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第7話 バースデー・イブ 


挿絵(By みてみん)




 此処、フェニキアと言う世界は、3つの大陸によって形成されており、その大陸の中の1つに、ティルス大陸がある。

 ティルス大陸は、地球で言うと、ユーラシア大陸とアフリカ大陸を足したくらいの大きさで、様々な地方に多様な国家群や、文化が存在している。


 フィリスティア王国は、そんなティルス大陸のカナン地方に属する国家の1つだ。古くから、海洋国家として発展し、商売が盛んで、王侯貴族など富裕層では、成人した男性に船を贈って商売をさせたりする文化まであるのだ。

 海洋国家と言うだけあり、帆船を動かす為に、風属性魔法の使い手が重宝される傾向が強い。

 


 600年ほど続くこの国の現国王、イラーフ・フィリスティア。その人も、風属性魔法の使い手。しかも、若かりし頃は、冒険者としても活躍し、冒険者ランクはLV10。

 冒険者ギルドに発行されるギルドカードは、ランクが上がるたびに、星が1つ追加されるのだが、最高ランクが10となっており、10コ星を持っている者は、現在は世界に20人程しかおらず、中でもイラーフ・フィリスティアは、最強の風属性魔法使いとして、勇名を馳せている。

 そんな彼の子供達には、5人の王子と、2人の王女がいて、皆優秀と噂されているのだが、どこにでも例外がある。



 無属性として約5年前に生まれた、第5王子。べアル・ゼブル・フィリスティア。親しい者からは、愛称としてベルと呼ばれていた。親しい者と言っても、乳母兼養育係のサーヤ・ボールドウィン、1人だけなのだが…

 周りの者から無能と蔑まれ、生まれてから5年間ほぼ、自室に軟禁状態であるベルに対して、サーヤは献身的に尽くしていた。







「おはようございますぅ~ ベルさまぁ~」


「今日のご本は、どのような種類の物をお持ちしましょうかぁ~?」



 この少し間延びした喋り方をする、黒髪な美人がサーヤ・ボールドウィンである。そして…



「おはよう。サーヤ。」


「うーん、本か…どうしよっかなー。読みたい本は、ほとんど読んだと思うんだけど…」




 この、生後4カ月にして言葉を喋り始め、此の世界にある知識を求めだし、約5年経った今では、王宮が所蔵している禁書以外の本を、ほぼ制覇している銀髪の4才児が、べアル・ゼブル・フィリスティア。このお話しの主人公である。


 ベルが、何の本を読もうか迷っていると、サーヤが話しかけてきた。




「お読みになりたいご本がないのであれば… 今日は、私に少しお付き合いくださいませんかぁ~?」



「うん?別に構わないけど… 今日は、なにかある日だっけ?」




「もぉぉぉ~ お忘れなんですかぁ~ 明日のベルさまの、5才のお誕生日に着て頂くお召し物の、丈の調節をさせてくださいって、何度も言ってるじゃありませんかぁ~」



「ははは・・・ わ、忘れる訳ないじゃない…」


「サーヤは毎年よくやってくれて、感謝してるけどさ… サーヤ以外、祝ってくれる人がいる訳でもないし、服なんてこれで、十分だと思うけどなー」 



 事実、ベルが生まれてから4回あった誕生日は、第5王子という肩書があるにもかかわらず、1度もパーティーが催された事もなく、ベル自身の部屋に訪れた者さえもいなかった。強いてあったといえば、王妃である母親からの、手紙と贈り物だけだった。



「ベルさまぁ・・・ お可哀想に・・・」



 サーヤは、手慣れたしぐさで優しくベルの頭を柔らかな膨らみにおしやる・・・



 はぁぁー やっぱり、サーヤの匂いは落ち着くなー


 久しぶりに、アレ、やっておこうかなー






『解析魔術発動!』






:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:・:



名前    

サーヤ・ボールドウィン


年齢    

18歳


種族

ヒューマン


性別


カップ数   

C


状態

発情


LV     

14


HP     

160/160


MP     

930/1230


魔法属性   

水属性LV3


称号     

ボールドウィン準男爵家長女 アシエラ・フィリスティア第5王妃の義妹  無能の乳母  変態メイド



 



:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:-・:+:・:







 ふぅー。カップ数の所、注目です!


 これを解析できるようになるまで、僕が、どれだけの時間を労した事か・・・


 Cですか・・・小さすぎず、大きすぎず、ベストパフォーマンスですよ!サーヤ!




 あっ!……状態の所は、見ないであげるのが紳士って者ですよ!?








 






サーヤに優しく抱かれる中、銀髪の4才児の両目には魔法陣が浮かび上がっていた。これが、魔法と魔術の大きな違いの1つである。


 そもそも、魔法はまず、自分の持って生まれた属性しか発動できず、発動するには、しっかりとしたイメージと魔力操作が必要なのだが、これがまた難しいのだ。


 例えば、ガスコンロの炎を思い浮かべてほしい。ガスコンロで出せる中火の、色、形、大きさ、ガスの量、全てを正確に目をつぶって頭の中で再現できる人がどのくらいいるだろうか・・・

 その魔法の難しさを補完する為に、歴史上、数多くの呪文が開発されてきたのだ。



 それに比べ、魔術は、どのような属性の魔術でも、魔術式で組み上げた魔法陣を、体内に組み込むだけである。発動する時は、魔法陣が勝手に体内から必要量の魔力を吸い取り魔術式が正確に再現する。しかも、発動までの時間も1秒もかからず、一瞬で発動するのである。

 ただ、魔術を作れるのも、体内に組み込むのも、ベルが本を読み漁って調べたかぎり、ベルの魔法でしかできない。魔術の事など、どこにも書いていなかったのだ・・・





「・・・・コホォン!そういえば、ベルさまぁ~ 明日のベルさまのお誕生日に、お母君であらせられる、アシエラおねえさま… コホォン! アシエラ王妃様との謁見が許されましたよぉ~」







「・・・・・・・・・・・・」







「サーヤさん…そういうことは、早めに言おうよ…」






 それから、夜遅くまで丈合わせと称して、いろいろな事があるのだが、今は割愛しよう…

 そして、翌日のベルの5才の誕生日は、急遽、人生の転機が訪れる切っ掛けになる、今生での母親との再会になるのであった。





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