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王女になった  作者: 居茅きいろ
13/44

十三話・破壊神になった

十二歳になった。


中等部だ。


正直何をやってるんだろうな~と思いながら困難な敵もなく適当に生きるようになっていた気がする。


レベル百五十程度の魔物はガンガン増えていたが困難な敵は居ない。


なので適当にトレーニングや武器強化は続けているがはっきり言って方向性が良く分からない兵器を量産していた。


空中に巨大なビジョンを映し出す光魔法学装置やエリクサーを倒れた人に射出する装置、本当にこれなんに使うの?って物ばかり作っていた。


メテオリーテースのノウハウを使って十メートルほどのロボを作り始めたが部品のオリハルコンがかなり足りなかった。


自分でも錬金してみるのだがまあ時間がかかる。


個人戦力はもう強化するのもほぼ限界だったので防御力を更に上げる大出力魔力結界用の腕輪とか作ったがアルテミス連射に耐えるどう考えても無駄なスペックだった。


これに全属性耐性まで付けた日には頬が伸びきるまでシルくんに引っ張られた。


耐性で元に戻ったが。



私は学校にゴスロリでぬいぐるみを引きずって登校するようになって戦慄の中二姫と言う新たな二つ名を獲得していた。


先生も救国の英雄に文句など言えなかった。


他の生徒を叱る時に「救国の英雄に文句言える訳ないだろうが!」とハッキリ言われたりはしたが。


私は髪を黒く染めて眼帯しようか真剣に悩み始めていた。


私に続いてトワが何故かゴスロリで登校し始める。


灰色がかった彼女の髪に黒いヘッドドレスはとても似合っていた。


中二的な意味で。


そうしたら何故かテニーとローリエもゴスロリに、マルくんやシルくんは白と黒を基調とした服を着るようになった。


この如何にも弄りたくなる私の容姿が寂しさ故だと皆が知っていたからだと気付いた。


気付かせたのはシルくんの行動。


あの時抱きしめられた時、確かに私は癒されていると皆気付いたのだ。


この姿は要するに「グレてしまった」だけなのだと。



学校の成績は隙間なく満点で教師はますます文句を言えなくなる。


そもそも学校に通ってるのがおかしいのかも知れない。


ただ、この世界の常識を全く知らない私には色々面白い事がある。


例えばこの世界には獣人がいる。


この大陸……妖精大陸には何故かいないのだが隣の魔獣大陸、更に西の幻竜大陸、そして当然魔王大陸には存在している。


他に、魔法学では神聖魔法と魂の魔法の関係性について。


神聖魔法は怪我の状態がどの様な物であっても、毒がどの様な物であっても的確に処置される。


これは『女神の知識』と呼ばれる魂にも関係する情報の塊にアクセスする事で可能になっているらしい。


魂に関する魔法は失伝していて神聖魔法の使い手であっても蘇生はできなくなっているが、本来それらの情報にアクセスできるならロストしていても蘇生が可能になるらしいのだ。


魂の性質を知ることができれば私の前世の意識の事が何か分かるかも知れない。


凄く興味は湧いたのだが、しかし賢者の家でも魂に関する記述の為された本は微々たる物だった。


高等部の教師を捕まえて振り回したり(物理的に)大学に突撃して神聖魔法の教授を揺すったり(物理的に)して聞いてもやはり納得の行く情報は得られなかった。


学校中を駆け回る強力ゴスロリ熊抱き娘を、もう諦めたような微笑みで友達たちが見つめる。



そんな日々の中だ。


最近はあんまり遊ばなくなっていたリキッド・エイトに呼び出された。


呼び出される心当たりは全く無いのだが……学校の裏側に……と言うことは決闘か!


