戦狂下魔術(クロニクル・ショウ)
ーー『国立モルド魔術学園首席卒業!ヴィア・シュルツ!』
「はい」
その返事を力強さはなく淡々と告げ、
体を揃え、壇上へと歩き始める。
ーー「なんであんな奴が…」「いつ裏切るのかしら…」ーー
どうやら、他の奴らは内緒話でもしているようだ。
『敵国』に対する興味は尽きないらしい。
とはいっても、俺はあの国の国民ではなく、このイグリスという国の
国民ではあるのだがー…。
壇上へと続く階段が眼前にせまる。階段を上り、学園長の前に立つ。
「貴君は国のおけるこの学園において優秀なる成績を残した。この度
の卒業の祝辞として、『大海の魔術師』の名を授ける。
誇りを抱き、前へと進む若き人よ、輪を連ねる龍のように気高く生き
たまえ。」
学園長から祝辞を頂いた後、首席として言葉を残す。
ーー卒業式は終わり、後は帰宅するだけだったのだが…
「敵国のスパイが我々よりも上であることはありえない!決着を着ける!」
この通り、つっかかってきたわけだ。
「勝負のルールを聞こう」
「なに、難しくはない、お互いに戦闘続行不可能になるまでだ」
「そうか」
ある程度の間合いをとり、魔力を体中に走らせる。
「いくぞ」
「・・・」
無言のまま構える。この程度の相手ならば、『詠唱破棄』でも勝率は
高い。確か…敵の魔法は土魔術でのゴーレムの召喚による軍隊攻撃だったか…
「我、土の主なり。今理に従い、土塊の偶像よ、群れをなせ」
<ゴーレム・ブリゲイド>!
相手の詠唱が終わるとともに、地面から数体の偶像が湧き
上がってきた。
「いけ!我が僕!」
偶像軍隊共が突進してくる。様子見ってところか?
「それじゃあ、始めるか」
<マリン・バレット>
指先から水の弾丸を連続で撃ち出す。偶像軍隊に全弾命中。まぁダメ
ージはそこそこと言った感じだろうが。これで準備完了だな。
「んじゃ、」
<ディレクティド:カース>
魔法が発動し、偶像軍隊は土へと還った。
「あの…数のゴーレム…だぞ…?」
「……うおおおおおおおおお!負けてたまるかァ!」
<クリエイト>!
…土の剣か。まぁ、残念ながら剣の才なんてないだろうが…。
相手は一心不乱に土で創られた大剣を振る。破壊力は抜群だな。
俺は魔法障壁で攻撃をそらし、相手の腹部に手を当て、
「吹き飛べ、」
<セイントバブルボム>!
魔力で強化した腕力で吹き飛ばし、相手は校舎に叩きつけられ、そして
『破裂』した。
「全治一週間と言ったところか。ま、安静にしろよ。」
これでいいだろう。もう関わってこなければ幸いだな。
ーーーだが、
俺は視界の端になにかが落ちていくことに気づいた。
生徒…か?