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放課後④


「みんなおはよう!」


「あ〜おはよう委員長。今日も元気だね?」


「そんな、みんなのおかげだよ!」


 学校に入ってすぐ通りすがりの人と美紅は笑顔で挨拶を交わす。

それを後ろ3人で見ていた僕らは『やっぱこいつすげーな。』なんて思っていたと思う。


 多分これは美紅にこそマッチした才能。こんなコミュ力持ってたところで俺らだったら疲れるだけだろう。

僕らは結構似ていると思う。だってこういう時いつも3人で、顔を見合わせて、苦笑いしてしまうんだから。


「いいな〜みんなおんなじクラスで。そんじゃ〜ね〜!」


元気に教室に入っていく美紅を僕らは3人で、温かい目で見送った。


そんな僕らが教室に入ると、待っていましたとばかりにクラスメート達が立ち上がり僕らを取り囲んだ。


「おい、お前らって夏目さんと仲よかったのか?高校入学だよな?」


最初に話し始めたのはこのクラスのリーダー的存在でムードメーカーの福島伊月ふくしまいつきだった。

そんな伊月に続いてなんでだよ!とみんな次々に圧をかけてくる。そこで僕らはしょうがないなあと顔を見合わせ涼河が説明を始めた。


「私たちはね〜。いわゆる、『幼馴染』ってやつ。美紅とはね。」


鼻を高くしてそう語る涼河に伊月はわかりやすく悔しそうな顔をした。


「俺なんて3年同じクラスだったのにほぼ会話できなかったのによ。本当羨ましい奴らだな。」


「そうだよな!伊月もだし俺もだし、ちゃんと話したことあるやついるんだかどうだか。」


伊月の横でおバカな愛されキャラである渡辺わたなべも頷いた。

そこで僕は違和感を持った。

話してくれない?美紅が?あんなに人当たりが良くて誰でも友達!って感じのやつなのにあいつがそんな風に人から近づきづらいなんて思われているとは......。


「そんな。あんた達がろくでもない事で話しかけたからじゃないの?美紅が無視する訳ないと思うけど?」


僕が質問する前に涼河が口を開いた。

2人は苦笑いしながら首を傾げた。


「それはお前らが仲良いからだろ。確かに一言二言は返してくれたけどあっさりかわされたぞ?君とは話す気はありません。みたいなさ。」


「そうなんだよな。委員会の話あって話しかけた時もすぐ終わらせたいって感じで怖かったからな。」


春牙もそこで遂に首を傾げた。

僕ら幼い頃から知ってる組からしたら昔から太陽みたいなやつなのが美紅だったから、それに朝の廊下でもみんなと仲良くしていそうだったから、そんな美紅は想像できなかった。


「......あ〜。今度美紅に聞いてみようかな。さらっと。」


鐘がなりそうだということもあり眉に皺を寄せた涼河がいつも通りの笑顔で解散を告げた。

そして僕らは席につく。


隣の席の涼河は朝のホームルーム中ずっと窓の外をぼうっと見ていたが、僕の視線に気がつくと同意を求めるかのようにニッと笑って首を横に振った。



昼休みを告げる鐘が鳴り教室はご飯ムードにいつも通り包まれる。

......はずだったのだが珍しく

教室はザワザワとしていた。


「涼河ちゃんいる?ご飯食べよ!」


聞き馴染みのある声、声の主の方を見ると美紅がぶんぶん手を振っていた。


「美紅ちゃん.....。うん。食べよ!」


ざわつく教室。特に伊月は話しかけたい衝動が抑えられないようでウズウズしていた。

そんな伊月をやれやれと見ていると僕にも美紅が声をかけた。


「松山と滝浜も。一緒に行かない?」


みんなの視線が一気に僕らに向く。

こうなりゃ断ってしまえ馬より面倒臭いことになる。今日は僕の大好きなシチューを親が用意してくれたのでできればそんなのはさけたかった。


「わかった!すぐいく。」


 どうしようとワタワタしている春牙は都合よく弁当を手に持っていたので、僕は左手で弁当とシチューの入ったスープジャーを持つと、周りをキョロキョロしてオドオドしている春牙を強引に引っ張って、のしかかる視線から逃げるように教室を出た。


伊月。怒らないでおいてくれ、悪気はないんだ!


「本当恒星も春牙もとろいよね。せっかく美紅ちゃんが誘ってくれてるんだよ?すぐくるでしょ!」


僕らが美紅から連絡をもらい屋上に向かうと彼女らは3人でお弁当を広げて食べ始めていた。

涼河のやつ鬱陶しいな、なんて一つ涼河を睨んで牽制しつつ、そんなことに反応していられるような感じじゃなく変な状況だったので、腰を下ろして美紅の方をチラリと見た。


「それで美紅。この人の紹介をしてくれないか?」


誰なんだか、この人。

僕の隣に座る女子は、少なくとも僕は見たことがないような気がしたので、なんで僕らを誘ったんだと抗議の意も込めて聞いたら、美紅は箸をおいて口を開いた。


「あ〜、やっぱ覚えてないのかい!小学校の頃うちとめっちゃ中良かったじゃん。茉莉まつりだよこいつ。」


「......え、待って。ガチでこいつ茉莉なの?」


茉莉はこんな大人な感じじゃねえよ。もっとクソガキなやつなはずだよ!

