第一部 アルドワ193号世界からアルドワ0号世界へ…
星野カビ丸
不死身の死刑囚星野カビ丸は
宇宙打ち上げの刑に処され
宇宙の果てに届くレベルまで打ち上げられ
「ここはどこだ?」
「ああ。アルドワ0号世界ですよ」
「アルドワ?」
「ああ。私の名前はアルドワ・インフィガールと言います。
まあ世界の創造主です」
「世界の創造主?
俺って確か宇宙に打ち上げられて」
「はい。宇宙の果てこそがここ
アルドワ0号世界なんです。
貴男がいた世界はアルドワ193号世界です」
ここが0号世界で
今までいたのが193号世界。
「つまり、天国ってことか?
いや地獄か?」
「どっちでもないです。
何故なら貴男は死んだ訳ではなく
生きたままここに来ただけですから」
「まだ生きてんの俺?」
「はい」
カビ丸にはこのアルドワという少女の
言っていることが全く分からなかった。
しかし、全く理解できない訳でもない。
ただ、解せない部分も大きいだけだ。
宇宙の果てがどうなっているか
はSFでよくあるテーマだが、
しかしこのようなものというのは
初めて見たかもしれない。
「あー、アルドワー‼ 誰だよそいつー‼」
「デトロスさん」
「誰?」
「ええと、彼女はデトロス・アルバトロスといって、
破壊世界を持つ破壊神です」
「破壊か。よし」
カビ丸は何かを覚悟した様子で
「俺を破壊してくれよ‼」
「は? お前、死にたいのか?」
「ああ! ぶっ殺してくれ!」
「こいつ逝かれてんのかよ、アルドワー‼」
アルドワに助けを求めるデトロスだが、
「まあ確かに逝っちゃってますが、
ぶち殺してあげて下さい」
「お前も逝かれたのか⁉」
デトロスは異常者二人を前に狼狽える。
「彼は不死世界を持っていて」
「死にたくても死ねないと、成る程。
よおし分かった。私がお前を
ぶち殺してやるよ。あばよ!」
デストロイ・アドベンチャー‼
という破壊世界の技により、
星野カビ丸は破壊されてしまった。
「あれ、俺死んでなくね?」
「おはようございます、カビ丸2号さん。
貴男は死んで不死神になりましたよ」
「不死神……結局死ねねえのかよ」
「まあ、何も変わっていないように感じますよね」
カビ丸がそこら辺を散歩していると、
「あー! 何生き返ってんだお前―‼」
デトロスがエンカウントした。
「私がまた破壊してやるー!」
「ああ、頼む」
デストロイ・アドベンチャー‼
星野カビ丸は再び破壊される。
「あれ?」
「⁉」
デトロスの破壊性を、
カビ丸の不死性が上回った‼
生命神カベマ・スターバーストの爆誕の瞬間だった。
「生命神か。どうやら俺はやっぱ死ねねえ運命のようだ」
「なあ、何があったんだよカビ丸。いや、カベマか?」
「まあ話すと長くなるんだが」
星野カビ丸は不死身と称されるほどバイタリティが高かった。
例えば舌を切り落としてもすぐに再生し
例えば心臓を握り潰してもすぐに自己修復する。
マグマの中に陥れてもすぐにその熱に耐える身体に進化し
真っ二つにしても二人に分裂するだけだ。
そんなどうやっても死なないある意味魔人ブウよりも
難攻不落な身体能力を持っているため
死ねないまま何百年も生きることとなる。
大切な者がどんどん死んでいく中
自分は死にたくても絶対に死ねない。
そこでカビ丸の精神の方が壊れてしまい
自ら戦地へ赴き無理矢理終戦させようとした。
善行というよりは自棄に近い。
「それで不死身の死刑囚に」
「ああ」
「まあここなら私やアルドワもいるし
絶対死なねえから気ままに楽しく生きろよ。
天国みてえなもんだからよ」
「デトロス。ありがとうな」
「世界の使い方教えてやるよ」
「ああ」
アルドワ 創造 創作 工作 破壊 生命 治癒 防御 氷雪 雷電 麻痺 凍結
デトロス 破壊 火炎 雷電 燃焼 麻痺 創造 攻撃 工作 治癒 友情
カベマ 不死 生命 治癒 破壊 創造 殺戮 殺人 殺害 暗殺 体力 熱量
「世界は無数にあるんだ。そして得意な世界はそれぞれ違うが、
修行次第ではどの世界も習得可能だ」
「へえ」
「アルドワは創造系、私は破壊系、お前は殺戮系の世界が多いな」
「成る程なあ」
「さっきも言ったが、得意世界以外の世界も習得できる。
が、勿論得意世界のが習得率は高い。
から不得手よりも得手を伸ばす方が効率的といえる」
「ああ。大体分かったよ」
デトロスは案外良い子だ。
新参者のカベマを受け入れ、優しく導いてくれている。
「これって所謂異世界転生なのかね?」
「ん? ああ、ラノベって奴か? そうだな。
まあ大体そんな感じじゃね?」
デトロスにもラノベの理解があるのか。
とカベマは少し嬉しく思う。
「この世界ってラノベあるの?」
「ああ、てか193号世界にあったようなものは
何でもあるぞ。
お前らの言う『アイデア』ってのは結局
0号世界から引き出しているものに過ぎないからな」
「マジかよ」
ドラゴンボールやワンピースは凄い発想だと思っていたが、
0号世界だとそれらは普通にあるのか。
鳥山明や尾田栄一郎は大物ぶっているが、
結局はアルドワの手の平で踊らされていた道化に過ぎなかったのか。
鳥山明や尾田栄一郎の矮小さを知ったカベマは少し笑う。
「よおデトロス! また喧嘩しようぜ!」
とリーゼントの小柄な少年が近寄ってきた。
