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最強のステータスを引き継いで人間に転生した聖獣ベヒーモス、勇者の婚約者(お姫様)をうっかり寝取ってしまう  作者: 銀翼のぞみ
一章

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36話 魂の解放と懸念

 迷宮十層目――


『ガオォォォォン――ッ!』


 耳を劈くような咆哮が鳴り響く。


 敵はクロノたちの頭上で、二枚の翼をバッサバッサと鳴らし、滞空している。


 それの名は〝ワイバーン〟――


 小型の飛龍型モンスターだ。


 ランクはBランクであり、上位のドラゴン族のようなブレス攻撃はしてこないものの、上空から爪や牙による強襲を仕掛けてくる厄介なモンスターだ。


 小さな村であれば、あっという間に滅ぼされてしまうであろう。


「ふんッ!」


 クロノが《聖獣剣》を両手持ちに切り替え、大きく振り上げた。


 凄まじい膂力によって繰り出された斬撃が衝撃波を生み、滞空するワイバーンに襲いかかる。


 ワイバーンのいる位置は、《覇魔銃》の射程から外れていた。

 なので照準は正確ではないが、射程が長く範囲も広い斬撃による衝撃波を使うことにしたのである。


『ガァァァァァァァ――ッ!?』


 困惑の声を上げ、バランスを崩すワイバーン。

 自身の生み出す気流を乱され、そのまま地面へと勢いよく落ちてくる。


 そんなワイバーンの首を、クロノは、斬――ッ! と切り落とす。


「す、すごいですの……! Bランクモンスターを一瞬で……」


 飛行能力を持ったBランクモンスター、流石にクロノも苦戦する……。

 シェリルはそんな風に考えていたのだが、そんな考えは杞憂であった。


「よし、次のモンスターを狩りに行き、たいところではあるが……シェリル、〝スタミナポーション〟を飲んでおけ」


「は、はいですわ!」


 ストレージから取り出した小瓶をクロノから受け取りながら、シェリルが返事をする。


 スタミナポーションとは、その名の通り体力を回復させるマジックアイテムだ。


 シェリルの息がだいぶ上がってきた。

 それにクロノは気づいたというわけである。


「…………」


 スタミナポーションを飲み終わったところで、シェリルが俯いてしまった。


 その表情は悔しげに歪んでいる。


 クロノは戦いながらこの階層まできたというのに、疲れた様子を見せない。

 だというのに、自分はついていくだけで息が上がってしまっている。


 そんな事実が、彼女の気持ちを責めるのだ。


「気にするな、シェリル。吾輩は特別な体をしているだけだ。むしろ、このペースについてきているのだから大したものだ」


「クロノ様……」


 自分の心境に気づき、気遣ってくれたクロノ。

 こんな状況であっても、シェリルは嬉しくなってしまう。


「さぁ、行くとしよう。モンスターの魂もあと少しで集まることだしな」


「はい、クロノ様!」


 ◆


 迷宮十三層目――


 足を踏み込んだところで、クロノたちは陽の光で照らされる。

 どうやらこの場所は天井が吹き抜けになっているようだ。


 そんな時だった――


『人間がここまで来るのは久しいナ……』


『うム、殺し甲斐がありそうダ』


 岩陰から、クロノたちを見つめ、厭らしい笑みを浮かべる異形が二体……。


 二メートルはあろう赤銅色の巨体、頭には大きな二本のツノが生え、二体とも金棒を手に持っている。


 鬼人型のAランクモンスター〝オーガ〟だ。


(最初からシェリルを狙われては面倒だ、こちらから仕掛ける!)


 右手に《聖獣剣》を、左手に《覇魔銃》を構え、クロノが勢いよく飛び出した。


『ぐッ……!?』


『速イ……ッ!』


 一瞬で自分たちの間合いまで詰めてきたクロノに、驚愕の声を漏らすオーガ二体。


 そのうちの一体に向かって、クロノが一文字に斬撃を繰り出す。


 スパン……ッ!


