7話
お父様から、ウェル様のお父様であるルイノート公爵様へ今回の件を細かく説明した手紙を送ったと聞いた。
「きっと今頃、あちらは大変なことになっているはずだよ」
私の中ではもう既に終わったことだと思っていた。
「正直、お父様に迷惑がかからなければ、あちらがどうなるかは余り興味はありません」
「そいつは笑えるな、頼もしい限りだ」
と言って、笑っている。
私がこちらに帰って来てからなぜか、お父様も異母兄も仕事以外はほとんど外出しなくなっていた。それが不思議で私は父に尋ねた。
「お父様は最近、あまり外出はなさらないのですね」
「はは、痛いところを突いてくるな」
そう言いながら頭をかいている。
そしてお母様への思いを語り出した。
今回私が受けた仕打ちを目の当たりにして、自分も妻に同じ思いをさせていたと反省したと言った。だからといって今更許してもらえないことは承知しているとも言っていた。そして、驚くべきことを聞かされた。
お父様の子供だといって生まれた子供の髪色が、相手の女性ともお父様の髪色とも違っていたという。そしてそれを問いただしたらその女性は違う男の子だと白状したらしい。それ以来、女性は信じられなくなったというが、それを聞いた私は呆れた顔で言った。
「それはお父様、お互い様では? 私とお母様はお父様を見て、浮気しない男はいないと思っていましたから」
「返す言葉もない、本当に申し訳なかった」
「そのことはお母様にも伝えたのですか?」
「もちろん謝ったよ、だがそれで許されるとは思っていないがな」
そう言って、肩を落とされた。そしてその事は私の異母兄にも告げたという。
『だから、お前は私と同じ過ちは犯すな』
そう言ったという。
私はその後、お母様にこの話について聞いてみた。
しかし、お母様はただ微笑んでいらして本心は語ってくださらなかった。だけどなんとなく母の今の心情は理解できた。
それからしばらくしてから私はマーガレットに先触れを出してから、お屋敷を訪ねるとお兄様のルイス様も一緒に居間にいらした。
「ロザリー嬢、元気そうで安心したよ」
「ご心配をおかけし、すみませんでした」
「いや、君が謝ることではないよ」
そう言って微笑んでくださった。
そしてマーガレットからウェル様のことを聞かされた。
同じ公爵家同士だし、貴族間の噂には精通しているマーガレットは、なんでも、私のお父様からの手紙を受け取った公爵様は、領地から王都にある公爵邸を訪れ、ウェル様に勘当を言い渡したという。そして一緒にいたアンリさんは勘当されたウェル様には興味を無くし、ウェル様の元を去って行ったと聞かされた。
そして今更私が心配することではないが、私の侍女をしてくれていたランナもいるので公爵家がとうなるのか尋ねてみた。
「ではあの公爵家は誰が跡を継がれるのでしょうね」
「何でも縁戚から養子をもらうそうだ」
とルイス様から教えられた。私は内心で安心した。
『だったらランナたち使用人は職を失わずに済むのね』
と。
それからマーガレットに尋ねられた。
「ロザリー、貴女はこれからどうするの?」
「今はまだ何も考えていないわ」
「すぐには無理でも、いずれは誰かと結婚すべきだわ」
「いいえ、もう結婚はこりごりだわ」
「何言ってるの、世の中あんな男ばかりではないのよ」
「それでも今は考えられないわ」
そんな話をしていたらルイス様が
「良かったら、来月王宮で行われる舞踏会のエスコート、私にさせてくれないか?」
「先日、あんなことがあったばかりで参加する勇気はありません」
と答え、続けて
「それに私がルイス様にエスコートをして頂いたら、マーガレットのエスコートは誰がなさるのですか?」
「実は私、第三王子から縁談のお話がきているのよ」
「え! もうお返事はしたの?」
「正式にはまだだけど、来月その舞踏会でエスコートして頂くことになっているの」
と恥ずかしそうに答えてくれた。
「そういうことなので君のエスコートは是非私にさせて欲しい」
と再び言われた。
「先日の嫌な噂が広まっているようなので、ルイス様に恥をかかせてしまわないか心配です」
「だからこそ私が一緒の方が安心だ、それにあんなことがあったからと社交界を避けていたら却って変な噂が広まってしまうよ、噂とはそういうものだ」
「そうよ、逃げないで堂々としていることが、これからのためにも大切よ」
それを聞いた私は
「だったらルイス様、宜しくお願いします」
するとルイス様はとても素敵な笑顔で
「そう来なくては」
と仰ってくださった。




