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転生したら無能王子だったから引きこもってみた  作者: 覚賀鳥
新しい仲間達(ジパング)
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第68話 ジパング

 

 ヤム・ダンジョン53階層という、ベテラン冒険者でも到達に数週間を要する常軌を逸した深層からの凱旋は、ベルの転移魔法によって、あまりにもあっけないほど一瞬で終わった。


 ついさっきまでひんやりとした地下の空気を吸い、ロックゴーレムの断末魔を聞いていたはずの一行が、次に目を開けた時には、活気と喧騒に満ちた王都エクロンの裏路地に立っていたのだ。西に傾きかけた太陽が、レンガ造りの建物を暖かなオレンジ色に染めている。


「……ふぅ。何度体験しても、この空間をねじ曲げるような感覚には慣れないわね」


 アナが軽く頭を振りながら、現実世界への帰還を実感する。

 テトはまだダンジョンでの大立ち回りの興奮が冷めやらない様子で、ふさふさの尻尾をちぎれんばかりにぶんぶんと振り回していた。


「すごかったニャー! アナにゃんが魔物をバッタバッタなぎ倒して、フィンの槍が岩壁をガリガリ削って、ウールのおじさんの銃がドドドドーってなって! まるでお祭りだったニャ!」


「おじさん言うな。せめてお兄さんと呼べ、お兄さんと」


 ウールが心底嫌そうな顔で訂正するが、興奮状態のテトの耳には全く届いていない。

 前世の日本ではウールは大人の男だったらしいのだ…


「そしてベルは、金ピカのインゴットをいーっぱい出してくれたニャ! ベルは魔法の打ち出の小槌ニャ!」


「それもちょっと違う気がするけど、まあいいか!」


 フィンもまた、自分の成し遂げたことへの確かな達成感で、頬をわずかに高揚させていた。


「僕の結界が、あんなふうに皆さんの役に立つなんて……。皆さんと一緒だったから、できたんだと思います」


「フィンさんの謙虚さは美徳ですが、もっと胸を張っていいのですよ。今日のあなたは、誰よりも雄々しく輝いていましたわ」


 ヘレンの聖母のような微笑みに、フィンは照れくさそうに俯いた。

 そんな仲間たちの和やかな雰囲気の中、ベルが何かを思い出したようにポンと手を叩いた。


「あ! そうだそうだ! みんな、すっかり大事なことを忘れてました!」


「大事なこと? オリハルコンの材料は手に入れたし、全員無傷で帰還できたじゃない。他に何かあったかしら?」


 アナが不思議そうに首を傾げる。


「僕たち、まだ『冒険者』じゃなかった!」


 ベルの超弩級の爆弾発言に、その場の全員の動きが、時間が止まったかのようにピタリと固まった。


「「「「…………は?」」」」


 数秒の沈黙の後、アナの魂の絶叫がエクロンの夕暮れの空に木霊した。


「はぁああああああ!? あなた、正気で言ってるの!? ダンジョンの、それも53階層なんていう普通なら生きて帰れない超深層に潜っておきながら、まさか冒険者登録をしてなかったって言うの!? 普通は! 常識的に考えて! ダンジョンに潜る前に済ませておくものでしょうがッ!!」


「いやー、うっかりしてました! シレイラ村からダンジョンに直行しちゃったんで!」


「うっかりで済む問題じゃないわよこの天然領主様! 順序が逆! 何もかもがおかしいのよ、私たちの行動は!」


「まあまあ、アナ。落ち着けって。結果的に無事に帰ってこれたんだし、金鉱石もたんまり手に入った。結果オーライってやつじゃないか?」


「ウールは黙ってなさい! このパーティー、常識人があなたしかいないと思ってたのに、あなたまでベルの天然ウイルスに毒されてるじゃない!」


 ギャーギャーと騒ぐアナをなだめすかし、一行は「順序は逆だが結果は同じ」というベルの謎理論に半ば強引に押し切られる形で、王都の中央に位置する冒険者ギルドへと向かうことになったのだった。




