初仕事 魔法作製 情報収集
ついつい他のことに誘惑されて更新が遅くなってしまいました。
翌朝です、おはようございます。
早い時間に眠ったからなのかあまり疲れていないからなのか、早い時間に目が覚めました。
部屋に鍵をかけ、下の階に降りる。カウンターから客席を忙しそうに移動しているティーナがこちらに気付き、ちょっと待ってて的な感じで空いている席を指さした。そこまで急ぐわけではないので、席に着きのんびりしていること数分、ティーナが近付いてきた。
「今日は何故か忙しいんですよ。泊まっている人を優先したいんですけど、商売だから断りづらくて」
「大丈夫ですよ、別に食べられないわけじゃないのでしたら待ちますし」
「ありがとうございます、そう言ってもらえると助かります。あ、朝食はもう少ししたら出来るのでまた後で持ってきますね」
そう言って戻っていくティーナの後ろ姿を見た後、店内を見渡す。どの席を見ても女性しかいない。一般的のな服を着た人やちょっと高価な服を着た人、防具を着けた冒険者らしき人、その全員が女性だった。
店内を見渡して怪しんでいるとティーナが朝食を運んできた。今回もトゥメルのスープは健在のようです、もう固定メニューなんじゃないかな。
朝食を頂いた後、初仕事をするために宿屋を出て一度ギルドに向かい中に入ると、時間が早いからなのか他の冒険者が仕事を探していたり話をしていたり賑わっている。ランクFには常設くらいしか仕事がないのでギルドに寄る必要はなかったけど、ギルド内にいる冒険者も女性しかいないのか確かめるために来た。
結果はやっぱりと言うか当たり前のように女性しかいない。女性だけだと力仕事とか大変じゃないのかな…そう思っていた時期が私にもありました。
ギルド内にいる冒険者の半数は剣を携えていて、見た目が筋肉と高身長と謎の安心感、そこら辺の一般男性より明らかに力持ちに見える。こんな人がいたら男性がいなくても何とかなるんじゃないかと思ってしまう。
他の冒険者に驚きながらも、魔法の練習と収入のために街の出入り口に向かった。
冒険者の証”ギルドカード”を門番に見せて外に出ようと歩き出したら呼び止められた。
「イブさんでしたよね、昨日あなたを取り調べしたエスランです。無事に冒険者になれたんですね、おめでとうございます」
「いえいえ、エスランさんに冒険者のことを教えてもらったからなので、今回はありがとうございます」
「そう言ってもらえるとお勧めして良かったと思います。外では魔物がどこから来るかわからないので注意してください。オススメはここからでも見えるあの森が比較的狩りやすいですよ」
エスランが指をさしながら教えてくれる、面倒見のいい先輩みたいな感じがした。どこで狩りをするか決めてなかったから教えてもらった森で練習をすることにした。
少し歩いて森の前に着いた。森は結構大きいから他の人に見られないようになるべく奥に行ってから魔法を使うことにした。
「周りに誰かいないか気になる…こういうときはスキルを作って対処しよう」
困ったときには《スキル作製・付与・剥奪》 本当に便利だと思う。
今回作るのは異世界ではお馴染みの”探索”です。
周りの情報…色々と把握…敵味方の区別…
むむむむむ……なんか…念じてもスキルが作れない。どうして作れないんだろう…。スキルが駄目なら魔法でいけるかもしれないけど、魔法は作れないから…魔法を作れるようにしたらいいんだ。どうせなら《スキル作製・付与・剥奪》と同じ様なものにしよう。
魔法…作る…与える…奪う…
【スキル《魔法作製・付与・剥奪》を作製しました】
こっちは出来た。なにが原因で探索が作れなかったんだろう…こっちで作れば何かわかるかもしれない。
周囲情報…色々と把握…敵味方の区別…その他諸々…魔法…
【魔法《探索魔法》を作製しました】
理由はわからないけど、とりあえず出来たから《眼神》で確認してみる。
《探索魔法》
周り全体に魔力を放出して様々な情報を得る魔法
魔力量を調節すると範囲を変えることができる
周りを探るための媒体がなかったからスキルで作れなかったのかもしれない。多分スキルで作るより便利な物になってると思う。魔力を放出するわけだから魔力量が少ないと使えない魔法だからね。
