〜 蕾 〜
消えそうで
消えない…
記憶の中…
幼い日の記憶…
昔…住んでた
家の庭には…
緑の芝生に
色とりどり…咲く花…
とても綺麗だった…
あれは…
何の花だったのか…
今となっては
名前すら…
わからない…
曖昧な残像…
夜空を見上げては
涙がとまらず
眠れなかった日々…
七つはなれた姉が
母親代わり…
夜は…寂しくないように
二つ上の兄が
寄り添ってくれた…
父が…
『お前のお母さんは、
花が好きで…
特に…
蕾が好きだったんだよ…』
って…
父に聞かされたのは
二十歳のお祝いの席…
思春期を終え…
身内の集まりの席に
父と
はじめてのお酒…
本音の言葉を交わし…
その時…
父の背中が
広くて大きいと
はじめて気づき…
感じた…
父が一番…
心の痛み…辛さや、悲しみ…
背負ってきた事…
母を愛していた事を…
正直…
幼い頃…
父親と遊んだ記憶はない…
仕事ばかり…
家には…年に数える位しか
帰って来ない人…
僕には…マイナスの
イメージしかなかった…
その時…母は…
寂しい顔は
僕らには見せずに
元気に笑ってた…
感動屋さんで、涙…脆くて…
小さな僕が
何か一つ…
覚え…出来る度に
喜び涙し…
『ママ…泣いちゃ駄目…』
って、言ってた記憶がある…
小2の時…
母の…
突然の出来事に
訳がわからず…
受け入れず…
泣いてばかりだった…
夏休みに入って
引っ越しの荷造りをして
海を超え…
気の遠くなる程…
長い時間…
知らない街への引っ越し…
僕の記憶は…
途中で途切れ…
哀しみを抑え
余り…思い出せない部分と
消し去りたい…記憶…
鮮明に憶えてる光景…
会いたいのに
逢えない…辛さや哀しみを
隠し…
そして
…反抗期へ…
中々…家に帰って来ない父を
僕は、罵った事もあった…
そんな時期もあった…
今となっては、
最低な事を 言ってたな…って
後悔…
僕が23歳の時に
父は…再婚した…
複雑な気持ちだったけど
父の人生だから
僕ら…三人は…
反対は…しなかった…
父が…選んだ人だから…
父と相手は、海を超え…
母に逢いに行き
報告をしてきたそう…
昔…住んでた
あの街へ…
母の好きな
蕾の束…持って…
この時季になると
思い出す…
母の好きな花…
蕾を沢山…持って…
今年も
寂しくないように…
『今年も…僕は、風邪もひいたけ ど…何とか…元気だよ…』
明日も
明後日も…
少しづつ…
花片がひらいて
母の周りを
綺麗な色で…
母の好き花で
色づきますように…