「ユースカ」
「誰?」
「ユースカ・サンタマリナ。喧嘩好きの不良少年だ」
「なあやろうぜ」
「しょうがないな」
デトロスはユースカと向かい合う。臨戦態勢だ。
カベマは取り敢えず観戦させてもらう。
世界使い同士の戦闘とは一体如何なるものだろうか。
「行くぜ、デトロス! レイガン‼」
ユースカという少年は指先からビームを放出する。
これはつまり放出世界、光線世界といったところだろうか。
「フルカンタ‼」
デトロスは光の結界のようなものでレイガンを跳ね返す。
これは光線世界、結界世界といったところだろうか。
二倍の威力となったレイガンがユースカに迫ってくるが、
「レイパンチ‼」
というダサい技名から繰り出される拳撃により、
ユースカの右拳は打ち砕かれる。
「ぐああああああああああああああああああああああああああ‼」
「いや、よく分からんが馬鹿すぎるだろ‼」
「ユースカは中卒なんだ」
「にしても馬鹿すぎるだろ‼」
「右ストレートならぶっとばせるはずだったんだ‼」
「ぶっとんだよ‼ 右拳が‼」
「おかしいなあ。俺が読んだ本によると」
「禁書⁉ あれ真に受けたのか⁉」
ユースカがあまりに馬鹿すぎるため、カベマは呆れてしまう。
デトロスは慣れた様子で、馬鹿なユースカを慰める。
しかし、右拳が吹っ飛んでもすぐに治癒世界で元通りになる。
この世界では欠損など些事に過ぎないのだ。
「くそう、つええなデトロス! 伊達にあの世は見てねえな‼」
いや、ここをあの世とするのならば、
ここにいる全員があの世を見ていることになるが。
勿論ユースカも含めて。
「いつまでも勇気とパワー忘れるなよな‼」
お前はそれ以前に色々学ぶべきだ、とカベマは心配する。
「さよなら、バイバイ‼」
といい、ユースカはデトロスにアンバランスなキスをする。
最後にとんだ微笑みの爆弾をくれる奴だ。
ありがとうございます。
「なあ、アルドワが世界の起源なのか?」
「いえ、私を産み出したママドワ様がいます」
「じゃあそのママドワって人が起源なのか?」
「いえ、さらにその上にババドワ様が」
つまり、起源を探すときりがないようだ。漫画の元ネタを探しているようなものだ。遡ると原始にまで至る。0からしか1は産まれないのだから、0に立ち戻るのは当然だが、アルドワはその0ですらないようだ。世界の途方もない広さを、カベマは改めて思い知る。
「俺ってめちゃくちゃ矮小な存在だよなあ」
「そんなことはないと思いますよ。ご立派です」
というアルドワの視線が、何やら嫌らしい方向に下向いている気がして
「いや、ちんこの話じゃねえよ!」
ちなみに0号世界の住人は全裸が基本のようだ。星野カビ丸の着ていた衣服だけでなく乗っていたロケットも消えたことから、異物が混入できないような仕様になっているらしい。
「ふふ、舐めてあげましょうか?」
「え」
アルドワはカベマの男性器をしゃぶる。宜しいのだろうか。0号世界的にとかだけではなく、ライトノベル的にレイティングに反していないだろうか。小説投稿サイトで取り扱っていいネタだろうか。まあカベマも男性神であるため、性欲は何かしらで解消しなければやっていけないし、したいと全く思わない訳でもない。
「う、く」
「あは、出た」
カベマの白濁を受け、アルドワは妖艶に微笑む。その姿は創造主というよりは
「魔王」
「そんなネオエゴイストみたいに」
アルドワのトゥーガンボレーにより、カベマインパクトはマグヌスするのだった。
「うわあああああああああああああああ、ユースカああああああああああああああああああああああああああああ」
デトロスはシャブリチュウに乳首を吸われていた。
「待ってろ、デトロス‼ レイガーン‼」
ユースカのレイガンにより、デトロスの乳首に吸い付いていたシャブリチュウは吹き飛ばされた。
「ありがとう、ユースカ!」
「ああ、それにしても最近シャブリチュウの出現が多いな。まさか」
そう、裏で糸を引いている男がいる。その名も
「俺、トグロだよーん。さすがの馬鹿のユースカにも勘付かれたか」
しかし、トグロは狡猾な奴ゆえに自身からは正体は明かさない。せいぜいユースカには霊界探偵ごっこを楽しんで
「それは良くないな」
「え」
ママドワはトグロの頭を握り潰した。トマトのように。その一部始終を見ていたセンスイという男は、「興味深い」とママドワへ興味を移す。最強の男トグロをトマトにしてしまった世界の母の母へ。
「カベマさん。さっきの私の破廉恥な行動には、実は大きな意味があるんです」
「ああ、溜まってたんだろ」
「違います! 世界融合現象です!」
「世界融合現象? 何それ?」
「ふふ、性交すると男性と女性の世界が融合することがあります! これを成功性交、サクセスセックスとも言います!」
「成る程。この世界ではセックスにも意味があるのか」
「はい! ただヤリたいからとかそういう単純なものでもないんです!」
アルドワは豊かな胸を張る。カベマは少し腹が立ち、それを揉んでみる。
「ちょ、カベマさん」
「成功性交、成功性交」
「もう」
覚えたての概念を振り回すカベマに、アルドワは呆れつつも乗っかる。世界を強くする鍵は、世界を生きる全ての人間が握っているのだから。
アルドワ・インフィガール