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三章 第一話 カシミア・フィオラティス

私の生まれた町は森の中にあった。でも、時々赤くてサラサラした砂が家の中に入り込んでくるので掃除が大変だった、ということしか覚えていない。それは私がたった五年しか住んでいなかったからだ。

その話を母や父にするとすぐに話を反らす。唯一聞いてくれていたのが兄と姉だった。いつも三人で不思議だね、私たちは一度も城の外に出たことはないのに…と子供部屋でいつもひそひそ話していた。幸せだったかと聞かれれば返事に悩むがとても充実した生活を送ることができた。

ある日、兄と姉が面白い歴史書を見つけたと言って私に見せてくれた。そこにはレールド王国と合併する前のラニューカ王国について書かれていた。400年前、ここにはラニューカ王国という国があったらしい。年表を見ていると興味深いものが目に入った。歴代の王の中に一人だけ女性がいて、名前はカシミア女王というらしい。後に兄が教えてくれたのだが、私たちには王家の血が流れているらしい。ただ、カシミア直系の血ではなく、カシミアの妹夫妻の子孫らしいのだ。

 カシミアは元々ハイザントというレールド王国の人間と婚約していたのだが、合併後、レールド王国が政治を牛耳りラニューカ王国の王族は権威を失った。それだけでなく、元ラニューカ王国民はレールド王国民とは結婚してはいけないという法律がつくられ、婚約は破綻、ハイザントは行方不明になってしまったという記録だった。最後にカシミアは幼い頃城では育たず、五歳頃まで森の中で暮らしていたという。その時は私の記憶に似ていると思った。

それから数年後、兄は家を継ぐために猛勉強、姉は別の家に嫁ぐための花嫁修業をしていた。私はいつも一人で部屋で本を読んでいた。

ある日、父が内乱をおこす軍隊について話してくれた。

「お前も知っているだろうが、この国はレールド王国に散々な目に合わされてきた。その報復として400年前から内乱を起こしているんだ」

レールド王国を追放しろ、信じるんじゃないあいつらは冷血非道なやつらだ、死んでも関わるんじゃない。毎日父は私に同じことを言ってきかせた。

父の言葉を一字一句間違えずに言えるようになった頃。兄と姉との思いでの歴史書を眺めていた時のことだった。小さな頃からの不思議な記憶。小さい頃はただ風景が頭に浮かぶ程度だったのだが、感情さえも浮かぶようになり、泣いてしまうこともあった。しかし、私は必死に隠した。やっぱりこんなことが起こっているのは私だけなんだ、言えば確実に気味悪がらる。

だが、その日は突然やってきた。私は当時12歳だったと記憶している。

「シル、お前をレールド王国にスパイとして、送り込む。この王政をひっくり返すような材料を集めるのだ」


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