出会いの季節①
書くのが続かない!ってことで〜今回は特徴的なキャラクターをテーマにしてリベンジです!完全に書き切りたい!頑張ります!更新は不定期でお願いします。忙しい期間は2週間おきに更新したりとか文字数が少なかったりとか雑書きするかもしれませんがよろしくお願いします!
4月、やっとの思いで合格した私立鈴ヶ丘高校の前で新しい紺色の制服を身に纏い、僕松山恒星は一つ息をついた。
改修されたばかりの校舎の白く光った壁、校庭を囲むように咲くそのピンク色の威圧感をグッと飲み込んで、今日初めて......
いや、あの日涙を流した場所に......帰ってきたんだ。
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「んー......早く来ないかなー手紙。」
「そうだな、ワクワクする。」
家の前の道路で。僕らは周りの人から不審にみられながらもその便りをかれこれ2時間待っていた。
「わくわく〜???随分と余裕そうだね恒星は。私なんて、ほら!こんなに手が震えちゃってるよ。」
彼女は小さな全身をぶるぶると震わせている。でもその目には明らかな未来への期待が宿っていた。
「......そんな。お前はどうせ受かるじゃん。」
夏目美紅。幼馴染であり、親友であり......秘密にしておいて欲しいが、憧れの人。
弱気な僕は中学受験に踏み込むことができなかったけれど、彼女が強く背中を押してくれたから勇気が出せた。
一目見れば一瞬で誰か分かるそのくせのあって可愛い赤髪に、緑色の目。彼女は誰も持っていないようなものをたくさん持っているような女の子だ。
そんな女の子が隣に住んでいて幼馴染なんだ、意地でも一緒に学校に行きたい。チャンスがあるのなら......付き合いたい。
そのためならどんな努力でもする、そんな気持ちだったからここまで勉強を頑張ってきたのだ。
地頭は良い訳ではないから合否は不安でしかない。
「恒星......?ねぇ!そんな気負いすぎなくて良いんじゃないの?ここで死ぬわけでもないんだし、そんな受験の自己採点なんてさ、忘れようよ。」
僕があまりにも震えていたのか美紅は僕の体をブンブン振ってくる。
......ほんと。何でこんなやつを好きになっちゃったんだろう。
黙っているからって、別に自己採点が低くて受かる自信がないから無言になっているとか......そんなわけないじゃん!現実から目を背けたいなんて、そんなわけないじゃん!
この時の僕はずっと強がっていて。
好きな女の子と2人、受験結果を待つ。
そんな、受験結果なんか別に見えてなくて、でもすごくそわそわしていた。
正直、手応えでわかっていた。
でも......別に、ショックではなかった。
所詮僕は僕。
頭は良くなくて、運動も大してできなくて良いところのない凡才な人間。
天才な彼女と同じ中学に行けるなんてそんなことできないって理解っていた。
ただ、この僕の好きな笑顔が1年間隣にあってくれて、それだけで僕の努力は割にあっていたと思う。
だから僕は......言葉にこそ出さなかったけれど、来ないでくれ、来ないでくれって願ってた。
足元をありが歩く。
6年前、美紅と会った時は、ありだって友達で、誰だって友達で、別に体の大きさも頭の良さも何もかも違ってもさほど変わらない命だと思ってた。
ただこの一瞬、手紙を開ければ僕と、そして彼女の人生と、彼女と僕の関係は大きく変わってしまう。
「どうしたんだい?坊ちゃん嬢ちゃん。もしかして僕を待っていたのかな?どうぞ、これお届け物ね。後は、隣の分も渡して良いのかな?偉いねハンコも持って。」
おじさんは凄いスピードで去っていった。
その勢いも気にならないほどに僕の目はその白い封筒に惹きつけられていた。
「開けよ!いっせーの。」
手が震えて糊付けされた封筒をうまく開けられない。ビリビリと無理矢理に開け中の紙を見る。
「やった〜!合格!」
隣から嬉しそうな声が聞こえる。
僕の絶望とその裏に広がった少々の期待とは裏腹に聞こえてきた歓喜の声に、僕の中の絶望が溢れてくるような気分がした。
「恒星......。残念だったね。」
あんなに頑張ったのに。
そんなことは美紅は言わなかった。
僕らの間にどことなく気まずい空気が流れ、僕らは次第に話さなくなり......一足早い美紅の入学式が来た。
「ほら!写真撮るわよ!恒星?早く並びなさい!」
「はいはい。分かったよ。」
入学式が終わって、外に出てきた笑顔の美紅の笑顔を迎えるために......僕は来た、はずだったのだが。
僕の心に渦巻く納得のいかない精神が僕を少し蝕んでいたのだと思う。
何のために来たんだか。
少し古びた雰囲気のする校舎はもう少しで改修が始まるらしい。そっか、まあ僕が入るには少し早かったのかな。何故か溢れた涙に僕は一つ身震いをした。幸い顔は赤くなっていない、バレてない......。
