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第50話 魔人の生まれた日 Part1

いつも読んでいただきありがとうございます。

誤字のご指摘をいただけましたので感→勘に修正いたしました!


感:かんじる

勘:物事を直感的に感じ取る能力


日本語って難しいです!

これからも誤字脱字など、気付いた点や気になった所がありましたら、是非是非教えてください!!


 後宮の端に、住人がいなくなり使われなくなって久しい部屋がある。

 だか、今この時、その部屋にメイドが1人。元の住人が使用していたベッドに横たわり、はやる気持ちを落ち着けるように枕を抱く。


 今頃は王宮内で行われている舞踏会は、中盤に差し掛かり盛り上がっているだろうか。


 そんな時に、その部屋をノックする音が確かに3回聞こえた。誰であろうか?


 しかし、メイドにはノックをしてくる相手に心当たりがあったのだ。

 いや、心当たりどころかその相手をずっと、この2年間も待ち続けていたのだから、勘違いをしてしまっても仕方ないのかもしれない…


 鍵のかかっていない扉が少しづつ開いていく。




「ふぎゃ!?」


「こ、これは違うのですぅ~」




 メイドはベッドから飛び起き、身なりを素早く整え顔を赤くし、うつむきながら精一杯の愛情を込めて答える。

 この部屋の主に向けるように…




「え、えっと… おかえりなさいませぇ~ ベ・・・・・ル・・・・・」




 メイドが、主の名前を言おうとした時、頬を切り裂くような冷たい風が吹き抜けていき、綺麗に整えられていた部屋を舞い散らかす。


 開け放たれた部屋の扉から、そろりと入ってくる人物は転がって行くメイドの首を、まるで大事な宝石を扱うように拾い上げた。


 胴から切り離された、サーヤの首を…


 テーブルの上に置かれ、誰かに見せつけるように飾られたサーヤを見ながら、部屋に入ってきた人物は思う。




『これで… ベルは解き放たれる… 不条理な摂理から… 新しい仲間… 魔人の誕生… これでいい… これで…』




 そっと扉を閉めていく隙間から、最後にサーヤの首を見つめ、消えて行く黒い黒い人影。


 部屋の前だけ見れば、何事もなかったと思うだろう。この犯行は誰にも気付かれる事はなかったのだから。








 王宮で行われていた舞踏会は、王が退出してしまったが、フィリスティア王国中の貴族が集まっているのだ。

 積もる話しや、今後の王国の見通しなど、あちらこちらで盛り上がっている。


 だが、一番の盛り上がる話題となれば、本日の主役の1人、ベル・シレイラ準男爵の事だろう。




「それで、あの小さき英雄殿の素性は何かわかったか?」


「いや、それがな… 王宮筆頭薬師のナボポラッサル卿の隠し子との噂があるそうだが…」


「ナボポラッサル卿の隠し子!? あの方は確か先代の王妃に忠誠を捧げて、独身を貫いていると言われていなかったか? そんな方が隠し子だなんて…」


「いや、いや、ナボポラッサル卿は後見人で、陛下の隠し子との噂もありますぞ…」


「なんと!? そんな噂… 不敬だぞ… いや、でも、準男爵のあの立ち振る舞い… 陛下に通づる所があるようにも見えるが…」




 舞踏の間では、貴族達が下世話な噂話に花を咲かせている中、煩わしい貴族の相手を避けるように、アナは兄であるフェルに話しかけた。




「ねぇ、兄さま! ベルを見かけなかった?」


「えっ? ベルはさっきまでそこら辺にいたんだけど、どこに行ったんだろう?」 


「まったくもう! ベルったら主役のクセしてどこいったのよ!」




 宥めるようにフェルは優しくアナに提案してみる。




「ほら、この間みたいに、ベルを探してみるのも楽しいじゃないか! それにしてもアナはベルを見つけ出すの上手いよね? どうやっているんだい?」


「えっと… そんな事、言われて勘よ! 勘!」


「勘ね… 私にはそれは、愛の力に見えるけどな…」


「愛って!? もう… 兄さまったら…」




 恥ずかしそうに、アナは目を瞑り、ベルを感じる…




『あれ? なんで? ベルはあんな所にいるの???』




 アナが感じたベルの所在は、舞踏の間を離れて、後宮の中だと告げていた。








 後宮の端にある、ベルが5才になる日まで過ごした部屋の前に、魔法陣が浮き上がっている。

 こんな隅の部屋に人が来ることなど、滅多にないのをベルは知っていたので、堂々と転移魔術を行使したのだ。




「うーん! 久しぶりですね! この仄暗い廊下に、僕の部屋! でも、サーヤは居るでしょうか… また甘々タイムをさせてもらう為に、ちゃんと謝らないとですね!」




 意気揚々と部屋をノックを2回するが、返事がなかったので、そっと扉を開けてみる。




「サーヤ… いませんか…? 僕ですよ?」




 そんなベルの目に飛び込んできたのは、変わり果てたサーヤの姿であった。




「えっ…!? サーヤ? サーヤ!?」




 心臓の鼓動が早くなる。 何が起きてしまっているのか、理解が出来ない。


 ベルは、サーヤの首を抱き締めてあげる事しか、してあげられない…




「ぁあ… サーヤ… どうして…」




 ベルは身体の中心から、沸き起こる激情を垂れ流してしまう。

 それは、暴力的な膨大な魔力の塊となって、後宮を覆い尽くし、王宮全体をも襲っていき、その力は、まるで大地震が起きたかのような圧力で、人々の精神と肉体にのしかかり、甚大な被害を出していく。








