第48話 叙爵式典
謁見の間へと、アナに無理やり引きずられ連れて来られたベルは、中央付近に跪く様な形で捨てられ、アナに蹴られた衝撃とエクロンタイムズを造る為に徹夜した影響で、緊張感もなくフワフワと船を漕いでいた。
そこに、イラーフ王に続き王族達が入室して来て、叙爵式典が始まっていく…
「拐かされたアナトリア・フィリスティア第2王女殿下の無傷での救出、またその犯人である聖九剣の討伐、捕縛を称して貴殿を準男爵へと叙爵する!」
この国、フィリスティア王国の宰相である、テルミニ・イメレーゼ侯爵がベルの功績と準男爵への叙爵を高らかに宣言する。
だが、その宣言を聞いても詰めかけた貴族達からは、同意の拍手が起こる事はなかった。
貴族達には、平民でしかもまだ7才と幼いベルに対して、納得のいかない者、妬み、やっかみをもっている者が大半であるのだ。
静まり返った謁見の間の中で、1ヶ所から拍手をする音が聞こえてくる。
それは、イラーフ王が座る玉座のすぐ隣りに居並ぶ者の1人、アシエラ・フィリスティア第5王妃。
少し涙ぐむ彼女につられ、他の王妃達も頷きながら拍手を始め出していく。
王族が同意の拍手をしているのに、下の者達が無視する訳にもいかず、貴族達の間からまばらに拍手が起こっていき、瞬く間に謁見の間を覆っていくのだった。
謁見の間で堂々と居眠り… もとい、気絶しているベルはコクリ、コクリと首を縦に揺らしている…
テルミニ・イメレーゼ侯爵は、頷いているベルを見遣り、どうやら納得しているようだと解釈し、式典を進めたかったのだが、まだイラーフからベルの領地をどこにするのか下知されていなかったのであった…
宰相であるテルミニは、これからどうするのか困惑の表情でイラーフを見遣る。
イラーフはテルミニの様子を面白そうに眺めながら、ゆっくりと話し始めるのだ。
これが、テルミニの髪が薄くなっていく原因なのかもしれない…
自分勝手に物事を決めて、事後承諾の後に、しわ寄せをくらうのは宰相のテルミニ…
溜め息をつきながら、幼なじみの国王、イラーフに畏まりながら場を委ねる。
謁見の間で起こる拍手の音に、ベルの意識は段々と覚醒していく…
『煩いですね… ゆっくり寝かせてくださいよ… そう言えば、僕は何をしていたんでしたっけ?』
ベルの寝ぼけた頭に、父であり、国王でもあるイラーフの声が響いてきた。
「ベル、オマエをシレイラの森を含むシレイラ村を領地にする事を命じる! そして今日からオマエは、ベル・シレイラと名乗れ!」
「・・・・・・・・・・」
「はぁ!?」
シレイラの森、それは何時からなのか解らなくなる程、遥か昔から『シレイラ』と呼ばれている地。
そして、シレイラの森を抜けた場所にシレイラ村があるのだが、わざわざ危険なシレイラの森を抜けてその村まで行く者は、ほとんどいない。
王都エクロンの北門から延びる街道を通り、シレイラの森の外周を馬車で半日程行った所に存在しているシレイラ村は、通称『捨てられの村』と言われていた。
王都エクロンにはスラム街は存在していない…
王都にて様々な事情で働けなくなってしまった浮浪者や、親がいなくなり行く宛てのない浮浪児、果ては養う事ができなくなってしまった年老いた者達…
王都エクロンに住む事ができなくなった人間達が廃棄される地が、シレイラ村なのだった。
日本で言う所の姥捨て山の役割を負う場所なのである…
どこにでも光があれば影の部分が出てくるもので、王都エクロンの美しい街並みは、要らない者、使えない者達の犠牲の上で保たれているのかもしれない…
シレイラ村は王家直轄領だった事を鑑みれば、現国王イラーフがその責を負う事が正しいのだろうが、この代々続く悪習を、生活の為だと割り切り見て見ぬふりをしてしまう民や、福祉や法を整備できなかった王侯貴族、王都エクロンに住まう全ての者に責任があるのであろう。