ため息をはーっと吐いて僕は美紅の隣に並ぶ。
強い、そして3月に入っても未だ寒い風がびゅっと流れた。彼女の前髪が揺れて.....。
「......っ!?」
久しぶりに見た彼女の瞳は潤んでいて、でも口角は上がっていて。
「また......。一緒に学校、通おうね。」
寂しそうに、でも最高に可愛い笑顔で笑う彼女に。
僕の目からは顔が赤くなるくらいの大粒の涙が零れ落ちた。
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「ちょっと恒星。入学式でしょう?楽しみでしょう?何緊張してんのよ。」
「そうだぞ、せっかく受かったんじゃないか。もっと幸せそうな顔しろよ。」
ぼーっと昔の思い出を思い出していたら両親が不意にいじってきた。
はーっ。ホントうちの親は何だかなって感じだよな。
「光もくれば良かったのにねえ......。せっかくの弟の晴れ舞台だって言うのに。」
「いや〜。弟が同じ高校に入学するって本人的にはちょっと複雑なんだと思うぞ。」
「まあそうねえ......。それで入学式行くってのも微妙かしら。まあせっかく今日のお昼はお祝いするってことなんだし、お姉ちゃんにも何か買って行ってあげなきゃねえ。」
驚くほど......いや、呆れるほどか。息子の晴れ舞台だってのに本当に緊張感のない両親だ。
僕もこの人達みたいに生まれればもっと明るい性格でいれたのかななんて思うけど......正直なところはほんとに似てなくて良かったななんて。
両親の性格は羨ましいとは思うけど僕は疲れちゃいそうだから。失礼だけどね。
じーっ。
両親の視線に僕は現実に引き戻される。
「ほら恒星!何ぼーっとしてんの。もう開場の時間なんでしょ?早く行きなさい。」
両親が背中を押してくる。
そんな焦る時間じゃないっての!
心の中で悪態をついてみたりもしたが、やっぱり支えてくれているような背中や感触が心地よかったりもしたのだった。
体育館に向かう両親と一旦別れ、校門に入ってすぐのところにある人混み、クラス分けが書かれた大きな紙の前に向かった。
そこには8つのクラスのメンバーが並べられ春といえば......って感じの光景だ。
松山、松山、松山.......ん、あ...夏目。
夏目を見つけた僕はついその下を3度見する。
ない......か。
夏目は5組か。せめても教室近い6組であってくれ!
同じクラスになりたい人なんて、知人は夏目ぐらいなものなので別にないのでただメンバーなど関係なく1の6であって欲しかった。
松山、松山。あった!6組じゃん。
6組か、いや惜しっ......何が惜しいんだか。
1人で盛り上がってしまって恥ずかしいものだ。なにそんな夏目を好き全開なんだ。もう3年たっただろ。松山少年。良い加減覚悟決めろよ。同じクラスなら自然に話せるのに、じゃねえだろ。
それでも好きな人とは同じクラスになりたかった。まあ話すチャンスは自分で掴み取れば良いんだけど!!
「......何ぼーっとしてんの。」
「え、あっ。......すみません。」
......うぇっ。何でお前がいんだよっ!?
知人がいないと思っていたこの高校で急に話しかけられびびったが、不良なんかに絡まれた訳ではなく同じ中学校ほ女友達に絡まれただけだった。
涼河秋穂、俺の唯一の女友達だで同中、中学2年の頃同じクラスで隣の席だった時に仲良くなったのだが3年でクラスが分かれ、時々連絡を取るくらいの仲だったので、まさか彼女が同じ高校に受かっているとは知らなかった。
そっか......鈴ヶ丘に来たのか。
そんなこんなで単独思考を展開し、少しの間ぼーっとしてしまっていたのだが、少し無言の間が空いた後、彼女は何だか気まずそうな顔で口を開いた。
「......なんかちょっと嫌そうなのやめてよ。陰キャな君に信頼できる親友がついてきてくれたんだから......感謝しなよ。」
「......いやっ?別にっ?嫌ってわけじゃないんだけど......その、まさか涼河が鈴ヶ丘受けたとは思ってなくて......その、驚いただけだって。」
彼女の圧にたじろぎながらなんとか弁明をする。
随分と......気が立ってらっしゃるようだ。
「ふーん......。そっか。」
反応薄くて怖いって。
ちらちらっと涼河を見るとスマホをいじりだしたので、安心して溜まっていた唾を飲み込む。
なっ、なんか緊張する......。
初めて見る涼河の私服。
彼女の綺麗な黒い長い髪と驚くほどに整った顔に良く似合っている。なんちゃって制服というやつだろうか
紺のミニスカートにワイシャツに灰色のカーディガン......。
何だよほんと。こんな可愛いの?ま......まじかよ。
入学式でさえ服自由な学校で良かったっ〜!!こんな可愛さ二度と見れないかもしれないじゃん!!