何故かおっさんは盛大にため息を吐いたが、リキッドは最近、新たな勇者と呼ばれていて調子に乗っていると聞く。


決闘以外には考えられなかった。


どうでも良い事だが段々意識の境界線も怪しくなってきたおっさん。


まだ情報を秘匿されるのだが、もうすぐ消えるかも知れない。


それはそれで寂しいけれど。



リキッドは少し遅れて校舎裏に来た。


私は右腕に熊さんを抱き、牽制するための旧式のエアブレットシューターを更に威力ダウンしたエアボールシューターを、目を瞑り左腕を伸ばし斜め下から肩の高さまで持ち上げて構えた。


そして肩に頭を乗せるように若干俯いた状態からその銃身を睨むようにキッと見開いた目を上げる。


我ながら決まったな、とか思いながら。


リキッドは、いやリキくんはそれを見て真っ赤になった。


ん、決闘のわりに武装無し?


フル武装でも文句は言わないのに。


私がずっとそのポーズでナイフのような紫の目で睨んでるとリキくんは泣きそうな……いや、泣いてるな、泣き出した。



「レア、俺と付き合ってくれ!」


「はあ、ボコりあいなら何時でも付き合いますよ?」


「あ、いや、そう言う意味じゃなくて」


「私は暇じゃないんですよ?」



なんだろう、なんだか自分にイラつく。


リキくんは明らかに困っている。


困らせている自分にムカつくのだ。



「彼女になって下さい」



ドキン、とした。


だけど何かそれは断らなければいけない気がして、つい昔ライアンに言ったようなセリフを放ってしまう。



「……シルくんかマルくんかカイくんに勝てるなら構いませんよ、好きになさって下さい」


「あう……」



勝てるわけが無かった。


自分でも思ったがなんて卑怯で酷い断り方だろう。


私は少なからずリキくんは認めている所があるのだ。


やんちゃな彼が必死に勉強して上位十人に常に名前を連ねているのは知っていたし、彼の炎と身体強化を使った戦い方は本当に彼を勇者クラスの冒険者にしていた。


だから私は言い直すことにした。



「私は好きな人が居ます。 リキくんとは友達で居たい。 駄目ですか?」



ハッキリ言った。


ズバッと斬りつけた。


リキくんは震え始めた。


ちょっと涙目になってる気がする。


いや、先からずっと泣いてる。



「俺、シルさんと勝負してくる!」


「ええっ!」



シルくんは戦闘力は元より、昔より更に容赦のない人格になっているのだが。


しかもそんな装備で大丈夫か?


シルくんのことだから武器なんか使わないだろうが……。


そうして青春真っ盛りの私は放課後の決闘に立ち会うことになった。




これはなんだろう、現在の中二コスよりハッキリ恥ずかしいのだが。


顔から火を噴きそうなのだが。


運動場の真ん中でシルくんが決闘すると言うだけで全校生徒が大学の方からまで見にくるのだ。


この頃シルくんは素手でグラビティドラゴンを狩ったりかなり派手な活躍をしていた。


何故そんな派手な活躍をするのか聞いたら、お姫様より名声がないのが嫌だから、とか言ってた。


なんだろう、胸がモヤモヤするのだ。


その言葉を聞いてからずっと。


ちなみにリキくんに言った「好きな人」はハッタリなのでシルくんは良い迷惑だったりする。


まだレアにはそんな感性は備わっていないしなとおっさんの意識は呟く。


ともあれ最近派手に活躍しているシルくんと勇者として名前を上げ始めたリキくんが亡国の王女レアを取り合って決闘するのだ。


それはもう、フェスティバルだった。


試合にならないとは思うけど。



「別に負けても良いけど、あいついつも口約束でなんでもする的なこと言うからな、わりぃけど負けてやらないから」


「あ、当たり前だ!」



シルくんはあからさまにやる気が無さそうである。


真っ赤になってる中二少女の身にもなって欲しい。


だがリキくんの口上で状況は変わる。



「惚れた女に真面目になれないお前みたいな奴にレアをやれるか!」



会場、いや、運動場が割れんばかりの声が観客から湧き上がった。


一部では拳神シルルスとか呼ばれてるシルくんにハッキリ喧嘩を売ったのだ。


それはもう会場は沸きに沸いた。


シルくんもその挑発に柳に風とはしていられなかったようで反論した。



「てめえみたいな半端野郎に僕とレアの何が解る!」


「お前アイツが心で泣いてたら気付いてやれんのか?! ずっと支えてやってんだよこっちは!」


「ぽっと出の毛も生えてない小僧にレアはやらねえよ!」



ん?


