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第一章11 『痛みに満ちた声』


 家に帰ってきたティアラは、自室のベッドの上に今日もらったプレゼントを広げ、眺めていた。


『ティアラ、もういいでしょ? 国王からもらったプレゼントが何か教えてよ』


「プレゼントってなに?」


「え? あそっか英語だからわからないのか? いやでも日本じゃ結構使われてた単語なのに……」


 さらに謎が増えたと、ティアは精神世界で眉を顰める。だが『まぁいいや』とティアは思考を終わらせた。


『贈り物のことだよ』


「ふ~ん、まぁいいわ。ティアが知りたいのはメイザスさんからもらった金剛貨のことでいいわよね?」


『――――』


「ティア?」


『ティアラさ、レリーファ様のことは様付けなのに、国王のことはさん付けなのなんで?』


 国王をさん付けするくらいなら、その娘のレリーファのことは呼び捨てであっても不思議はない。むしろ、様付けなのが不思議なくらいだ。


「――っ、それは……喧嘩、して。もう! ティアには関係ないでしょ!」


『いやまぁ、そうなんだけどさ。気になるじゃん』


「金剛貨について話さなくてもいいのよ?」


 少し怒ったように言うティアラに、ティアは慌てて『わ、わかった! もう聞かないって』と返事を返す。


「それでいいわ。で、この硬貨なんだけど、とんでもない価値があるのよ」


『何円くらい?』


「円? よくわからないけど順を追って説明するわね。まず銅貨、リンゴ一個くらいの価値があるわ」


『百円くらいか』


「それでその銅貨十枚で銀貨、銀貨十枚で白金貨、さらに白金貨十枚で金貨」


『ちょっと待って、なら金剛貨って金貨十枚分の価値ってこと?』


「ううん……金貨百枚分の価値よ……」


『えぇ……』


 久しぶりにティアはドン引きする。

 ティアラがあんなに驚いていた理由が今わかった。


『ちょっと待って、ということは……一千万!? なっ、なんてもの渡してるのあの人!!』


「そういうことよ! まぁ必要になったら返してって言ってたし、お守り的なものとして渡したんじゃないかしら?」


『一千万をお守りにすな! 国王金銭感覚おかしいって!! ティアラ絶対なくさないようにね!』


「あっ当たり前でしょ! しばらくの間机の中に封印するわ……」


『……ていうか、なんで一千万円もの価値がある硬貨があるわけ? そんなの使用方法がないじゃん』


「それはもともと、金剛貨が国同士の取引とか、そういう大取引のために作られたものだからよ」


『あぁ、そういうことか……』


 まぁどちらにしろ、そんな貴重なものをたった九歳の子供に渡すのは正気の沙汰じゃない。それがたとえ、精神が成熟しているとしてもだ。


『国王大丈夫なの?』


「あまり悪く言うんじゃないわよ。メイザスさんはただ金銭感覚がおかしいだけで、いい人だしすごい人なのよ? 国のために色々お金使ってくれてるから、金銭感覚のズレはそれが原因かもしれないわね」


『ふ~ん』


「とりあえずこれは封印……」


 そう言いながら、ティアラは金剛貨を手にとって机の引き出しに入れる。

 それからベッドに戻って、寝っ転がりながらミリティアのプレゼントを嬉しそうに抱える。


『ティアラ、嬉しそうだね』


「そりゃ嬉しいわよ。まさかミリティアさんがくれるなんて思ってなかったし……」


『それにしてもティアラ、欲がないよね』


「そうかしら?」


『だって誕生日なんだよ? もっと両親にいっぱいお願いしてもいいくら――っ』


「――っあたしには! ……そんな権利、ないのよ」


 威勢よく放たれた言葉に続き、勢いを失った声でティアラは言う。

 ティアはずっと、ティアラがなぜ両親や周りの人に迷惑をかけまいとするのか、わざと聞いてこなかった。

 触れちゃいけないことなのだと、そう思っていた。そう感じ取っていたから。

 だが気になってしまう。だから今、ティアは逡巡しつつも口を開き、


『ねぇティアラ、なんでそんなに迷惑をかけないようにってするの? そんなのティアラが苦しそうだよ』


「――っあたしは、苦しんでなんかない! 当然のことをしてるだけ! だから、苦しいなんてこと、ないのよ……。何も知らないくせに、知ったようなこと言わないで!」


『ご、ごめん……』


「――。――――。ぁ、いや……あたしも、言いすぎたわ……」


 ティアラが激高した。

 その事実に、ティアは焦ったように謝る。やはり触れちゃいけないことだたのだと、ティアは改めて認識する。


「ごめん……」


 ティアラが申し訳なさそうに謝るが、その場に残ったのは、妙な気まずさだけだった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ティアと喧嘩してしまったティアラは、気分転換がてら屋敷の中を散歩していた。

 すると食卓から、正確にはキッチンからミャミュとアミリスの声が聞こえてくる。それを不思議に思い、ティアラはキッチンを顔だけで覗き見る。


「あぁもうアミリスのバカ! 砂糖入れすぎ!」


「し、仕方ないじゃん。入れたくなっちゃったんだから!」


「入れたくなっちゃったんだからじゃない! こんなんじゃ食べてもらえないよ!?」


「そ、それはダメ!」


「ならちゃんとやって! これでもう三回目だよ! いい加減にしてよ! アミリスのバカ!」


『な、なんかミャミュが子供っぽくなってる』


 いつもと違う雰囲気のミャミュを前に、ティアはそんな感想を抱いた。


「……あたしの前じゃいつもあんなだけど、お母様とお父様相手には意外とあんな感じよ」


『そ、そなの?』


「えぇ」


 ほへぇと、ティアはミャミュの意外な一面にギャップを感じる。


「それにしてもお母様、なんで料理してるのかしら?」


『わからないの?』


「え? ティアはわかるの?」


『うん……』


 今日という日に母親がメイドに教えを乞うて料理する理由など、一つしかないだろう。ティアはそう考えるのだが、ティアラは小首を傾げていた。


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