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神救異世界転移魂 ~絶望に抗う意志がなければ目的を達することはできない~  作者: Riku
序編第一章 『もう一度立ち向かって』
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序編第一章1 『記憶』


 静まり返ったティアラの部屋の中、左手の上に開かれた本が見える。

 まるで誰かの視界を覗き見しているかのような感覚だ。


『今度こそ、今度こそ成功させないと……』


 ティアラの声だ。

 視線は本から正面へと移動する。すると深呼吸の音が聞こえ、視界が若干上下する。

 そして次の瞬間、ティアラの正面に魔法陣のようなものが展開される。展開されて――、


『ぁ……』


 次の瞬間、魔法陣は消えた。


『なんで……なんで出来ないのよおおおおおおお!!!!』


 悲痛な叫び声が木霊する。

 左手にあった本は正面の壁に投げつけられる。続けざまに本棚を倒し、大量の本が床に散らばる。全身鏡を放り投げ、割れた鏡の破片が額に当たって出血する。

 ぐたりと、その場にへたり込んだ。


『なんで、どうして……』


 額から出血した血が落ちて、床を汚す。かなりの量だ。

 視界が歪む。すぐにわかった。涙だ。


『あたしは、ただ……お母様とお父様に……』


 大粒の涙がポロポロと零れた。

 視界が暗くなる。

 音も段々小さくなって――、


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 目が覚める。


「――っ! ……ぃ、今のは……ティアラの、記憶?」


 体を起こしながら、ティアは今見た夢のことを思い返す。

 果たしてそれがただの夢なのか、それともティアラの記憶なのかは定かではないが、


「――――」


 やはりティアラには何かあるのだろう。明らかに普通じゃなかった。

 夢の内容を思い返すと胸が締め付けられる。


「…………考えてても仕方ないか……ティアラ起こそ」


 ティアとして生きることになってから、大体一ヶ月の月日が経った。ティアラと毎日言い合いながら過ごしているうちに、自然と仲も深まっていた。

 この一ヶ月であった大きな変化としては、ティアとして過ごすうちに、心が大分幼く、かつ女の子に近づいたことだ。恐らく体が女の子だから、心も体に近づいたのだろう。詳しくはわからないが、女性ホルモンの影響とかもあるのかもしれない。

 その変化に最初に気が付いたのは、ティアラがお風呂に入る際に、一度誤って視覚を共有し、ミャミュの裸を見てしまった時だ。何も感じなかったから驚いた。

 ただ、その変化を受け入れきれているわけではない。ふとした瞬間に、前の自分が遠くなるようで怖くなることもあった。

 だがそれも今では、相当前のことのように感じられる。

 他には、ティアがこの世界に来た日の夕方から、レリーファが失踪したという事件が大きいだろう。知ったのは次の日の夜だったように思う。昔も同じようなことがあったようなのだが、その時は三日で見つかったらしい。

 だが未だにレリーファの捜索は続いているものの、見つかっていないのだという。


 ティアは精神世界に入り、ティアラを起こす。

 ティアとしての自意識が強いからか、精神体もティアラそっくりに変化していた。


『ティアラ起きて! 朝だよ!』


『ん? ティア?』


 精神世界で眠るティアラの体を揺さぶれば、目を覚ましたティアラが眠そうに目をこすりながら体を起こす。


『朝だよ!』


『あれ? 昼じゃなかったかしら?』


『ティアラが寝ぼけてる!』


『寝ぼけてないわよ』


『ちょちょちょちょ起きて起きて!』


 再び横になろうとするティアラの体を慌てて支える。

 それから五分くらいかかったものの、何とかティアラを起こし、体の主導権を握らせて食卓へと向かわせた。

 そうして食卓の席に着くと、ティアラは目をこすり、テーブルにうつ伏せになる。


「……眠い」


「あ、ティアラちゃん」


「ん?」


 声のした方を振り向くと、キッチンからミャミュが顔を出しているのがわかる。


「もう少しでできるからちょっと待ってね?」


「ぅ、うん……」


『ちょっとティアラ!?』


「ね、寝ちゃった……」


 自動的に、体の主導権が切り替わった。

 また起こしてもすぐに寝られたら意味がない。ティアは食事ができるまで起こさないことに決めた。


「よいしょっと!」


 椅子からおりて、ティアはミャミュのいるキッチンを覗き込む。

 すると不思議そうな顔をしたミャミュと目が合った。


「ティアラちゃん?」


「ティアラ寝ちゃった……」


「ぁ、寝ちゃったんだ……」


 あらら、と言わんばかりの表情を浮かべるミャミュ。

 そんなミャミュの隣まで歩いて、料理の工程を見ようとするも、身長が足りなくて見えなかった。


「身長低いよこの体……」


「ティアちゃんは前の世界だとどのくらいの身長だったの?」


「百六十五!」


「ふ、ふ~ん……」


「……や、やっぱり低い?」


「そ、そんなことないよ……」


 と、ミャミュは言ってくれるが、その気遣うような発言は逆にティアの胸に突き刺さった。


「それにしても、ここ一ヶ月くらいでティアちゃん性格変わったよね。この前まであんなに男の子っぽかったのに」


「……自分でも、なんでなのかはよくわかってない。やっぱり変?」


「そんなことないよ。たしかにティアちゃんの性格の変化には驚いたけど、もう慣れちゃったよ。はい、できた。ティアちゃん、そろそろティアラちゃん起こして。私はアミリスたち呼びに行ってくるよ」


「わかった」


 そう言うとミャミュは部屋を後にする。

 その背中を見送ると、ティアラを起こすために、再び精神世界へ潜るのだった。

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