遊び人の生計
もう、ブンドド殿には単独で戦って貰うしかない。
玉座の間で水晶玉を我が主と共に見守る。
「ガト、敵の戦力を報告せよ」
我が主が、水晶玉を睨みながら言う。
「はっ、勇者の名はアレス。ここ数十年の勇者を名乗る者の中では随一の剣術、魔力を備えております。戦士のリアンも同様です。後は、遊び人のシリュウに――」
「遊び人? フム……聞かない職だが」
この報告はサラッと行きたかったが。
「あの、要するに遊んで暮らす人です」
「……どうやって生計を建てるのだ?」
知らん。人間の事情など知らん。
「ええっと、どうせくだらないと思いますけどね。遊ぶのを職業としてるなんて――」
「ガト、お前はその印象のみで取るに足らないものと結論付けるのか?」
「……はっ、失礼しました。次までに遊び人の生計の建て方をまとめて来ます」
あー、クソ真面目だなホント。こっちはいっぱいいっぱいなのにまた仕事増えた。
そんな事を話してい内に、ブンドド殿が出てきた。部下は他に連れていない。
あんた、立派だよ。あれだけ愚痴こぼしても、結局は、我が主の方針の元立ち向かうのだから。
「愚かなる人間どもよ。西のゴブリンを束ねる、このブンドドが相手だ」
そう大きな声で叫んだ。
「……シリュウ、あれ、やれ」
勇者アレスがシリュウに指示すると、
シリュウが、不思議な踊りを踊り始めた。
「ぐぐぐぐぐっ! 何たる腹が立つ踊りだ」
我が主が思わず、歯を食いしばった。
気の抜けたような表情で、挑発するような踊り。アレやられたら、腹も立つ。
激情家であるブンドド殿なら、なおさらだ。
「貴様―っ!」そう叫びながら、不思議な踊りを繰り出したシリュウめがけて襲い掛かった。
落とし穴に、落とされた。
「ブンドドーっ! 何て卑怯な人間どもだ」
我が主が水晶玉に向かって叫ぶ。
あんたのせいなんだよ。半分は、あんたのせいだ。