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突然の提案

チラシの効果はでたのか?この後、とんでもない出来事がぁー!!

 激戦を終えた翌日、朝食を済ませて部室へやって来ると……。


「もぉ〜みんなちゃんと並んでぇ〜!?」


 私の予想した通り、審判の権利が目当ての生徒で部室はごった返していた。


 英理ちゃん先輩がそのミニマムボディを存分に使い、必死に号令をかけていた。


「英理ちゃん先輩おはようございます、なんと言うか……とんでもない盛り上がり様ですね?」


「んもぅ!川田ちゃんはお暢気さんねぇ?この人達皆川田ちゃんが戦わないとダメなんだからねぇ?」


 少し怒った顔をする英理ちゃん先輩、怒ったお顔もまた可愛らしい……。


「いや、その事なんですが、この人数を全て相手にするのは厳しいので、勝ち抜きのトーナメント戦にしませんか?」


 昨日寝る前に思い付いた案だ、人数が多ければ多いほどトーナメントを勝ち抜くのがより困難になるのは必至、どんなに強い人であろうと1日数試合した後はボロボロな状態になるはず……。


 そこで先日殆どノーダメージで試合が終わってしまった、疲労ゼロの私との戦い、どう転んでも負けは無い!


 正直言って、有り得ないほどの卑怯な作戦である事は言うまでもない事だけど、とりあえずは部の存続を最も優先するべき……。


「でもぉ〜それだとぉ〜川田ちゃんが勝った時の強制入部は1人だけになっちゃうと思うけどぉ〜?」


 流石は英理ちゃん先輩、朗らかな口調ながらもド正論をぶつけて来た。


「上位2人と試合します!」


 ざっと見ても30人はいる、これだけの人数でトーナメントすれば優勝者と準優勝は5回戦する事になる……。


「う〜ん川田ちゃんが2回とも負けてもぉ〜、賞品は1つしかないわよぉ?」


「私は負けません!!」


 流石にコレで2連敗するとは考えられない、と言うかこの条件で負けたら退部する……。


「とりあえずぅ〜優勝者と試合してぇ〜、結果を見てから準優勝の人と試合するか決める、とかで良いわよねぇ?」


「……まぁ、そうですね……それでいいですよ」


 なんか悲しくなってきたけど、今は泣き言を言っている暇は無い!


「えーと!部長の川田です、早速ですが皆さんにはこの対戦組み合わせを決めるクジを引いてもらいます、そして3分2ラウンド制で試合をするトーナメント戦を勝ち抜いて貰います!優勝者には件の審判権をかけて私と試合をして貰います勝てたら審判権、負けたら女子ボクシング部に1ヶ月間入部してもらいます!!」


「……」


 場内が静かになる、流石に厳しい条件だったかな?


「それだけですか?」


 新入生と思われる女の子が挙手しながら質問してきた。


 少し地味な感じのショートカットでおカッパの女の子だった。


 それだけ?


「あ、あの、それだけって言うのは……」


「いえ、トーナメントを制して川田先輩に勝つ……だけ?ですか?」


 う〜ん……イマイチこの子の言っている事が分からない……。


 私が首を傾げていると、後ろから英理ちゃん先輩が囁いてきた。


「にぶちんねぇ〜、川田ちゃんはぁ〜?」


「はぁ……?」


「だからねぇ?この子はぁ、トーナメントの優勝者がぁ〜川田ちゃんの様なぁ〜、他流試合で開始直後に失神KOされちゃう〜とっても弱い〜雑魚さんに勝つだけでぇ〜、一生の思い出になる審判権をもらえるの?本当は英理ちゃん先輩にも勝たないとダメなんじゃないのぉ〜?って聞いてるのよ〜?」


「……はぁ?」


 つまり、トーナメントで5戦した後でも私との試合なんて整理体操にもならない……と思われてる?