イラーフ王の『領地はシレイラ』と言う言葉を聞いた貴族達は冷ややかな笑みを蓄え、自発的に軽く拍手をし出す。
それを聞いたテルミニは、頭を抱えたくなる衝動に駆られるが、なんとか堪え、思案する。
一見、ベルを何の価値もなく、使えない人間達しかいないシレイラの領主にする事は、成り上がった者に罰を与える様な事に見えた。
妬みの上での足の引っ張り合いを好む貴族達を納得させる要素にはなるであろう。
しかし、シレイラは王家直轄領だった地なのだ…
まるでイラーフ王が、何の手立ても打てなかった地の尻拭いを7才の子供に丸投げした格好にも見えてしまう。
これでは王家の沽券に関わってくる。
イラーフもこの事に気づいていないはずはない。
テルミニは、王が何を考えているのか理解できずに、そっと幼なじみのイラーフを見遣り、気づいてしまう…
『うわぁ… コイツのこの笑顔… 絶対面白がってるだけだな… ベルという子も可哀想に…』
テルミニの思いとはよそに、イラーフ王は笑顔を見せながら、ベルに問いかける。
「はぁ? じゃねーよ、ベル! オマエはシレイラの領主になるんだよ!」
ベルはシレイラと言われ思い浮かぶのは、よく行くシレイラの森だけで、『捨てられの村』シレイラ村の存在など知らなかったのだ…
『困りましたね… 森を領地にもらっても、どうやって経営していけばいいのでしようか… それとシレイラ村とかも言ってましたっけ… あんな所に村なんてあったでしょうか?』
ベルが思案に暮れていると、謁見の間に他の貴族達と一緒にベルの様子を見守っていた、ガテ・ヘフェル公爵が発言を許すようにと進言してきた。
「お待ちください! 陛下… あの『捨てられの村』… シレイラを7才の子供に任せるとは… 流石に看過できませんぞ!」
ガテ・ヘフェル公爵にとって、ベルは新たに寄子となる者なのだ。
寄親としては、できるだけ寄子の待遇を良くしてやるのも大切な仕事…
そこに、でっぷりと肥え太った男が話しに割り込んできた。
「まあ、まあ、ガテ・ヘフェル公よ、落ち着きなされ… これは陛下の御沙汰ですぞ! それに、今朝のエクロンタイムズでしたかな? この小僧… いや、小さき英雄殿は大層な活躍をしたとの事… それ程の実力の持ち主ならば、この程度の村の運営など容易い筈!」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みをしながら話すこの貴族は、クル・クレイマー公爵と言い、第1王子派の長をしている男だった。
彼は、ガテ・ヘフェル公爵がベルを庇う様にイラーフ王に進言した事で、既にベルがザーフェル派についたのを見抜き、後に敵対するであろう若き芽を早々に摘みにかかっているのだ。
王都エクロンの大きな影に押しつぶさせ、ベルのその実力を封じ込めようと…
目の前での派閥争いなど気にも留めずに、イラーフはクル・クレイマー公爵が言ったエクロンタイムズという言葉に興味が移る。
イラーフ王のエクロンタイムズの現物を読んでみたいとの言葉に声を上げたのは、この国の第2王女のアナだった。
「お父様! これを差し上げます! このエクロンタイムズは、わたしのゼブル商会がリースした魔導具で、お爺様のガテ商会が作って発行したんです!」
そのアナの言葉を聞き、イラーフは呟く…
「そうか… オマエ達のゼブル商会が… ゼブル…」
『イラーフ! 私はこの剣で、ゼブルと言う名前の価値を必ず変えてみせる! そうしたら… いつか私と…』
イラーフは過去に、あの人が言った言葉が頭に過り、青春時代が鮮やかに甦っていく…
