第2話 ごー・ざ・よくないところ
「待ってください、この先は混沌街ですよ!?」
白衣の少女、Xに言われるがまま着いてきた場所は
この巨大都市での治安が悪い区域、『混沌街』の入口、巨大な鉄の門の前だった。
この巨大都市は真ん中に近づけば近づくほど
治安が悪くなっていくのだ。
この先はいつ犯罪に巻き込まれてもおかしくない場所
「こんな危ない所…絶対に嫌です…!!」
とどうにか混沌街の入り口から離れようとする
だがXに腕を引っ張られ、
「大丈夫だ、ここはまだ入り口付近、ここらで犯罪に巻き込まれる事はそうそうない。」
Xはなぜか自信満々に言う
「絶対にうそ…ですよ…ね!!」
Xを引きずってなんとか入り口から離れる
「まて、わかったわかったよ!事情を話すから……!」
Xは自分を必死に引き留めようとし、続けて
「私は能力の研究をしている!君には能力を付与する実験がしたいのだよ!!」
と言う
『実験』と言う単語が聞こえた気がするが問題はそこではない
「能力の付与…?」
Xに尋ねると
「あぁ、そうだとも『能力の付与』!」
「私は今、無能力者を能力者にする研究を行っているのだよ!」
Xはこちらを見つめ
「君はどうやら無能力者である事になにかあって飛び降りをしようとしたと見える!」
となぜか興奮気味に言う
「………」
図星を突かれ、つい立ち止まってしまう
(別に…なりたくてなったわけじゃない。)
「混沌街の外周のとある場所に我々の秘密の事務所があるのだよ。」
ゴーグルをかけ直しながらXは続ける
「ほら、おいで。痛い事はしないから。」
Xは自分の背中を優しく押す
(能力の付与…)
そんな言葉を聞いたからには戻れない
(もう、どうにでもなれ!)
(少しくらい痛い事なら我慢だってしてやる…!)
「はい…分かりました…」
半ばやけくそ気味だが
混沌街の入り口へ連れていかれる
いざ混沌街に入ってみると、意外と大したものでは無かった
ざっと見回してもやけに広い道、目に付く物はトタンで出来た家に怪しげな露店、
通行人も少しいるが、こちらを見た途端そそくさと小走りで去っていく
(…?)
辺りをキョロキョロと見回していると、
「少し寄り道しようか。」
とXに言われる
「は、はい…」
(寄り道?一体どこへ…?)
嫌な想像ばかりするが、そんな考えを振り切ってXについて行く
少し入り組んだ路地裏を歩いて行くと、
「よし、ここだ。」
辿り着いたのは行き止まり
「…?なにもありませんけど…?」
と聞くと、
「大丈夫、あっているよ。」
Xはそう答えながらトタンの壁を6回、リズミカルに叩く。
すると壁が開き、ピンク色の煙と共に大きなシルエットが自分とXを覆う。
「いらっしゃいまセ〜」
中から出てきたのはとても背の高い、気味の悪い女だった。
カタコトの言葉、小豆色のジャージに紫色の髪、なにより気味が悪いのが、肌が真っ黒だった。
真っ黒と言うのも、茶色のような黒ではなく
漆黒。
まるで吸い込まれるような神秘的な黒い色の肌だった。
いや、
これは肌…?
(と言うより…)
この人のそこにあるはずの顔のパーツを『認識』する事が出来ない。
目の前にいる不気味な女を見上げていると、
「り〜ちゃン、ひさしぶリ〜」
大きな女は軽々とXの小さな体を持ち上げる
「このあほずらハ〜?またひろってきたノ〜?」
片手にXを抱えながら頭上から指をさされる
「ははは、いつものをくれ。」
Xは目の前の女を無視している
「あいヨ〜」
とポケットから小さな紙袋を取り出し、Xに渡す
当人は大して気にしていなさそうだ
「またネ〜、きさまもじゃあナ〜」
この際貴様と言う呼び方は触れないでおこう。
次に振り返った時にはもう、彼女の姿は無かった
「怖かったかい?彼女は薬屋だ。」
抱えている紙袋から小瓶を取り出してXは言い、
「大丈夫、取って食われたりはしないよ。……油断しなきゃね。」
とニヤリとした笑みを浮かべてこちらの鼻をつつく
すると突如、Xが立ち止まる
「そんな事を言ってる間に…ほら、着いたよ。」
「何でも屋………?」
目の前には紫色に塗られた建物、
大きなネオンの看板には
【何でも屋】シークレットロマン
と書かれている見るからに怪しい小さな建物があった。
Xはそんな怪しい建物の扉を開け、
「ささ、入りたまえよ。」
と手招く
(やっぱり、ちょっと怖いな…)
不安になりながらも、建物の中に入っていく…
その行動が後にこの都市、強いては世界に変革をもたらす事すら知らずに。
2話目です。
傍点とかの技術が良くわからないので『』なのは御愛嬌