魂の声だからかお姉さんの台詞に感じた。


いやいやいやいや、ちょっとちょっとちょっとちょっと、待ってちょっとシルさんちょっとそれ交際宣言してしまってませんか!?


ちょっとシルくんさん!!


顔が火を噴くのが解る。


今なら顔からの炎で邪神を焦がせる。


私が熊さんを抱きしめたまま右にふらふら左にふらふら身体強化かかってない貧弱な体で本当にただのか弱い乙女として倒れそうになっているのに空気を読まない男共はバチバチやり始めた。


何か私を見るほっこりした視線が四割くらいある。


ゴスロリ熊抱き少女私は決闘の場でほっこりされている。


しかし久しぶりに人間として見られている気がした。


顔が熱くなる。


二人は遂に青春漫画よろしくクロスカウンターから戦闘を始めた。


シルくんはかなり真面目に一撃で決めに行った。


と言っても本気を出すとミンチなのでかなり出力を絞った一撃だが。


一撃で決めに行ったと言うのは最初の一撃がアゴを捉えていたから。


普通の庶民なら脳震盪だろう。


しかしリキくんは仮にも勇者と呼ばれるほど強くなっている。


二人は表面的には良い勝負に見えた。


しかしシルくんは最初の一撃でリキくんを倒せなかった時点から一撃で倒してやる気が無くなっただけなのだ。


このたくさんの人の中で晒し者にして、もうレアに言い寄る男が出ないようにしたい。


まだそれが「好き」だとシルくんには認識できなかったが、なんだか、とにかく、ムカついた。



二人の打ち合いは一時間続いたがもちろんシルくんはピンピンしていてリキくんはふらふらだ。


しかしリキくんだって必死だった。


負ける訳にはいかなかった。


思えばシルくんが私を取り合って戦うのは二回目である。


キモライアンは今もシルくんにたまにパシらされているらしい。


まあ「焼きそばパン買ってこい」とか転生しないと無理な注文なので実際シルくんは何もしていない。


ともあれ、負けたら厳しい社会の目に晒されることになる。


だがリキくんはそんなことは考えてない。


ハンパなシルくんが許せない。


叫びまくっているのだ。



「レアをお前みたいな奴にやれるかあああ!」


「は、俺だってお前なんかにやるつもりねえよ!」



殴り合うのだ、二人は。


リキくんが弱ってからシルくんは何故か身体強化を解いていた。


痛いのだ。


唇が切れてる。


痛いのだ。


二人とも目が腫れている。


たぶんシルくんは途中から、一方的なたこ殴りがフェアじゃ無いと考え始めた。


シルくんの中のお姉さんは不良っぽいが卑怯者じゃない。


だからフェアに殴り合いさせている。


今のシルくんは何故お姉さんが自分から力を奪うのか戸惑っている。


深森の森の奥、グレーターデーモンに脅かされていた私のように。


それはたぶん魂が教える、生きるために大切なこと。


シルくんは今まさに試練の中に立たされている。


お姉さん、シルくん。



「うおりゃああああっ!」


「くっそっ、てめえええっ!」



シルくんは前世の、恐らく格ゲーから得た知識でリキくんを下段蹴りで攻める。


そのトリッキーな動きにリキくんは圧倒された。


しかし私はもうシルくんだけじゃなくリキくんも応援したくなっていた。


二人は傷だらけになりながらどちらも、私を諦めるつもりなどないのだ。


