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9 突厥一行は、ブルクシャフトの北都館に到着しました

 チャン・ターイー様からのお便り。クサンチッペの心臓が、一気に動悸を高めた。震える手で封を開けた。

「・・・貴女はんのこと、トクベイ殿からのお便りと、ヴァン・トゥルクから聞きましたで。道中どうかご無事で。お会いできる日、楽しみに待っておりますねんで・・・」

短い便りだった。

 楽しみに待っていて下さっている。その記述が、クサンチッペは嬉しかった。

 その文面から、チャン・ターイー様は、明快で温かいお人柄なのに違いない。クサンチッペは、そのようにあらためて想像した。

そして、チャン・ターイーの書くその文字は、のびのびとしていておおらかだった。

 それにしてもこの文章、これが帝国標準語か。私がヴァン・トゥルク様に出した便り、随分と訛っているな、と可笑しく思われたことであろう。


 ヴァン・トゥルクからの便りはもっと長かった。

「・・・クサンチッペ様、初めまして。ヴァン・トゥルクでっせ。ご親展のお便り頂戴し、おおきに、おおきにでっせ。あんお便りでクサンチッペ様、ご自分に対する熱烈なファン、ひとり増やされましたで。そんことご報告いたしますわ。クサンチッペ様のチャン・ターイーに対するお気持ち、感じ入りましたで。チャン・ターイーの友として、そしてそれ以上に、クサンチッペ様の熱烈なファンとして、このお話、何としてもまとめてみせまっせ。トクベイから、クサンチッペ様が、如何に魅力的な女性かいうことは、これまでにも聞いておりましたんや。今回頂戴したお便りで、そんこと間違いあらへんと、よう分かりましたわ。

 トクベイへの便りにも書いたんですけんど、クサンチッペ様はじめご一行様、都では九宝館でお過ごし下さいな。イワン殿下も、九宝玉の方々も、ご一行様のお越し、楽しみに待たれておられまっせ。では道中、どうかご無事で。お会いできる日、楽しみに待っておりまっせ・・・」

その便りは、クサンチッペを勇気付けた。ヴァン・トゥルク様に親展の便りを出してよかった、彼女はそう思った。


 ヴァン・トゥルクからの親展ではない便りは、都ホアキンに滞在中は、九宝館でお過ごしいただきたいということ、そして一行のお越しを、イワン殿下、九宝玉の皆様が、とても楽しみにされている、ということが記されていた。

 

 トクベイ宛親展には、クサンチッペが気にしていること、その容姿に関連することが記されていた。

 クサンチッペ様について、九宝玉の方々、特にシルヴィア様が張り切っておられる、シルヴィア様は、殿下に対しても、そして私に対しても、自分は、実は平凡な顔立ちなのだ、ということを広言されている。皆様が今、ご覧になっている顔は、お化粧によって作り上げられた顔なのだ、私は、殿下をはじめ、世間の方々に、素顔は、一生お見せする気はあらしまへん、そう言われている。ゆえに一行が到着したら、クサンチッペ様を、シルヴィア様にお預けしようと思う。

で、数日後にチャン・ターイーを九宝館に招待し、クサンチッペ様にお会いいただく。

イワン殿下と相談した結果、その段取りでいこう、と決めたのでよろしく。


 シルヴィア様だと。

キプタヌイ汗から、「妖艶」と形容されるテオドラ様宛ファンレターを託されたことにも触発され、九宝玉の公式肖像画をずらりと並べた上で、トクベイが書いたファンレターの宛先がその人だった。

 絶世とも言われる美女揃いの、イワン殿下の九宝玉。その中でも、その顔立ち、そしてスタイルも含め、トクベイが最もいいな、と思ったのが、「豊麗」そして「爆乳」と形容されるシルヴィアだったのだ。あの顔は、加工が施されたものだったのか。まあいいや、それでも。

だが、そういうことであれば。

クサンチッペ様がどう変身されるのか、これは楽しみだ。


 チャガタイは、旅の間、マンドハイとの親交をあらためて深めていた。そのことに専念しているようにも思えた。

旅の間中、チャガタイは、身の回りのことは、突厥におけると同様マンドハイに任せ切りだった。

二歳で母を亡くしたクサンチッペにとっても、マンドハイは、元々母代わりの人である。この旅の間、マンドハイに頼りきりなのは、チャガタイと同様。

トクベイも、分類すれば、ものぐさな男である。マンドハイは旅の間も日々忙しかった。

がマンドハイは、嬉々として彼らの世話をこなした。


 ただオゴタイのみは、自分のことは自分できちんとやる、そういう少年だった。マンドハイが日々行っている雑用を、この少年だけは、気遣い、手助けしたのであった。

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