自白 結界魔法 捕縛
人助けをしていたら魔族に捉まってしまった。
街の人を結界によって眠らせている犯人が、何故か私達の目の前にいます。何故でしょう…。
しかもご丁寧に自白と”レム”って名前らしきものまで話してくれるし。この子あれかな、力はあるけど考える頭はない感じの子かもしれない。もしくはどうとでもできるから考えないのか……。
とりあえずオーリエさんを外に出しておきたい。今のままだとクロムが満足に動けないし、もし戦う事になった場合に観られてると、騒動が終わった後に何か良くないことになりそうだし…。
「クロム、オーリエさんを連れて外に向かって。無事に送り出せたら戻ってきて」
「了解だ。連れ出した後は急いで戻る」
短くやり取りを済ませるが、そのやり取りにオーリエさんは驚いている。無理もないよね、見た目で言ったら私よりもクロムの方が強く見えるから、役割が逆なんだよね。
事件の元凶であるレム(仮)さんは、首を傾げている。もしかしてクロムが送り届けて帰ってくるまで待ってくれる…とか、そんなことを言い出してくれるんじゃないかと期待してみたけど。
「何で逃げるの?逃げる必要はなくない?この街はレムの物なんだから、勝手に外に出ることは許さなーい」
緊急速報。この街は魔族の物になっていたらしい。何故そんなことになっているのか全く分からないけど、魔族は我が儘な種族だと認識してしまいそうだ。多分この子だけだとは思うけど…。
話が通じそうにないので手で合図して、クロムを外に向かわせる。その行動が気に食わないみたいで、レム(仮)はクロムとオーリエさんの方に手を向け、詠唱を始めた。やっぱり無詠唱で魔法を使えるのは普通じゃないんだ……。
目立たないように守るには、異世界でお決まりの結界とかバリアがいいかな。結界なら相手も使ってるし。
護る…弾く…壁…
【魔法《結界魔法》を作製しました】
【スキル《バリア》を作製しました】
魔法とスキルの両方を作れるか試したけど、問題なく両方できた。
早速《結界魔法》を使って私の後ろに、透明で大きな壁を作る。私がイメージする結界は四角い箱型だから、長方形の厚みの薄い箱のようなイメージで作った。魔力は結構注いであげたから強度は凄いと思うよ。
レム(仮)の詠唱が終わり、魔法が放たれた。西瓜と同じ位の大きさの火球を三発撃ってきたが、私の後ろ辺りで見えない何かに妨げられ、消えてなくなる。
「…えっ……レムの火球はどこにいったの?」
まぁ透明ですからね、火球が私の後ろで消えてなくなった様に見えるかもしれない。そんなことは無いと思いたいのか更に詠唱をし、今度は火球を十発撃ってきた。ちょっと数が多くない?
飛んでくる十発の火球は、次々と結界壁にぶつかり消えてなくなる。私の方に飛び火してこないか心配になるくらいだよ。
「何で!何でレムの火球が消えるの!」
さぁ?どうしてでしょうね。私にはさっぱりわかりません。
そんなことを思っているとレム(仮)が……もうレムでいいかな。レムが私を睨んでくる。
「お前が何かしたな!レムの火球が消えるなんてそんな変なことは今までにないもん!何をしたか白状しろ!」
流石に気付いたみたいで、すごく怒ってます。ただ結界魔法を使っただけで理不尽に怒られても困るんだけど…そっちだって結界使ってるじゃん。ここは誤魔化しておこう。
「特に何もしていないですよ、私はここで立っているだけなのは見てわかることでしょう」
「む…確かに詠唱をしていないから魔法じゃない…かも…。魔法じゃないならスキルを使っているのだな!」
「私の職業は服を作ったりするようなものなので、魔法を防げるスキルがあるなら身を護る為に欲しいですね」
「うむぅ……スキルでもないのか…じゃあ何でレムの火球が消えるの!何がどうなってるの!」
原因がわからなくて激おこですね。自分で作った結界の中で動けていることを考えれば、私が怪しいのは分かるはずなんだけど…やっぱり頭の弱い子なのかもしれない。
「もう考えるの疲れた!」
そう言って詠唱を始めた。手はもちろん私の方に向いている。
これ以上怪しまれたくないから、結界の後ろに下がる。普通に通れるから便利だよね、もしかして結界の中から攻撃出来たりするんじゃない?相手には申し訳ないけど安全に戦えることは良いことなので、危ない時は利用していこう。
詠唱が終わり、火球は怒りのせいなのか先程の大きさの三倍になっていた。私にあれを当てる気でいたの?すごい怖いんだけど…。
放たれた特大火球は結界壁に妨げられ、私の目の前で消えてなくなった。多めに魔力を注いでおいてよかった。