だが、静かに頭を振り、アナからニュースペーパー、エクロンタイムズを笑顔で受け取り読み進める。
「ほう… 面白いな… 多少の誇張はあるがしっかりと真実を掴んでいるいい文章だ! そうだな… このエクロンタイムズと言ったか… これに俺のお墨付きをやろう!」
「本当に!? ありがとう! お父様!!」
イラーフのお墨付きの言に、アナは燥いでイラーフに抱き着く。
王からお墨付きがつくとは、エクロンタイムズの内容が王の許可を得て発行されている事になる。
この記事を疑う事は、王を疑う事と同義… エクロンタイムズの信用性が飛躍的に上がるのは間違いなく、ガテ・ヘフェル公爵は愉悦に浸る。
結果、第1王子派のクル・クレイマー公爵が望む様な形でベルをシレイラに押し込み、第4王子派のガテ・ヘフェル公爵には商売の利益に繋がるお墨付きを与え、引き下がらせる事に成功したイラーフの手腕を驚きながら見つめる宰相のテルミニ。
『やれ、やれ、この男はまったく、侮れないな… バカなのか天才なのか未だに解らん… これで私の調整の役目も楽に…』
そんな事を考えていたテルミニの思考を遮る声が聞こえてきた!
「申しわけありません! この叙爵のお話しは、お受け致しかねます… よって、領地の件も無かった事にして頂きたく存じます」
丁寧にしかし、きっぱりとした拒絶。
それを聞いた、謁見の間にいる貴族達から疑問の声が漏れた一斉に。
「「「はぁーー!?」」」
テルミニは開いた口が塞がらない… しかし、宰相としての重責からかなんとか頭を再起動させる。
ここまで、上手くイラーフが纏めた話しを根本からひっくり返してしまう一言に、どうしてくれようかと、ベルを見つめ思う、まだ子供なのだ。
そう、まだ7才の子供が大勢の貴族達や王族のいる謁見の間で、はっきりと自分の意見を進言する事ができるだろうか?
一介の平民の子供ができるわけがない… しかし、テルミニにはこのベルと言う子供が、ただ我儘を言っている様子にはどうしても見えなかった。
「ベルと言いましたね? 叙爵辞退の訳を聞いてもいいですか?」
テルミニは、なるべく 事を荒立てない様な優しい言い方で問いただす。
「はい、それでは失礼を承知で伺いますが、僕は貴族になるという事に対して興味はありません… そんな僕が‘あの’シレイラを領地にする事に何の利があるのでしょうか? それにアナトリア王女殿下をお助けしたのは、彼女が大切な友人であったからであって、褒賞がほしかった訳ではありませんから、利が無いなら頂く必要性がありません」
ベルは‘あの’シレイラと言った… シレイラ村が『捨てられの村』とは知らないが、何か厄介な地だと山を掛けたのだが、それは当たっていたのであろう。
第1王子派、第4王子派の長達の利は汲む事はしたものの、肝心な今回の叙爵の主役の意見を全く聞いていなかったのだ。
普通ならこんな子供の戯言に付き合う必要などないと、切って捨てればいいのだが…
多くの貴族達が見守るこの謁見の間でそんな事をしようものなら、王への求心力に響く恐れも無きにしも非ず、ベルの言葉に、唸る宰相のテルミニを楽しそうに眺めるイラーフ王が口を開く。
「まあ、そんなに俺の宰相を苛めてくれるな、ベルよ… それにな、オマエにシレイラ領を治めさせるのは決定事項だ! 俺が決めたからな! そこでだ、オマエを厄介な地に押し込め、若くて強い力を削いでおきたい第1王子派と面子と利益がほしい第4王子派、そして懐が深い所を見せておきたい俺達王家、後はオマエが納得する妥協点はどこだ? 領地を治める為の支度金か?」
「・・・・・・・・・・」
貴族の矜持などないイラーフのぶっちゃけ話しに、4者が納得する方法なぞあるものかとテルミニは考えていた。
