傲慢粉砕 従順 新事実
例のごとく遅くなりました。
悲報、頑張って作った召喚獣に弱そうと言われました。
私ってそんな弱そうに見えるのかな…。
「あの…私が召喚したけど、いきなり弱そうはないと思うんだけど…」
「見たままの事を言って何が悪いのだ?それとも見た目よりも強いとでも言うのか?」
うん、気の強い子だ。私の召喚獣とは思えないくらいの態度の大きさに頭が痛くなってきた。ズツゥ…。
私の魔力で召喚したんだから、私の強さと言うかオーラみたいなものが分かると思ってたんだけど……もしかしてステータス偽装の影響で、見た目も弱そうに見えてる…とか?
「我を召喚するには感じ取れる魔力が弱すぎるし、身体もあまり鍛えている感じがしない…おそらくは魔道具か何かを使って我を召喚したのだろう」
容赦無く罵倒してくる…私は悲しいよ。ステータス偽装を解除して分かってもらうのが早いかなぁ。あまり持ち上げられたくもないから強すぎるとも思われたくないし…ちょうど良い所が欲しい。
「魔道具は使ってない。私にはあなたを召喚するだけの強さは十分あると思ってもらいたいんだけど…。
それから、あなたの名前は黒夢。私の名前はイブだからよろしくね」
「何故勝手に話を進めているんだ?我の力が欲しくて召喚したのだろうが、少なくとも対等かそれ以上の強さを持たないお前の話を聞くことはない」
凄い反発してくるんだけど。召喚獣ってこんなにも面倒な感じなのか…。それとも素材に使ってる黒鬼の影響なのかも知れない。
これだけ強さを求めてるんだからクロムはかなり強いと思う。眼神でステータスを見てからこの先のことを考えよう。
さてクロムのステータスは…
名前 黒夢
レベル 1
年齢 31
性別 女
職業 召喚獣
体力 6000
魔力 2200
物理攻撃力 4500
物理防御力 3800
魔法攻撃力 1200
魔法防御力 3200
運 3000
うん、知ってた。理解出来ないし、一般のステータスに比べて桁が多い気がするし、それでもぶっ壊れなんだろうなとは思ってた。
4桁までは表示されてるから、私の”測定不可”は5桁以上ってことになるのか…。最低5桁以上だから本当のステータスがどれくらいなのかは想像できないけど。
魔法とスキルはどんなものがあるんだろう。
魔法
なし
スキル
《豪腕》 《火耐性》
魔法はないみたいだけど、スキルは黒鬼が持っていた《豪腕》と《火耐性》が付いてる。これも黒鬼の魔水晶を使った影響かもしれない。
黒鬼の時に《嗅覚強化》は奪ってあるからないけど、《豪腕》に《火耐性》は黒鬼が持っていたスキルだったし、魔水晶にスキルや魔法が残る可能性があるのかもしれない。
「私が強ければ話を聞いてくれるし、従ってくれるってこと?」
「そうだな。我より強いならそれがどんな者でも従ってやろう」
すごく上から目線なんだけど…強さを証明したらいいみたいだし軽く何かして認めてもらおうかな。
「何をしたら認めてくれる?」
「ふむ……こういうのはどうだろう」
クロムがそう言い終わると早歩きで私の後ろに回り込んでくる。何で後ろに回り込んだのかわからないけど、きっと何かあるのかもしれない…そんなことを考えていたら、後頭部に多分クロムの手が触れた。
触れた形からして正確には拳だと思うけど…何故急に殴ってきたし。睨むために後ろを振り向くと、クロムが右腕を振り下ろした状態で驚いた表情をしている。何で?
