身体確認 異変 魔族
頭の中で思い描いたことを文字にするのは難しいと、再確認しました。
気が付かなかったが私の髪の色は白銀だった。
私が異世界に来た方法は、転生よりも転移寄りだと思っていたから容姿はそのままだと決めつけていたけど……もしかして全身違ってたりはしないよね?
確認したくても鏡もないし写真も撮れないし、髪の長さくらいは…うん、なんか長くなってる。元の長さが肩くらいだったけど、がっつり胸辺りまで伸びてる……逆にこの長さで気が付かなかった私はアホなんですかね。いや、異世界という慣れない環境でそこまで気にすることが出来なかったんだよ。きっとそうだ。
「何でこんなことに……まぁ女神様に聞けば確実か」
「主様は…その…元の姿と今の姿は違うのか?」
「今確認できる髪の長さと色だけで言えば全然違うかな。元は肩くらいの長さで色は黒だったから」
もしかしたら顔も少し変わってるかもしれない。瞳の色とか。
とりあえず鏡で確認したい…。魔法とスキル、どっちでもいいから鏡出して確認したい。
鏡…反射…眩しい…?
【魔法《鏡魔法》を作製しました】
【スキル《手鏡》を作製しました】
作製途中に変なこと考えちゃったけど、出来たから問題なしで。鏡で光を反射させると眩しいから変な事ではないはず…。
それよりも魔法とスキルの両方できちゃった。まぁ鏡さえ使えれば大丈夫だし。
《鏡魔法》を使って、目の前に姿見を作る。頭の中のイメージが良かったらしく、立派な姿見が目の前に出てきた。
姿見のおかげで全身を見ることが出来たけど……体格はそこまで変わってないと思う。もちろん胸も。少しくらい大きくしてくれても良かったのに…。顔は日本人ではなく海外の英国の人の顔に近い。英国の人そんなに見たことないけど。凄い整ってる。
目の色が薄い紫色と桃色の中間のような色をしていた。漫画やアニメでしか見たことないような色してる。
「主様よ、何か問題でもあったのか?」
「うーん…問題はあるようでないような複雑な所なんだけど、ザ・日本人のような容姿はこの世界では珍しいから私の見た目を変えてる可能性がある。それよりも今の問題は姉妹設定にする場合、容姿が全然違う私とクロムだと、複雑な家の子供にしか見られないかもしれない」
「ふむ…主様の言葉が正しければ、我と主様が姉妹と言うのは何かしら怪しまれるのが妥当か」
「そうなんだよね。姉妹のほうが余計な詮索とかされないと思ったけど、すごく仲のいい親戚辺りにしておいて何か言われたら全部あやふやに答えて、誤魔化しきるようにしよう」
「我はどんな役でもこなしてみせるぞ」
クロムが頼もしいことを言ってくれる、まぁ一度人形に戻さないといけないんだけどね。《転移》で出てきてるのに街の入り口まで歩いて行くわけにもいかないし、宿屋に急にクロムが現れるのも怪しまれる。
一度私だけで宿屋の部屋に戻って、外に出て、召喚して、街に戻る。考えただけで面倒な手順だけど、クロムと一緒に行動するには仕方ない。
「じゃあ宿屋に帰るから人形に戻って」
「……戻る?人形とはなんぞ?」
「え…クロムは私が作った人形が媒体になって召喚されてるから、人形に戻ってもらわないと帰れないから」
「ふむ………我にはどうすることも出来ないな。主様から何かしないと無理だと思うのだが」
「……人形に戻れって念じてみるとか?」
とりあえず念じてみる。
「む!…なるほど、そういう感じなのだな」
クロムが納得したことを言った後、目の前の人型召喚獣が人形になった。恐らく、戻るようにお願いしてそれに了承してのやりとりが必要なのかもしれない。この状態の時には会話とか、ファンタジーによくある念話とか出来るのかな?クロムの意識ってあるのかな?どんどん気になることが出てくるけど、全部気にしてたら頭が痛くなりそうだから実践しよう。
「もしもしクロム聞こえてる?イブです。聞こえたら返事してください」
「(何故そんなおかしい言葉遣いなのだ?)」
ばっちり意識もあったし、声が耳じゃなくて頭に直接聞こえる感じがするから念話で話せるらしい。それと言葉遣い変じゃないし、話す内容に困ったから変になってるように思えるだけだし。
とりあえずこれで帰る際の問題はなくなったから宿屋に《転移》する。
宿屋の借りている部屋に帰ってきた。《転移》本当に便利すぎる。なくなったら遠出したくなくなってしまうくらい楽なのは間違いない。
帰ってきた瞬間に何かが纏わりつくような感覚があった。すぐに消えたけどなんか気持ち悪い。
時間は夕方辺りだと思うけど、周りが妙に静かな気がする。いつもなら依頼を終えて帰ってくる冒険者の声とか、宿屋で食事をしている人の声などが聞こえるはずなのに、まるで人が居なくなったような感じがする。
先ほどの変な感覚と、この静かな周りの状態は何か関係ありそうな気がする。
「ねぇクロム、さっき帰ってきたときに変な感じしなかった?」
「(主様も感じていたか。恐らく結界の魔法かスキル、もしくは何かしらの魔法をこの街の範囲に使っているのだと思う)」
「結界がどんなものか知らないけど、私には効かないみたいだし害はないかな。魔法も私には効いてないみたいだし、クロムは大丈夫なの?」
「(うむ、今の我は主様に所持されている状態だから、無効化の恩恵を受けたみたいだ)」
なんともまぁ便利なことで。クロムが無事ならいいんだけどね、問題は起こらない方がいいし。
今の状況について考える。多分この結界?が街に張られているから周りが静かなのだと思うけど、本当に街全体に影響があるのか確かめよう。
