忘れたい顔

『忘れたい顔』
(The Face I Long to Forget)

この物語は――三人称の全知視点で語られる。
時に、登場人物の心の奥深くにまで踏み込みながら。

復讐に囚われ、堕ちていく一人の男。
彼はやがて、自分が最も憎んだ存在そのものへと変わっていく。

これは悔恨の物語。
過去を繰り返さぬよう、必死に自らを作り直そうとする男の物語。
だが――世界は意志で造られるものではない。
贖罪とは、しばしばあまりにも残酷な代償を伴う。

★★★

ロドリゴ。
彼は怪物として死んだ。
拷問者、殺人者、そして――守ると誓った妹を裏切った者。

だが死は、終わりではなかった。

魔法と悲惨に満ちた世界で、彼は再び目を覚ます。
本来なら持つはずのない記憶を抱え、エリアンという名で。
新しい名前。新しい人生。

だが――自分を赦せぬ者に、贖罪など可能なのか。

囁く影は過去を呼び戻す。
新しい家族すら壊してしまうのではないかという恐怖が彼を縛る。

それでも、彼は願う。
静かに。誰にも知られぬように。

――ロドリゴを埋め去りたい。
そして、いつか。
本当に「エリアン」と呼ばれるにふさわしい存在になれることを。