いや、テルミニ以外のここにいる貴族達も皆そう思ったであろうし、イラーフという男は決して自分の言葉は曲げない事は、幼馴染のテルミニは知っている。
だが…
『決定事項って!? 相変わらず傍若無人ですね… この陛下は… こんな自分勝手なおっさんにはなりたくないものですよ! 仕方ありません、こっちが大人になってあげますか…』
この親あって、この子ありとも思うが、そんな事は露程も思っていないベルは答える。
「皆さんの条件を飲んで‘あの’シレイラをどうしても僕が治めなくてならないのであれば、1つだけ条件があります」
「ほう、1つでいいのか? なんだ? 俺が聴ける条件なら何でも飲んでやろう!」
イラーフは面白そうに笑顔を見せ、ベルの次の答えを待った。
「シレイラ領に掛かる税の一切を無くして頂けませんか? 未来永劫に!」
ベルの答えに不自然な程、イラーフは即答する。
「いいだろう! シレイラ領はこれから先、永久無税とする!」
「えっ!?」
そのイラーフの返しに、驚いたのは要求したベルだった… 貴族の義務の1つに王家への税を払う事があるのだが、ベルとしてはお互いに妥協していき、最終的に無税期間を10年程にしたいと思っていたのだ。
自分の思い違いにベルは焦る…
『参りましたね… 税を接収する事が絶望的な領地なのでしょうか? それとも他に何か… それにしても、ニタニタ笑ってムカつきますね… このおっさん、いや、陛下… いつかぶっとばしましょう!』
ベルが思案に暮れていると、クル・クレイマー公爵から異議が上がる。当然であろう、貴族が王家に納税しないとなれば、その領はもう独立国家の様なものだ。
開拓村などは5年から10年の税の免除はある、後は、自領地に危機が多く、領軍を保たねばならない辺境伯は格段に税は安くなっているが、それでも確実に納税の義務を負う。
「陛下! 永久無税など、他の貴族達に示しがつきませんぞ! お止めくだされ!」
クル・クレイマー公爵の言葉と共に、謁見の間にいた貴族達が騒めき立つ。
そこに宰相のテルミニが声を荒げる貴族達を制し、イラーフに申言する。
「王よ! 御再考を! 永久無税などと… 王国の根底を覆してしまいます!」
「黙れ!! 愚か者ども!!」
魔気の籠ったイラーフの檄に、謁見の間は一気に静まり返るが、ものともせず、イラーフの魔気を受け流しているベルを見遣り、フンと鼻を鳴らし話し出す。
「ベルよ… シレイラ領の永久無税にて、オマエは準男爵となる… 二言はないな?」
「・・・・まあ、こちらから言ってしまった条件ですからね… やっぱり止めたとかはできますか? ははは…」
イラーフの言葉に何か隠されている事は明らかだが、その何かが解らず苦笑いが零れるベルであった。
「ははは! 止めにはできねーな! ベル! オマエをフィリスティア王国、準男爵に命ずる! 領地はシレイラ領だ!」
「はぁ… 仕方ありませんね… 承りました… フィリスティア王国と王に忠誠を…」
フィリスティア王国史上、最も波乱に満ち、最もやる気のない叙爵式をやり遂げたベルの耳に、退室しかけたイラーフからの声が届く。
「あー、そうだ、納税の義務を放棄したのに、独立国を立ち上げる訳でもなく、この国と俺に忠誠を誓うって事は、他の義務でそれ以上の物を補填してくれるって事だよな! 流石、小さき英雄だ! 戦争になったらよろしく頼むわ! はははー」
そのイラーフの言葉を聞いた、頭の回る幾人かの者達は戦慄する。
ベルの実力は紛れもなく本物、そんな彼をこれから始まるかもしれない聖九柱教との戦争に、強制参加させる為だけに何手も先を読んだイラーフの振る舞いと、イラーフ王にそこまでさせた、まだ7才の化け物に…
