第一章17 『入学祭!』
発表の説明を聞き終わり、ティアラたちは寮へと向かっていた。
そんな時、ふとリーファの抱える紙袋を見やったミファーが口を開く。
「ねぇねぇ、ご飯買った意味なかったね」
「……ごめん」
判断を否定されたように感じたのか、リーファが謝る。
「え? あっ違うの! そんなつもりじゃなくてぇ……」
と、慌てて誤解を解こうとするミファー。そのミファーとリーファの様子を横目にしながら、ティアラは小声で話し始める。
「ティア、さっき勝手に喋ったでしょ……」
『言ったらどんな反応するのか気になって……』
「気になってじゃないわよ! それに二回って言ってたし、あんたあたしが寝てる間にも言ったでしょ!」
『それはホントに間違えた』
「どっちもダメ! 次やったら容赦しないわよ?」
『は、はい……!』
ティアラのマジトーンの忠告に背筋を凍らして、ティアは急いで返事する。
寮に帰るとティアラたち三人はお金のやり取りを終えたのちに、ちょっと遅めの朝食を取った。寮の外には出れないため、そのあとはトランプなどをして過ごしていた。
のだが、突然部屋の扉が勢いよく開いた。
「みてみてみてぇ二人ともぉ!」
「どこか行ったと思ってたら、そういうこと。ミファーね……」
「えぇミファーね……」
「ミファーの名前悪口みたいに使ってなぁい!?」
と、リーファとティアラの発言にミファーが声を荒げる。
ティアラとしてはミファーらしいという意味合いで使ったつもりだが、リーファはわからない。
「わぁびっくりした。急に大声出さないでよ。やっぱりミファーはミファーね……」
あ、いや、多分同じねこれ……
うんうんと頷きながら言うリーファを見れば、何となくだがティアラはそう感じ取る。
「ていうか別に、制服着るならここでもよかったんじゃない?」
「それじゃあ驚かせないじゃん!」
「ミファーね……」
「また言ったぁ!」
そう、今のミファーは制服姿なのだ。
そして話を聞く限り、驚かせるためだけに部屋の外のどこかで着替えてきたということなのだろう。
そんなのまさに――――、
「ミファーね……」
「ティアラまでぇ!」
「それで? どうして制服着てきたの?」
「だって着てみたいじゃん!」
「「ミファーだ!」」
「二人も着てみようよ!」
「「ミファーだ!」」
「そだ! 明日制服で入学祭ってのはどぉお!」
「「ミファーだ!」」
「……『メルメルティティスの魔法陣』になっちゃうかな?」
「「ミファっ……ミファーじゃない!?」」
突然慣用句をミファーが使ったので、リーファとティアラは驚きを隠せない。
「ふふん! ミファーがいつもミファーだと思っちゃダメだよぉだ!」
ミファーが気付かず自分で『ミファー』というなんかできちゃった言葉を使っていることにミファーだと感じながら、同時にミファーが意図的に慣用句を使ったのだと理解して驚く。
「それでどうするの二人とも! まさか本当に嫌だったぁ……?」
「あぁはい着るわ、着る着る! あっリーファ逃げるんじゃないわよ!」
「だってめんどうだし……」
「リーファぁ……」
泣きそうな顔でミファーに見つめられて、リーファはしかたないとばかりにため息を零す。
「わかった」
「やったぁ!」
そんなこんなで、制服を見せ合うことになった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「人多いわね……」
次の日の朝、ティアラたち三人が入学祭の開始が近づくとともに寮の入口へ向かうと、そこは人であふれていた。
そんな時、突然学園都市中に放送が響き渡る。
「あぁ、あぁ、これできてんのかいやできてんな」
「もっと貫禄を見せろよバカ! いやバカじゃない、いやバカなんだけどバカって言っちゃだめだよなぁうん」
「一人反省会してる変な人はおいておいて、新入生たち、そろそろ入学祭が始まる! 俺たち在校生がみんなのために本気で考えたイベントや出店がたくさんある! 見逃すともったいないものばっかりだから、始まったら積極的に聞きに来てくれ! あぁでも一人反省会する変な人もいるから気をつけてな」
