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第7話・復活と捕食

最後の方に年齢制限?

一応直接的な言葉は使っていない…筈。

次に目が―というより、意識が戻ったのは、俺と初代勇者が相打ち同様に全力で技を放った直後の事だ。あの瞬間に俺とシオンは分子レベルまで肉体が崩壊、かろうじて精神のみが残っているだけだった。


俺は元々肉体に頼らずとも生きていける造りだったか、シオンはそういった造りになっていない。あのままではシオンは消滅していた。

しかし俺の意識が戻ったのを察したクラリスの連絡が入り、そこで俺はシオンをもとの世界に還せば、こいつの肉体は戻るのではないかと思い、クラリスに協力を頼んだ。


「こんな事もあろうかと!」とでも言いたげにクラリスが持ち出してきたのは俺専用の鎧と大剣で、効果はこれを俺が装備しているとき限定で、一定以上の『負』が俺に貯まる前に魔力に変換する仕組みで、俺はそれを装備してシオンが元いた世界にシオンを届けた。


最初はシオンの魂を送った後、すぐにこちらの世界に戻るつもりだったが、どうもずっと意識ははっきりとしていたらしいシオンの魂に乞われて、しばらくそちらの世界に滞在したのは想定外だった。大体半年ほどだったはずだが、こちらに戻ってきたときには1000年ほど時間が過ぎていたのはいまだに印象深い。その後は正体を隠し、10年単位で場所を変え正体を隠しながら5000年ほど生き、今に至っている。


「最初の俺を除いた【魔王】や【魔帝】の連中は俺とは別の要因で、単に人間界を支配したいだけの野心家。俺が正体を隠していたのは、ただ力量が足りない…いや、回復しきれていないから。【魔王】や【魔帝】を止めなかったのは、当時の俺ではそれをしきれる力が戻っていなかったから。俺から話せるのは、ここまでだ。」


時折焚き火の薪を追加しながら、俺から話せることはほとんど話した。勇者以外の面々はすっかり何もわからない、という顔で、皆一様に混乱しているようだ。聞いてくれただけマシだろうと思う。少し回復した次席が手を上げた。

「何だ魔術師。」

「魔術師ではない、マグだ…。そうではなくて、仮に今の話が本当だとして、最初にレオン殿が言っていた『契約』とは一体いつなされたことだったのだ?今の話からでは全く予想が出来ぬのだが。」


「…そういえば話すのを忘れていたな。いいだろう、俺にとってはあまり話したくない出来事だが、話してやる。」

本人の娘にこんな話をするのもどうかとは思ったが、これぐらいならおそらく大丈夫だろうと高をくくり、話を再開する。

「【初代勇者】シオンを元いた世界に送り届け、彼女が|(驚いたことに)自力で肉体を再生した、その数分後の話だ―――。」


「イスカリオテは、これからどうするつもり。」

この時には互いの名は呼び捨てだった。

「どうも何も、元の世界に戻って世界の結界を修復しつつ、力を取り戻してあの『負の感情』に対抗する手段を模索するつもりだ。それに、クラリスの事も気がかりだ。」

クラリスの話を出した途端、シオンはこてん、と首をかしげてから目を閉じた。あとから本人に聞いた話によると、彼女とクラリスはかなり相性が良かったらしく、そのためクラリスの加護が強かったのか、元の世界に戻っても短時間なら念話が出来たらしい。

「…クラリスの方は、たぶん大丈夫。だから少しだけ、この世界にいてほしい。」


「何故だ?」

「昔から好きだった相手がいる。彼に告白するのを、見守ってほしい。」

いくら俺が大人しくなっていたからとはいえ、ここまで言ってくるものだろうか。そう思ったが、その時の俺はまあいいか、と思っていた。

「恋愛ごとか…。悪いが俺は、その方面は担当したことがないから、相談には乗れんぞ?」

「構わない、見てくれるだけで充分。」

「…なら、まぁ、構わんが。」

どちらにせよ、俺の時間からすれば短いものだから、問題はないだろう。

「それと、一つ『契約』がしたい。」


「契約?」

俺にとっての契約とは、俺の世界での『契約魔術』のことを示し、それはこの世界で出来るものなのか?と俺はその時思い、言葉に疑問の音がのってしまった。

「一応聞くが、どのような内容だ。」

「受けてくれるの?」

「内容にもよるが、な。」

「…私の子孫が【勇者】として向こうに()ばれたら、手助けをしてほしい。」


「…ばれるのか?」

俺は治まっているのに?

「わからない。でももしかしたら、()ばれるかもしれない」

「ふむ…まあ構わん。だが仮にお前の子孫が()ばれたとして、それがお前の子孫かどうかを確認する術はあるのか?」

「向こうでは使えなかったけど、こっちなら使える私の超能力でそれは可能。」


この世界は、魔術の類は発展していない。しかしかわりに40人に1人位の確率で超能力者が生まれるらしい。その能力の方向性はまちまちだが、ものによっては俺の世界の魔術で禁術に分類される極魔術に匹敵するものもあるそうだ。シオンを届ける時にそんな説明を受けた。

しかしこの時、シオンが使えたのはそこまで強力なものでもなかった。

「ほう、それが『契約』というわけか?」

「そういうこと。というわけで、首を出して。」

「ん、こうか?」

言われるがままに首を露出させたら、俺はシオンに喰われていた。


「く、喰われ…!?」

そこでブレイドが愕然とし、一瞬腰を浮かせた。

…まあ、おそらく気付いたのだろうな。あまり動揺されても困るのだが。

「落ち着け、比喩みたいなものだ。実際は…されただけだ。」

おそらく何人かは察しがついているのかもしれんが、さすがに伏せておく。本当に心の底から苦い思い出だと思っているので、勘弁してほしいのだ。いっそ忘れたいぐらいだったが、俺の【原初の魔王】としての性質――「貯蓄」によって、記憶を消せないのも現実だった。まさかシオンも自分の娘に、あのことは話していないとは思うが。

「そういえば母が、あなたの話をするときに、『契約』をした時の話でこう言っていた。」

…おい、ちょっと待てまさか。


「浅黒い肌が快楽に跳ね、傷跡を愛撫すれば身をよじり、血を吸い上げられる恐怖と知らなかったはずの未開拓の場所を開かれる悦楽に顔を染め、必死で止めるよう懇願してくるのを却下して強引に何度も絶頂させたのは、今までの人生でも二番目に良い気分だったと。」


…勇者以外の全員が、目と口を見開いて呆然としたのは仕方がないと思う。

俺は直後に、本日二度目の失神状態に入ったので、そこまで考えるのが限界だった。

…というか、二番目、なのか…シオン…。

シオンとレオンが元いた世界の超能力の感じは、「と○る」じゃなくて、どちらかというと「虎+兎」の世界の方がイメージとしては近いです。閑話休題。

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