虚しく響き渡る声援
何とか、落とし穴に落ちたブンドド殿を救わねば。
「アッタタタタ、ちょっとお腹が。失礼します」
そう言いながら腹痛を訴えながら退出しようとしたが、
「ブンドド―ッ! 負けるな、ジャンプ、そこは跳躍だ!」
と、我が主は水晶玉に噛り付いて応援していたので特に演技の必要は無かった。
すぐに、隣の部屋の水晶玉に念じて、ブンドド殿の配下であるゴブリンたちを映し出す。
「ゴブリンどもよ、今なら我が主は助けに入っても咎めまい。すぐにブンドド殿の助力に行くのだ!」
勇者共め。お前らが卑怯な手を繰り出すことで、こちらも他の手を打つことができた。決着は、まだついてはおらんぞ。
しかし、なぜかゴブリンたちはポカンと呆けている。
「ど、どうしたゴブリンどもよ。早くブンドド殿を助けに行かんか!」
「オレタチ、イカナイ」
比較的、知能の高そうな一匹のゴブリンが答えた。
「な、なんでだ。早く行かないとブンドド殿が――」
「メイレダカライカナイ」
「いや、それはわかるがブンドド殿が絶体絶命の状況なのに――」
「メイレイダカライカナイ」
んもう、嫌い。バカって嫌い。こんな時ばっかり妙に命令聞くし。
再び、ブンドド殿の方に水晶玉の映像を映し出すと、落とし穴に落ちたブンドド殿は勇者アレスに寄って、火あぶりにされているところだった。
もう、援軍も間に合わない。手下のゴブリンたちは、話にもならない。
「ブンドドーッ! 負けるなブンドドーッ!」
我が主の声援だけが隣から大きく鳴り響くのみだった。
結局、ブンドド殿は逝った。