殴り合い、傷付く二人を見て私は膝をついて泣くしかできない。


私にはまだそれが何か分からないのだ。


恐らくおっさんは知ってる。


絶対に見届けろと言ってる。


邪神を素手で真っ二つにするのが平気だからと言って愛しい友達が傷つくのが平気になるわけがないのだ。


私はもうこれ以上苦しいことは無いんじゃないか、と感じ始めていた。


いつの間にかマルくんが私の横に立っていた。


マルくんは明らかにシルくんが手抜きしてる、けど本気でリキくんと痛みを分かち合っているのが分かって困惑しているようだった。


シルくんのお姉さんの意志だろうが、それはシルくんの魂の叫びだ。


やがてシルくんもリキくんも立つのが厳しくなってきた。


最初の一撃を再現するようなクロスカウンターの末、二人は抱き合うようにして、そのまますれ違いに倒れた。


何故かマルくんはカウントを取り始めた。



「聞こえてるか二人とも! テンカウント以内に立ち上がった方を勝ちにする、いいか?」


「ぐっ……」


「くうっ……」


「十」


「九」


「八」


「うおおっ」



リキくんが頑張る……が崩れた。



「七」


「うああっ」



シルくんが頑張る。


しかしやはり膝が折れた。



「どうした、お前らがレアを思う気持ちはその程度か!」


「六!」


「ううっ」


「うおおっ」


「五!」


「くっ、くそったれ」


「おああっ」



会場……運動場全体にカウントダウンが響く。


私は恥ずかしいより二人が愛おしくて仕方なかった。



「四! 三!」


「ぬああっ!」



リキくんが最後の力を振り絞る。



「おおおっ!」



シルくんも対抗する。


「二!」


「一!」



最後のカウントを聞く前にリキくんは倒れ、シルくんはしっかりと立ち上がった。


「ゼロ! 勝者シルルス・クラウス!」


『うわあああああああ!!』



会場は盛大に盛り上がった。


シルくんが私を見つめる。


私はシルくんから目を離せなくなった。


戦慄の中二少女でも目が離せなかった。


シルくんは私の腰に手を回し、顔を寄せてくる。


その時気付いた。



「調子に乗ってんじゃねえ~!!」



殴った。


吹き飛んだ。


拳神シルルス吹き飛んで鼻血を吹き出しながら空中で縦に六回転、横に七回転くらいして吹き飛んだ。


私は気付いてしまった。


シルくんは一度も私が好きとは言ってない。




その後私は友達たちに激しく責められる。


ローリエが言う。



「必殺空気クラッシャー」


「うぐうっ!」



テニーが言う。



「恋のゴスロリ処刑人」


「はあっ!?」



トワが言う。



「愛の破壊神」


「はうぐっ!」



私の二つ名はその日だけで二倍になった。



「だって、好きとも言わないでキスするなんて卑怯じゃないですか」


「ああ、そう言えばそうでしたわ!」


「有り得ませんね」


「納得、私たちはレアの味方」


「解って下さいますか!」



ゴスロリだけどお姫様の時の口調が抜けない私。


凄い笑顔になった私を見て三人は赤くなってくねくねした。



「?」


「可愛い……」


「これは卑怯ですね……」


「レアはやはり愛の破壊神」