「何で急に殴ってきたの?理由次第では怒るからね」
「……いや、痛くはないのか?知らないと思うが、我はスキル《豪腕》を持っているから、今の一撃で岩を簡単に砕けるくらいの威力はあるはずだったんだが……」
そんな危険な攻撃を人に向けるなよ…相手が私じゃなかったら死んでるぞ。これは少し優位に立つために利用してしまおう。
「まぁ、私が強いから耐えれたんだけどね。普通の人なら真っ赤な花が咲いていたかもしれないけど」
「そんな問題ではないだろう…拳が当たる瞬間に何かしたのか、あるいは何かしらのスキルでも使っているのだろう」
「私のこと疑いすぎじゃない?何もしてないし、スキルも魔法も使ってないんだから私の実力だよ」
「そんな話で納得できるわけがない!あの一撃は確実に殺せるレベルだったはずだ……何かしてなければ説明がつかない」
そんなこと言われても、ローブを着てるだけだから本当に何もしてないし、仮にローブがなかったとしても無傷で済みそうな気はする。それくらい表示されてない防御力は高いと思うし。と言うか殺す気だったのか…今後のためにもむやみに攻撃しないように教えないと。
「そんな殺す気の攻撃を簡単にしちゃ駄目でしょ。私以外に耐えられる人が居るかわからないんだから」
「……いや、多分いないと思う。魔法やスキルを使えば話は違うが、普通に受けて耐えるのは無理だ…ありえんのだ…」
「まぁ実際に耐えたんだし、これで私の強さをわかってもらえたってことで」
「む…防御は優れているようだが、攻撃はどうなんだ?防ぐだけでは何も解決しないからな」
全然納得してくれないんだけど…。本気で攻撃をしたら、この辺りの地形を犠牲にしそうで嫌なんだけど。何か軽めの魔法で納得してくれればいいなぁ…。
「弱い魔法攻撃なら出来ないことはないけど…的がないから見せられないんだよね」
「的なら我に任せろ、そこら辺から大きな岩を持ってくるからそれに当てるといい。まぁ表面に傷を付けられればギリギリ認められるレベルにしてやろう」
自分の召喚獣だけど…すごくウザくなってきた。持ってきた岩を粉々にして驚かせよう。本当の実力は見せられないけど、クロムより強いことは教えておかないとね。
クロムが岩を取りに行ってから数十分、2メートル越えの大きな岩を片手で持ち上げ、早歩きで帰ってきた。4桁ステータスでそれが出来るなら、私は指1本でも行けそう…シュールな絵だなぁ。
「待たせたな、丁度良い大きさの岩を探すのに少し時間がかかってしまった。
(石よりも硬い”圧縮硬石”を遠くの山で探してきたからな、人間には傷一つ付けられないだろう。まぁ我でも割ることができるかどうかの硬さだろう)」
「これ、大きいよりも巨大って感じがするんだけど…これを砕くにはちょっと本気を出さないと無理かなぁ」
「ちょっとなどと言わずに本気でやらなければ、砕く以前に傷もつけられないと思うぞ?」
「本気……じゃあこの岩を粉々にしたら文句はないと言うことでいいのね」
「万一にも粉々に出来たら、我の名前も認めるし素直に服従してやるぞ」
よし、これでようやく終わる。岩を粉々にするだけで認めてもらえるなら、何個でも砕くよ。
でも、割るなら軽く出来ると思うけど、粉々にするならそれなりの魔法を撃つか…本気で殴る?
さっき攻撃魔法が使えるって言っちゃったし、魔法で砕かないとクロムの反応が怖い。周りに影響がない砕きやすい魔法……魔法使いレベル10の重力魔法ならグシャァって出来そう…この世界においての伝説級魔法だけど、色々誤魔化して誤魔化せば乗り越えられると信じよう。
イメージは上下左右前後の6方向に重力魔法を使って粉々に…なるのかな?もしかして圧縮されて小さい石になってしまうのでは……砕くのって難しぃ。
少し考えた結果、上下から一気に重力を掛けて砕けるのを祈ることにした。多分いけるはず。
「今からやるけど、もし破片とか飛んできたら上手く避けてね」
クロムに忠告してから魔力を体感数値2000くらい使って魔法を使用する。上と下に黒色の魔法陣(イメージ的に魔法陣があるとやりやすかっただけ)を展開して重力魔法を使った。
体感数値2000の魔力はオーバーキルでした。嘘でしょ…。
魔法が発動した瞬間、岩に亀裂が走り数十秒後には砂の山が出来ていた。上手くできたみたいで安心した。
砂の山を確認してからクロムの方を見ると、驚愕と理解出来ない表情とその他色々混じったような、表現し難い顔になってた。やりすぎたと思ったけど丁度良かったのかも。
「見ての通り粉々になったけど、問題はないよね?」
「…………様」
「…えっ?」
「主様!一生ついて行くので、これから何卒よろしくお願いしたい!」
全力の手の平返しだ……やっぱり重力魔法はやりすぎだったかもしれない。
「き、急にどうしたの?そして何故に主様?」
「今の魔法が重力魔法なのは我にも解る。いえ、解ります。
しかし!重力魔法は女神様が定めた魔法の中で最高レベルであり、世界中を探しても1人居るか居ないかの領域なのです!
そんな女神にも届きそうな領域の御方に召喚して頂いたとあれば、我は誇らしく思います」
力を見せた途端に信者のような事言いだした…。しかも女神に届きそうって女神そのものみたいな存在だから、否定できないし肯定もしたくないから反応に困るぅ。
「う、うん。あまり堅苦しくない方がいいかな。
これから一緒に過ごしていくことになるからね、貴女は姉のクロム。私は妹のイブ。旅好きな仲良し姉妹で行こうと思ってるから。そのつもりで髪色も合わせたわけだし」
「……姉妹設定というものは分かるが…我と主様の髪色は全然違うのだが」
「……えっ?」
「そんなに困惑されても違うものは違うので…」
「…ちなみに、私の髪色って何色?」
「白に近い銀色です。とても綺麗な色をしているので鏡をみたら分かるかと。とても黒色に見間違えることはない…と思いますが」
私の髪の色は恐らく白銀らしい。向こうでの私の髪色は黒だったから、クロムの髪色も黒にして姉妹設定を作ろうと思ったのに、この世界での私の髪色は白銀。どうしてこうなった。多分女神様が何かしたんだろうなぁ…教えておいてほしかった。
まぁ、髪色が違っても姉妹で押し通せる…はず。うん、多分何とかなる、なって欲しい。もし無理そうなら……別の街に逃げることも出来るし、帰ったらクロムの冒険者登録をしないとね。