 夕暮れ時の冒険者ギルドは、今日の依頼を終えた者たちの熱気でごった返していた。

 オーク材で作られた重厚な扉を開けると、酒と汗と、そして微かな血の匂いが混じり合った、独特の空気が一行を包み込む。

 壁には無数の依頼書クエストボードが張り出され、屈強な戦士たちが酒場でエールを酌み交わし、軽装の斥候たちが情報交換に勤しんでいる。まさに、物語で見た冒険者ギルドそのものの光景だった。


 そんな荒くれ者たちの巣窟に、場違いなほど整った身なりの一行が現れたのだから、注目を集めないはずがない。

 王女としての気品が隠しきれないアナ、聖女のようなオーラを放つヘレン、貴族の御曹司にしか見えないフィン、そして愛くるしい獣人のテト。そんな美少女と美少年たちを引き連れる、どこか飄々としたベル。


「……なんか、すごくジロジロ見られてる気がするニャ」


「仕方ないわ。私ほどの圧倒的な美貌を持つ者がギルドに降臨すれば、当然のことよ」


 テトがおどおどする隣で、アナはふんぞり返って胸を張る。その鋼のメンタルは見習いたい。

 一行は突き刺さる視線をものともせず、受付カウンターへと向かった。


「すみませーん、冒険者登録をお願いしたいんですけど」


 ベルが声をかけると、栗色の髪をポニーテールにした、そばかすがチャーミングな受付嬢が笑顔で顔を上げた。


「はい、新規登録ですね! ようこそ冒険者ギルドへ! では、こちらの用紙にご記入をお願いしまーす」


 渡された登録用紙に、それぞれが必要事項を記入していく。名前、年齢、得意な魔法やスキル。

 受付嬢はテトたちの用紙を一枚ずつ確認し始めたが、その笑顔が徐々に曇っていく。


「えーっと、テト様は……従魔魔法ですね! 素晴らしい! 何属性の従魔魔法になりますか?」


「無属性ニャ!」


「……はい?」


 受付嬢の笑顔が固まる。


「フィ、フィン様は……結界魔法! まあ、なんて珍しい! 防御のスペシャリストは、どんなパーティーでも重宝されますよ! こちらも、属性は……?」


「あ、ありがとうございます……その、無属性の結界魔法になります」


「……また、ですか」


 受付嬢の眉がピクリと動く。


「ウール様は……銃魔法? ヘレン様は……魔眼魔法? あの、大変申し上げにくいのですが、こちらの属性も……」


「「ああ、無属性だ(ですわ)」」


 受付嬢は、四人分の登録用紙をカウンターに置くと、困り果てた顔で深々と頭を下げた。


「大変申し訳ございません、お客様! 『無属性』の魔法は、ギルドの規定により、冒険者として登録することができないのです!」


「「「「はぁ!?」」」」


 ベルを除く全員が、素っ頓狂な声を上げた。


「ど、どういうことですか!? 無属性は、魔法じゃないってことですか!?」


 フィンが慌てて問い詰める。受付嬢は申し訳なさそうに説明を続けた。


「いえ、魔法であることは間違いないのですが……無属性魔法は、一般的に『使えない魔法』『落ちこぼれの魔法』とされておりまして……。火も出せず、水も出せず、攻撃にも防御にもならない、と。ですので、モンスターと戦う冒険者としての資質はない、と判断されてしまうのです……。本当に、申し訳ございません」


 その言葉は、フィンとテトの胸に、深く、鋭く突き刺さった。学院で、そして故郷で、散々浴びせられてきた言葉。まさか、新しい一歩を踏み出そうとしたこの場所でまで、同じ絶望を味わうことになるとは。


