Part.1.2. 初めての村
小川を下る途中、水を飲みに来ている小動物は見かけたが、危険そうなな生物には出会わなかった。
危険な生物がいない世界があると思えるほど楽天家ではないので、注意しながら小川に沿って下る。
途中、支流に石橋が掛かっているのを見つけ、このまま下れば村に出られると確信した。
2時間ほど歩いたろうか、川幅も広くなり始めた頃、川の左岸に小さな村が見えた。
「(う~~ん。言葉が通じないだろ?怪しまれて、大きな都市に投獄されたりしないよな?いや、普通に考えて無視されるだけだろ・・・多分)」
近づくと、麦畑だろうか農作業をしている人がいた。
「こんにちはーー!」元気よく挨拶してみた、「こんにちは。ちょっと待ってそっちに行くから」と中年女性が答える。
「(ホッ、何かの力か、言葉は通じるようだ。あとはどう食事をさせて貰えるかどうかだ。)」と考えていると中年女性はもう目の前まで来ていた。「こんにちは。見ない顔だね。どうしなさった?何か用かい?」優しそうに聞いてくれる。
「(ヤバ。なんの設定も考えて無かった。何て答えよう)・・・え~と、旅の者です。出来れば食事と宿のお世話をお願いしたいのですが・・・文無しなんです。なんでもします。お願いします。」と余りにも正直に言いすぎた。
「ははは、私はハンナだよ。お前さん異国の見た目だけど名前は?」特に怪しむ様子も無く聞いてくる。旅の安全がある程度あるのだろう。
「リョウって言います。それで・・・食事と宿なんですけど」自分でも厚かましいとは思ったがお腹がペコペコだ。
「ははは。そうだったね。村に教会があって、シスター・メアリーに頼んでみるといいよ。」ハンナは水袋をこちらに差しだしたが「途中の小川で飲みましたので、お気持ちだけでありがとうございます」とこたえると、ハンナは豪快にゴクゴクと飲んだ。
ハンナにさんざん礼を言って、村に入ってみた。村はあばら家が立ち並ぶ寂れた感じだ。村人は見かけない旅人を気にはするが、やはり”ジッ”と見つめたり、怪しんだりはしない。やはり旅が普通にできるある程度安全な環境なのだ。
教会は町の中央にあった。教会と分かるのは他のあばら家より多少立派に出来ていることくらいだ。
中を覗くと、だれもいない。
「ごめんくださーーい!!」大声で問いかけると、奥から物静かに若いシスターが出てきた。大声出したのが気恥ずかしくなった。