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5 郷田川義治、嵐に遭遇!

 「……よし、誰もいないな」


 昨日の通称 鳳樟院楓事件|(僕の中だけ)。

 一夜明け、いつもの通学路を進む僕だがその歩みはとてつもなく遅いものだった。

  

 あの学園の王女プリンス 鳳樟院楓がこの僕に告白をしてきたんだ。

 しかも一昨日は彼女を押し倒しその胸まで触るという神をも恐れぬ所業を犯してる……。

 絶対にあの告白が本当なはずがない!!

 上手く告白は躱したが、今この瞬間も鳳樟院さんの手下?が僕の命を狙っているに違いないんだ!

 一秒たりとも気を抜くことは出来ない……。


 「おっ、義治じゃないか! こんな所で何してるんだお前」


 「ひっ、な、なんだ翔かビックリさせないでよ……」


 校門前の電柱から学校の中を伺っていた僕は背後から背中を叩かれ驚きのあまり腰を抜かした。


 「ハハハハハッ、どうしたんだよ今日は! こんなこといつもしてるだろ?」


 「ぐっ、それには深ーい事情があるんだよ! ふん、翔みたいに悩みも無さそうな奴には分からないよ」


 「へぇ~、そうなんだな」


 翔は地面に置いていた野球の道具が入っているであろう巨大なカバンを肩に担ぐと、僕の前を進み校門へと向かう。

 流石にいつまでもここにいるわけにもいかず、その後を追い僕も校舎へと向かい進み始めた。


 「でもまぁ俺には分からないよ、学園の王女プリンス 鳳樟院楓に告白されて、しかもそれを振る様なモテ男君の事なんてな」


 「はっ!? な、なんでそのこと知ってるんだよ! もしかしてあの時……」


 僕の言葉に、翔はゆっくりと振り返ると小さく笑みを浮かべた。

 嘘だろ、あの場面見られてたの……?

 翔が見たということは、それならあの時教室にいたクラスメートも……。


 僕が恐怖に震えているのに翔も気づいたのだろう。

 慌てて口を開き答えた。


 「い、いや見てたのは俺だけだぞ?? 他の奴らには鳳樟院楓がお前に会いに来たことを含めて昨日のことは誰にも言わないように釘を刺しておいたから心配するな」


 「そ、そうなんだ……、それならひとまず安心だよ」


 「ハハハハッ、そんなこと心配しなくても大丈夫だって! 気にし過ぎなんだよお前は」


 「いや、そんなことは無い! あの鳳樟院楓さんだぞ? 多分何か深い思惑があって僕に告白したんだろうけど、彼女を振ったことは既に学年、いや学園中に知られているはず……。気を抜くと背後からズドンと一発……」


 「いやいやいや、それは無いだろ。てかズドンって何だよ、拳銃で撃たれるのか??」


 だが翔の声は既に僕には届くことは無かった。

 今や学園中が敵に見える。いや、敵どころか暗殺者にしか見えない!

 

 「僕は殺される、絶対に殺されるんだ……」


 「はぁ、これは中々重症だな……」


 校舎に入ってからも物影に隠れつつ教室に向かう僕の姿に、翔は苦笑いを浮かべながら後に続くのだった。







 その日の放課後──


 「はぁ、何とか一日終わったぁぁぁぁ」

 

 ホームルームが終了しクラスメートたちが教室を後にする中、僕は緊張の糸が切れたかのように目の前の机の上に倒れ込んだ。

 

 今日一日、周りのクラスメートはいつもと変わらなかった。

 これは本当に翔の言った通り昨日のことは知られていないのか?

 いや、油断は禁物。アニメなら必ずこの辺りで何かが起きるはずだ。

 気を向いたらそこで命がないと思え!


 「ほらな、言った通り何も無かっただろう?」


 「翔……、いやこれも鳳翔院さんの罠かも知れない。はぁ、やっぱり信じられるのは君だけだよヴァルキリー」


 「やれやれ、今の俺にはお前の愛しのヴァルキリーにも同情しそうだよ」


 「それどういう意味?」


 「い、いや深く考えなくて大丈夫だ」


 「変な奴だな」


 「……お前にだけは言われたくねぇよ」


 僕の言葉に、翔は小さく息を吐きながら首を左右に振った。 

 でも後は無事家まで帰ることが出来れば任務完了。

 さて、今日はそろそろ帰ると……、あれそう言えば何か忘れているような……。


 「後輩ぃぃぃ!!! おどれ何で昨日部室に来なかったんじゃぁぁぁ!!!」


 「げっ、松堂先輩!? なんで一年の教室に……」


 「うるさい! 先輩命令に歯向かいやがってぇぇぇぇ」


 「ほげぇ!!!」


 教室の扉が勢いよく開かれ現れたのは一人の女生徒。

 そのスカートの色は一年とは違い青く、彼女が二年生であることは現している。

 彼女は教室に残っているクラスメートの間を抜け僕の前まで進んでくると目にも止まらぬ速さでパンチを繰り出し、腹部への衝撃と共に僕はその場に膝を付いた。


 「こ、これには深い理由が……」


 「ほう? 先輩からの招集に答えられない理由があると??」


 「ひぃぃぃ」


 「まぁまぁ松堂先輩、義治も悪気があったわけではないのでその辺で」


 「陽田か。……部外者は黙ってろい!」


 「ほげぇ!!」


 「つ、翔ぁぁぁ!!」


 150cmほどしかない松堂先輩の拳はどうやったのか的確に仲裁に入った翔の頬を捕らえる。

 180cmはある翔だが、彼の体は宙を舞い地面に倒れるとピクリとも動かなくなった。

 

 「よしこれで邪魔者はいなくなったな! それじゃあ後輩、あとは部室で話を聞こうじゃないか!」


 「い、いやだぁぁぁぁ」


 「アハハハハッ、そうかそうかそんなに嬉しいか!」


 やだなんでこの人こんなに力が強いの?!

 身長は僕の方が20cm以上高いはずなのに僕が引きずられるってどういうこと???

 す、すまない翔! お前の犠牲は無駄だったみたいだ……。


 僕は床に倒れ気を失っている翔に心の中で手を合わせると、松堂先輩に引きずられるまま旧校舎へと連れ去られるのだった。

 旧校舎2階。そこには唯一旧校舎内にある部活 映像研究会、通称「オタク部」が存在するとかしないとか……。

   

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