「むぅぅ…何がどうなってるの…レムの魔法は強いはずなのに!」
そんなに怒っても結界は解かないし、魔法に当たりに行くこともしないけどね。
更に数発ほど火球を撃っているけど、結果は分かりきっている。全部結界壁によって妨げられた。もう諦めてくれればいいのに…。
そんなやりとりをしていると、オーリエさんを外に連れ出していたクロムが戻ってきた。
「主様、先程の冒険者は問題無く外に連れて行ったぞ」
「ありがとう、クロム。この騒動を起こしたあのレムとか言う子を何とかしないとね」
「それは良いのだが……これは結界魔法だろうか?こんな強度の結界は見たこともないのだが…」
「あー……うん。まぁそうだね。私の結界魔法だね。強度は魔力を多く使ったからだと思うよ」
「この結界は我でも壊すのは困難だと言える。そこの魔族の力では傷一つ付かないだろう」
そんな結界になってたんだ…。ちょっとやりすぎたかもしれない。
ここからの問題は、どうやってあの子を無力化するかなんだけど…困ったときはクロムさんになんとかしてもらおう。そのために召喚した部分もあるし。
クロムに行ってもらうとした場合、手加減なしだとうっかり殺害なんてことも十分にあり得るので、相手の強さを調べてから行動しよう。《眼神》があれば全部視れる思うし。
名前 ファンレムリス
レベル 34
年齢 52
性別 女
職業 魔法使い
体力 1300
魔力 1740
物理攻撃力 320
物理防御力 450
魔法攻撃力 1120
魔法防御力 1030
運 630
視れたステータスがこんな感じだった。うん、多分強いほうだと思うけど……クロムのステータスと比べると弱いなぁって思う。思ってしまう。
クロムが規格外なんだけど、このステータス差だと手加減でどうにかなるとは思えないんだけど……100分の1くらいかな…50分の1だとちょっと不安かなぁ。
「あの子の対処はクロムにお願いしたいんだけど、ステータス的に相手が死なないようにかなり手加減して欲しいかな」
「かなり手加減…それほどの差があるのか」
「数値を見る限りだとクロムの100分の1くらいだと思うよ」
「それは…うむ…そんな手加減できるのだろうか」
「私は目立ちたくないからクロムにお願いしたいんだよ」
「まぁ…主様のほうが手加減は難しいだろう、あの強さではうっかり粉微塵なんてこともありえそうだし…」
失礼な召喚獣だな。ちゃんと手加減も出来るし、仮にうっかりやってしまっても粉微塵じゃなくてミンチくらいだし、多分大丈夫。……大丈夫なはず。
そんな話し合いをしている間も火球を撃ち続けていたレムが、魔力の使いすぎにより疲れて地面に座り込んでいる。途中でやめておけば疲れなくて済んだのに…。
「こっちが対処する前に戦闘不能になってるね」
「いくら魔力量に自信のある魔族でも、あれだけ連続で魔法を使ったら疲れもするだろう」
「無視してたこっちも悪いのかもしれないけど、火球なんて受けたくもないから仕方ないよね」
「主様なら何もしなくても無効化出来るだろうが…直接無効化するより別の理由で無効化したほうが言い訳もできる、と言うことなのだろう」
流石クロムさん、よくわかってらっしゃる。
「とりあえず今のうちに無力化して終わらせよう。これで手足を縛ってきて」
「む……この丸い塊は糸か?」
無収納から取り出した特殊縫合糸1玉をクロムに渡す。頑丈な糸だから捕縛にも使えるでしょ。……いっぱい巻き付ければ。
「縫い糸だけど頑丈なものだからいっぱい巻けば大丈夫だと思うし」
「ふむ……なるほど、確かに頑丈な糸だな。糸を切ろうと無理に力を加えたら、手首と身体が離れ離れになってしまうだろうな」
そんな危ない糸だとは思わなかった。使い所を考えて使おうと思いました。……日記みたいな感想しか出ない。
「うっかり締めすぎて斬らないでよ?」
「主様にだけは言われたくはないぞ」
クロムがレムのもとに歩いて行く。もしもの時のためにクロムの身体に合わせて結界を張っておこう。
レムのもとに着いたクロムがいきなりチョップをした。多分気絶させるためだと思うけど……うわぁ痛そう。
その場に倒れたレムの手足を特殊縫合糸で縛り、片手で持ち上げて連れてきた。…連れてこいとは言ってないんだけど、まぁいいか。
犯人を無力化したから、この事件は無事解決かな。結界は…自然に消えなかったらちょちょいと何とかしよう。
精神的に疲れたからこのまま休みたいんだけど、後処理をしておかないと面倒なことになるよね。
8割くらいは1週間で出来ていたんです。その後に他ごとに浮気して、気が付けば1か月経っていました。
申し訳ありません(土下土下座)。