 滑らかな音を立てて、防御しようと突き出したオーガの金棒が真っ二つに切り裂かれる。


 慌ててバックステップで距離を取るオーガ。


 しかし、もう一体のオーガがクロノの後ろに回り込み、金棒を振り下ろしてくる。


 クロノは涼しい顔で、それを身を捻って避けて見せる。


 そしてそのまま左足で蹴りを繰り出し、オーガの鳩尾にヒットさせる。


 軽やかに見えた蹴りだったにも関わらず、オーガが面白いように吹っ飛んでいき、そのまま壁に激突する。


『クッ……!』


 このままでは勝てない!


 もう一方のオーガはそう判断したようだ。


 クロノを一瞥すると、そのままシェリルの方へと駆け出そうとする。


 ドパン――ッ!


『グガァァァァァァ……ッ!?』


 腹に響くような思い音に続き、オーガの悲鳴が鳴り響く。


 見ればオーガのアキレス腱から、血が噴き出しているではないか。


 もちろん、クロノが魔弾で撃ち抜いたのだ。


「吾輩を前にして他の者を狙うとは、ずいぶん余裕のようだな?」


『ば、馬鹿ナ……! 人間の子どもがこれほどの力ヲ……ッ』


 恐れ慄いたかのような表情でクロノを見つめるオーガ。

 壁に叩きつけらたオーガも立ち上がるが、襲ってこようとはしない。


 二体とも、他のモンスターと違い言葉を介するくらいの知性はある。

 それがあるゆえに、クロノに敵わないということを理解してしまったのだ。


『た、頼ム、人間ヨ……! 我らを見逃してくレッ!』


『引き換えに我らの持つ、財宝を差し出ス……!』


 懇願するオーガ。

 その目に偽りの色は見えない。

 恐らく財宝を持っているという話も本当なのであろう。


 そんなオーガたちにクロノは――


「だが断る!」


 ――と、勢いよく言い放つと、二体の眉間を魔弾で、ドパンッ! と撃ち抜いた。


「はぁんっ、容赦ないクロノ様、素敵ですわ……♡」


 シェリルがクロノに見惚れるのだった。


「よし、これで魂は全部集まったな」


 必要な五百の魂、それが今倒したオーガで全部集めきることができた。


 クロノは腰につけた懐中時計型のマジックアイテムが、紫の光を放ち始めたのを確認する。

 これが全ての魂を集めきった時の合図だと、ライルから説明されていたのだ。


「クロノ様……」


 ランタン型のマジックアイテムをクロノに差し出すシェリル。


 クロノはこの場にモンスターがいないことを確認すると、さっそくシェリルの中に宿る四魔族の魂を分離するための儀式を始める。


 儀式と言っても、やることは簡単だ。

 シェリルの持つマジックアイテムに、クロノの持つマジックアイテムを翳す。

 それだけで、儀式は完成する。


「いくぞ、シェリル」


「はいですの……!」


 シェリルの持つマジックアイテムに、クロノが腰につけたマジックアイテムを触れさせる。


 するとどうだろうか。


 シェリルが紫色のオーラのようなものに包まれた。


 そしてオーラは吹き抜けになった天井へと登っていき……そのまま見えなくなる。


「どうだ、シェリル……?」


「あ、あ……感覚が……わたくしの中に今まであった、忌まわしい感覚が消えてますわ……!」


 ボロボロと涙を流しながら、クロノを見つめるシェリル。


 どうやら儀式に成功したようだ。


 一応、念のためにバニースーツをズラして脇腹を確認したところ、魔族紋は綺麗さっぱり消え去っていた。


「クロノ様!」


「ちょっ、うむぅ〜〜〜〜!?」


 感動のあまり……シェリルが、ガバッ! とクロノに抱きついた。

 バニースーツに包まれた彼女の豊満バストに顔が埋もれ、クロノはくぐもった声を漏らす。


「ぷはぁ! シ、シェリル! ひとつ質問なのだが!」


「な、なんですの、クロノ様? せっかくここから既成事実を作ってしまおうと思ってましたのに……」


 トンデモナイことを言い出すシェリル。

 感動の勢いで、キメようとしていたようだ。


 だが、クロノはそれどころではないと、シェリルに聞く。


「解放された四魔族の一柱の魂……それは、消滅するということでいいのだよな……?」

 と――


「そういえば……その辺の話をお父様から聞いたことはありませんでしたわ」


「……嫌な予感がする。急いで戻るぞ!」


 クロノはシェリルを背負うと、そのまま全速力で駆け出した。


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