......って僕何言ってんだ。いくらその、僕の趣味の制服を着ていたとして相手はあの涼河なんだぞ?何考えてんだ僕!しっかりしろ!
まあその可愛いのはそうなんだけど......,
いや、でもほんと目線がこちらに向きすぎてて...嫌な顔になるのもしょうがないだろ!
涼河はこの場にいると目立ちすぎる。みんなの下心満載な目と嫉妬の目が僕らに突き刺さってくるのだ。
逃げ出して〜よ......。
中学の頃も涼河は確かにモテてたしそれで僕に嫉妬の目線がたくさんあたっていたのはそれはそうだけど、知らない人の嫉妬の目線は訳が違うんだよ...。
「涼河、ここ邪魔になってるからさ、あっちの方いかない。」
彼女はスマホをいじっていたが顔を上げて『うん』とうなずいた。
ちっと舌打ちが聞こえたような気がして怖かったが、その場をすいすいと立ち去って、僕らは人の少ない廊下の奥の方で少し話すことにした。
「......そういえば、さ。今日の服どうかな?けっこ、気合いれて来たんだけど?」
そのイタズラな笑みに僕が彼女を無意識に見てしまっていたのがバレたような感じがして恥ずかしくなって目を逸らした。
「そ......その。可愛いんじゃないかな?」
「へぇ〜、実はそういうことも言えちゃうんだね......照れててかーわい。」
彼女は体を近づけて僕のほっぺをつんつんしてくる。こいつ距離近いんだよ!意識しちゃうじゃんか。
なんか涼河と話してると勝てる気がしなくてたまらない。ちょっと悔しい気持ちになるのは何故だろうか。
「涼河は......何組なんだ。」
「何組でしょうかね〜。一緒だと良いですね〜。」
彼女はいたずらな笑みを浮かべる。
「それで、何組なんだ?」
「ふふっ、六組!」
「マジかよ。」
「1年間よろしくね?恒星くーん!」
......何嬉しそうに笑ってんだよ。照れるからやめてくれよほんと。
「やったね!ぼっち回避だ。」
「お前がな。ほんと、喜んで良いぞ?俺はどこにもいかない、というかいけないからな。」
「ふふーん。ほんっと私がいないと誰も声かけてくれないもんね〜。」
「はいはいそうですね......。ん?」
「あ......。」
いつも通り口喧嘩をしていると、急に涼河が僕の方を見て怯えたような顔をしたので、僕も怖くなって、そーっと後ろを向いた。
「ずいぶんと楽しんでるようだな〜。君はいいとこのお嬢様なんだからあんまり目立つなって言ってるよね?」
うわぁ......。
涼河と同じようになんちゃって制服を見に纏いさらさらとした金髪を整えて、こちらを怒りに満ちた笑みで注意しにきたのは滝浜春牙、こちらも中学からの親友で一緒に受験勉強を頑張ってくれた優しい奴......なのだが、幼馴染の涼河にはなかなかに厳しいのだ。
「はいー!!解散かいさーん!めんどくさいのがきちゃったし早く教室行こ?恒星。」
怒る親友を横目に彼女は僕の手を握ると勢いよく走りだした。
僕も一緒に転ばないようにと必死に喰らいつく。
なんだか波乱だらけな新生活に、僕は一つ、笑みをこぼした。
「松山恒星くん。」
「はいっ!」
入学式が始まり、呼名が始まった。
大々的な式、とはいってもそんなに時間があるわけではないので校歌を歌って呼名をされて......くらい。
それでも僕の心臓はどくどくと大きな音を立てていた。
なんだか新しい生活の始まりって感じがしてむず痒くて仕方ないのだ。
「以上で新入生呼名を終わります。」
式はどんどんと進行していく。そしてもう式は終盤に差し掛かり......。
「高等部入学生代表の挨拶。夏目美紅さん。よろしくお願いします。」
僕の心臓はさっきよりずっと早く脈を打っていた。
くどさんいちです。
まじ久しぶりの投稿です。
なかなか好きになれる作品がないタイプで、でも物語が大体好きで良く本とか読んでたんですけど、最近は読めてなくて残念です。
今回は番外編も合間に入れながら、書いていきたいな、こまめに更新したいな、なんて思ってます。
今んとこ初回で中学受験が書きたすぎてどこで終わらそー?とかタイトルが意味わかんないじゃんとかまた公開が多いんですけど自分が完璧主義すぎるみたいな自分で分かってきたのでただ読者に喜んでもらえるような作品を作る一心で余計なことを考えず自分の国語力を精一杯使って書いていきたいなって思います。
僕が作品を書いている楽しさを皆さんとも共有したいです!
まだまだ至らない小説かもしれませんが僕も1人の小説家ではあるので皆さんに作品を届けていきたいと思います。
応援やアドバイスよろしくお願いします〜!!




