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六章 第三話 死とはなにか

あちこちから馬の嘶きと、肉を切り裂く気味の悪い音が蔓延する城下の外れ。空は雲ひとつない晴天だというのに、戦地は非常に混乱していた。

「どうしてなの?」

城下町側に設営されたテントで、兵士団長アリアが呟いた。いつもは宣戦布告後は数分ほどで制圧が完了するのだが、今回は数十分かかっても制圧できていないのだ。それもその筈、主戦力であるシル班が未だ到着していないのだ。最初の煙弾から一時間以上経つのに…。アリアは段々とイライラしてきた。その時、

「だ、団長!すみません!」

シル班が飛び込んできた。シルは背中に大きな鞄をからっていた。しかし、その後ろに続く人々の格好を見て、アリアは驚いた。

クロイラとシロイラは入院服のまま走っており、腕には流血した後が残っていた。ヒロガとハルヴィンは服がズタズタに破れており、ハルヴィンは何故かギィギィと音をたてて歩いていた。

「え…」

アリアはもう声も出なかった。

「あ、アリアさん!」

それに気づいたシロイラがアリアに声をかけた。

「私たちこんな格好してますけど、ちゃんと戦えます!」

「シロイラ?あなた方g…何でもないわ」

何かをいいかけたアリアの言葉にシロイラは首を傾げた。しかし、アリアは言葉を続けた。

「今、兵士を総動員して戦っているわけなんだけど…わかるわよね?」

その言葉に五人が頷いた。






「何なのこの人数…」

シロイラは思わず呟いた。それほど内乱軍が過去最大規模で襲ってきているのだ。目の前には次々と倒されていく仲間の姿があった。戦いの前線もじわりじわりと城下に迫ってきていた。

クロイラが鞘から刀を抜いた。その瞬間シルが微笑んだかのように見えた。シロイラも槍を握りしめた。

「かかれッ!」

アリアの合図でクロイラとシロイラとヒロガが同時に兵士の中に飛び込んだ。シルも銃をうち始めた。





クロイラは一気に前線まで駆けていった。そして一気に内乱軍を切り裂いた。辺りに鮮血が飛び散った。クロイラは顔をしかめた。何回人を切ろうと麻痺しないこの感覚。クロイラはそれがたまらなく嫌だった。例え内乱軍だろうと、きっと家族はいる。人を切るたび、クロイラは罪悪感に襲われた。

「キャアッ」

突如シロイラの悲鳴が聞こえた。横を見るとただの棒切れを地面に落とし…

考えるより先にからだが動いた。クロイラはそう思った。シロイラに襲いかかった、内乱軍を一気に切り裂いた。

「大丈夫?」

クロイラはシロイラに駆け寄った。シロイラは頷いたが震える自分の手を見つめた。

「ちゃんと手入れしていたのに…何で?」

「とりあえず武器なしで前線はまずい。一旦キャンプに戻ろう」

クロイラの提案に頷いたシロイラを近くの兵士に護衛を頼もうと、クロイラが刀を高く掲げたとき、

『カキン』

金属音が響き、何かがコトッと落ちる音がした。その直後、クロイラに内乱軍が襲いかかってきた。それに咄嗟に反応したクロイラは、相手の服を掴み地面へと叩きつけた。その左手には柄から10?程しか刃が残っていない刀を持っていた。

「どうして刀がおれた?」

クロイラはあり得ないという顔で刀を見た。毎日手入れをしているこの刀がなにもしていないのに、折れるなんてことはないのだった。

「シロイラ!早くキャンプへ!」

「でも、お兄ちゃんも武器が!」

「僕はまだ残ってる!」

そういって、腰の刀を軽くコンと叩いた。

「それに一人でも多く前線にいた方がいい」

そしてシロイラは頷いた。

「わかった、すぐに戻ってくる!」





兵士と共に駆け出したシロイラの背中をみて、僕は微笑んだ。そして、口から言葉が漏れた。

「ありがとう、シロイラ。最期にもお兄ちゃんと呼んでくれて」

そして敵のいる前線へ振り向いた。

「もう、最後の刀も折れちゃってるし。この怪我じゃ、もう格闘術も使えない」

目の前には一人の若い兵士が、剣を高く振り上げて迫ってきていた。霞む視界で最期にそれだけを見て、固く目を瞑った。







 「イテテ…」

片手に拳銃を持ち、手をぶらぶらとしているシルが呟いた。

「あーあ、フレームがガタガタ。また整備しなおしかぁ」

彼女は妖しく微笑んだ。

「駆け出しちゃったけどさー、お二人さん。もうクロイラは助かんないよ?」






「私のせいでね?」






武器を取った私とハルヴィンで、お兄ちゃんの元へ駆け出した。きっとお兄ちゃんは一人で頑張っている。だから早く戻って援護しないと。

でも、私が見たものはそんなお兄ちゃんじゃなくて、





全身を切り裂かれ、銃弾を浴びて激しく踊る兄の姿だった。


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