Part.1.7 お祈りの日
今日はお祈りの日らしく、午前中は村人が教会に集まってお祈りをしていた。
昨日、村の入り口で会ったハンナさんにも会って、「どうだい?フロア村の居心地は?」と聞かれて、初めてここが”フロア村”だと知った。「シスターにもキャロルにも良くして貰ってます。教会を紹介してくださってありがとうございます。」ハンナさんにお礼を言うと「ははは、気にしなさんな。どれくらい滞在するんだい?」と聞かれ、「半年くらいお世話になろうと思ってます。早くなるかもしれませんが」と答えると、「長いねー。男手は足らないくらいだから、こっちにしては大助かりだね」とハンナさんが答える。「え?男手が足らないって教会だけじゃないんですか?」と聞くと、「知らないのかい?戦争で若い男は徴兵に出されてるんだよ」とハンナが言う。
安全だとは思っていたが、安全を守るためにどこかで戦争をしているのか?相手は人間か?魔物か?聞きたいけど、知らない事が多すぎるのはこの世界の人間として怪しすぎる。それとなく少しづつ聞いていくしかない。
しかも昨日は眠くて考えられなかったが、なんでキャロルに呪いがかけられたのか、そして解く方法があるのか、なんで教会にいるのか・・・謎が多すぎる。これを上手く聞き出すスキルをオレは持ち合わせていない。キャロルのことは機を見て一気に聞いてしまおう。
などと考えに耽っていると、「紹介したい方がいます。リョウさんこちらへ」突然のことでびっくりする。「昨日からこの村に滞在することになったリョウさんです。半年程度の滞在をお考えです。では、ご挨拶を」とシスターが言う。
「ご紹介にあずかりましたリョウです。魔法はまだ使えません。肉体労働はまかせてください。よろしくお願いします」仮にも大手商社勤めだ、この程度の人数にあがったりしないし、挨拶も手短にできる。
パチパチパチ・・・まばらな拍手が起きる。今まで言われていたほど歓迎されているワケではなさそうだ。それもそうか、自分の子供が徴兵に取られているのに、どのこ馬の骨とも分からんヤツがヘラヘラと挨拶していたら、いい気分はしない。しまったと思っても、もう遅い。
「では、今週のお祈りは終わります。また来週おいでください。」とシスターが言うと、村人がちりじりに帰って行った。
「さ、今日は苗に水やりをやるだけにして、残りの時間は魔法の勉強をしていいですからね」とシスターがキャロルに言う。「はい。シスター。」シスターには従順なキャロルだ。
「(さーー魔法の勉強だ!!もしかしたら大魔法になれるかも。楽しみだ!!)」