小林茉莉。小学時代の知り合いで美紅の親友だったやつ。男と一緒に混ざって遊んでるような活発なやつで青髪ショートが特徴的だった。確かに隣の女子も青髪ではあるがこんなロングで大人な感じに成長してるとは思えなかった。

てか普通に美人だし。


「なんか失礼なこと考えてたでしょ、松山。てかなに『こいつ』って、私も口悪いけどなっつも大概だよね。昔からさ。」


彼女は不満そうにストローをずーっと吸った。

怪しんでいた僕だったがその言葉に僕はすぐに納得した。

確かにこのなっつ呼びは茉莉くらいしかしてなかったし、やっぱこいつ茉莉なのか。

中学はここにくると聞いてはいたので確かにいても不思議じゃないよな。


茉莉だとしりそういえば聞きたいことがあったことを思い出した。


「茉莉......中学時代とか子守大変だったろ。」


「あ〜、ま〜ね。でも私は慣れっこだよ。美紅は案外そこまでの問題児じゃなかったりするからね。」


「適度な問題児ってやつか美紅は。」


口ではそういうけど茉莉は苦労したんだろな。美紅は破天荒を極めたような性格をしている。多分相当に振り回されたことだろう。


「......ん〜、なんかうちがやばいやつ扱いされるのはちょっと解せないけどいつもありがとねってのはそうだわ。いつもありがとう茉莉。」


「あ〜私はいいよ。まじ慣れてるし。」


茉莉はやっぱ変わんないな。昔からふざけた雰囲気なくせにいつも優しくて頼れるやつだった。口の悪さは今は落ち着いてるだけでもっと酷かったような気がするけど。


あっさりと、そして嬉しそうに美紅の感謝を受け止めると彼女はミニトマトを一つ口に入れた。


そのミニトマトを食べ終わり、


「......それで〜。そっちが春牙?」


美紅と涼河が仲良く話し、僕と茉莉が昔話に話を咲かせている間、きまづそうに周りをチラチラしていた春牙に、茉莉は面白そうに声をかけた。


「あ〜。そうだよ、久しぶりだな茉莉。」


「久しぶりだね〜。何年前になるの?あきちゃんともそうだけど10年ぶりくらいかな?ねえヘタレくん。」


茉莉は楽しそうにニコニコで話すが、一方春牙は今すぐにでも辞めたいというオーラを出していた。


「そのヘタレくんってやつ勘弁してくれよ......。もう昔の話なんだからさ。」


「昔の話でもちゃんと覚えてるんでしょ?いいじゃん別に〜。」


まじで春牙嫌そうな顔してる。ここは一つ助け舟出してやるか......。


「まっちゃん!辞めときなよ!」


僕が声をかける前に涼河が大声で止めに入った。

そしてまた茉莉がニコッと笑った。


「あ〜ごめんあきちゃん。こいつこれはダメだったよな。」


「いくら昔からの中とはいえ気をつけたほうがいいことはあるよ。」


なぜか涼河が申し訳なさそうにそんなことをいう。

「そうだよね〜。」と茉莉は呟くと涼河のほっぺをぷよぷよした。


「ごめんね〜二人とも。」


少しきまづそうにしながらも涼河は笑顔で祭の頭をなでなでし始める。

そこで僕も春牙を励ましてやらないとと思い春牙を見た。


春牙は神妙な面持ちで茉莉を観ていた、その膝をトントン叩く。


「大丈夫か春牙?」


「あ、あ〜うん。」


いつも通りの気の抜けた返事、なんか心配して損した。

こいつくらい能天気なら良かったのにな、自分の話題だってのに一切気にする様子もなく。

僕はそんな親友の姿にはあっとため息をつくのだった。


(ちなみに一番なんでも知ってそうな美紅は、やれやれ感を出しながら黙々とご飯を食べていた。大人になったなって思うところなのかもしれないが、昼飯がうまい棒なのでかなり減点だ。)



会話が終わり場は落ち着いてみんなのもぐもぐたいむも終わったところで、さっきからウズウズしていた美紅がついに口を開けた。


「......今日さ〜、みんなに話したいことあってさそれで呼んだんだよ。それで鐘なりそうだからすぐ話したいこと話すんだけどさ。」


唐突なんだよないっつも美紅ってやつは。

やれやれと思いながら、ただ今日呼ばれたことの意味が理解でき勝手に一人納得する。

そして、なぜか緊張感が僕らの中に走る。

どうせしょうもないことだとわかっているのに、美紅には確かな面白さがあるので、妙に期待感があるんだよな。こいつの言葉は。


美紅の息を吸う音が聞こえて、僕らは皆美紅を観た。



「私!生徒会長になる!」



よくわからないが決意を感じるその眼差しとその後ろで首を傾げる茉莉。

ぽかんとする涼河と何か考え事をする春牙。

屋上に響いた声、それはやはり期待を裏切らない、馬鹿げていてでもある意味現実的な彼女の夢のことだった。







後から少し編集する場合があります......。流れは変えません

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