Part.1.9 収穫祭
フロア村に滞在して4ヶ月が経った。魔法の強度はあがり、キャロルから免許皆伝をもらった。あとは自主練でどうにかしろということだ。試しに水魔法を水平に撃ってみたが、やはり拳ひとつくらい飛んで落ちるだけだった。火魔法も同様だ。キャロルが言っていたように”努力の積み重ね”が必要かもしれない。
毎日の農作業で筋肉がより付いたのか、夕方になっても気力が余っているようになってきた。その分強く念じるよう気をつけて練習をしていたら、水の玉が拳3個分くらい飛ぶようになっている!!
たかが拳2個分増えただけだが、努力が実るというのは人にやる気を起こさせる。俄然やる気がでてきた。
そんなある日、シスターが「今日は収穫祭ですから、リョウさんは力仕事をお願いします。私とキャロルはお料理のお手伝いをしますので」と言う。収穫祭の話はもう10日以上前からハンナ達に聞かされていた。ご馳走も大したものが出るらしいが、なんと言っても”酒”がでるのだ。オレも10日以上前から楽しみで仕方がない。
収穫祭の力仕事と言っても、各家で使っている薄いダイニングテーブルと椅子を並べるくらいだった。夕方前には終わり、夜が待ち遠しかった。
そして宴が始まった。この日のために屠殺した豚肉や鶏も出ている。ご馳走を食べ、酒を飲んでいると、キャロルが隣に座った。「どうした?キャロル、君から近づくなんて珍しいじゃないか?」と聞くと、「うん。」と元気なさげだ。「(う〜〜ん、どしたのだろう?・・・あ、いいこと思いついた)キャロルは26歳だからお酒飲んでも平気だよね?」と聞いてみると、「うん。大丈夫。村のひとも呪いのことは知ってるから」そりゃ何年前からここにいるか知らないが、成長しない子供を不思議に思うのだろう。きっと渋々呪いのことをシスターが説明したに違いない。
「じゃ、一緒に飲まないか?オレも一人で話し相手が欲しかったんだ」