 この事態に、最初に気付いたのは、暴風王イラーフであった。




「おい… なんだ…!? このグチャグチャな魔力は?? この魔力はアイツのだよな?」




 イラーフは地下牢から、疾風の如く後宮へと走り出す。 魔力の震源へと向かって…


 イラーフが去った直後、地下牢の暗い闇から、黒い黒い人物がヌルッと現れた。

 そして、今し方までイラーフが話していた囚人の前に行き止まる。




「力が欲しいか? ガラハド・イッサカル」


「・・・」




 暗い瞳で、ガラハドを見つめる黒い黒い人物は、牢をすり抜け、また呪文のように語りかけた。




「力が欲しいか? ガラハド・イッサカル」


「うっ… ぁあ…」




 ガラハドの瞳には、底知れない闇が写し出されて、恐怖からか呻き声を上げる。

 その声を了承と受け取ったのか、黒い黒い人物はどこからか漆黒の宝石を取り出し、それをガラハドに向かって放り投げた。


 漆黒の宝石の中から気持ち悪い触手が伸びていき、ガラハドの頭の中、身体の中にくい込んで侵食していくのだった。








 後宮の奥から発せられている膨大な魔力の元へと急いでいたイラーフは、また恐ろしく不気味な魔力を感知した。

 その魔力は、先程まで自分がいた地下牢の辺りから感じられる。




「ちっ! 一体何が起こってやがるんだ!? 先ずはこっちの魔力から調べるしかないか…」




 衛兵達は、気を失い倒れているので、もう一方の魔力の正体を調べに行かせる事もできずに、イラーフは苛立ちながら後宮の中をトップスピードで駆け抜けていき、その魔力が溢れ出している部屋の前まで辿り着いた瞬間、彼が見たものは…


 泣きじゃくるただの子供であった。




「お前… ベアル・ゼブルか…!?」




 イラーフの言葉に、ベルは縋る様に反応する。




「サーヤが… サーヤが死んでしまいました…」


「落ち着け! とりあえずその馬鹿げた魔力を抑えやがれ!!」




 相当な混乱からか、ベルの髪の毛に掛けられた黒髪にする魔法は解かれ、元の銀髪に戻っていた。

 イラーフは一目見て、自分の息子であるベアル・ゼブルだと理解し、その息子がベルであった事も納得してしまう。




『あんなバカげた強さの子供が、何人もいてたまるかよな… 怪しいとは思ったが… なんで俺はベアル・ゼブルの事に気づかなかった!?』




 イラーフはベルを落ち着かせ、この魔力災害とでも言う様な事態を収めようと、ベルに近寄る。




「あっ!? そうだ!!! サーヤも生き返らせればいいんだ! アナだって生き返らせれたんだから、できるはずですよね!」


「おい、おい、何言ってるんだ? 生き返らせる!? って、アナも!? 意味分からねえぞ! 説明しろ! この無能王子!」


「煩いですね… アナは1度死んでしまったんですよ… それを僕の魔法で、僕の命を半分使って生き返らせられた… サーヤだって生き返らせられるはず…」


「・・・」




 衝撃の発言でイラーフは混乱する。




『アナが1回死んだ? この間のガラハド達に殺られたって事か!? それにサーヤってアシエラの妹分の娘じゃねーか… 一体何が起こってやがる…』




 頭の中で、考えを纏めようとしているうちに、いつの間にか、ベルの姿とサーヤの遺体が消えていた。




「工房魔法! 入室!」




 ベルは無色の空間へと誘われ、無属性のベルの魔法、【工房魔法】を発動し、ライブラリーを起動した。

 必死に命を甦らせる方法を検索する。アナの場合とは違い、サーヤはベルの血縁ではないので、ベルの命を削る方法は使えない…


 そして、悩みながら辿り着いた結論は、魔人生成の法。

 それは、死んだ人間と魔獣を掛け合わせ、人型の魔獣を創造する方法だった。

 人格は人間由来、魔獣由来どちらになるかは、その個体で分かれるらしいが、現時点で選べる道がこれしかないのが現実で…


 ベルのこの判断は正しいのか、間違っているのか、身近な人を亡くした者ならば賛成する人も少なからずいるのではないだろうか?


 この魔人生成の法に必要な物は、人間の肉体と魔獣の肉体。魔獣の肉体は新鮮でレベルの高い個体の方が成功率が上がるとライブラリーは示していた。




「新鮮な魔獣の肉体ですか… あっ! そういえば、この間、クイーンメタルスパイダーを生きたまま収納しておきましたよね!」




 ベルは【工房魔法】内に収納されているリストを表示させ、クイーンメタルスパイダーを探す。


【名前】メッサリナ

【種族】クイーンメタルスパイダー

【Lv】 60

【魔法】無属性(鋼糸魔法)

【状態】良好


 クイーンメタルスパイダーを見つけたベルは、個体情報を読み解く。




「うん! これなら生きたままですし、新鮮ですよね! サーヤ、もう少し待っててください! すぐに生き返らせてあげますから…」


『ピロリーン』


『個体名サーヤ・と個体名メッサリナを合成させる魔人生成の法を実行しますか?  YES/NO』


「もちろん! YESです!」




 躊躇なく、ベルはYESと叫ぶ。【工房魔法】に蓄積されていた魔力が、どんどん減っていき、魔人生成の法は成されるのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今日も更新楽しみにしていました! ありがとうございます(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” ひとつ気になったところがありました。 感→勘 勘=物事を直感的に感じ取る能力 間違っていたらごめんなさい! …
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