表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

5話

 全く、何なのだ。公爵邸に久しぶりに帰ると、使用人たちは皆、俺のことを遠巻きによそよそしく見ているし、呼びつけてもなぜか淡々としていて冷たく感じる。

 ロザリーが朝早く出て行ったと聞かされて、俺は清々しい気持ちで

「そうか、やっと出て行ったか」

 と満足げにしていると、使用人の分際でランナのやつが

「あんな素晴らしい奥様はもう二度とお目にかかれないでしょうね」

 と抜かしてくる始末だ。

 俺は腹立たしいのですぐにアンリ嬢を屋敷に呼び寄せた。

 屋敷に来たアンリ嬢は

「素晴らしいお屋敷ですね、さすがは公爵邸です」

 と言っているので、気を良くした俺は

「よかったらここに住んでもいいぞ」

 と言うと、アンリ嬢は喜んで

「ウェル様、本当ですか? 私、とても嬉しいです」

 と言って、抱きついてきた。そしてその日のうちに自分の荷物を運び入れて

「ドレスとか足りない物はウェル様にお願いしてもよろしいですか?」

 と言うので、俺は

「ああ、好きにするといい」

 と言った。そしてアンリ嬢は

「それから私の侍女は?」

 と聞くので

「ランナ、今日からアンリ嬢の侍女を頼む」

 と言いつけた。

 そしてその日の夜からアンリ嬢は俺と夫婦の寝室で寝ることになった。ロザリーとは一度も使わなかった寝室で。


 次の日の朝、俺は昨夜のアンリ嬢との行為が朝までだったので疲れ果てて、目覚めたのは昼近かった。

 起きると、階下が賑わしいので下に降りると、そこにはアンリ嬢が商会の人間と色々な品物を並べて、あれもこれもと選んでいた。

 それを見てふと思った、ロザリーは一度もこの公爵邸に商会を呼んでいなかったはずだ、買い物をすれば請求がくるはずだが、一度も見たことはなかった。

 何だか不思議な気持ちになった。

 そして、ランナを側に置き、傲慢な態度で接しながら、買った荷物を次々に運ばせていたアンリ嬢を見て、それを不愉快に感じながら注意をしようとしたら、俺の存在に気づいた彼女が抱きついてきて

「ウェル様、ありがとうございます」

 と言いながら

「昨夜は疲れましたね」

 と言われ、何も返せなくなってしまった。

 そして『まあ、このくらい仕方がないな』と思ってしまった。

 しかし、この状況がずっと続くことになるとはこの時の俺は想像もしていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