「お前ふざけんなよ?」
「ふざけてない! 真面目にやってる!」
「ならなおさら立ち悪いじゃねぇか!」
「おっと、どうやら準備が終わったみたいだ!」
「おい聞いてんのか?」
「新入生諸君! 入学祭、開始だあぁ!」
その合図と同時に寮の扉が開き、集まっていた新入生たちが一気に外へ向かっていく。それを追いかけるようにティアラたち三人も外へ出る。
そして――、
『『『えええええええええええええええええ!?』』』
その光景はあまりに壮大で、豪華で、三人は思わず驚きの声を響かせた。
正面の大通りにずらりと並ぶたくさんの出店、学園の四方に四つの四角いどこかの映像が浮遊している。まるでモニターのように映し出されている。しかも学園の周りを回っているのだ。
それらすべて――否、地面から空まですべてが装飾されていた。
「な、なによこれ……」
「ティアラリーファ! あっちあそこの出店行こう!」
「適応早わね!」
「だってミファーだから」
「たしかにミファーね……」
「早くぅ!!」
急かされて、ティアラとリーファは先に行くミファーを走って追う。そしてある出店にたどり着いた。
その出店を出している在校生が、ティアラたち三人をみて笑みを浮かべた。
「あぁ制服着てるぅ、かわいい」
「そ、そんなことないわよ……」
「ティアラが照れたぁ!」
「リーファこの子殴っていい?」
「いいよぉ」
「なんでぇえ!?」
「ふふ、あなたたち面白いね」
まるでコントのような会話を繰り広げるティアラたちの様子に、口に手を当てて在校生は笑う。
「ここは何を売ってるの?」
「売ってるというか、ここは魔道具の体験ができる出店だよ。ここは無料だけど他の場所じゃお金が必要になるから気を付けてね、まぁでも新入生であれば半額だから大丈夫だと思うけど」
「魔道具ってなぁに?」
リーファが聞いたことを、さらにミファーが掘り下げる。
「魔道具っていうのは、古代に作られた道具のこと。未だに原理がわかってないものばかりなんだ。というか多分、原理が解明されている魔道具はないと思う。それじゃあ気になる魔道具を触ってみて?」
「じゃあミファーこれ!」
そう言ってミファーがある魔道具に触れる。と、その瞬間魔道具の上に文が浮かんでくる。
「えっと? 『過去の過失に囚われし其方は信じる事を恐れている。何時しか信じる事が出来た時、其方は過去の自分を恕せるだろう』? 何よこれ? ミファー?」
「…………ぁ、え……え? あ、なっなに!?」
「大丈夫?」
「だ、大丈夫!」
「この魔道具は、触った人の重要な出来事を予見すると言われてるの。まぁ二十年後のことだったり五十年後だったりするから、あまり実証できてないんだけどね」
「そ、そおなんだ……」
ミファーの頬に冷や汗が伝っている。
わずかに手も震えているように見えた気がした。
「それじゃあ次は私。適当に、これにしよ」
リーファが触った瞬間、その魔道具の中の宝石が少し強めに光を発する。
「それはね、触った人の想像力の度合いを光の強さで示してくれる魔道具なんだ。魔法の適性をみるためにも使われたりする。多分、授業で使うことになるよ。あなたは適性ある方だね!」
「ミファーもやる!」
そう言ってミファーが触ると、光の強さが若干下がる。
「ありゃりゃ、下がっちゃった……」
「ミファー適性ないのぉ!?」
「いやそんなことないよ? 普通くらい」
「普通なのぉ!?」
ショックとばかりに目と口を開くミファーの様子に、在校生は面白いとばかりにクスクス笑う。
「それじゃあ最後、あなたもどうぞ」
「えぇ、じゃああたしはこれにするわ」
「うん……え!? ちょっと待ってそれは――っ!」
「え?」
制止の声が途中で途切れる。
驚いて顔を上げると、ティアラはどこかの廊下に立っていた。屋根付きの廊下で片方には壁がない。そこからは庭が見えた。
そして気付く。
「ここって、プラステル城!?」