《探索魔法》を森全体に届くように発動しておく。これで新しく森に入ってきた人がいても気付くことができるから安心して魔法の練習ができる。近くに魔物はいないけど、ぶっつけ本番で魔法を使うわけにはいかないからそこら辺の木を的にして魔法を使ってみよう。
森の中なので当然だけど火魔法は使えない。火起こしとか小さい規模ならいいかもしれないけど、攻撃に使ったらどこに飛び火するかわかったもんじゃない。なので今回は水・風・土・氷を試していく。光と闇はどこでも練習できるとして雷は森じゃ使えないでしょ。何が原因で火事になるかわからないからね。重力魔法?今回はお休みしててもらいます。
水魔法と言えば、火魔法の相殺とか、水球を作って相手の顔に付け窒息させたり、圧縮してぶつけても十分威力はあると思うから、普段の戦闘では使いやすい。ただし漫画で見たことのある水刃みたいなものはサックリいってしまいそうなので今回は保留です。
そう考えると風魔法ってサックリが多い気がする。空気を圧縮してぶつけたり、強い風を起こして視界を奪うくらいにしておかないと…カッターみたいな切れ味を求めてはいけない。
その点土魔法って万能な気がする。土球を作ってぶつける・土壁を作って囲う・落とし穴を作るとか、相手を無力化するのに特化している魔法は今後の戦いに必要なはず。
氷魔法は…氷漬けにして…観賞用に飾る…?いやそんな趣味はないからしないけど、氷魔法は使い勝手が難しい気がする…物冷やしたり夏に涼むために風と氷でクーラーみたいな使い方かなぁ…氷柱みたいな凶器は追々考えていくことにする。
さっそく右手に魔力を集めながら水で出来た球をイメージしてみる、手の平に大きさがバスケットボールくらいの水球が現れた。左手で水球を触ってみると普通に水の感触がした。そのまま右手を前に突き出して木に向かって飛んでいくイメージをすると早い速度で木に向かっていき、当たった!……と思ったらめり込んで木が折れかかった。いや、多分折れてる。
「ちょっと威力が強すぎると思うんだけど…魔力量を減らせば対処出来るかな…いや出来て本当に」
一回目に使った魔力量を十として三割くらいの魔力量で同じ水球を作り撃ちだすと、木の表面を少し削る威力に抑えられた。水で木が削れるのは普通に考えておかしいよ。これはステータスの魔法攻撃力が異常なせいですよね……。
水でこの威力なら、元から威力の高そうな風や土は魔力量を一割くらいにしないと何が起きるかわからない。例えば、土魔法で作る物を銃弾くらいの大きさの塊にして、魔力量を三割くらいにして使えば、魔物を倒すにはちょうどいいのかもしれない。頭に一発で済ませれば中身とかが飛び散ることもないし……。
試しに魔力量を三割くらいで銃弾のような土弾を作った。速さを出すために回転を加えて木に向けて撃つと、木の幹ど真ん中に穴を開けて貫通した。予想はしていたけど本当に貫通しちゃったよ。とてもじゃないけど人には撃てない。対人戦の時は三割水球・いい感じの突風・かなり硬い土壁で対処しよう。
この後は《探索魔法》で見つけられるウルフを十三匹くらい狩って満足したので街に戻る。もちろん土弾の試し撃ちに狩りをしたけど、頭一発で倒せちゃうから練習になったかはわからないけどね。
街に帰ってきて門番にギルドカードを見せて中に入ろうとしたら「あまり倒せませんでしたか?」と聞かれたので、加護職業の恩恵で収納空間があると説明したらかなり驚かれた。やっぱり珍しいものなんだ、普段は隠しておくことにしよう。
街に入って真っ直ぐギルドを目指すが、周りにいる人たちはやっぱり女性しかいない。ギルドでウルフを納品した後、この街について詳しい人を探して街の異変を見つけないと。
ギルドに着いてウルフを納品するときに、一気に十三匹出すと何か言われそうだったから三匹だけ納品した。それでも驚かれたけど…。納品したウルフは状態がかなり良かったから買い取り額もちょっと高かった。
街に詳しい人を教えてもらうために受付に戻って話をする。
「お姉さんはこのトルリリアの街について詳しいですか?」
「いいえ、トルリリアに来たのは一年前だからそこまで詳しくないですよ」
「そういえばお姉さんの名前って聞いてないですよね?」
「あれ?言ってませんでしたっけ…あ、イブさんの冒険者登録の時に、加護職業とか収納空間とかで驚いて言ってなかったかも…」