「二つ名広めるのはやめて下さいね!?」



とにかく私の親友三人は私の行動の真意を学校中に広めてくれた。


その日からシルくんに唇強奪人と言う良く分からないながらも不名誉な二つ名がついた。



とにかく生徒たちが私を見て呟く第一声はしっかり「愛の破壊神」になった。


トワ……。


ちょっとお仕置きしておいた。


シルくんはお姉さんに事情を聞いたんだろう、その日からすごく私の機嫌をとろうとし始めた。


でもシルくんにたぶんお姉さんは肝心なことは言ってない。


シルくんが気付かなくては駄目だ。


私もそう思う。



「シルくんは私のことをどう思っているんですか?」


「守るべきお姫様だと思ってるよ」


「五十点」


「えうっ、マジか……」


「最近マルくんが私を構ってくれなくなったんですよねえ」


「ほ、他の男の話するなよ……」


「シルくん」



私は他に誰もいない賢者の家の中で、顔がくっつくほど近付いて彼を見た。


紫の切れるような瞳で見た。



「か、かわ、くそっ」


「私のことをどう思っているんですか?」



私は同じことを聞いた。


実際私も期待してないことはないのだ。


乙女なのだから。


しかしシルくんは意外とと言うか、朴念仁だった。



「大切なお姫様だよ……」



ドキッとしないことはない。


でも、大事なことが言えてない。



「もういいです!」



私は部屋に閉じこもった。


今夜はご飯を食べられる気がしなかった。



翌朝から私はシルくんもマルくんも避けた。


少しシルくんが泣きそうな顔をしてる気がしたが、私は譲歩する気がなかった。


シルくんが勇気を出してくれたら勇気を出せると思っていたし、自分から勇気を出すには少し私は子供すぎた。


だから何もない。


何もないまま時間は過ぎていく。



「はあ……」


「明らかな恋のため息吐かないで下さいます?」


「モテない女の子にとっては致死性があるブレスよね」


「く……苦しい」


「トワ……私のため息は流石に人を殺せません」



息苦しくなったテニーは半ば強引に話題を変えた。



「そう言えば知ってます? 最近オカマ騎士団とか言う連中が正義の味方とか言いながらいろんな所で男性を襲ってるらしいですわよ!」


「うがあっ」


「どうしたの、レア!」


「何か古傷を抉った」


「お、思い出しました……昔、量産したオカマさんがいたことを……。 そうか、いまや皆、魔学民だった……」


「大丈夫ですの?レア」


「私も女の子同士は有りかと思いますが男性は何か想像がつきませんね」


「ローリエってそう言う子だったんですのね……」


「ミルキーさんとか素敵よねえ……」


「お姉ちゃんはそう言う属性では無いですよ……過保護なだけだし、私も甘えてるだけです」


「自覚有ったの」


「そ、それはまあ。 トワなんかは恋はしないんですか?」


「レア、この世には聞いてはいけないことがある」


「あ、トワってリキくんのファンでしたっけ!」


「うぐうっ……テニー……あとでお仕置き」


「ひいっ」





初めて聞いた。


この年になって女の子同士の恋バナは確実に増えているのだが、トワがリキくんが好きだったなんて……。


ああああああ、私ひょっとしてトワに嫌われたかも!



