結界消失 運送 領主
時間が過ぎるのって早いですね、もう5か月経ってしまいました。
投稿間隔が空いてしまい大変申し訳ございません。
魔族を捕縛して事件を解決したから、後処理を済ませて休みたい。
目の前には気絶している魔族が地面に投げ捨てられて……もうちょっと丁寧に置いてあげてよ。
「捕まえたのはいいんだけど……正直扱いに困るね」
「この魔族がどうなろうと構わないが、主様に謝罪をしてから裁かれるべきだろう」
うん。平和に過ごしたかったから、その部分については謝ってほしいかな。正直に謝るとは思えないけど。
レムも起きなければ街の人もまだ起きないし、とりあえずオーリエさんを呼びたいからこの魔族製の結界をなんとかしよう。
……今、面白いことを思いついた。ここは結界の中だから、当然触れていることになるはず。この結界を無収納にしまうことが出来る…かもしれない。
あらゆる物がしまえるなら、今ここに存在している以上、結界もしまうことが出来る…はず。
試してみた結果……収納出来ました。どうやって収納しているのか分からないけど、結界がなくなったから今は難しいことを考えるのはやめよう。
結界を消したことをクロムに伝え、オーリエさんを呼んできてもらう。……別にパシらせてるわけではないよ。召喚獣だからなのか、命令やお願いをすると嬉しそうにするから仕方ないよね。
クロムがオーリエさんを連れて戻ってくる。周りを見渡しながら不思議そうにこちらに向かってくるのを見ていると、レムの意識が戻った。
「う…ん。ここは?確か…人間がレムの火球を消して…」
「私は何もしていないし、また暴れられても困るから拘束させてもらったよ」
「何で縛られてるの!訳わかんない!…さっきだってレムの火球なくなるし、この街に張った結界もなくなってるし……」
火球は消されるし、起きたら結界消えてるし縛られてるからね、心も折れるよね。
「この魔族が今回の事件の犯人なのか」
「自分でやったと言っていたので間違いないですね」
「まさか魔族がこの街に居るとは思わなかったよ。珍しい物は特にない普通の街だから襲われた理由は本人に聞かないと分からないね」
「正直に喋ってくれるとも限らないですけどね。私としては早く終わらせて休みたいのですけど、こういう場合はどこに行けばいいと思いますか?」
「かなりの大事だから…この街の領主様の所に連れて行くのが一番早いと思う」
やっぱり領主様の所になるのか。今一番会いたくない人物だから行きたくないんだけど…断れる気がしない。
確かレムは領主様の屋敷らしき建物から出てきたはず……領主様死んでたり…してないと思うけど、探索魔法で屋敷辺りを探ってみる。何人か反応があるけど、領主様の反応なのかは分からない。
安否の確認とレムの処遇を何とかするには、領主様の所に行かないと始まらない。ゆっくり出来るのはもう少し先になりそう…。
レムをクロムに担いでもらって領主様の所に向かう。案内はオーリエさんにお願いした……他に誰も起きてないし仕方ないよね。
途中でレムが騒ぎ出したので、こっそりと《状態異常魔法:睡眠》を使って眠らせた。着く頃に起こせば問題ないし、こっちは疲れてるんだから静かにしていてほしい。
領主様の屋敷(多分そうだと思う)を近くで見てみると、壊れた部分が結構大きいのが解った。これ壊したのレムでしょ?……普通に強い部類だと思うけど、私とクロムがいたことが敗因になったんだと思うなぁ。なんかごめん。
レムの不運を考えていると、屋敷の中から一人の女性が脚を引き摺って出てきた。
屋敷から出てきた人物に驚いて固まっていたら、声を掛けられた。
「すまないが、手を貸してもらえないだろうか。魔族との戦闘で脚を負傷して、あまり自由に動けないんだ」
「手はお貸ししますが、あなたの負傷は大丈夫に見えないのですが…」
「脚は見ての通り酷いが、それ以外の傷は大したものではない。
この屋敷から出ていくときに、逃げ出さないように脚を…という感じだと思う」
この話だけでレムが非道なことをしていたのが分かる。多分だけど、引き摺ってる方の脚は折れてると思う。
治してあげたいけど、治癒魔法がどれくらい珍しいのか判らないから迂闊に使えない。こういう場合の解決策を考えておかないと、どこかでミスして面倒なことになりそう。
とりあえず脚が痛くないように座ってもらう。あっ、いい事思いついた。
「少しは楽に出来そうですか?」
「ああ……少し楽になった。ありがとう」
「大したことはしてないので…脚も酷いですが所々汚れてますね。私、水魔法のみ使えるので汚れを洗い流しますね」
「それは有難い。傷口を綺麗にしておきたかったんだ、助かるよ」
まぁ普通の水にはしないけどね。イブ印の特製”治癒水”を今、初めて試します。
材料は魔力が少々と、水魔法と治癒魔法を用意します。水球に治癒魔法を混ぜれば完成。とっても簡単なので出来る人だけお試しください。
水球の量は3リットルくらいで作って、治癒魔法は擦り傷が治って痛みを和らげる感じにイメージして混ぜましょう。全部感覚でやってるからこれ以上説明は出来ないよ。
水球で首から下を包み込んで綺麗にしていく。水球の中に流れの弱い渦を作るのが綺麗にするコツなんですよ。
脚を負傷した女性は綺麗になった体を見て驚いている。擦り傷は治ってるし、脚は先程よりも痛みはないから驚かない方がおかしいよね。ワタシ、ナニモシテナイデスケドネ。
「これは…どういうことだ。小さい傷が綺麗に治ってる…それに脚の痛みが楽になった。君は一体…」
「汚れを洗い流しただけなので、私は何もしていないですけど…加護職業の効果かもしれないですね」
困ったときは加護職業という名の、女神様の力と言うことにしておこう。面倒事を回避する為には、使えるものは全部使っていこう。
「加護職業か…それならあり得るのかもしれないな」
「私にも加護職業の事はよく分からないのでこれ以上は何も言えないです」
加護職業以外のことを聞かれても困るから話を逸らさないと。
「自己紹介がまだでした。私はイブです。隣に居るのは私の仲間のクロムです。そのクロムが担いでいるのが今回の事件を起こした魔族の子ですね。」
「あ、ああ…自己紹介は有難いんだが…魔族を捕まえたのか?」
「そうですね。クロムは優秀なのでこれくらいは簡単ですよ」
私が捕まえたことにならないように、クロムに英雄になってもらう作戦だけど…クロムを見ると、優秀って言われたからなのか嬉しそうにしてる。身代わりになってもらって申し訳ないと思ってたけど、後でもう少し褒めておけば丸く収まるでしょ。
「魔族と戦って簡単とは…もしかしてクロムさんはAランクの冒険者だろうか?」
「いえ、クロムは冒険者ではないです」
「冒険者ではないのか!?冒険者でもないのに何故そんなにも強いのか……」
私の召喚獣だからです。…とは言えないし、下手に答えても疑われる可能性があるから何も言わないでおこう。
「お疲れのところ申し訳ないのですが、魔族を捕まえた報告を領主様にしたいので、領主様がどこに居るのか教えてもらえますか?」
「…ん?領主様に報告…しに行くのか?」
「当たり前じゃないですか。この街で暴れていたんですから、この街の責任者に報告しないと後々の処理が進まないですし」
「…そうか、確かにその通りだ」
「では詳しい話を聞こう。この街の領主である私、フレア・リングベルが」
今まで話をしていた人が、この街の領主様だった。そんなの分かるわけないじゃん。