第3話 ワトソンくんpart2
地球ではないどこかの世界に、生後3か月の赤ん坊がいた。
この赤ん坊には、前世の記憶が多少残っているのだが…
記憶というより、知識に近いのかもしれない。
前世の名前も覚えておらず、両親や友達の名前も覚えてはいなかった。
ただ大切と思える人達がいたことは、なんとなくわかる。
誰かに想われ、誰かの事を想い、日本という国で、生きていた。日本での、いや、地球での最後の記憶は、バスに乗っていた所で終わってしまっている…
悲しい気持ちは、確かにある。
ただ今生の、この赤ん坊には、些細な問題だった、なぜならこの生まれ変わった世界には、魔法と思われる現象が存在しているのである。
現代日本人のネット社会に適応した人間なら、異世界転生、剣と魔法!憧れるではないか。
「チュウ…チュウ…チュウ…」
これは、けして卑猥な音ではない。
赤ん坊には、乳を吸う権利、いや、義務があるのだ!
ただ… この赤ん坊が吸っているのは、乳房からではない。
突然だが、宇宙飛行士が、宇宙ステーションで空中に漂っている水の塊を飲んでいる所を、見たことがあるだろうか?
この赤ん坊が、飲んでいる方法もこんな感じである。
ただ水の塊ではなく、魔法で作りだした母乳の塊なのだが…
『んんんーなんだろ…この騙された感…
僕としてはいいんだよ? でもさ…
夢みたっていいじゃない…』
「うっうっうえ~ん」
『なぜに泣く?僕?』
『精神が身体に引っ張られてるせいだよ!けしてお胸から母乳を飲めなくて泣いているわけではないのだよ?ワトソンくん』
「%$#%#$”#$”%$&%$&%$##$$&&’&%$&%#$(あらあら~殿下が泣くなんて珍しいですね~私の水魔法で作ったミルクは美味しいですよぉ~それにしてもさっきから私の胸見すぎだし、叩きすぎですよぉ…)」
『もしかして…やっぱり、王妃様に会えないのがわかるのかしら…』
「”#%$&%$&%#!&%!&(&%&%$#(殿下…大丈夫ですよ~未熟な私ですが… 命に代えても殿下の乳母の仕事をこなしてみせます!けして寂しい思いはさせませんから!)」
意を決したように、少女は赤ん坊を抱き、胸を露わにした…
赤ん坊は見た!
健康的な肌色と、頂にそびえ立った突起物のコントラストを…
この赤ん坊は、成長してから言った。
この日を境に、無色の世界は色づいたと…
ワトソンくん~~~~~