「わたし わるく ない」
「悪くはないですが…まぁ良しとします。それでは自己紹介をしますね、冒険者ギルド受付担当のアミルといいます。よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします。それで先ほどの話なんですけど、アミルさんはトルリリアに詳しい人を知りませんか?」
「私も一年前に来たばかりだから、街に詳しい人はあまり分からないけれど……領主様に聞くのが一番手っ取り早いかもしれないですね」
領主って街で一番偉い人なんじゃないのかなぁ…。
そんな人が普通の冒険者に会ってくれるなんてことはないと思うんだけど。
「いやあの…領主様ってそんなに簡単に会える人ではないでしょ?」
「簡単には会えないですけど一番この街に詳しいのは確かですよ。少なくとも街の人達以上には」
「それはそうなんですけど…もうちょっと会いやすい人を教えてほしいというか…」
「そうですねぇ……教会にいるシスターが、多分この街に詳しいと思います。色々な噂を聞いている中にシスターの話があるので、街では有名なシスターかもしれないので教会に行ってみるのがいいと思いますよ」
アミルから教会の場所を聞いたので、この後は街中で聞き込みをして教会には翌日行くことにする。
ギルドから出て街の中を歩き回る。知らない人にいきなり声を掛けるのも怪しまれるかもしれない、ここは噂話を聞く…ためにスキルを作ろう。
せっかくスキルや魔法が作れるようになったんだから、もっと色々作っていかないと。
透明化スキルを作ろうと思ったけど、魔法で作った方が色々と融通が利くかもしれない…。魔力で包み込んだ範囲を透明にしてしまうとか自分以外にも効果を与えれそう。
スキルはやめて魔法で作ることにした。
透明化…範囲調整…魔法…
【魔法《透明魔法》を作製しました】
《透明魔法》
魔力を纏った範囲に不可視の効果を与える
触れられても解けることはない
魔法使用者から離れすぎると自動的に効果が消える
こんな感じでいいかな。あとはスキルで《忍び足》とか作って足音を消そう。なんかステルスゲームをやってるみたいでわくわくしてきた。
【スキル《忍び足》を作製しました】
《忍び足》
常に効果がある
自身の足音を消す
これで準備は終わったから街を歩いてみる。
《透明魔法》の範囲効果を自分の身体にして魔力を纏って使う。これで他人からは姿が見えず足音も聞こえない…はず。これでバレずに情報収集が出来る。人が集まっていて噂話をしていそうなところに行ってみる。目的地は冒険者ギルドの休憩スペースにして、そこで情報収集をしていく。
冒険者ギルドに入ると周りの人達の視線が一気に集まった……どうしてなのか疑問に思ったけどすぐに分かった。ギルドのドアが誰も開けていないのに勝手に開いたからだと思う。すぐに閉めて休憩スペースに向かって人の多いテーブルの近くで聞き耳をたてる。
テーブルを数カ所周って聞けた噂話は、新入り冒険者のことが多かった。
ウルフが二、三匹入るくらいの収納空間を使える とか
あまり見かけないような怪しいローブを着てる とか
剣を扱えるような筋力があるように見えない とか
……これ全部私のことを話していると考えたくないんだけど…。結局街の事に関して大した情報は得られなかった。
情報収集をやめて宿屋に戻る。そんなに動いていないはずなのに疲れた、主に精神的に。
日が沈みかけているから時間的には丁度夕食頃かな、今日のメニューは、オーク肉のステーキとサラダとパンとトゥメルのスープだった。これだけトゥメルのスープが頻繁に出てくると他のスープが飲みたいなぁ。
部屋に戻りこれからのことを考える。明日は教会に居るシスターに会って、この街に何故男の人がいないのか聞くこと。街ぐるみで何か良くないことをしているのだとしたら、早めに出ていって安全なところに行きたい。もし阻止できるレベルの計画があったら、この世界で暮らすうえで困ることになるかもしれないから潰しておくのも仕方ないと思う。
出来れば面倒事は無い方向で行きたいけど……明日の私に任せようかな。無責任かもしれないけど。
色々と考えながらも早起きして教会に行くために眠りについた。