 俯く二人の肩を、ベルが優しく叩いた。そして、受付嬢に向かってにっこりと微笑んだ。


「お姉さん、それは大きな勘違いですよ。彼らの無属性は、世界最強の可能性を秘めています」


「ですから、困りますお客様! 規定は規定ですので!」


 押し問答が始まろうとした、その時だった。

 それまで黙って様子を見ていたアナが、ゆっくりと一歩前に出た。その全身からは、氷のように冷たい、絶対零度のオーラが放たれていた。


「―――あなた」


 アナは受付嬢の名前が書かれたプレートを一瞥すると、静かに、しかし恐ろしく響く声で言った。


「私の仲間を、『落ちこぼれ』と侮辱したのは、あなたでいいかしら?」


「ひっ!? い、いえ、そういうわけでは……! あくまで、一般的な認識でして……!」


「この国では、王族の言葉よりも、ギルドのくだらない規定の方が優先されるのかしら? 私の名は、アナトリア・フィリスティア。この国の第2王女よ。私が、彼らの実力を保証する。それでも、登録できないと言うの?」


 アナが王家の紋章が刻まれた指輪を見せつけると、受付嬢は顔面蒼白になり、ガタガタと震え出した。ギルド内も「王女様だと!?」「本物か!?」と一気に騒然となる。


 そのただならぬ雰囲気を察して、カウンターの奥から、ドワーフのように背が低く、しかし鍛え上げられた鋼のような肉体を持つ、厳つい顔の男が現れた。


「――騒がしいな。何事だ」


 その男の登場に、ギルド内の冒険者たちが「ギルドマスター!」「マスターが出てきたぞ!」とどよめく。

 ギルドマスターと呼ばれた男は、アナを一瞥すると、動じることなく深々と頭を下げた。


「これはアナトリア王女殿下。ギルドマスターのガルドと申します。うちの者が、大変なご無礼を働いたようで」


「話は聞いたわ。私の仲間は、無属性だからという理由だけで、冒険者になれないそうね?」


「はい。規定では、そうなっております。いかに王女殿下のご命令といえど、実力なき者を危険なダンジョンへ送り出すわけには参りません。それは、彼らの命を守るためでもあるのです」


 ガルドは毅然とした態度で答えた。その瞳には、冒険者たちの命を預かる者としての、確固たる矜持が宿っていた。

 アナはフンと鼻を鳴らすと、挑戦的に言い放った。


「結構よ。ならば、その実力とやらを、今この場で見せてあげましょう。あなたたちが『落ちこぼれ』と呼ぶ、無属性魔法の本当の力をね!」




 こうして、前代未聞の特例冒険者登録試験が、ギルドの中央に設けられた訓練スペースで執り行われることになった。

 試験官として、ギルドでも指折りの6星ランク冒険者たちが選ばれ、周囲は野次馬と化した冒険者たちで黒山の人だかりができていた。


「一番手! 行ってこい、テト!」


「ニャッ! 任せるのニャ!」


 ベルに背中を押され、テトが元気よく飛び出していく。

 対する試験官は、巨大な戦斧を担いだ、熊のような大男だ。


「へっ、なんだァ? こんなチビの猫娘が相手かよ。従魔魔法っつったって、どうせポチかタマを呼び出すくらいだろ? 怪我したくねぇなら、今すぐママのところに帰んな!」


 大男が下品に笑う。その挑発に、テトの獣耳がぴくりと動いた。


「―――舐めるな、ニャ」


 テトの瞳が、狩人のそれに変わる。


「いでよ、我が友! マオリス! フェイドクロー! シェルナイト!」


 テトの呼び声に応え、三つの魔法陣から、特性の異なる三体の魔物が同時に出現した。

 俊敏なマオリスが嵐のように駆け、試験官の注意を惹きつける。その隙に、鋭い爪を持つフェイドクローが背後から強襲し、硬い甲殻を持つシェルナイトがテトの前を守るように陣取った。