探索魔法を街全体に使ってみる。何か変な魔力が私の魔力とぶつかってる感覚がする。でも、私の魔力のほうが強いらしく弾かれることなく探索魔法を使えた。まじチート。
街全体を確かめていると、街の人達や冒険者はほぼ全員が眠っている。ほぼと言うのはギルドの方角と、ギルドとは違う方角から寝ている反応とは違う反応があったから。
ギルドの方は多分強い冒険者だと思う。それでも反応は動いてないから抵抗するので精一杯なのか、ただ単に動いていないのか。
もう一方は、人の反応と魔物っぽい反応があった。これだけのことが出来る魔物について心当たりがないかクロムに聞いた所、「(魔物でも出来る奴が居ると思うが、街の人の状態を考えると魔族の可能性が高い)」とお返事を頂いた。
魔族とは魔物寄りの人間らしい。クロムも詳しくは知らないみたいだけど、簡単に説明すると人間のような魔物になるらしい。うん、全然わかんない。
その魔族がこの街で何をしたいのかわからないけど、絶対に問題しか起こしてないのは分かる。街の人寝てるし。
実際に確認してみたいから部屋を出て食堂に向かうと、床に伏して寝ている人や椅子に座ったまま寝ている人、十人くらいの人が食堂で寝ていた。
眠っている以外の異常はないので、そのままにしてギルドに向かう。今何とかしても元凶からどうにかしないと意味ないからね。
ギルドに行く途中に武器防具屋と魔道具屋の様子を見てみたけど、同じように全員が眠っていた。
ギルドに着いた。この中には人の反応があったけど、いい人とも限らない。もしかしたら魔族と手を組んでいる可能性もあるかもしれない。警戒しながら中に入っていくと、見える範囲の全員が眠らされていた。床って硬いから寝心地は良くないかな。
探索魔法を使って眠っていない反応がある場所に向かう。着いた場所は受付の横にある食事をするフロア。その奥で静かに座っていた。最初は眠っていると思ったけど、気配に気付いて顔だけこちらに向けてきた。額に汗を滲ませた顔で。
「あの…大丈夫ですか?」
「…………」
「もしかしなくても喋るのがつらい状態ですか?」
そう聞くと、相手は小さく頷いた。耐えるので精一杯なのかな。
何故無事なのか気になってその人の周りを視てみると、気力と魔力を身体から外に放っていて、眠りの原因の魔力を跳ね除けている感じだった。ずっとこんな状態だと確かにつらいかもしれない。常に気を張ってるんでしょ?それは疲れるよ。
見てるこっちがつらくなりそうなので何とかしてあげたいんだけど、私のような見た目軟弱な(実際は強い)女が平気な顔で歩いている、それだけで異常だと誰でもわかる。その状態で私がこの人を助けたら、他人を助けられる余裕まである実力者と思われるかもしれない。私だったらそう思うし。
ここはクロム先生に何とかしてもらおう。
「(クロムならこの結界の中でも大丈夫そう?)」
「(もちろんだ。我の気力と魔力はその辺りの冒険者よりも高いから問題ない)」
「(それって範囲を広げたり出来る?)」
「(あまり広範囲でなければ出来るが、消耗が激しくなるから長続きしないだろうな)」
「(あの人を結界の範囲外まで連れて行きたいんだけど、お願いできないかな)」
「(それは……主様が適任だと思うのだが)」
「(私のような見た目の女がそんなこと出来たら、何を言われるか分からないからクロムにお願いしたい)」
「(ふむ…まぁ主様の頼みだ、断る理由はない)」
助かったぁ。これで私よりもクロムが目立って、平穏な日々を過ごせるということになる。
クロムに魔力を注ぎ込んで、転移でクロムをギルド前に送る。そこから中に入ってきてもらった。
この状況でもう一人の登場に驚いているけど、今はそれどころじゃない。早く終わらせてのんびりとしたい。
クロムに任せて視ていると、クロムの周りに気力と魔力が放たれていく。あの冒険者の数倍の範囲で。その状態で近付いて行くと緊張から解放されたように机に突っ伏した。
「……きつかった…」
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、おかげさまで一息付けたよ」
「私はイブです。こっちはクロムです」
「あたしはオーリエだ、よろしくな」
自己紹介を済ませて本題に入る。
「それでですね、このままだとクロムが持たないので貴女を外に連れて行きたいのですが」
「それは助かるよ。あたしだけじゃ動くこともまともに出来ないからね」
納得してもらえたのでギルドを出て外に向かう。クロムには集中しているから会話に参加しない。クロムなら出来そうだけど何があるか分からないからね。
街の門が見えた辺りで後方から衝撃音が聞こえ、振り返ると建物の一部が吹き飛んでいた。
吹き飛んだ建物は大きくて造りの良い屋敷で、三階建てだった。多分あの屋敷に領主様が住んでいるんだと思う。そんな領主様の屋敷が吹き飛んだということは、今居るであろう魔族はこの街の領主様に恨みがあるのかも。
その巻き添えで町の人は眠らされ、私は厄介ごとに巻き込まれたと。この街の領主様は魔族に何をしたんだろう……。
屋敷の方を見ていると何かが飛んできた。しかもこっちに向かって。
飛んできたそれは私達の目の前に降りてきた。人間の姿をしていて背中に翼が生えている。多分この人?が魔族かな。
「そこの人間達は、何でレムの結界内で動けているのかなぁ」
安全に済まそうとしてたのに魔族に目を付けられてしまった。
何でこうなるの……。
お金に関する設定を見直し、各話の修正をしました。
全体的な話に影響はないので「そうなんだ」程度に思っていてください。