『あぁーーー またやられました! 他の義務でそれ以上の物を補填て… あのクソ陛下… どうしてくれましょうか… いっそのことサーモバリックで王宮ごと消滅させて無かった事に…』
ベルが危ない事を考えているこの場所は、舞踏の間と言われる大規模なパーティーや夜会が行われる控室だ。
「それにしても、ベルはやっぱり凄いよ… 父上とあんなに堂々と渡り合えるなんて… この国の貴族でもそうはいないはずだよ! それに、アナの事“大切”だって言ってくれてありがとう… アナ自身はまだ解っていないかもしれないけど、これから妹は陰でいろいろ言われるだろうからね…」
ベルのいる控室にフェルが来て、叙爵式典での様子を興奮気味に語っていたのだが、イラーフ王に、してやられてしまったベルにはフェルの言葉を上の空で耳を貸していた。
婦女子が誘拐される事は、純潔を穢されると等しく考えられているこの世界。
叙爵式典で言われた、宰相であるテルミニの宣言にもアナは無傷で救出されたと強調していた。
その宣言をしても、アナの純潔は穢されると噂を立てる者は少なくないであろう…
実兄であるフェルとしては、妹の将来が心配になるのも仕方ない。
そして何故2人がこの舞踏の間の控室で一緒にいるかというと、女性陣の準備が整うまで男性達は待ち惚けをしなくてはならないのだ。
そんな中、フェルは王族の控室へとベルを連れて行く役目を買って出たのだった。
本日の主役であるベルが、エスコートをする相手はアナトリア第2王女。
ベルとフェルがくだらない話しをしていると、侍女から女性陣の支度が整ったと報告が入り、アナが待つ控室に向かうのだった。
「ギビルはエッチだから嫌ニャーー! あたしもアナにゃんと一緒に、ベルって子にエスコートしてもらうニャ!」
「なっ!? だから俺のどこがエッチなのだ! それに父上からのお達しなのだ! 大人しく俺にエスコートされておけ!」
「父上、父上って… ギビルはファザコンニャ! やっぱりエッチニャ! ニャニャ? クンクン… この匂い… あの子の匂いニャ!!」
アナの控室に向かう途中にある部屋の前を通り過ぎた時、ベル達の耳に聞いた事のある猫語を話す女の子の声が聞こえてきた。
「フェル! 急ぎましょう! 何か嫌な予感がします…」
ベルはその部屋を早く離れようとフェルを急かすが遅かった…
「待つニャーー!! ダンニャ様ーー!!」
「誰が、ダンニャ様ですか!? まったく、そんなにじゃれついてこないでくださいよ… この猫ちゃんは…」
「猫じゃないニャーー! ラ・イ・オ・ン・ニャーー」
テトは自分の匂いをベルに擦り込む様に、グリグリとくっついてくる。
今のテトは演習場で着ていた民族服ではなく、パーティー用の綺麗なドレスを身に纏っているのだが、せっかくの衣装がシワになると、侍女達に止めにかかられるのであった。
「フェルとベルではないか!? 頼む… このじゃじゃ馬姫をどうにかしてくれ…」
「馬じゃにゃいニャーー! ライオンニャ! ギビルは何時もあたしを飼い慣らそうとするエッチニャ! シャーー!!」
ギビルに、じゃじゃ馬と言われた事に腹を立てた、テトの威嚇には気にもとめず、ベルはギビルに挨拶を交わす。
「これは、ギビル殿下、昨日は大変お世話になりました… ところで… この猫ちゃんどうしましょう…」
「そう言えばベル! オマエに会いたかったのだ! 猫の事などはどうでもいい! ベル! オマエが昨日、ピュロス学院長と行った模擬試合で使った火属性魔法を俺に教えろ! いや、俺を弟子にしてくれーー」
「・・・・・・・・・・」
「はぁー?」
ベルに弟子ができた…
それは歳の離れた兄ではあるが…
そして、どうでもいい扱いをされたテトは、なおいっそうギビルを毛嫌いしていくのだった…