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幕間の物語 大内義隆

リバース組は皆すごく残念だという認識でいいかと。

我は大内義隆。

戦国に誉れ高き大内家の当主であった。


当時の萩はまさに小京都。

銀山、貿易で経済的な基盤を作り、そして領内を大いに発展させた。


…だが我が若衆である陶晴賢に謀反を起こされ、戦国より退場する事となった。


ねっと、とやらを見てみるとこの世界でも衆道は一般的なものらしく、よく春画で男同士の絡み合いや、動画とやらでは奇妙な男が「イキスギィ!」と叫んでいるものが主流となっておる。


だが我はもうやらない。

ホモの嫉妬って怖いから。

ここだけの話、陶は毛利殿の三男、隆景殿と我が衆道を行なった後、隆景殿を殺さんばかりの目で見ていた。

果てに大人となった陶を可愛がらなかったせいか謀反…。


西日本に覇を唱えた大内家がひとりのホモの嫉妬で滅ぼされた、など最早笑うに笑えぬ喜劇よ。


幼稚園という寺子屋では我と同じ境遇に東海道一の弓取り・今川義元殿の嫡男今川氏真殿がいた。

今川殿とは小学校という寺子屋まで同じであり、噂に違わぬ文化人、そして剣豪であった。

小学校では時の将軍足利義輝様も同じ境遇にあられ、義輝様はお変わりなくこの世界でも剣の道に生きられると仰られてた。


今川殿、義輝様と小学校の授業とやらで連歌を行なったが、久しく知識の水準が我と同等の人と行なったのでまさしく至福の時であった。


今川殿は蹴鞠が達者故に蹴鞠の道を極めると言われていた。

現代の蹴鞠は風雅さには欠けるものの合戦の如く声を張り上げる者達が激しくぶつかり合い、擬似合戦のような激しさを見せていた。

そんな中、今川殿がその場に立つとそれはあたかも静謐な空間にいるかのような静寂が支配し、今川殿の繰り出す球は美しい曲線を描いてお味方の足に収まる。


我も義輝様も一度今川殿のちーむと合戦したが、今川殿の足元にも及ばなかった。

あれぞまさに天賦の才。天性が故の眩しき輝きよ。


さて、我は現在日の本一の名門と呼ばれる寺子屋ーー中学校に入学しておる。

たしかに日の本一と言われるだけにおる者達は頭脳明晰な者達ばかりで、のちの日の本を背負うであろう者ばかり。


だが。

この世というものはこのように学習のみを行わせる事を良しとしておるのか?

子供の師となる野原や田は消え、生物達もいない。このような雅で無い中、子供達は何を学ぶというのか。

時折和歌や茶会でも開かねば皆窮屈でたまらなくなるであろう。


茶会といえばこの世界の両親にどうしても、とねだって茶器をひとつ貰った。茶器といってもこの世界の父が土を捏ねて焼いただけの野趣溢れるものではあるがな。

我の寺子屋は寮生活となる為、茶釜などの持ち込みは出来ぬ。だが時折趣には甚だ欠けるがーポットとやらのお湯を使い同室の者に茶を点ててやっている。

作法は…まぁこの者達に罪は無い。無学な御両親にこそ責はある。


和服の持ち込みも出来ず、ジャージとやらが普段着である我が学友達。

このような雅でない場所も無い。故に我は必ず人前に立つ時は身なりを整えて出るように心掛けておる。


常在戦場。


仮にこの場で横死したとしても恥にならぬ格好でなければなるまい。

痩せても枯れてもこの大内義隆、大内家当主としての矜持を捨てるつもりはない。


本日はかつての寺子屋の同窓生が東京にやってくる。

なんでも池袋に行きたいのだ、と。

女人故に道中の危機があっては男子の名折れ。我も付き添い向かうことにし…


その日、我は運命の出会いを果たす。


煌めく春画の数々。

我の世界では考えられなかった着色、線画の美…

そして何より。本は反乱しない。


これこそ噂に聞く桃源郷というものか。




ーーこうして我は現世に容易く馴染んだのであった。


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