12話
今日はルイス様が街に出て買い物をしようと言うので、今、一軒のお店の中にいる。
「ロザリー嬢、遠慮は要らない、好きな物を選んでくれ」
と言われ、沢山の宝飾品が並んだ店内に案内された。
「好きな物と言われましても、今、持っている物で事足りていますので」
と言うと
「そんなことは言わず、これなんかどうだ?」
と言われ水色の石で出来たネックレスを指さされた。
思わず透き通った綺麗な石に
「綺麗ですね」
と返すと
「ではこれで決まりだ、丁度私の瞳の色と同じだし、これにしよう」
と言って勝手に決めてしまわれた。私は
「こんな高価な物、頂けません」
と言うと
「だったら来週、誕生日だろう? そのお祝いということにしよう」
と仰って強引に買われてしまった。私は心の中で
『こんな高価な物を頂いたらルイス様とのお付き合い、断り難くなってしまうわ』
と思いながら焦っていた。するとルイス様は
「こんな物を貰ったら私とのこと、断れなくなると思っているのかな?」
と、図星を突かれた。思わず黙ってしまった私に
「そんな恩着せがましい男ではないよ、嫌なら捨ててくれても構わない」
と仰った。私は
「そんな捨てるだなんて、頂いた物は一生、大事にいたします」
と返すと
「良かった、ならそうしてくれると嬉しい」
と言って手渡された。私は
「ありがとうございます。大事に使わせて頂きます」
と言ってから
「そういえば私のお誕生日はマーガレットから聞いたのですか?」
と伺うと
「ああ、そうだよ」
と言われ
「来週のマーガレットの婚約パーティに是非、これを着けてくれたら嬉しい」
と仰った。私は
「はい、必ずこれを着けさせて頂きますね」
と返した。するとルイス様はとても嬉しそうに微笑んでくれた。
そんなお姿がとても素敵に感じられ、私は心の中で『決して物に釣られたわけではないわ』と自分に言い聞かせ、苦笑した。
そして婚約パーティーの当日、ルイス様は前回の社交界の時と同じ様に迎えに来てくださった。
そして、頂いたネックレスに合うドレスを選び、仕上がった私を見てルイス様は
「いつにも増して綺麗だ、良く似合っているよ」
と褒めてくださった。そんなルイス様に私も
「ルイス様もとても素敵です」
と返すと
「ありがとう、君にそう言ってもらえて嬉しいよ」
と仰った。
そしてその後、私たちは王宮へと向かった。
王宮に着くと、今日はいつもよりも大勢の貴族たちが集まっていた。
ルイス様は
「じゃあ、殿下のところにまずは挨拶に行こう」
と仰ったが
「私は身内ではありませんので、まずはルイス様お一人で行かれるべきかと」
と言うと
「遠慮は要らない、君はマーガレットの親友でもあるんだ」
と言われたが
「いえ、こればかりはダメです、まずはお身内からでないと」
と言い返した。するとルイス様はさすがに諦めて
「分かった、では先に行って来るよ」
と言われ、王族の方々のところへと向かわれた。それを私は遠目で見送った。するとルイス様がいなくなったのを見計らったように令嬢たちがやって来て
「ウェル様がダメなら今度はルイス様を狙ってらっしゃるのかしら?」
と、確かこの方は、ルイス様の従妹のスペクター公爵令嬢のステーシア様だったかしら、その方に絡まれたので
「私はただ、お誘いをお受けしただけですわ」
と言い返すと
「全く油断も隙もありませんこと」
と言われ、続けて
「ルイス様は第二王女殿下のお気に入りなんですから、貴女みたいな人が一緒にいていい相手ではありませんことよ」
と言われた。そしてルイス様の方を見ると、王族の方々に挨拶されているルイス様のことを確かにじっと見つめている第二王女殿下がいらした。
私はどうしたものかと考えたが、このまま何も言わずに去ることは失礼なので、とりあえずルイス様が戻られるのを待つことにした。
そんな私に更に
「ちょっと、聞いていますの? 貴女みたいな婚姻無効にされた女性が側にいたらルイス様の迷惑になることも分からないのかしら」
と、怒鳴っている。そして
「あら、手が滑ってしまいましたわ」
と言って私のドレスにワインをかけてきた。そして
「こんな格好ではさすがに恥ずかしいでしょうからさっさとお帰りになったらいかがかしら」
と言われた。するとそんな騒ぎに気がつきルイス様が戻っていらして
「なにをしている!」
と、ステーシア様に怒っている。ステーシア様は焦った表情で
「わ、私はただルイス様のためにならないと」
と言いかけたところで私は
「ルイス様、申し訳ありませんがこのようなドレスではこれ以上こちらにはいられませんのでお先に失礼させて頂きます」
と言ってその場を去ろうとすると
「ステーシア嬢、何をした!」
と言って、詰め寄っていたので、私は
「ルイス様、私のことは大丈夫ですから、どうぞお戻りください」
と言ってから走りながら王宮を後にした。ルイス様は追ってきたが
「本当にこの姿ではさすがに無理ですし、今日はマーガレットのお祝いの席なのでこれ以上は騒ぎを大きくなさらないでください」
と言ってから
「すみませんが、乗って来た馬車だけお借りします」
と言ってその場を離れた。