「な、なんだぁ!? 三体同時だと!?」


 完璧すぎる三位一体の連携攻撃に、試験官は完全に翻弄される。マオリスの素早い動きに対応すればフェイドクローの爪が襲い、フェイドクローを警戒すればシェルナイトの鉄壁の防御に阻まれる。


「とどめニャ! 【トリプルアタック】!」


 テトの号令一下、三体の魔物が同時に試験官に襲いかかった。悲鳴を上げる間もなく、熊のような大男はあっさりと地面に沈んだ。


「次、フィン!」


「は、はい!」


 二番手はフィン。対する試験官は、軽装の鎧に身を包んだ、素早い動きを得意とする双剣使いだ。


「結界魔法か。面白い。だが、その亀の甲羅、俺の双剣で叩き割ってやるぜ!」


「……僕の結界は、もう、ただ守るだけの力じゃない!」


 フィンは覚悟を決めた顔で槍を構え、その穂先に全魔力を集中させた。


「見せてやる、僕の全てを!――【矛盾パラドクス】!」


 攻撃と防御の概念を融合させた、フィンの必殺技。世界で最も硬い盾でありながら、世界で最も鋭い矛でもある結界の刃が、槍の先端に形成される。


「はっ、ハッタリを!」


 試験官が双剣を交差させ、防御の構えを取る。だが、フィンの槍がそれに触れた瞬間――


 キィンッ! という甲高い音と共に、鋼鉄でできていたはずの双剣と、試験官が着ていた鎧が、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。


「な……に……?」


 装備を全て失い、丸裸同然の姿で呆然と立ち尽くす試験官。その喉元に、フィンの槍がピタリと突きつけられていた。


「勝負、ありです」


 ギルド内が、水を打ったように静まり返る。


「……ウール、頼む」


「やれやれ。俺までやるのかよ」


 ウールは面倒くさそうに頭を掻きながら、魔法銃を構えた。相手は、遠距離攻撃を得意とする魔法使いの試験官だ。


「銃だと? そんなおもちゃで、俺の魔法が防げるかな!」


 試験官が詠唱を始めようとした、その刹那。

 乾いた発砲音が、四度、立て続けに響いた。

 次の瞬間、試験官は「ぎゃっ!?」という短い悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。彼の両手両足の、急所をギリギリ外した位置を、ウールの魔力弾が正確に貫いていたのだ。


「……戦闘不能だな」


 あまりにも無慈悲で、プロフェッショナルな戦いぶりに、誰もが言葉を失った。


「では、次は私ですわね」


 ヘレンは、にこやかな笑みを浮かべたまま、試験官たちの前に立った。


「私の魔眼は、戦闘には向きません。ですが……そこにいらっしゃるギルドマスター様。あなたは三日前に奥様と喧嘩なさって、今夜の夕食は好物のシチューだと期待していますが、残念ながら今夜も豆のスープですわね?」


「なっ!? なぜそれを!?」


「そちらの6星ランクの剣士さん。あなたは隠れて子猫を飼っていますが、その子猫、実は魔獣ブラックパンサーの幼体ですわよ?」


「うそだろ!?」


 ヘレンは次々と、その場にいた冒険者たちの秘密や、隠された能力を言い当てていく。その底知れない情報分析能力は、どんな物理的な攻撃よりも恐ろしいと、誰もが悟った。


 そして、大トリはベルだった。

 試験官として出てきたのは、ギルド最強と噂される7星ランクの冒険者。


「……お前の実力、見せてもらおうか」


 だが、ベルは一歩も動かなかった。ただ、静かに相手を見つめ、その全身から、ほんのわずかに魔力を放っただけだった。

 それは、純粋な『格』の違い。

 歴戦の勇士であるはずの7星ランク冒険者は、ベルの底なしの魔気を前に、まるで巨大な龍に睨まれた蛙のように全身を硬直させ、戦う前に完全に心を折られた。そして、白目を剥いてその場に卒倒した。