「……貴女の質問の意味は分かった!だったら私もこのトーナメントに参加します!!もちろん!英理ちゃん先輩もね!!」


「……」


 質問した女の子は何も言わずに、一瞬ニヤついて手を下ろした。


「ねぇ川田ちゃん?もしかして今、私もこのトーナメントに参加するって言った?」


「女子ボクシング部が舐められてるんですよ!?英理ちゃん先輩は腹が立たないのですか?」


「いや、舐められてるのはぁ川田ちゃんだけ……」


「英理ちゃん先輩……?今日から部活動は毎日ロードーワークだけにしますか?」


「……お昼寝とおやつは?」


「部員が増えたら英理ちゃん先輩はいつも通り、お昼寝しておやつ食べてて良いですよ?」


「……う〜ん、川田ちゃんだけでも大丈夫だと思うけどぉ……」


「手始めにハンモックは焼却処分しておきますね?」


 部室のオブジェの様に吊るされ続けている、ハンモックに手をかける。


「冗談よぉ〜それじゃあさっそく対戦組み合わせを決めないとね?」


 私の想いが通じたのか、英理ちゃん先輩はキビキビとクジを作り始めた。


 さてさて、今日集まったのは……。


 私がリング上から、集まった面々を確認すると、幾つか見知った顔があった。


「……ったく、てめーも来たのかよ?」


「いえ、私は審判等に興味はありません」


「ばっか!ボクだってそんなもんどうだって良いんだよ、ただここにいる連中にボクの実力を見せ付けてやるんだよ!」


「実力?あぁ、あの石頭の事ですか?確かにアレだけは認めますよ?」


「……お前と当たったら絶対殺すかなら?」


「良いですよ?出来るものなら……」


 あの二人も来たんだ……牙芽ちゃんはまだまだ隙がありそうだけど、あのジャージっ子は英理ちゃん先輩と互角に渡り合っていた……油断は出来ないな。


「アンタ、ホントにやるの?」


「えぇ、川田さんにはご迷惑を掛けてしまったので、衛原部長には真っ向勝負で戦う様に頼んでおいたのに……よりによってあんなやり方をして、川田さんと女子ボクシング部の印象を最悪なものにしてしまった……それに……先程の新入生の舐めた発言……ゆるしません!!」


「いや、でもアンタ、左手使えないし今日はボクシングの試合なんでしょ?右だけでやれるわけ?」


「私と川田さんの愛の力があれば!不可能なんて存在しません!」


「うわぁ、言い切った……アンタってホントに前向きよね?」


 明……と純蓮?純蓮は参加しないみたいだけど……明の奴、やっぱり私の為に小川先輩と試合したんだ……。


 でも、右だけで勝ち上がれると思われてるのも、かなり舐めてると思うけど……明にはそんな自覚は無いんだろうから、黙っておこう。


「あ!?アレって……遼華?」


 土門遼華(つちかどりょうか)ルームメイトの1人、八極拳闘部のホープと言われて、1年の頃に校内の中国拳法系の部活全てと他流試合をして、その部長やエースクラスを次々と倒して行った。


 校内では柔の上打と剛の土門と言われて、2年生の中では頭一つ抜けている。


「……何奴も此奴も川田の実力を分かっちゃいない……あの拳こそ、俺の求める最強の武……」


 うわぁ〜怪我をしてる明はともかく……あの遼華も来るとか……イキナリ自信なくなった……。


「英理ちゃん先輩……?」


 半分泣きそうな項で英理ちゃん先輩に向かって呟いた。


「英理ちゃん先輩は頑張って優勝して下さい……」


「川田ちゃん、その約束は出来そうもないわね」


 何故かマジモードの英理ちゃん先輩になっている。


「アイツがいる以上……私も本気で行かないと……勝てるかどうか分からないから……」


 アイツ?英理ちゃん先輩の視線は誰が見ても分かる位に、ジャージっ子の方に向けられていた。


 英理ちゃん先輩と互角だったあの子は、恐らく明や遼華よりも上かも知れない……。


 全てはこのクジに託される!!頼む!くじ運の神様よ!もし存在するなら!今こそそのお力を示したまえぇい!!


 祈るような気持ちと言うより、祈祷師の如く祈り狂う!!


「……」


 次々とくじを引き始める生徒達、その殆どが新入生……ハズレを引く確率は30分の3位かな?明は逆にボーナスステージかも知れないけど、永源流の明の事……何か仕掛けを用意していたとしても不思議では無い……。


 そして


「川田さん!私は4番です!」


「川田先輩、12番でお願いします」


「おう!川田ぁ!俺は22番だぞ?」


 牙芽ちゃんは……。


「……21番……」


 何故か元気が無くなる牙芽ちゃん。


「何だ、またお前が相手か?少しは強くなったのか?」


「うぅ、うるせい!!す、すぐにぶっ殺してやるからな!!」


 絞り出すように叫ぶ牙芽ちゃん、ビビりまくってるけど、一体どんなやられ方したんだろ?


「さてと……」


 牙芽ちゃんの後にくじを引く。


「32番かぁ〜」


 対戦表に名前を書くと、31番には既に名前が書いてあった。


慳皮愛(おがわあい)?」


 聞いたことの無い名前だった。


「あ、私の相手は川田先輩ですか?どうかお手柔らかにお願いしますね?」


 先程、私と女子ボクシング部を貶める様な質問をしてきたおカッパ頭の新入生……ふふっ、萌高の怖さをとくと教えてあげないとね?


「うん、こちらこそ宜しくね?」


「……」


 彼女は私の差し出した右手を無視して、近くのベンチに腰掛けてしまった。


「ぐぐ……」


 ふつふつと怒りが沸いてくる……。


 まずい、どうして私はこの手の挑発に弱いのか、このままだと試合で力を出し切る事は出来ない……。


「あはは……」


 軽く笑って天井を見上げで深呼吸をした。


 冷静にならなくちゃ……。


 もう、1回だって負けられないんだから!


 廃部確定まで、あと25日!!

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