「大丈夫、レアはリキくんより好き」


「私と同じですか?」


「ローリエ?!」



ローリエの大胆な告白にテニーは目を見開いた。


ローリエって昔からちょっと怪しかったけど。


しかしまあ親友だからね。



「ローリエは誰が好きなんですか?」


「私は小等部のシンシア先生ですね」


「ああ、あの胸がおっきい」


「ローリエ巨乳フェチ」


「乳だけじゃありませんからね!」


「ま、まあ、怪しい話になりそうですし、次はテニーに聞きましょうか」


「はうぐっ」


「テニー……一人だけ逃げられると思わないで下さいね?」


「わっ、私は……」


「テニーは?」


「誰なの?」


「マルくん?」


「ちょっ、なんで言ってしまいますのトワ!」


「マルくんですか、壁は高いですね」


「そうですわ、まだレアが誰が好きか言ってませんわ!」


「あ、そうだ」


「シルくんには求めるのにレアが言わないのは駄目」


「う……私は……でも……」


「好意を向けてくる人皆を好きになる必要有りませんのよ?」



テニーは昔からわりと核心を突いてくる。


仕方ない。


皆勇気を出したのだし。



「私は、やっぱりシルくんが好きです」


「ですよねー」


「なんですそれ、テニー!」


「あははははっ!」



ガールズトークってわりと面白いな。


おっさんは呟いた。



さて、ここで乙女たちは行動に出るのだ。


テニーとマルくん恋愛計画と言う人類の存亡がかかっていたりかかっていなかったりする計画が発動されたのだ。


もはや戦闘面では無敵の私も恋愛は勉強中である。


痛いゴスロリ娘四人衆はまずシルくんと私でマルくんから離れ、トワとローリエでカイくんを引き離した。


必然的にマルくんとテニーが一緒に歩く。



「なんであいつら離れて歩いてるんだ?」


「あゎ、あの、マルスくん」


「ん、ああテニーちゃん、何?」


「私の名前覚えて下さってるんですね……」


「何度も一緒に戦ってるのに忘れてたら失礼でしょ」



マルくんの笑顔はかっこよかった。


私も胸がふわっと熱くなった。



「レア?」


「あぅ、はい、シルくん」


「こ、この前は済まなかった……その……無理矢理……」


「はい……」



マルくんとテニーの方が凄く気になるのにシルくんとこの状態は凄く不味い。


やばい。


本当これあれ?


ローリエとトワの作戦だったりしない?


ローリエとトワは案の定二組のカップルをニヤニヤ眺めている。



「あの野郎共ぉ……」


「レア?」


「あぐっ、はい……」


「レアはこの前のあれ……どう思ってる?」


「シルくんは大事な段階を一つ飛ばしました。 だから拒否しました」


「あう……やっぱり何か足りなかったんだ……」


「レアはおじさんに何か聞いてたりする?」


「この件に関しては意識を手放してます」


「同じか……」


「でも、私たちだけですよね、こんな話ができるの」


「うん……嬉しい」


「嬉しいですね……二人いろんなことを分かり合えたら」


「うん……でも俺は……肝心なことが分からないからお姉さんに愛想をつかされてる……」


「……」



私はシルくんの腕に私の腕を絡める。



「レ、レア」


「無理しなくても、急がなくてもレアは待ちます……」

「……うん」



私たちがけっこう盛り上がっているとローリエとトワがキャーキャー騒ぐ。


私は何年振りかの超速反射と高速行動でシルくんさえ気付かない超スピードで二人の額にエアボールをかました。


二人が倒れた後、テニーが切り出す。



「今日、女の子の間で誰が好きかって話になったのですが」


「ん?」


「あ、ごめんなさい、突然で……あの……」



マルくんは少し焦っていた。


女の子にガールズトークを振られた経験などもちろん無いからだ。


野生の中で生き、戦いの中で暮らしていたマルくんにはそれは恐ろしいほど日常に、現実にマルくんを引っ張り込む。


テニーは勇気を持って続けた。



「マルスくんは、誰か好きな人がいますか?」



「……うっ」


「す、すみません、言いたくなかったら、あの……」


「秘密にして欲しい」


「は、はい」



テニーはマルスからレアの名を聞くのだと思っていた。


マルスは「レアコン」とまで言ったことがあるのだ。


事実その頃のマルスは王女レアに憧れていたのだ。


だがマルスは十九を超えた頃から憧れと現実の違いは認識していた。


今マルスが好きなのは……。



「俺は、ミルキーさんが好きだ」


「!!」



テニーにとっては衝撃だった。


絶対に勝てるはずがない人物の名前が上がったからだ。


でも秘密にして欲しいとマルスは言った。


つまり二人はまだそう言う関係ではない。


テニーは少し勇気を出すことにした。


砕け散るのはなんとなく分かってしまったけれど。



「私は、マルスくんが好きです……」


「……」



マルスも薄々気付いていた。


彼女がそう言う話を振ってきた理由。


でもシルや他の男友達の失敗をマルスは見ていたし、女の子に言い寄られるのは一度や二度ではない。


なんと言っても勇者なのだ。


だからここはキッパリしないといけないのが分かっていた。


この辺りがシルくんと違う。



「俺は……君の思いに答えられない……ごめん」


「マルスくん……」



分かっていた。


だからテニーは泣くつもりは無かった。


だけど。


テニーはまだ十二歳である。


堪えられなかった。


泣くことを止めるだけ、まだ理性が強くなかった。


だから走った。


ローリエとトワの元に飛び込んで、そうして泣き出した。


私はそれを振り返り、人生は避けられない悲しみでいっぱいなのだ、と、胸が苦しくなった。


それは愛の破壊神でも避けようがなかった。



恋愛は、まさにサバイバルです。





次回から旅立ちます。

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