「……さて、ギルドマスター」


 ベルは倒れた試験官を一瞥もせず、ガルドに向き直った。


「これでも、僕の仲間は、『落ちこぼれ』ですか?」


 ガルドは、ゴクリと唾を飲み込むと、ゆっくりと頭を下げた。


「……完敗です。皆様の実力、しかと拝見いたしました。無属性魔法が、これほどの可能性を秘めていたとは……。全員、6星ランクでの特例登録を許可いたします!」


 その言葉に、ギルド内から割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。




 こうして、無事に冒険者登録を済ませた一行。受付嬢は、すっかり恐縮しきった様子で、最後の質問を投げかけた。


「あ、あの……皆様でパーティーを組まれるのでしたら、パーティー名を登録していただけますと……」


「そうね……パーティー名ですもの。当然、このパーティーのリーダーである私が決めなければならないわね」


 アナが腕を組み、「そうねぇ、『紅蓮の疾風クリムゾン・ゲイル』とか……」などと、非常にアレなネーミングセンスを披露し始めた、その時だった。


「あ、決まりました!」


 ベルが、元気よく手を挙げた。そして、アナが何か言うよりも早く、受付嬢に向かって満面の笑みで宣言した。


「パーティー名は、『ジパング』でお願いします!」


 地を這うような、恐ろしく低い声が響いた。

 声の主はもちろんアナだ。彼女は般若のような形相で、ゴゴゴゴゴ……という効果音と共に、ゆっくりとベルににじり寄る。


「ベル……? あなた、今……なんて言ったのかしら……?」


「え? だから、『ジパング』ですけど……何か問題でも?」


 次の瞬間。アナの右手が、強化魔法の青白い光を纏って、ベルの顔面を鷲掴みにした。


「なーーーーーーんで、このパーティーのリーダーであるこの私を! 完璧なる私を! 差し置いてッ! 勝手に! パーティー名を! 決めるのかなーーーーー?? んんーーーーーっ!?」


 ミシミシミシッ、と頭蓋骨が軋む、嫌な音がギルド内に響き渡る。


「あががががががっ! 顔が! 僕のチャーミングなイケメンフェイスがああああッ! ひしゃげます! 降参! 降参ですううううッ!!」


 数分後。アナの必殺アイアンクローから解放され、顔に綺麗なくっきりとした手の跡をつけたベルは、涙目でその由来を語り始めた。


「ジパングっていうのは…… 伝説の黄金の国の名前なんです」


 その言葉に、ウール、ヘレン、フィン、そしてテトの表情が変わった。


「『その国の宮殿は、屋根も壁も、全てが黄金でできている』と伝えられた、夢とロマンに満ちた理想郷……。僕たちは、この世界から見れば、みんな『迷子』だ。でも、この『ジパング』っていう言葉は、そんな僕たちにとっては、故郷を思い出させてくれる、暖かくて、誇らしい響きを持つ言葉なんです」


 ベルは、パーティーの全員に語りかけるように続けた。


「それに、僕たちの記念すべき初仕事は、ヤム・ダンジョンでの『黄金』の採掘でしたよね? 伝説の『黄金の国』の名を冠するのに、これほど、僕たちの始まりに相応しい名前はないと思いませんか?」


 縁起がいい。ロマンがある。そして、何よりも、仲間たちへの深い配慮が込められていた。

 その理由を聞かされ、アナの怒りは、スッと溶けていった。


「……ふん」


 アナはぷいっとそっぽを向くと、わざとらしく髪をかき上げた。


「……まあ、悪くない響きじゃないの。黄金の国、ね。この私の輝きに、相応しい名前ではあるわ。……今回だけは、特別に許してあげる」


 そのツンデレ全開の許可に、パーティーの全員が笑顔になった。

 こうして、後に大陸全土にその名を轟かせることになる伝説のパーティー『ジパング』は、リーダー(自称)が顔面をアイアンクローで締め上げるという、前代未聞の結成秘話と共に、この日、ひっそりと誕生したのだった。


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