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第33話 人形


 トリスタン・アシェル。 彼は人生に飽いていた…


 

 アシェル家は、代々優秀な魔法士を輩出する事で、アンティゴノス古王国での確固たる地位を確立している家柄なのだ。








挿絵(By みてみん)








 アンティゴノス古王国とは、カナン地方とは対極に位置する、ザンビアーナ地方にある世界最古の王国で、世界最大の王国でもあった。

 ティルス大陸に存在する、ほぼ、全ての国の王族には、このアンティゴノス古王国王族の血が入っている。


 フィリスティア王国も例外は無く、ベルの曾祖母に当たる人物が、アンティゴノス古王国から嫁いで来ていた。




 そして、なんと言ってもアンティゴノス古王国は、聖九柱教の発祥の地でもあるのだ…


 その繋がりは深く、聖九柱教の九教皇を決めるには、アンティゴノス王の採択が不可欠であり、また、アンティゴノス王を決めるには、九教皇の多数決によって決められる。


 この政教一致の相互関係によって、長きに渡り安定した統治を為し遂げていたのであった。







 この様な環境の国で生まれ育った、トリスタン・アシェルも、もちろん敬虔な聖九柱教徒であり、魔法士としては、天才の名声をほしいままにしていた。


 彼は、聖九柱教史上、最年少の10才にして聖九剣に選ばれた。


 何故ならば、彼の魔法発動に対するイメージ力が群を抜いており、無詠唱で魔法を発動させる事ができたのだ。

 見るだけで、炎を顕現させる事ができる彼を、皆、恐れ敬った。両親達は、将来の九教皇と持て栄して育てた。

 彼自身も、そうなれる様、幼い頃から努力を惜しまず訓練に励み、最年少で聖九剣になったのだ…

 

 だが、聖九剣とは、聞こえは良いが、聖九柱教の暗部の取り纏めの様な存在なのである。10才とまだ多感な時期から、人を燃やし続けた…



 燃やして… 燃やして… 燃やして… 燃やして… 燃やして… 



 16歳になる頃には、精神の崩壊と信仰の狭間で、もがき苦しむ様になり、酒と女に溺れて行った…






 そして、今日も仕事の日なのだ。今回のターゲットは暴風王と恐れられている、イラーフ・フィリスティア王。

 彼を仕留める為に、まずは、第2王女である娘を誘拐し、盾に取る作戦だった。その為に、王女の警護役の人物を脅した。

 聖九柱教徒であれば、この様な事をする事もないのだが、所詮、異教徒。いつもの事だと、気にも留めずに、警護役の婚約者を拉致するのを承認するのだった…





 目の前で、王女の警護役の婚約者が必死に懇願していた。


 

 彼女は19歳、あと1年で国立エクロン魔法学院を卒業するらしい…

 

 卒業後は、すぐに幼馴染である王女の警護役の男と結婚する事が決まっているのだと言う。


 だから、それまでどうしても綺麗な身体のままで居たいと…






 何も言わず、トリスタンは彼女の着ている衣服だけを全て燃やす。

 一瞬の事で、彼女が服を全て燃やされた事に気づくのは、凌辱された後だった…



 この仕事をする為に組まされた、もう1人の聖九剣のガラハドは、警護役の婚約者が生まれたままの姿になった途端に彼女の初めてを奪い去る。


 それから何人もの部下達が、彼女の上に乗り続け、幼馴染である警護役の男が、約束通りに王女を連れて来た頃には、穢れている壊れた人形の様になっていた…





 そこに警護役の男、エイジスの怒号が響き渡る!

 剣を抜き放ち、詠唱を始めた…


 だが、その詠唱は最後まで唱えられる事はなく、エイジスの身体は燃え上がる…




 つまらない…




 どんなに美しい女を抱こうと、どんなに強い男を燃やそうと満足できない、壊れた人形は自分の方かもしれないとトリスタンは自嘲するのだった…









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