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8 突厥一行は、帝国領を旅しています

帝国領に入った突厥一行五人、色々観光しています。

帝国ホアキンは、ホアキン十四塔、綺麗な円錐形の独立峯であったオリザレス、細く垂直に落下するスルサの滝。それらを喪失していました。

 突厥からの一行五名は、帝国領に入った。

トクベイは四年ぶり。チャガタイ、クサンチッペ、オゴタイ、マンドハイにとっては、初めての帝国である。

 帝国は、豊かな森林、湖、広い流域を持つ河川。色とりどりの花に溢れていた。


 そして、様々な都市。ノイエスト、アデーン、モカシア・・・

 草原に比べれば、人の数の夥しさ、密度の高さは言うまでもない。が、どの都市も新しさを感じる建築物は、ほとんど無かった。古色蒼然、総じてそういう印象を受けた。


 オゴタイは、トクベイに訪ねた。

「都ホアキンは、もっと華やかなのでしょうか」

「いえ、人口ははるかに多く、大きな建築物が数多くある、という点ではこれまで観てこられた都市の比ではありませんが、新築の大きな建造物はほとんどない、という点では変わりはありません。」

「・・・」

「都ホアキンが、最も華やかで、巨大な建築物が次々に建てられたのは、今から二百年ほど前、建築帝と呼ばれる四十代皇帝コンラッド二世の時代でした。

当時は高い塔が建てられることが流行っており、都中で、百メートル以上の高さを誇る塔が十四もあったそうです。その内の二つは皇宮に、三つは、国教のホアキン大教会に聳えていました」

「はい」

「でもそれらの塔は、落雷、あるいは火事で、焼け落ち、ホアキン十四塔と呼ばれた塔で現存するものはひとつもありません。最後に残った塔が、やはり落雷で焼け落ちたのは、六十四年前ですが、どの塔も再建されませんでした。」

「・・・」

「高い塔は、落雷をまぬがれない、ということが経験的に分かったということもありますが、その後の時代の人びとは、高い塔というものにあまり価値を感じなくなったということが大きいでしょう」

「・・・」

「さらには、新しく巨大な建造物を建てる、ということも流行らなくなりました。帝国には、大きな建造物は、もう充分にある、あとは、今あるものを大切に使っていけばそれでよい。帝国国民も帝国政府も、そう考えています」

「・・・」

「でも、それらの大きな建造物、維持していくのは、なかなか大変です。それについては、多くの予算が使われて、まめにメンテナンスされていますよ」

「そうですか。都であっても、今は、それほど華やかな雰囲気はない、ということでしょうか」

「そうとも言い切れません。風霜を重ねた建造物というのは、重厚で、趣があります。威容と言い切ってよいだけの町並みが並んでいますよ」


 五人はそれぞれ馬に乗っての移動であった。

替え馬を連れてはいないので、一日平均の移動距離は六十キロ程度に抑えた。都ホアキンへは、二ヶ月程度はかかるであろうと思われた。

 有名な独立峯、オリザレス山も観た。

 かつては、綺麗な円錐形の三千五百メートルを超える山だったのだが、四百六十年前の大噴火により、頂上部分の二割近くが吹き飛ばされ、今では海抜二千九百四十二メートル、円錐の頂点部が消失した山となっていた。


 そして、かつては、高さ二百二十メートル、幅約十五メートルの、細く垂直に落下する瀑布だったのが、二百五十一年前の地震による山容崩壊により、高さ百四十八メートル、幅約二百七十五メートルに変化した、スルサの滝の、幅広で豪壮な瀑布も観たのであった。


 そして、一行は、ブルクシャフトに到着し、予定していた宿、北都館に入った。

北都館には、ヴァン・トゥルクからトクベイ宛の親展と、親展ではない便りが各一通。

 そして、クサンチッペ宛のヴァン・トゥルクからと、チャン・ターイーからの親展が各一通、計四通の便りが、気付で届いていた。

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