とあるキャプテン翼の二次創作の掲示板がありまして、守伊君は私のスレッドの、ギャロスくんは同じく掲示板でGMをされている方のキャラクターとなります。


守伊君は美少年ですが不幸体質、ギャロス君は家庭環境故の少し不良気味の少年とお思い頂ければ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 設定が独創的でめちゃくちゃおもしろいです!続きが読みたい!
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